1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
◈Camille Saint-Saëns: Cyprès et Lauriers, op.156
Matthias Eisenberg (Org)
Orchestre du Capitole de Toulouse / Michel Plasson
(Rec. 7-9 July 1995, Basilique Notre-Dame la Daurade, Toulouse)
◈Camille Saint-Saëns: La Foi, 3 tableaux symphoniques, op.130Orchestre du Capitole de Toulouse / Michel Plasson
(Rec. 7-9 July 1995, Basilique Notre-Dame la Daurade, Toulouse)
カミーユ・サン=サーンス(Camille Saint-Saëns, 1835-1921)は、フランスの作曲家です。
彼は元々病弱だったため、幼い頃から人と接する機会がありませんでしたが、様々な分野の本を読む機会に恵まれ、音楽だけでなく、詩や絵画、数学や天文学に至るまでの幅広い知識を身につけていました。
しかし、人と接する機会に恵まれなかったことは、彼の性格形成に大きな影を落とし、円滑な人間関係の形成が生涯不得手だったそうです。
そんなサン=サーンスの作風は、情緒的なものをふんだんに盛り込むことに力が注がれていた19世紀にあって、情緒的なものを盛り込むよりも、作品としてのプロポーションにこだわりを見せる点でユニークさがありました。
人付き合いの不得手だったサン=サーンスは敵も多く、作曲技術の器用さに特化しすぎて中身が空っぽだと作風を揶揄されることもしばしばでした。
事実、彼の作品は、どれも親しみやすいメロディにあふれ、演奏効果は抜群ですが、そこから作曲者本人の意志が仄見えてくることはあまりありません。
サン=サーンスは、フランス人としての自分のアイデンティティを鼓舞するためか、国民音楽協会の発起人となり、フランス音楽の発展に少なからぬ功績を残しましたが、彼自身の作品の職人芸的なところがかえってアイデンティティが感じられないと批判されるようになり、この国民音楽協会から追い出されるようにして脱退しています。
サン=サーンスは、その博学さゆえに敵も少なくありませんでしたが、多くの文化人も彼の下に集まっていました。
小説家のウジェーヌ・ブリューもその一人でした。ブリューは1908年に、自分の作った戯曲のための付随音楽を友人のサン=サーンスに依頼しました。サン=サーンスはオペラを作りたかったらしく、ブリューの話に気乗りしなかったそうですが、結局説得されて音楽を書き上げます。その音楽が、《誓い》(La foi)と呼ばれる作品です。
曲は3つの部分から成り、第1の部分は古代エジプトの雰囲気をかもし出そうと、ハープを竪琴代わりにあてがっています。
第2の部分は、フルートを軸にし、クロード・ドビュッシーの《牧神の午後のための前奏曲》を彷彿とさせるような雰囲気を作り出しています。しかし、ドビュッシーほどに印象をぼやかせず、中間部にひとつのクライマックスを作り上げています。
第3の部分は、劇のフィナーレを題材にしており、エキゾチックな弦楽合奏で雰囲気を一変させた上で、じっくりとクライマックスを作っていきます。
《糸杉と月桂樹》は、1920年の作品。
モンテ・カルロのカジノのオーケストラに曲を提供するという約束で書いた作品で、オルガンつきの豪華絢爛な音楽に仕上げています。
前半部分の〈糸杉〉は、サン=サーンスの葬式のときに用いられたことで知られており、時々単独で演奏されます。沈痛な面持ちの作品で、サン=サーンスにしては珍しく感情的ですが、ひょっとすると、後半の〈月桂樹〉を際立たせるための戦略なのかもしれません。
悲しみに閉ざされたような糸杉が消えるように終わると、すかさず弦楽器がトレモロで入ってきてトランペットを呼び寄せ、一気に祝典的ムードへと変化します。
オーケストラはオルガンを華麗に飾りつけながら親しみやすいメロディでクライマックスへと誘導します。
作風としては、当時の最前線ではありませんでしたが、前半部分を第一次世界大戦での戦没者追悼、後半部分を戦勝国フランスの栄光ある未来への賛歌と位置づけて聴くこともあながち的外れではないかもしれません。
演奏するのは、ミシェル・プラッソン(Michel Plasson, 1933-)指揮するトゥールーズ・カピトール国立管弦楽団です。
引き締まったアンサンブルで、サン=サーンスの音楽に豊かな情感を盛り込み、ただ華麗なだけではない感動的な音楽を作り上げています。
《糸杉と月桂樹》では、ドイツのオルガニストであるマティアス・アイゼンベルク(Matthias Eisenberg, 1956-)をゲストに迎えていますが、アイゼンベルクも共感豊かにサン=サーンスの音楽を奏で、聴き手を白けさせることがありません。月桂樹にいたっては、オーケストラとオルガンの音が良く溶け合い、大変美しい演奏に仕上がっています。
彼は元々病弱だったため、幼い頃から人と接する機会がありませんでしたが、様々な分野の本を読む機会に恵まれ、音楽だけでなく、詩や絵画、数学や天文学に至るまでの幅広い知識を身につけていました。
しかし、人と接する機会に恵まれなかったことは、彼の性格形成に大きな影を落とし、円滑な人間関係の形成が生涯不得手だったそうです。
そんなサン=サーンスの作風は、情緒的なものをふんだんに盛り込むことに力が注がれていた19世紀にあって、情緒的なものを盛り込むよりも、作品としてのプロポーションにこだわりを見せる点でユニークさがありました。
人付き合いの不得手だったサン=サーンスは敵も多く、作曲技術の器用さに特化しすぎて中身が空っぽだと作風を揶揄されることもしばしばでした。
事実、彼の作品は、どれも親しみやすいメロディにあふれ、演奏効果は抜群ですが、そこから作曲者本人の意志が仄見えてくることはあまりありません。
サン=サーンスは、フランス人としての自分のアイデンティティを鼓舞するためか、国民音楽協会の発起人となり、フランス音楽の発展に少なからぬ功績を残しましたが、彼自身の作品の職人芸的なところがかえってアイデンティティが感じられないと批判されるようになり、この国民音楽協会から追い出されるようにして脱退しています。
サン=サーンスは、その博学さゆえに敵も少なくありませんでしたが、多くの文化人も彼の下に集まっていました。
小説家のウジェーヌ・ブリューもその一人でした。ブリューは1908年に、自分の作った戯曲のための付随音楽を友人のサン=サーンスに依頼しました。サン=サーンスはオペラを作りたかったらしく、ブリューの話に気乗りしなかったそうですが、結局説得されて音楽を書き上げます。その音楽が、《誓い》(La foi)と呼ばれる作品です。
曲は3つの部分から成り、第1の部分は古代エジプトの雰囲気をかもし出そうと、ハープを竪琴代わりにあてがっています。
第2の部分は、フルートを軸にし、クロード・ドビュッシーの《牧神の午後のための前奏曲》を彷彿とさせるような雰囲気を作り出しています。しかし、ドビュッシーほどに印象をぼやかせず、中間部にひとつのクライマックスを作り上げています。
第3の部分は、劇のフィナーレを題材にしており、エキゾチックな弦楽合奏で雰囲気を一変させた上で、じっくりとクライマックスを作っていきます。
《糸杉と月桂樹》は、1920年の作品。
モンテ・カルロのカジノのオーケストラに曲を提供するという約束で書いた作品で、オルガンつきの豪華絢爛な音楽に仕上げています。
前半部分の〈糸杉〉は、サン=サーンスの葬式のときに用いられたことで知られており、時々単独で演奏されます。沈痛な面持ちの作品で、サン=サーンスにしては珍しく感情的ですが、ひょっとすると、後半の〈月桂樹〉を際立たせるための戦略なのかもしれません。
悲しみに閉ざされたような糸杉が消えるように終わると、すかさず弦楽器がトレモロで入ってきてトランペットを呼び寄せ、一気に祝典的ムードへと変化します。
オーケストラはオルガンを華麗に飾りつけながら親しみやすいメロディでクライマックスへと誘導します。
作風としては、当時の最前線ではありませんでしたが、前半部分を第一次世界大戦での戦没者追悼、後半部分を戦勝国フランスの栄光ある未来への賛歌と位置づけて聴くこともあながち的外れではないかもしれません。
演奏するのは、ミシェル・プラッソン(Michel Plasson, 1933-)指揮するトゥールーズ・カピトール国立管弦楽団です。
引き締まったアンサンブルで、サン=サーンスの音楽に豊かな情感を盛り込み、ただ華麗なだけではない感動的な音楽を作り上げています。
《糸杉と月桂樹》では、ドイツのオルガニストであるマティアス・アイゼンベルク(Matthias Eisenberg, 1956-)をゲストに迎えていますが、アイゼンベルクも共感豊かにサン=サーンスの音楽を奏で、聴き手を白けさせることがありません。月桂樹にいたっては、オーケストラとオルガンの音が良く溶け合い、大変美しい演奏に仕上がっています。
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