1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
CD1:
◈Franz Clement: Violin Concerto in D major
Rachel Barton Pine (Vn)
Royal Philharmonic Orchestra / José Serebrier
(Rec. 27 & 28 November 2007, Lyndhurst Hall, Air Studios, Hampstead, London)
CD2:
◈Ludwig van Beethoven: Violin Concerto in D major, op.61
Rachel Barton Pine (Vn)
Royal Philharmonic Orchestra / José Serebrier
(Rec. Rec. 27 & 28 November 2007, Lyndhurst Hall, Air Studios, Hampstead, London)
Cedilleは、シカゴ出身の演奏家を起用してCDを制作するCDレーベルです。
本CDで演奏しているレイチェル・バートン・パイン(Rachel Barton Pine, 1974-)ことレイチェル・エリザベス・バートン(Rachel Elizabeth Barton)は、シカゴ出身のヴァイオリンの名手です。
彼女は、シカゴ音楽院のローランド&アルミタのヴァモス夫妻にヴァイオリンを師事した人で、1992年にライプツィヒのヨハン・ゼバスティアン・バッハ国際コンクールのヴァイオリン部門で優勝し、さらにウィーンのフリッツ・クライスラー国際ヴァイオリン・コンクールとブダペストのヨーゼフ・シゲティ国際ヴァイオリン・コンクールでそれぞれ第2位に入賞するなどの実績を持っています。
1995年の冬に、ウィネトカでヴァイオリンのレッスンの帰りに、列車のドアにヴァイオリンのケースを挟み、列車に引きずられるという事故のため、片足を切断するという不幸に見舞われましたが、すぐさま演奏活動に復帰し、最近は、ロック業界にも殴り込みをかけてアルバムをリリースするなど、ジャンルに囚われない活動を展開しています。
本CDは、そんなバートンが、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven, 1770-1827)のヴァイオリン協奏曲(ニ長調)に挑戦したアルバムです。
このアルバムの面白いところは、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲の作曲上の助言者だったフランツ・クレメント(Franz Clement, 1780-1842)のヴァイオリン協奏曲(1804年作)も収録しているところにあります。
クレメントは、オーストリアのヴァイオリニストで、アン・デア・ウィーン劇場のコンサート・マスターを務めていた名人でした。ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲が1906年の12月23日に初演された時、クレメントも、自分で作ったショート・ピースを披露し、ベートーヴェンの作品以上の評判を得ていたことから、作曲家としての腕も持っていたことが推察されました。しかし、クレメントの作品をまともに取り上げたアルバムは、これまで、おそらく存在していなかったのではないかと思います。
クレメントのヴァイオリン協奏曲は、ベートーヴェンのそれもかくやあらむといった感じの長大な作品で、重音奏法を使いたがらない独奏パートの書法に、ベートーヴェンとの共通点を見出すことが出来ます。しかし、クレメントの協奏曲は、ベートーヴェンの協奏曲より前に作曲されているにもかかわらず、こうして並べて聴いてみると、クレメントの協奏曲が、ベートーヴェンのそれの出し殻で作られているのではないかと思えるところがあります。メロディの発想自体は、クレメントも堂々としたところがありますが、ベートーヴェンほどの緊張と緩和のメリハリがついていません。
バートンの演奏は、両曲に自作のカデンツァをあてがうほどに気合を入れて臨んでいますが、ギドン・クレーメルのようなトリッキーなことはせず、模範的な安全運転の演奏に終始しています。冒険的な解釈をしないのは、変な先入見を持たずに、ベートーヴェンとクレメントの演奏を聴き比べてほしいという配慮が働いているためとも考えられます。
ホセ・セレブリエール(José Serebrier, 1938-)の指揮するロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団も、バートンの安定感のある独奏に合わせ、過不足のない、生真面目な伴奏で一貫しています。
セレブリエールは、ウルグアイの出身で、カーティス音楽院で学んだ作曲家ですが、指揮者としても、アンタル・ドラティ、ピエール・モントゥーやレオポルト・ストコフスキらの薫陶を受けており、世界各地のオーケストラに客演を重ねる名匠として知られる人です。本来ノリの良い指揮者ですが、ここでは丁寧かつ慎重な演奏を心がけているようです。特にクレメントの作品では、細大漏らさぬ堅実な伴奏でバートンの独奏を支えていますが、その律義さがかえって、作品の冗長さを感じさせる原因になっているのかもしれません。
クレメントの協奏曲を世界初録音としてカップリングするという企画自体は、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲の成立過程を示唆する貴重な資料としての価値はありますが、この録音を聴く限り、クレメントの作品に、ベートーヴェンをしのぐ魅力を見出すことは難しいように思われます。
本CDで演奏しているレイチェル・バートン・パイン(Rachel Barton Pine, 1974-)ことレイチェル・エリザベス・バートン(Rachel Elizabeth Barton)は、シカゴ出身のヴァイオリンの名手です。
彼女は、シカゴ音楽院のローランド&アルミタのヴァモス夫妻にヴァイオリンを師事した人で、1992年にライプツィヒのヨハン・ゼバスティアン・バッハ国際コンクールのヴァイオリン部門で優勝し、さらにウィーンのフリッツ・クライスラー国際ヴァイオリン・コンクールとブダペストのヨーゼフ・シゲティ国際ヴァイオリン・コンクールでそれぞれ第2位に入賞するなどの実績を持っています。
1995年の冬に、ウィネトカでヴァイオリンのレッスンの帰りに、列車のドアにヴァイオリンのケースを挟み、列車に引きずられるという事故のため、片足を切断するという不幸に見舞われましたが、すぐさま演奏活動に復帰し、最近は、ロック業界にも殴り込みをかけてアルバムをリリースするなど、ジャンルに囚われない活動を展開しています。
本CDは、そんなバートンが、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven, 1770-1827)のヴァイオリン協奏曲(ニ長調)に挑戦したアルバムです。
このアルバムの面白いところは、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲の作曲上の助言者だったフランツ・クレメント(Franz Clement, 1780-1842)のヴァイオリン協奏曲(1804年作)も収録しているところにあります。
クレメントは、オーストリアのヴァイオリニストで、アン・デア・ウィーン劇場のコンサート・マスターを務めていた名人でした。ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲が1906年の12月23日に初演された時、クレメントも、自分で作ったショート・ピースを披露し、ベートーヴェンの作品以上の評判を得ていたことから、作曲家としての腕も持っていたことが推察されました。しかし、クレメントの作品をまともに取り上げたアルバムは、これまで、おそらく存在していなかったのではないかと思います。
クレメントのヴァイオリン協奏曲は、ベートーヴェンのそれもかくやあらむといった感じの長大な作品で、重音奏法を使いたがらない独奏パートの書法に、ベートーヴェンとの共通点を見出すことが出来ます。しかし、クレメントの協奏曲は、ベートーヴェンの協奏曲より前に作曲されているにもかかわらず、こうして並べて聴いてみると、クレメントの協奏曲が、ベートーヴェンのそれの出し殻で作られているのではないかと思えるところがあります。メロディの発想自体は、クレメントも堂々としたところがありますが、ベートーヴェンほどの緊張と緩和のメリハリがついていません。
バートンの演奏は、両曲に自作のカデンツァをあてがうほどに気合を入れて臨んでいますが、ギドン・クレーメルのようなトリッキーなことはせず、模範的な安全運転の演奏に終始しています。冒険的な解釈をしないのは、変な先入見を持たずに、ベートーヴェンとクレメントの演奏を聴き比べてほしいという配慮が働いているためとも考えられます。
ホセ・セレブリエール(José Serebrier, 1938-)の指揮するロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団も、バートンの安定感のある独奏に合わせ、過不足のない、生真面目な伴奏で一貫しています。
セレブリエールは、ウルグアイの出身で、カーティス音楽院で学んだ作曲家ですが、指揮者としても、アンタル・ドラティ、ピエール・モントゥーやレオポルト・ストコフスキらの薫陶を受けており、世界各地のオーケストラに客演を重ねる名匠として知られる人です。本来ノリの良い指揮者ですが、ここでは丁寧かつ慎重な演奏を心がけているようです。特にクレメントの作品では、細大漏らさぬ堅実な伴奏でバートンの独奏を支えていますが、その律義さがかえって、作品の冗長さを感じさせる原因になっているのかもしれません。
クレメントの協奏曲を世界初録音としてカップリングするという企画自体は、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲の成立過程を示唆する貴重な資料としての価値はありますが、この録音を聴く限り、クレメントの作品に、ベートーヴェンをしのぐ魅力を見出すことは難しいように思われます。
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