1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
◈Claude Debussy: 12 Etude Books 1 & 2
◈Emmanuel Chabrier: Dix pièces pittoresques
◈Maurice Ravel: Sonatine
Soulima Stravinsky (Pf)
(Rec. 1960s,University of Illinois, Champagne-Urbana)
スーリマ・ストラヴィンスキー(Soulima Stravinsky, 1910-1994)は、作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキーの息子さんです。
彼は、父親の作品をレパートリーにしていましたが、ここでは、クロード・ドビュッシー(Claude Debussy, 1862-1918)の練習-曲集、エマニュエル・シャブリエ(Emmanuel Chabrier, 1841-1894)の絵画的小品集から〈木陰で〉(Sous bois)〈ムーア風舞曲〉(Mauresque)〈スケルツォ=ヴァルス〉(Scherzo-Valse)の3曲、モーリス・ラヴェル(Maurice Ravel, 1875-1937)のソナチネを演奏しています。
ドビュッシーの練習曲集は、1915年の作品。この頃のドビュッシーは、腹痛に苛まれ、ろくに作曲の仕事をしていませんでしたが、デュラン社から、ショパンの練習曲集の校訂の仕事を頼まれたのがきっかけで、自分でも練習曲集を作りたくなったのだとか。そのため、この作品は、亡きショパンに捧げられています。
ドビュッシーは、練習曲と銘打ち、12曲のそれぞれに、〈五本の指のために〉〈三度のために〉〈四度のために〉〈六度のために〉〈オクターヴのために〉〈八本の指のために〉〈半音階のために〉〈装飾音のために〉〈反復音のために〉〈対位法の響きのために〉〈アルペジオのために〉〈和音のために〉と、実に素っ気無いタイトルをつけています。しかし、運指を指定して弾き方をとやかく言うための練習曲ではなく、ドビュッシー自身は「自分の指使いを探せ!」と言っています。もっとも、生前のドビュッシーは、〈八本の指のために〉の練習曲について、「親指は使わないほうが望ましい」と言ったことがあります。しかし、マルグリット・ロンが親指を使った運指で鮮やかな演奏を披露したときには、指使いのことなど問題にせず激賞したとのことなので、演奏効果が上がりさえすれば、指使いなど瑣末な問題だったということが伺えます。
また、〈五本の指のために〉の練習曲で、カール・ツェルニーのスケールをネタにカリカチュアにしており、単なる技術習得の練習曲ではないことを強調しています。
シャブリエの曲は、シャブリエ流の18世紀フランス音楽へのオマージュとして1880年から翌年にかけて書き溜めた小品集からのセレクション。〈木陰で〉は、ショパンの音楽の影響をかすかに感じさせる精妙にして繊細な音楽ですが、粗暴なピアニストの手にかかると、単調で面白みのない音楽へと変貌する、ピアニストのセンスの試される音楽です。
〈ムーア風舞曲〉は、シャブリエがまだ見ぬスペインへの憧れを音にしたためた音楽で、実のところスペインの舞曲とは何のかかわりもありません。ただ、スペインをイメージしたリズムの取り方や節回しに、彼なりの「スペイン気取り」を感じることは出来るかと思います。
〈スケルツォ=ヴァルス〉は、3拍子のワルツのリズムで作ったスケルツォで、単純そうな左手の処理で味わいをつける音楽です。また、中間部とのコントラストも、演奏上のポイントとなります。
最後に収録されたラヴェルのソナチネは、1905年に作曲された作品。小規模な3楽章制のソナタ・スタイルでコンパクトに纏めた作品で、古雅な情趣を盛り込んでいるあたりは、ラヴェルならではの味わいです。また、セザール・フランクが得意とした循環形式の技法も援用しているので、楽章間の緊密性もしっかりと保たれ、ラヴェルの用意周到な音楽の設計には感嘆するほかありません。
スーリマ・ストラヴィンスキーの演奏は、しかし、これらの音楽の美質を充分に引き出したとは言いがたく、色彩感溢れる音楽を、わざわざモノトーンで演奏してしまったような感じすら受けます。ドビュッシーの練習曲集は、技術的になんとか弾きこなしたという程度で、それぞれの音楽の含蓄に思いを馳せるようなレベルには達していません。
シャブリエの音楽も、彼の音楽に要求されるウィットが感じられず、この演奏でなければ味わえないものというものを感得することは出来ません。
ソナチネも、ドビュッシー同様、そつなく弾きこなしたという程度で、この作品の精巧さを十二分に味わうには、彼のピアノはニュアンスに乏しく、いささか棒読みな気がします。
彼は、父親の作品をレパートリーにしていましたが、ここでは、クロード・ドビュッシー(Claude Debussy, 1862-1918)の練習-曲集、エマニュエル・シャブリエ(Emmanuel Chabrier, 1841-1894)の絵画的小品集から〈木陰で〉(Sous bois)〈ムーア風舞曲〉(Mauresque)〈スケルツォ=ヴァルス〉(Scherzo-Valse)の3曲、モーリス・ラヴェル(Maurice Ravel, 1875-1937)のソナチネを演奏しています。
ドビュッシーの練習曲集は、1915年の作品。この頃のドビュッシーは、腹痛に苛まれ、ろくに作曲の仕事をしていませんでしたが、デュラン社から、ショパンの練習曲集の校訂の仕事を頼まれたのがきっかけで、自分でも練習曲集を作りたくなったのだとか。そのため、この作品は、亡きショパンに捧げられています。
ドビュッシーは、練習曲と銘打ち、12曲のそれぞれに、〈五本の指のために〉〈三度のために〉〈四度のために〉〈六度のために〉〈オクターヴのために〉〈八本の指のために〉〈半音階のために〉〈装飾音のために〉〈反復音のために〉〈対位法の響きのために〉〈アルペジオのために〉〈和音のために〉と、実に素っ気無いタイトルをつけています。しかし、運指を指定して弾き方をとやかく言うための練習曲ではなく、ドビュッシー自身は「自分の指使いを探せ!」と言っています。もっとも、生前のドビュッシーは、〈八本の指のために〉の練習曲について、「親指は使わないほうが望ましい」と言ったことがあります。しかし、マルグリット・ロンが親指を使った運指で鮮やかな演奏を披露したときには、指使いのことなど問題にせず激賞したとのことなので、演奏効果が上がりさえすれば、指使いなど瑣末な問題だったということが伺えます。
また、〈五本の指のために〉の練習曲で、カール・ツェルニーのスケールをネタにカリカチュアにしており、単なる技術習得の練習曲ではないことを強調しています。
シャブリエの曲は、シャブリエ流の18世紀フランス音楽へのオマージュとして1880年から翌年にかけて書き溜めた小品集からのセレクション。〈木陰で〉は、ショパンの音楽の影響をかすかに感じさせる精妙にして繊細な音楽ですが、粗暴なピアニストの手にかかると、単調で面白みのない音楽へと変貌する、ピアニストのセンスの試される音楽です。
〈ムーア風舞曲〉は、シャブリエがまだ見ぬスペインへの憧れを音にしたためた音楽で、実のところスペインの舞曲とは何のかかわりもありません。ただ、スペインをイメージしたリズムの取り方や節回しに、彼なりの「スペイン気取り」を感じることは出来るかと思います。
〈スケルツォ=ヴァルス〉は、3拍子のワルツのリズムで作ったスケルツォで、単純そうな左手の処理で味わいをつける音楽です。また、中間部とのコントラストも、演奏上のポイントとなります。
最後に収録されたラヴェルのソナチネは、1905年に作曲された作品。小規模な3楽章制のソナタ・スタイルでコンパクトに纏めた作品で、古雅な情趣を盛り込んでいるあたりは、ラヴェルならではの味わいです。また、セザール・フランクが得意とした循環形式の技法も援用しているので、楽章間の緊密性もしっかりと保たれ、ラヴェルの用意周到な音楽の設計には感嘆するほかありません。
スーリマ・ストラヴィンスキーの演奏は、しかし、これらの音楽の美質を充分に引き出したとは言いがたく、色彩感溢れる音楽を、わざわざモノトーンで演奏してしまったような感じすら受けます。ドビュッシーの練習曲集は、技術的になんとか弾きこなしたという程度で、それぞれの音楽の含蓄に思いを馳せるようなレベルには達していません。
シャブリエの音楽も、彼の音楽に要求されるウィットが感じられず、この演奏でなければ味わえないものというものを感得することは出来ません。
ソナチネも、ドビュッシー同様、そつなく弾きこなしたという程度で、この作品の精巧さを十二分に味わうには、彼のピアノはニュアンスに乏しく、いささか棒読みな気がします。
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