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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Ralph Vaughan-Williams: Fantasia on a Theme by Thomas Tallis
◈Ralph Vaughan-Williams: Norfolk Rhapsody No.1
New Queen's Hall Orchestra / Barry Wordsworth
(Rec. 12-14 October 1992, Walthamstow Assembly Hall, London)
◈Ralph Vaughan Williams: The Lark Ascending
Hagai Shaham (Vn)
New Queen's Hall Orchestra / Barry Wordsworth
(Rec. 12-14 October 1992, Walthamstow Assembly Hall, London)
◈Ralph Vaughan Williams (Arr. Ralph Greaves): Fantasia on Greensleeves
◈Ralph Vaughan-Williams: Five Variations of 'Dives and Lazarus'
◈Ralph Vaughan-Williams: In the Fen Country
New Queen's Hall Orchestra / Barry Wordsworth
(Rec. 12-14 October 1992, Walthamstow Assembly Hall, London)



レイフ・ヴォーン=ウィリアムズ(Ralph Vaughan-Williams, 1872-1958)は、イギリスの作曲家。古い時代のイギリスに思いを馳せたヴォーン・ウィリアムズは、自分のファーストネームを古イギリス語の「レイフ」という呼び方にこだわっていたそうです。友人のグスターヴ・ホルストと行った民謡採集を行ったり、テューダー朝時代のイギリスの教会音楽を研究したりして、古のイギリス音楽の語法を会得したヴォーン=ウィリアムズは、その気になればイギリス民謡を作れると言われたほどに、イギリスの風土に合致した作品を生み出すことに成功しました。
そんな、ヴォーン=ウィリアムズの音楽世界へと誘ってくれるCDのひとつが、この一枚です。

最初に収められている、《トーマス・タリスの主題による幻想曲》は、ヴォーン=ウィリアムズがテューダー朝の教会音楽を研究した成果の一つです。16世紀のイギリス王室の教会音楽作曲家だったトーマス・タリス(Thomas Tallis, c.1505-1585)の音楽に題材を求め、彼のメロディを自由に展開して作った作品で、二群の弦楽合奏が弦楽四重奏を介して対話するという趣向で作られています。1910年にグロスター大聖堂で初演され、その後1919年に今の形に改訂されました。

《ノーフォーク・ラプソディ》は、1905年に民謡収集のためにノーフォークに行ったときのインスピレーションを元に1906年に発表された作品です。元々3曲あったとのことですが、今日では第1番以外は作曲者自身が廃棄してしまったんだとか。土地の船乗りから採譜した《船乗りの見習い》(The Captain's Apprentice)、《豪胆な若い水夫》(A bold Young Sailor)、《98番艦に乗って》(On Board a Ninety Eight)の3曲をつなぎ合わせた曲で、一曲目の民謡はしみじみと、後の二曲は活気あふれるオーケストレーションで聴かせてくれます。

《ひばりは昇る》は、「揚げひばり」とか「ひばりは舞い上がる」とか、様々な翻訳タイトルが存在します。
ジョージ・メレディスの詩にインスピレーションを得て1914年に作曲され、1920年に改訂された作品。エルネスト・ショーソンの詩曲のイギリス版だと思えばいいかもしれません。
ひばりが舞い上がって囀る様を独奏ヴァイオリンが演じ、ひなびた田園風景をオーケストラが描き出していきますが、それはさながら一幅の風景画のようでもあります。

《グリーンスリーヴス幻想曲》は、元々1929年に作曲された歌劇《恋するサー・ジョン》の中で使われた民謡です。この歌劇自体は、シェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』を基にしており、ヴォーン=ウィリアムズが親戚のチャールズ・ダーウィンから譲り受けたこの戯曲の本には、この民謡の楽譜も載っていたとのこと。
ヴォーン=ウィリアムズも、歌劇化にあたって、この民謡を使用したのですが、初演して程なく、作曲家のラルフ・グリーヴズ(Ralph Greaves, 1889-1966)がヴォーン=ウィリアムズの許可を得て演奏会用の曲に編曲しました。こうして出来上がった《グリーンスリーヴズ幻想曲》は、1934年にヴォーン=ウィリアムズによって初演されてから、彼の名刺代わりの作品として知られるようになりました。

1939年に発表された《富める人とラザロの5つの異版》は、民謡研究家としてのヴォーン=ウィリアムズの面目躍如的作品です。ヴォーン=ウィリアムズは、1893年に出版されたイギリス民謡集に収録されていた民謡《富める人とラザロ》を徹底追跡し、イギリスではクリスマス・キャロルとして歌われたり、アイルランドやスコットランドなどでも歌詞や細かいメロディ・ラインを変えて伝承されていることを突き止めました。1939年にブリティッシュ・カウンシルからイギリス音楽を紹介するための新作を依頼されたのを受けて、自らの研究を踏まえ、この曲を書き上げました。これら5つの異版は、ヴォーン=ウィリアムズによれば、民謡の正確な再現を企図したものではなく、自分を含めた民謡研究者が集めた成果への追憶として作曲したものとのことです。

最後に収録されている《沼地地方にて》は、1904年の作品。ノーフォーク地方に民謡採集の旅に出かけたヴォーン=ウィリアムズが、その土地の印象を音で表現した作品で、イギリス風土への深い愛着が示されています。民謡が一切使われていないにもかかわらず、どこかしらイギリス民謡を髣髴とさせる辺りに、ヴォーン=ウィリアムズが、ノーフォークで得た民謡語法を自らの血肉にしていることを感じさせます。

演奏は、バリー・ワーズワース(Barry Wordsworth, 1948-)指揮するニュー・クィーンズ・ホール管弦楽団です。
このオーケストラは、1992年に組織されたオーケストラで、19世紀末から20世紀初頭のロンドンのオーケストラで行われていた楽器や演奏法の再現を通して、現代オーケストラの演奏法を見直そうという意図で結成されました。そうした意図は、1895年にヘンリー・ウッドが創設したクィーンズ・ホール管弦楽団の名前を拝借している点からも忖度できると思います。本CDは、このオーケストラの初レコーディングとなりました。
特定の楽器を際立たせるのではなく、それぞれの楽器がオーケストラ全体の音に溶け込むように配慮され、弦楽器も、これ見よがしなヴィブラートを避けています。ヴォーン=ウィリアムズの作品はゆったりしたテンポの作品が多く、このオーケストラの純度の高い響きと曲想がマッチし、まるで高山植物を鑑賞するかのような涼やかさを耳で体感できると思います。
また、ノーフォーク・ラプソディ第1番の演奏にも見られるように、俊敏さも兼ね備えており、学究的なだけでなく、演奏団体としても優秀なオーケストラであることも分かります。
《ひばりは昇る》では、イスラエル出身のハガイ・シャハム(Hagai Shaham, 1966-)がヴァイオリン独奏を担当しています。(CDの日本語表記では、ハゲイ・シャハム。)
無駄のないスッキリとしたシャハムのソロは、オーケストラの清涼感のある音色と親和性をもち、曲の詩的世界を過不足なく、美しく表現することに成功しています。

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