1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
◈Antonín Dvořák: Symphony No.8 in G major, op.88
London Philharmonic Orchestra / Constantin Silvestri
(Rec. 24,25 June & 1 July 1957 & 7 February 1958, Kingsway Hall, London)
◈Antonín Dvořák: Symphony No.9 in E minor, op.95 "From the New World"Orchestre de la Radiodiffusion Française / Constantin Silvestri
(Rec. 20-23 October 1959, Salle Wagram, Paris)
アントニーン・ドヴォルジャーク(Antonín Dvořák, 1841-1904)は、チェコの作曲家です。
彼は、自分お名前にこだわりを持っていて、出版社が自分の名前の発音記号が省略されるのを大変嫌っていました。街角のポスターで自分の名前に発音記号がついてなかったりすると、手持ちのペンでそのポスターに訂正を加えていったという逸話も残っています。
ドヴォルジャークの名前の発音記号を省略すると、Dvorakとなり、ドヴォラクと読めますが、それはドヴォルジャークの名前の正しい発音ではありません。
Dvořák のřは、チェコ語ではラ行の発音とジャ・ジ・ジュ・ジェ・ジョの発音を組み合わせた独特の発音で、ラともジュともつかない音になります。"r"の上についている記号は、チェコ語でハーチェクと呼び、2つの音を混合させるような発音をするときにつける記号です。さらに"a"の上についているアクセントのような記号は、チャールカといい、その母音を長く伸ばす発音を指します。
日本語では該当する表記音がないため、「ドヴォルザーク」だとか「ドヴォルジャーク」だとか「ドヴォジャーク」といった表記が試みられてきました。昔の文献なんかを参照すると「ドボルジャック」という表記に出会うこともあり、彼の名前を表記するのに先人たちが苦心惨憺しているのが偲ばれます。
以上のことを考慮して、日本語で彼の名前を表記すると「ドヴォルジャーク」ということになりますが、実際のチェコ人の早口の発音をきくと、ルの音が省略されて「ドヴォジャーク」に聞こえることも少なくありません。
自分の名前を一つとっても、チェコ語での表記にこだわったドヴォルジャークですから、自国への愛着は非常に深かったようです。1891年にアメリカのニューヨーク・ナショナル音楽院への院長就任が打診されたときも、高額の報酬を提示されながらチェコを離れたくないために一度辞退を申し出ています。
音楽院の創立者で理事長だったジャネット・サーバーが必死に説得し、なんとか音楽院院長に就任するも、ドヴォルジャークはしばしばホーム・シックに駆られていたといいます。
こうした故郷への熱い思いは、1893年に書かれた交響曲第9番《新世界より》にも色濃く滲み出ており、その色合いゆえに、ドヴォルジャーク畢生の名曲として世に知られています。
交響曲第8番は、《新世界より》の交響曲が生まれるおよそ2年前に書き上げられた交響曲です。
この曲は、このCDにも表記されているように「イギリス」というニックネームがつけられていました。
この交響曲を書き上げた頃、ドヴォルジャークの作品の出版を一手に引き受けていたドイツのジムロック社と原稿料や作品番号付与の件で喧嘩になり、イギリスのノヴェロ社から出版することになったため、この交響曲は《イギリス》と呼ばれたのですが、イギリスを題材にして作曲したということではありません。
このため、最近では「イギリス」という副題は外されるようになっています。
ドヴォルジャークは、尊敬していたヨハネス・ブラームスの交響曲第4番の構成を下敷きにしながら、メロディ・メーカーとしての才能を存分に使い、躍動感と力強さのある作品を作り出しています。
この交響曲の魅力の一つとして、メロディの豊かさを挙げることも出来ますが、形式の緩さにも、この交響曲の魅力の秘密があるようにおもいます。
第1楽章など、ソナタ形式と銘打ちながら、冒頭の序奏の動機まで再現部で再現し、第2楽章では三部形式といいながら、テンションがめまぐるしく変わります。
第3楽章は自作の歌劇から旋律を持ってきて、端正に仕上げていますが、第4楽章はドンちゃん騒ぎの変奏曲になっています。また、変奏の一部が中山晋平の童謡《黄金虫》に似ているとささやかれることがありますが、直接の関係はありません。
交響曲第9番は前述のとおり、新天地アメリカから故郷への熱い想いを楽譜に乗せた名曲ですが、自分勤務していた音楽院の学生で歌手として活動していたハリー・サッカー・バーレイの歌う黒人霊歌に、ボヘミアの民謡を重ね合わせ、その感興を取り混ぜて作品を作り上げています。この曲の根底にある精神がアメリカにあるか、チェコにあるかというのは、古くからつばぜり合いが為されている議論であり、作曲当時は、アメリカン・ラプソディーだと揶揄する人もいました。しかし、そういう意見に対して、ドヴォルジャークは「ボヘミアの心をアメリカの歌で綴った曲だ」と答え、安直にアメリカやチェコのイメージの一辺倒で語ることを戒めています。
この曲では、さらにオーケストレーションがおざなりになり、メロディ重視の傾向が強まっていますが、そのわかりやすく個性豊かなメロディゆえに、人気の衰えない音楽となっております。
第2楽章でコーラングレが奏でるメロディは、弟子が《家路》という名前で合唱曲に編曲したことで知られ、有名な聴き所となっています。
演奏は、ルーマニアの指揮者であるコンスタンティン・シルヴェストリ(Constantin Silvestri, 1913-1969)が指揮を執っており、交響曲第8番ではロンドン・フィルハーモニー管弦楽団が、第9番ではフランス国立放送局管弦楽団が担当しています。
シルヴェストリは、堅固な構成よりも、熱い血の滾りを重んじる指揮者で、曲に共感できたときにはツボにはまった演奏で聴き手を熱狂させる力を持っています。
この交響曲2曲は、シルヴェストリのツボにはまった曲らしく、オーケストラがイギリスのオーケストラだろうがフランスのオーケストラだろうがお構いナシに団員を煽り、正気と狂気のギリギリの所で熱演を繰り広げています。
オーケストラとシルヴェストリの芸風の一体感という点では、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団との演奏のほうがエキサイティングですが、指揮者の要求に応えようとしながらも、どこかギクシャクしてしまうフランス国立放送管弦楽団の演奏にも、シルヴェストリの芸風の面白さが現れているようにおもいます。
端正で流暢な言葉よりも、つっかえつっかえでも自分のおもうところを一生懸命語ろうとする真剣な口調と気概により心動かされる人には、わが意を得たり!と思わせられる、大変個性的な演奏です。
彼は、自分お名前にこだわりを持っていて、出版社が自分の名前の発音記号が省略されるのを大変嫌っていました。街角のポスターで自分の名前に発音記号がついてなかったりすると、手持ちのペンでそのポスターに訂正を加えていったという逸話も残っています。
ドヴォルジャークの名前の発音記号を省略すると、Dvorakとなり、ドヴォラクと読めますが、それはドヴォルジャークの名前の正しい発音ではありません。
Dvořák のřは、チェコ語ではラ行の発音とジャ・ジ・ジュ・ジェ・ジョの発音を組み合わせた独特の発音で、ラともジュともつかない音になります。"r"の上についている記号は、チェコ語でハーチェクと呼び、2つの音を混合させるような発音をするときにつける記号です。さらに"a"の上についているアクセントのような記号は、チャールカといい、その母音を長く伸ばす発音を指します。
日本語では該当する表記音がないため、「ドヴォルザーク」だとか「ドヴォルジャーク」だとか「ドヴォジャーク」といった表記が試みられてきました。昔の文献なんかを参照すると「ドボルジャック」という表記に出会うこともあり、彼の名前を表記するのに先人たちが苦心惨憺しているのが偲ばれます。
以上のことを考慮して、日本語で彼の名前を表記すると「ドヴォルジャーク」ということになりますが、実際のチェコ人の早口の発音をきくと、ルの音が省略されて「ドヴォジャーク」に聞こえることも少なくありません。
自分の名前を一つとっても、チェコ語での表記にこだわったドヴォルジャークですから、自国への愛着は非常に深かったようです。1891年にアメリカのニューヨーク・ナショナル音楽院への院長就任が打診されたときも、高額の報酬を提示されながらチェコを離れたくないために一度辞退を申し出ています。
音楽院の創立者で理事長だったジャネット・サーバーが必死に説得し、なんとか音楽院院長に就任するも、ドヴォルジャークはしばしばホーム・シックに駆られていたといいます。
こうした故郷への熱い思いは、1893年に書かれた交響曲第9番《新世界より》にも色濃く滲み出ており、その色合いゆえに、ドヴォルジャーク畢生の名曲として世に知られています。
交響曲第8番は、《新世界より》の交響曲が生まれるおよそ2年前に書き上げられた交響曲です。
この曲は、このCDにも表記されているように「イギリス」というニックネームがつけられていました。
この交響曲を書き上げた頃、ドヴォルジャークの作品の出版を一手に引き受けていたドイツのジムロック社と原稿料や作品番号付与の件で喧嘩になり、イギリスのノヴェロ社から出版することになったため、この交響曲は《イギリス》と呼ばれたのですが、イギリスを題材にして作曲したということではありません。
このため、最近では「イギリス」という副題は外されるようになっています。
ドヴォルジャークは、尊敬していたヨハネス・ブラームスの交響曲第4番の構成を下敷きにしながら、メロディ・メーカーとしての才能を存分に使い、躍動感と力強さのある作品を作り出しています。
この交響曲の魅力の一つとして、メロディの豊かさを挙げることも出来ますが、形式の緩さにも、この交響曲の魅力の秘密があるようにおもいます。
第1楽章など、ソナタ形式と銘打ちながら、冒頭の序奏の動機まで再現部で再現し、第2楽章では三部形式といいながら、テンションがめまぐるしく変わります。
第3楽章は自作の歌劇から旋律を持ってきて、端正に仕上げていますが、第4楽章はドンちゃん騒ぎの変奏曲になっています。また、変奏の一部が中山晋平の童謡《黄金虫》に似ているとささやかれることがありますが、直接の関係はありません。
交響曲第9番は前述のとおり、新天地アメリカから故郷への熱い想いを楽譜に乗せた名曲ですが、自分勤務していた音楽院の学生で歌手として活動していたハリー・サッカー・バーレイの歌う黒人霊歌に、ボヘミアの民謡を重ね合わせ、その感興を取り混ぜて作品を作り上げています。この曲の根底にある精神がアメリカにあるか、チェコにあるかというのは、古くからつばぜり合いが為されている議論であり、作曲当時は、アメリカン・ラプソディーだと揶揄する人もいました。しかし、そういう意見に対して、ドヴォルジャークは「ボヘミアの心をアメリカの歌で綴った曲だ」と答え、安直にアメリカやチェコのイメージの一辺倒で語ることを戒めています。
この曲では、さらにオーケストレーションがおざなりになり、メロディ重視の傾向が強まっていますが、そのわかりやすく個性豊かなメロディゆえに、人気の衰えない音楽となっております。
第2楽章でコーラングレが奏でるメロディは、弟子が《家路》という名前で合唱曲に編曲したことで知られ、有名な聴き所となっています。
演奏は、ルーマニアの指揮者であるコンスタンティン・シルヴェストリ(Constantin Silvestri, 1913-1969)が指揮を執っており、交響曲第8番ではロンドン・フィルハーモニー管弦楽団が、第9番ではフランス国立放送局管弦楽団が担当しています。
シルヴェストリは、堅固な構成よりも、熱い血の滾りを重んじる指揮者で、曲に共感できたときにはツボにはまった演奏で聴き手を熱狂させる力を持っています。
この交響曲2曲は、シルヴェストリのツボにはまった曲らしく、オーケストラがイギリスのオーケストラだろうがフランスのオーケストラだろうがお構いナシに団員を煽り、正気と狂気のギリギリの所で熱演を繰り広げています。
オーケストラとシルヴェストリの芸風の一体感という点では、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団との演奏のほうがエキサイティングですが、指揮者の要求に応えようとしながらも、どこかギクシャクしてしまうフランス国立放送管弦楽団の演奏にも、シルヴェストリの芸風の面白さが現れているようにおもいます。
端正で流暢な言葉よりも、つっかえつっかえでも自分のおもうところを一生懸命語ろうとする真剣な口調と気概により心動かされる人には、わが意を得たり!と思わせられる、大変個性的な演奏です。
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