1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
◈Arnold Schönberg: Drei Klavierstücke, op.11
◈Arnold Schönberg: Sechs Kleine Klavierstücke, op19
◈Arnold Schönberg: Fünf Klavierstücke, op.23
◈Arnold Schönberg: Suite für Klavier, op.25
◈Arnold Schönberg: Klavierstücke, op.33a, op.33b
◈Arnold Schönberg: Drei Klavierstücke
◈Anton Webern: Variation für Klavier, op.27
◈Anton Webern: Kinderstück
◈Alban Berg: Sonata für Klavier, op.1
近藤 伸子 (Pf)
(Rec. 18-19 October 2004,大泉学園ゆめりあホール, 東京)
近藤伸子(Nobuko Kondo)による新ウィーン楽派のピアノ作品集ということで、これが近藤のデビュー・レコードになります。
新ウィーン楽派というのは、20世紀初頭にアルノルト・シェーンベルク(Arnold Schönberg, 1874-1951)と、その2人の弟子であるアントン・ウェーベルン(Anton Webern, 1883-1945)とアルバン・ベルク(Alban Berg, 1885-1935)の3人を代表とする作曲家の派閥です。
シェーンベルクは、元々ヨハネス・ブラームスの音楽を好み、アレクサンダー・フォン・ツェムリンスキーに音楽理論を師事してからリヒャルト・ヴァーグナー路線の調性音楽を書いていましたが、ヴァーグナーの半音階進行の更なる進化を推し進めていくうちに無調の音楽を書くようになりました。
op.11の3つの小品は、多少調性音楽の語法に依拠しながらも、調性感覚から脱しようとする意欲が見て取れる作品ニなっています。第3曲においては、特定のモチーフを設定せず、常に新しいモチーフをつなぎ合わせる無主題の作品となっており、1909年に発表した当初は斬新な発想の音楽とされました。
1911年発表のop.19の6つのピアノ小品になると、調性音楽の語法はほぼ放棄され、調性のない音楽となっています。ただ、十二音技法をまだ開発していない時期の作品なので、無調で長時間の音楽を書くことが出来ず、どれも1分未満の断片的作品に留まっています。
op.23の5つの小品は、1920年から1923年までに書かれたピアノ曲を集めたもので、この時期までのシェーンベルクの作風変遷の中間報告みたいな音楽になっております。音列の技法を取り入れながら、第1曲では叙情性を前面に押し出し、第2曲では激情を表現しております。第3曲ではパッサカリアの技法を援用して複雑な音楽を構築し、第4曲では打って変わって奔放な筆致の音楽を書いています。最後の第5曲にいたって、ワルツのリズムに依りながら十二音技法で作った音列を導入し、自らが考案した作曲システムをお披露目しています。
op.25のピアノ組曲(1921-1923年作)は、バロック時代の組曲(舞曲の詰め合わせ)のスタイルを十二音音楽の技法で鋳直したシェーンベルクの野心作。
op.33の2作品では、十二音音楽の技法ををさらに深化させ、組み合わされた12の音の後半の6音を、前半の6音を後ろから読み、その読んだ音を完全五度下げて並べるという仕掛けを加えています。こうすることで、この12の音の並びを後ろから読み、前から読んだ音と重ねれば完全和音が出来上がるようになりました。
無調音楽でありながら、調性感覚も備えた作品にもなっており、無調のシェーンベルクのピアノ作品のなかでは耳当たりのいい作品になっています。
シェーンベルク作品の最後には、1894年に作られた3つのピアノ曲が収録されています。
この作品は、まだツェムリンスキーの下で作曲の修行をしていた頃の作品ですが、複雑なリズムやポリフォニックな書法など、シェーンベルクの作品の基本的な特徴が見られ、シェーンベルクの作風のルーツを知る上でも重要な資料となっています。
ウェーベルンの作品は、1935年から翌年にかかれて作られた変奏曲(op.27)と、子供のための小品が収録されています。ウェーベルンは師匠シェーンベルクよりも徹底して十二音音楽を用い、音楽の形式面の改革まで行おうとした節があります。変奏曲は、十二音音列で作られる音列を様々に展開する作品ですが、派手に展開するのではなく、要点を凝縮して変奏を行っているところにウェーベルンらしさがあります。
子供のための小品など、ウェーベルンの作品の多くははシェーンベルクの書いたop.19の小品集のような小さな音楽になっていますが、長時間作品を書くための表現形式を、師匠シェーンベルクのように取り入れようとしなかったからです。
このウェーベルンの作風は、後世の作曲家からトータルセリエリズムのプロトタイプとして高く評価されることになりました。
最後はシェーンベルクが最も才能を高く評価した弟子、ベルクのソナタ(1907-1908年)です。
師匠もまだ調性音楽の離脱に苦しんでいた頃の作品であり、ベルクはロ短調を基調にし、ソナタ形式でこの作品を書き上げています。
本来は3楽章の作品にするはずでしたが、ベルクは、この第1楽章の完成度に満足し、シェーンベルクの賞賛も受けて、単1楽章のソナタとして出版することになりました。
ロ短調を基調にするものの、全音音階や半音階進行、独特の和音を多用しているため、調性感覚がかなり曖昧になり、その点がシェーンベルクの感心した点かもしれません。
演奏はいたってクールかつ明晰。シェーンベルクのピアノ組曲のジーグのような難所も何事もなくクリアしています。カール・ハインツ・シュトックハウゼンのピアノ曲を何事もなく弾き切るテクニックの持ち主なので、その表現に不自由さはありません。
テンポ感もよく、ダイナミックでありながらポリフォニックな音の絡みでは明晰に各声部を明快に描き分けています。
しかし、冷酷な分析的演奏というわけではなく、ベルクのピアノ・ソナタでは、絶妙なテンポの揺らぎと明晰なタッチ、そして的確な音色のコントロールを通して、官能的な質感をも曲に纏わせています。
録音ホールの響きがデッドなため、ポール・ジェイコブスのような飄々とした明るさは望めませんが、楽曲に奉仕せんとする表現意欲に満ちた演奏は、思わず聴き手を惹きつけるものがあります。
新ウィーン楽派というのは、20世紀初頭にアルノルト・シェーンベルク(Arnold Schönberg, 1874-1951)と、その2人の弟子であるアントン・ウェーベルン(Anton Webern, 1883-1945)とアルバン・ベルク(Alban Berg, 1885-1935)の3人を代表とする作曲家の派閥です。
シェーンベルクは、元々ヨハネス・ブラームスの音楽を好み、アレクサンダー・フォン・ツェムリンスキーに音楽理論を師事してからリヒャルト・ヴァーグナー路線の調性音楽を書いていましたが、ヴァーグナーの半音階進行の更なる進化を推し進めていくうちに無調の音楽を書くようになりました。
op.11の3つの小品は、多少調性音楽の語法に依拠しながらも、調性感覚から脱しようとする意欲が見て取れる作品ニなっています。第3曲においては、特定のモチーフを設定せず、常に新しいモチーフをつなぎ合わせる無主題の作品となっており、1909年に発表した当初は斬新な発想の音楽とされました。
1911年発表のop.19の6つのピアノ小品になると、調性音楽の語法はほぼ放棄され、調性のない音楽となっています。ただ、十二音技法をまだ開発していない時期の作品なので、無調で長時間の音楽を書くことが出来ず、どれも1分未満の断片的作品に留まっています。
op.23の5つの小品は、1920年から1923年までに書かれたピアノ曲を集めたもので、この時期までのシェーンベルクの作風変遷の中間報告みたいな音楽になっております。音列の技法を取り入れながら、第1曲では叙情性を前面に押し出し、第2曲では激情を表現しております。第3曲ではパッサカリアの技法を援用して複雑な音楽を構築し、第4曲では打って変わって奔放な筆致の音楽を書いています。最後の第5曲にいたって、ワルツのリズムに依りながら十二音技法で作った音列を導入し、自らが考案した作曲システムをお披露目しています。
op.25のピアノ組曲(1921-1923年作)は、バロック時代の組曲(舞曲の詰め合わせ)のスタイルを十二音音楽の技法で鋳直したシェーンベルクの野心作。
op.33の2作品では、十二音音楽の技法ををさらに深化させ、組み合わされた12の音の後半の6音を、前半の6音を後ろから読み、その読んだ音を完全五度下げて並べるという仕掛けを加えています。こうすることで、この12の音の並びを後ろから読み、前から読んだ音と重ねれば完全和音が出来上がるようになりました。
無調音楽でありながら、調性感覚も備えた作品にもなっており、無調のシェーンベルクのピアノ作品のなかでは耳当たりのいい作品になっています。
シェーンベルク作品の最後には、1894年に作られた3つのピアノ曲が収録されています。
この作品は、まだツェムリンスキーの下で作曲の修行をしていた頃の作品ですが、複雑なリズムやポリフォニックな書法など、シェーンベルクの作品の基本的な特徴が見られ、シェーンベルクの作風のルーツを知る上でも重要な資料となっています。
ウェーベルンの作品は、1935年から翌年にかかれて作られた変奏曲(op.27)と、子供のための小品が収録されています。ウェーベルンは師匠シェーンベルクよりも徹底して十二音音楽を用い、音楽の形式面の改革まで行おうとした節があります。変奏曲は、十二音音列で作られる音列を様々に展開する作品ですが、派手に展開するのではなく、要点を凝縮して変奏を行っているところにウェーベルンらしさがあります。
子供のための小品など、ウェーベルンの作品の多くははシェーンベルクの書いたop.19の小品集のような小さな音楽になっていますが、長時間作品を書くための表現形式を、師匠シェーンベルクのように取り入れようとしなかったからです。
このウェーベルンの作風は、後世の作曲家からトータルセリエリズムのプロトタイプとして高く評価されることになりました。
最後はシェーンベルクが最も才能を高く評価した弟子、ベルクのソナタ(1907-1908年)です。
師匠もまだ調性音楽の離脱に苦しんでいた頃の作品であり、ベルクはロ短調を基調にし、ソナタ形式でこの作品を書き上げています。
本来は3楽章の作品にするはずでしたが、ベルクは、この第1楽章の完成度に満足し、シェーンベルクの賞賛も受けて、単1楽章のソナタとして出版することになりました。
ロ短調を基調にするものの、全音音階や半音階進行、独特の和音を多用しているため、調性感覚がかなり曖昧になり、その点がシェーンベルクの感心した点かもしれません。
演奏はいたってクールかつ明晰。シェーンベルクのピアノ組曲のジーグのような難所も何事もなくクリアしています。カール・ハインツ・シュトックハウゼンのピアノ曲を何事もなく弾き切るテクニックの持ち主なので、その表現に不自由さはありません。
テンポ感もよく、ダイナミックでありながらポリフォニックな音の絡みでは明晰に各声部を明快に描き分けています。
しかし、冷酷な分析的演奏というわけではなく、ベルクのピアノ・ソナタでは、絶妙なテンポの揺らぎと明晰なタッチ、そして的確な音色のコントロールを通して、官能的な質感をも曲に纏わせています。
録音ホールの響きがデッドなため、ポール・ジェイコブスのような飄々とした明るさは望めませんが、楽曲に奉仕せんとする表現意欲に満ちた演奏は、思わず聴き手を惹きつけるものがあります。
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