1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
◈Maurice Ravel: Le tombeau de Couperin
SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg / Ernest Bour
(Rec. 1974, Hans Rosbaud Studio, Baden-Baden, SWR)
◈Maurice Ravel: ShéhérazadeArleen Augér (S)
SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg / Ernest Bour
(Rec. 1975, Hans Rosbaud Studio, Baden-Baden, SWR)
◈Maurice Ravel: Menuet AntiqueSWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg / Ernest Bour
(Rec. 1977, Hans Rosbaud Studio, Baden-Baden, SWR)
◈Maurice Ravel: TziganePina Carmirelli (Vn)
SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg / Ernest Bour
(Rec. 1967, Hans Rosbaud Studio, Baden-Baden, SWR)
◈Maurice Ravel: Daphnis et Chloé - Suite No.1◈Maurice Ravel: Daphnis et Chloé - Suite No.2
SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg / Ernest Bour
(Rec. 1974, Hans Rosbaud Studio, Baden-Baden, SWR)
権利関係の都合上、オーケストラの名前にSWR(Südwestrundfunk)の文字が踊っていますが、本CDの録音でタクトをとるエルネスト・ブール(Ernest Bour, 1913-2001)が在任していた頃は、SWF(Südwestfunk)の所属オーケストラでした。1998年に、SDR(Süddeutscher Rundfunk)と合併したことで、SWRが生まれ、SWR所属のオーケストラとして、バーデン=バーデンとフライブルクを本拠地に活動しています。しかし、日本での呼称は全くかわりません。このオーケストラの名前は、「南西ドイツ放送交響楽団」といいます。このオーケストラは、現代音楽の積極的推進者として知られたハンス・ロスバウトを初代首席指揮者に迎えて1946年に設立されたオーケストラで、フランス人指揮者のブールは、ロスバウトの後を継いで1964年から1979年まで首席指揮者を務めていました。
そのブールの在任期間中にも、南西ドイツ放送交響楽団は、近現代の音楽を積極的に演奏していましたが、本CDでは、フランス人作曲家のモーリス・ラヴェル(Maurice Ravel, 1875-1937)の作品が集められています。
その作品の内訳は、以下のとおり
・クープランの墓
・シェヘラザード
・古風なメヌエット
・ツィガーヌ
・バレエ《ダフニスとクロエ》第1&第2組曲
歌曲集《シェヘラザード》では、アメリカ人ソプラノ歌手のアーリーン・オジェー(Arleen Augér, 1939-1993)が起用されており、ツィガーヌでは、イ・ムジチのコンサート・ミストレスに就任する前のピーナ・カルミレッリ(Pina Carmirelli, 1914-1993)が独奏しています。
クープランの墓は、1919年に作られたオーケストラ用の組曲で、1914年から1917年までに作られたピアノ用の組曲の抜粋編曲です。オーケストラ用の組曲にするにあたって、原曲以上の演奏効果が期待できない〈トッカータ〉と、旧来的な組曲の様式にそぐわない〈フーガ〉を編曲の対象から外し、バロック時代の舞曲の様式を意識した組み合わせにしてあります。
原曲と照らし合わせて聴くと、ピアノのフレーズの一つ一つに、どのようなイメージを作曲者自身が持っていたかを知ることができると思います。
歌曲集《シェヘラザード》は、1903年の作品。元々、シェヘラザードの題材をオペラにしようと画策していたラヴェルでしたが、1898年にオペラの序曲にするつもりで作曲した序曲を国民音楽協会のコンサートで取り上げたところ、散々な評価を下されてしまい、オペラの構想自体を破棄してしまいました。しかし、どこか思い残すところがあったのか、レオン・ルクレール(Léon Leclère, 1874-1966)がトリスタン・クリングゾール名義で書いたシェヘラザードの詩に目をつけ、管弦楽伴奏の歌曲として、自らの渇望を癒したのでした。
この歌曲は、ピアニストとして知られるアルフレッド・コルトーの指揮、ジャーヌ・バトリの独唱で初演され、当時の大御所作曲家のヴァンサン・ダンディから絶賛されています。
《古風なメヌエット》は。1898年に発表したピアノ曲で、ラヴェルの処女作とされるもの。
この作品については、ラヴェルは若い頃の習作程度という厳しい評価を下していましたが、1929年ごろにオーケストレーションを施し、翌年にコンセール・ラムルーで自らの指揮で演奏しています。
「古風なメヌエット」の「古風」というのは、ラヴェルが自然的短音階に固執し、和声的短音階の使用を頑なに拒否し、教会旋法を使った作品のように聴こえることからのネーミングで、ラヴェルのセンスを窺わせます。
ツィガーヌは、1924年の作品。
旧知のハンガリー出身のヴァイオリニストであるイェリー・ダラニーからハンガリー音楽を教わったことと、ニコロ・パガニーニの24のカプリースをエレーヌ・ジュルダン=モランジュから聴かされたことで、リストのハンガリー狂詩曲のヴァイオリン版のような音楽に仕上がりました。
ラヴェルは、ピアノ・リュテアル(あるいはピアノ)の伴奏用の楽譜と、オーケストラ用の楽譜を作っており、本CDでは、無論オーケストラ伴奏の楽譜が用いられています。なお、晩年のラヴェルは、このオーケストラ伴奏の版のほうを好んでいたとのこと。
バレエ音楽《ダフニスとクロエ》は、1910年に作られたロシア・バレエ団のための音楽で、バレエの初演に先駆けて、1911年にガブリエル・ピエルネが指揮するコンセール・コロンヌで組曲版の第1番が初演されています。
1912年のバレエ初演の後に、第2番の組曲が初演され、今日ではオーケストラのレパートリーとしてほぼ定着しています。
バレエ音楽は、全部で3つの部分に分かれますが、組曲第1番は、第1部の後半と第2部の最初の部分が抜き出され、第2番の組曲では、第3部がほぼそのまま演奏されます。両方の組曲で、いわばバレエ音楽の聴き所を網羅することが出来るというつくりになっており、バレエ公演の宣伝として十二分な効果を持っていたと思われます。
南西ドイツ放送交響楽団は、ロスバウトの衣鉢を継いだブールの徹底したトレーニングのおかげで、演奏水準を落とすことなく、精緻なアンサンブルでしっかりとした手ごたえのある演奏を聴かせてくれます。
《ダフニスとクロエ》の組曲など、ゴージャスでありながら、敢えて熱狂しないクールさがあり、ラヴェルの、良い意味で醒めた音楽性にピッタリとフィットしています。
クープランの墓の〈プレリュード〉の冒頭のオーボエ、ソロなど、個々のプレイヤーの腕も素晴らしく、ハッとする明快さと夢幻的なサウンドの交錯する演奏は、飛び切り上質の手織物を見て触っているような感覚を呼び起こします。
オジェーの歌うシェヘラザードの歌唱も、18世紀あたりの音楽を得意とした彼女らしく、折り目正しい清澄な歌声が素晴らしく、その純粋な歌声と雰囲気豊かなオーケストラとが絡み合い、仄かなエロティシズムを放出しています。
ツィガーヌの演奏は、カルミレッリのソロがイタリアのカンタービレをこの曲に持ち込もうとして、少々異質な演奏になっています。無伴奏の前半部分ではヴァイオリンをたっぷり鳴らして大見得を切り、オーケストラと絡んでも、超絶技巧をあっさりと片付けながら、しっかりと歌いこんでいます。ブールの伴奏は、こうしたカルミレッリの豊饒さにつられることなく、スタイリッシュにオーケストラを鳴らし、過度に芝居っ気が多くならないように絶妙の距離感でサポートしています。
全体的に醒めた感じの演奏ですが、むしろそういう気質の演奏のほうがラヴェルにはそぐう気がします。
ブールの演奏は、低血圧なのではなく、気まぐれな激情を許さない、抑制された均整に美的価値を置く指揮者なのでしょう。
そのブールの在任期間中にも、南西ドイツ放送交響楽団は、近現代の音楽を積極的に演奏していましたが、本CDでは、フランス人作曲家のモーリス・ラヴェル(Maurice Ravel, 1875-1937)の作品が集められています。
その作品の内訳は、以下のとおり
・クープランの墓
・シェヘラザード
・古風なメヌエット
・ツィガーヌ
・バレエ《ダフニスとクロエ》第1&第2組曲
歌曲集《シェヘラザード》では、アメリカ人ソプラノ歌手のアーリーン・オジェー(Arleen Augér, 1939-1993)が起用されており、ツィガーヌでは、イ・ムジチのコンサート・ミストレスに就任する前のピーナ・カルミレッリ(Pina Carmirelli, 1914-1993)が独奏しています。
クープランの墓は、1919年に作られたオーケストラ用の組曲で、1914年から1917年までに作られたピアノ用の組曲の抜粋編曲です。オーケストラ用の組曲にするにあたって、原曲以上の演奏効果が期待できない〈トッカータ〉と、旧来的な組曲の様式にそぐわない〈フーガ〉を編曲の対象から外し、バロック時代の舞曲の様式を意識した組み合わせにしてあります。
原曲と照らし合わせて聴くと、ピアノのフレーズの一つ一つに、どのようなイメージを作曲者自身が持っていたかを知ることができると思います。
歌曲集《シェヘラザード》は、1903年の作品。元々、シェヘラザードの題材をオペラにしようと画策していたラヴェルでしたが、1898年にオペラの序曲にするつもりで作曲した序曲を国民音楽協会のコンサートで取り上げたところ、散々な評価を下されてしまい、オペラの構想自体を破棄してしまいました。しかし、どこか思い残すところがあったのか、レオン・ルクレール(Léon Leclère, 1874-1966)がトリスタン・クリングゾール名義で書いたシェヘラザードの詩に目をつけ、管弦楽伴奏の歌曲として、自らの渇望を癒したのでした。
この歌曲は、ピアニストとして知られるアルフレッド・コルトーの指揮、ジャーヌ・バトリの独唱で初演され、当時の大御所作曲家のヴァンサン・ダンディから絶賛されています。
《古風なメヌエット》は。1898年に発表したピアノ曲で、ラヴェルの処女作とされるもの。
この作品については、ラヴェルは若い頃の習作程度という厳しい評価を下していましたが、1929年ごろにオーケストレーションを施し、翌年にコンセール・ラムルーで自らの指揮で演奏しています。
「古風なメヌエット」の「古風」というのは、ラヴェルが自然的短音階に固執し、和声的短音階の使用を頑なに拒否し、教会旋法を使った作品のように聴こえることからのネーミングで、ラヴェルのセンスを窺わせます。
ツィガーヌは、1924年の作品。
旧知のハンガリー出身のヴァイオリニストであるイェリー・ダラニーからハンガリー音楽を教わったことと、ニコロ・パガニーニの24のカプリースをエレーヌ・ジュルダン=モランジュから聴かされたことで、リストのハンガリー狂詩曲のヴァイオリン版のような音楽に仕上がりました。
ラヴェルは、ピアノ・リュテアル(あるいはピアノ)の伴奏用の楽譜と、オーケストラ用の楽譜を作っており、本CDでは、無論オーケストラ伴奏の楽譜が用いられています。なお、晩年のラヴェルは、このオーケストラ伴奏の版のほうを好んでいたとのこと。
バレエ音楽《ダフニスとクロエ》は、1910年に作られたロシア・バレエ団のための音楽で、バレエの初演に先駆けて、1911年にガブリエル・ピエルネが指揮するコンセール・コロンヌで組曲版の第1番が初演されています。
1912年のバレエ初演の後に、第2番の組曲が初演され、今日ではオーケストラのレパートリーとしてほぼ定着しています。
バレエ音楽は、全部で3つの部分に分かれますが、組曲第1番は、第1部の後半と第2部の最初の部分が抜き出され、第2番の組曲では、第3部がほぼそのまま演奏されます。両方の組曲で、いわばバレエ音楽の聴き所を網羅することが出来るというつくりになっており、バレエ公演の宣伝として十二分な効果を持っていたと思われます。
南西ドイツ放送交響楽団は、ロスバウトの衣鉢を継いだブールの徹底したトレーニングのおかげで、演奏水準を落とすことなく、精緻なアンサンブルでしっかりとした手ごたえのある演奏を聴かせてくれます。
《ダフニスとクロエ》の組曲など、ゴージャスでありながら、敢えて熱狂しないクールさがあり、ラヴェルの、良い意味で醒めた音楽性にピッタリとフィットしています。
クープランの墓の〈プレリュード〉の冒頭のオーボエ、ソロなど、個々のプレイヤーの腕も素晴らしく、ハッとする明快さと夢幻的なサウンドの交錯する演奏は、飛び切り上質の手織物を見て触っているような感覚を呼び起こします。
オジェーの歌うシェヘラザードの歌唱も、18世紀あたりの音楽を得意とした彼女らしく、折り目正しい清澄な歌声が素晴らしく、その純粋な歌声と雰囲気豊かなオーケストラとが絡み合い、仄かなエロティシズムを放出しています。
ツィガーヌの演奏は、カルミレッリのソロがイタリアのカンタービレをこの曲に持ち込もうとして、少々異質な演奏になっています。無伴奏の前半部分ではヴァイオリンをたっぷり鳴らして大見得を切り、オーケストラと絡んでも、超絶技巧をあっさりと片付けながら、しっかりと歌いこんでいます。ブールの伴奏は、こうしたカルミレッリの豊饒さにつられることなく、スタイリッシュにオーケストラを鳴らし、過度に芝居っ気が多くならないように絶妙の距離感でサポートしています。
全体的に醒めた感じの演奏ですが、むしろそういう気質の演奏のほうがラヴェルにはそぐう気がします。
ブールの演奏は、低血圧なのではなく、気まぐれな激情を許さない、抑制された均整に美的価値を置く指揮者なのでしょう。
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