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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Pyotr Ilyich Tchaikovsky: Violin Concerto in D major, op.35
Mischa Elman (Vn)
London Symphony Orchestra / John Barbirolli
(Rec. 19 & 20 December 1929, Queens Hall, London)
◈Pyotr Ilyich Tchaikovsky: Sérénade Mélancolique, op.26
Mischa Elman (Vn)
Victor Symphony Orchestra / Nathaniel Shilkret
(Rec. 25 August 1930, Victor's 24th Street Studios, New York)
◈Henryk Wieniawski: Violin Concerto No.2 in D minor, op.22
Mischa Elman (Vn)
Robin Hood Dell Orchestra of Philadelphia / Alexander Hilsberg
(Rec. 23 June 1950, Academy of Music , Philadelphia)



ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(Pyotr Ilyich Tchaikovsky, 1840-1893)のヴァイオリン協奏曲と《憂鬱なセレナード》、ヘンリク・ヴィエニャフスキ(Henryk Wieniawski, 1835-1880)のヴァイオリン協奏曲第2番をカップリング。ヴァイオリン独奏は、ウクライナ出身のミッシャ・エルマン(Mischa Elman, 1891-1967)が務めています。
エルマンのヴァイオリンの音色は、特に日本では「エルマン・トーン」と呼ばれ、官能的な低音と中高音のふくよかさを特徴としました。尤も、この音色の特徴に言及した野村あらえびすによれば、録音では、その特徴の残り香程度しか伝えていないとのこと。ちなみに海外では、「エルマン・トーン」自体への言及がありません。

チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は、1878年に作曲された作品で、エルマンの師であるレオポルト・アウアーに献呈される予定の作品でした。作曲の前年に無理矢理な結婚で精神的に痛手を負い、スイスで静養していたチャイコフスキーは、そこに訪問してきた友人のイオシフ・コテックからエドゥアール・ラロのスペイン交響曲の楽譜を見せられて発奮し、ヴァイオリニストだったコテックに技術上の助言を得ながら作品を作り上げました。出来上がった作品はアウアーの元に届けられましたが、高度な技術を要する協奏曲が自分の知らない所で作られたことを不快に感じたのか、アウアーは演奏不可能の裁定を下し、ロシア内では演奏できないように根回しをしてしまいました。作品は、紆余曲折を経て、ウィーン在住のアドルフ・ブロドスキーの独奏で1991年12月4日のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会で初演されました。この時にタクトをとったハンス・リヒターは作品を嫌って酒気帯びで指揮台に上がり、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の面々もひどい演奏をした為、エドゥアルト・ハンスリックから「下品な酒の匂いのする曲」と一刀両断されるほどの不成功に終わりました。しかし、作品に惚れこんだブロドスキーはことあるたびにこの曲を取り上げ、次第に作品の評価が改められるようになりました。このため、アウアーは演奏不可能の前言を撤回し、自らレパートリーに入れて作品を広く知らしめるのに一役買うようになりました。
アウアーは作品がくどいと思われる個所を改訂しており、ヴァイオリン独奏パートにも手を加えて難易度も上げています。エルマンの本録音は、そのアウアー版に基づいています。
伴奏は、ジョン・バルビローリ(John Barbirolli, 1899-1970)の指揮するロンドン交響楽団が担当。バルビローリは本名をジョヴァンニ・バッティスタ・バルビローリ(Giovanni Battista Barbirolli)といい、イタリア人ヴァイオリニストとフランス人女性の間にロンドンで生まれた指揮者です。スカラ座でヴァイオリンを弾いていたという父親から音楽教育を受け、ロンドンの王立音楽院でハーバート・ワレーンにチェロを学び、天才チェリストとしてキャリアをスタートさせています。しかし、1925年頃から自前でアンサンブルを結成して指揮活動を始め、イギリス・ナショナル・オペラ・カンパニーへの客演を通して名を上げて行きました。本録音が行われた頃は、イギリス・ナショナル・オペラ・カンパニーの倒産に伴い、コヴェント・ガーデンの王立歌劇場の指揮者としてキャリアを積んでおり、ニューヨーク・フィルハーモニック交響楽団やハレ管弦楽団などの首席指揮者を務めるのはもう少し後になります。
ここでのエルマンの演奏は、後年の演奏と比べて格段に技のキレが良く、エルマン・トーンの残り香であろう豊満な音色に勢いがついています。後輩格のヤッシャ・ハイフェッツに比べると、敵陣に切り込んでいくような凄みはありませんが、第1楽章など、大曲ぶらず、どこか親近感の湧く弾きっぷりで聴き手を惹きつけています。バルビローリの伴奏は、第2楽章にエルマンとの表現力の差が見え隠れしますが、両端楽章では聴き手のツボを心得ていて、しっかりとエルマンの独奏に食らいついています。

《憂鬱なセレナード》は、チャイコフスキーの1875年の作品。前述のアウアーの発注で書かれ、出版譜にはアウアーへの献辞が書きこまれました。しかし、1876年1月16日にモスクワで行われた初演では、後にヴァイオリン協奏曲の被献呈者となったブロドスキーがヴァイオリン独奏を担当しました。
この曲の伴奏は、ナサニエル・シルクレット(Nathaniel Shilkret, 1889-1982)の指揮するヴィクター交響楽団が担当しています。シルクレットはアメリカのマルチ・タレントな指揮者です。音楽好きの父親から音楽の手ほどきを受け、若かりし頃はクラリネット奏者としてニューヨーク交響楽団、メトロポリタン歌劇場やジョン・フィリップ・スーザの吹奏楽団等を渡り歩きました。1915年にはヴィクター・トーキング・マシン・カンパニー(現:RCA)に入社し、1926年には、そこの軽音楽部門の責任者として辣腕をふるいました。
エルマンのヴァイオリンは、歌心は充溢しているものの、情緒任せにせず、意外とスマートな演奏です。体に染みついているであろう粋な節回しもあり、今日よりも含蓄のある仕上がりになっています。シルクレットは、軽音楽の方面で成功した人らしく、控え目に洗練された伴奏でエルマンを支えていますが、所々エルマンの受けがムード音楽的に流されているようにも感じます。

ポーランドの作曲家、ヴィエニャフスキのヴァイオリン協奏曲第2番は、1856年ごろから書き上げられた作品。1862年11月27日にサンクトペテルブルグでアントン・ルビンシテインの指揮の下、作曲者自身が初演しています。この曲はエルマンにとっても思い出深い作品で、アウアーに弟子入りする時、アウアーの前で弾いた作品の中に、この協奏曲が含まれていました。
本CDでの伴奏は、アレクサンダー・ヒルスベルク(Alexander Hilsberg, 1897-1961)の指揮するフィラデルフィア・ロビン・フッド・デル管弦楽団(実態はフィラデルフィア管弦楽団)です。ヒルスベルクはポーランド出身の人で、アウアー門下のヴァイオリニストとしてキャリアをスタートさせた人。1923年に渡米し、1929年にはアメリカ市民権を得ています。フィラデルフィア管弦楽団のコンサート・マスターとして1935年から16年間に渡って務め、時折ユージン・オーマンディの代役として指揮台に上がっていました。
エルマンもヒルスベルクも同門ということで、エルマンはスッキリとした完成度の高い演奏で、丁寧なアプローチを聴かせます。ヒルスベルクの伴奏も、オーケストラの雑さに苦慮しながら、要所要所ではしっかりと纏めており、全体的に本CDの中では最も聴き応えのある演奏に仕上がっています。

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