1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
◈Anton Bruckner: Symphony No.8 in C minor
Zürich Tonhalle Orchestra / Rudolf Kempe
(Rec. 12 & 13 November 1971, Tonhalle Zürich Studio)
ルドルフ・ケンペ(Rudolf Kempe, 1910-1976)は、フリッツ・ブッシュ門下のドイツの指揮者です。
ケンペは、本CDで演奏しているチューリヒ・トーンハレ管弦楽団の首席指揮者を、1965年から6年間に渡って務めていました。1971年に録音された、このアントン・ブルックナー(Anton Bruckner, 1824-1896)の交響曲第8番は、チューリヒでの活動の、集大成の一つといえるでしょう。
交響曲第8番は、ブルックナーが完成した最後の交響曲です。
交響曲では一時間を越える大作を書きあげらることで知られていたブルックナーは、この曲でも数年かけて作曲しており、1884年の7月に着工されたこの曲は、1887年にひとまず脱稿しています。
ブルックナーは、この出来上がった交響曲を、当時ドイツ・オーストリア方面随一の指揮者であったヘルマン・レヴィに見せますが、レヴィは「このままでは演奏できない」という評価を下し、ブルックナーを大きく落胆させました。
自信喪失に陥ったブルックナーは、自分の過去の作品を次々と手直しをし、1889年には、この曲にも改訂を施します。一連の改訂で、自信を回復したブルックナーは、この曲をオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ一世に献呈することにしましたが、初演をめぐっていざこざがあり、1892になってハンス・リヒターがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会で取り上げるまで、この曲の初演は棚上げ状態になっていたということです。
以上のように、ブルックナーは批判を受けると自信を喪失して改訂を加える癖があり、こうした改訂の癖ゆえに、様々な版の譜面が存在することになります。
この交響曲第8番では、ブルックナーが1887年に脱稿した「第一稿」と、レヴィの批判を受けて改訂を施した「第二稿」、そして弟子のフランツ・シャルクが改訂を施した「改訂稿」が存在します。
ブルックナー研究者は、特にブルックナー自身の原稿を重んじて校訂作業を行いますが、音楽学者のロベルト・ハースは、「第二稿」を基本としながら、「第一稿」の楽譜も参照し、「第二稿」でボツになったアイデアも反映する「ハース版」を作り上げました。
一方、ブルックナー研究者のレオポルト・ノヴァークは、ハースの校訂を「第一稿」と「第二稿」をごちゃ混ぜにしているとして批判し、「第一稿」は「第一稿」として校訂し、「第二稿」は「第二稿」として厳密に分けて校訂しました。
これが、「ノヴァーク版」と呼ばれるエディションです。
したがって、録音で見受けられるエディションは、シャルクの「改訂版」と、「ハース版」、そして「ノヴァーク版第一稿」と「ノヴァーク版第二稿」の4つです。実際の演奏では、これらのエディションを用いながら、適宜指揮者の裁量で手を加えて演奏しています。なお、ケンペは、「ハース版」の支持者であり、「ハース版」を使って演奏しているとのこと。
チューリヒ・トーンハレ管弦楽団は、ケンペが首席指揮者の就任してからアンサンブルの精度が飛躍的に上がり、世界有数のオーケストラとして広く名前が知れ渡るようになりましたが、ケンペの前々任者のフォルクマール・アンドレーエが長年にわたって首席指揮者の座を暖めていました。アンドレーエはブルックナーの演奏の大家として知られ、アンドレーエの下でみっちりとブルックナーの音楽を叩き込まれていたがゆえに、ブルックナーの音楽の雄渾さを表現し得たのだと思われます。
ケンペの指揮も、勿体ぶったところがなく、起伏の大きな表現で細部まで生き生きと表現しています。それでいて、曲の流れが滞ることがないので、長丁場な音楽であるにもかかわらず、大変聴きやすい音楽に仕上がっています。第2楽章のスケルツォとトリオの描きわけもメリハリが利いており、第3楽章では磨きぬかれた弦の音と風格ある管楽器の音のブレンドに思わず息を呑んでしまいます。
宇宙の大鳴動のようなスケールで描き出される第4楽章など、ブルックナーの音楽を味わう喜びをかみ締めさせてくれ、演奏自体は申し分のない出来栄えだとおもいます。
わずかな傷を指摘するとすれば、第一楽章の冒頭あたりで、弦の音に潤いがなくなってしまうところを挙げることができますが、これはおそらくは演奏の責任というより、原盤の経年劣化によるものでしょう。音楽が進むにつれ、経年劣化の影響も気にならなくなり、総じて鑑賞に問題はありません。
ケンペは、本CDで演奏しているチューリヒ・トーンハレ管弦楽団の首席指揮者を、1965年から6年間に渡って務めていました。1971年に録音された、このアントン・ブルックナー(Anton Bruckner, 1824-1896)の交響曲第8番は、チューリヒでの活動の、集大成の一つといえるでしょう。
交響曲第8番は、ブルックナーが完成した最後の交響曲です。
交響曲では一時間を越える大作を書きあげらることで知られていたブルックナーは、この曲でも数年かけて作曲しており、1884年の7月に着工されたこの曲は、1887年にひとまず脱稿しています。
ブルックナーは、この出来上がった交響曲を、当時ドイツ・オーストリア方面随一の指揮者であったヘルマン・レヴィに見せますが、レヴィは「このままでは演奏できない」という評価を下し、ブルックナーを大きく落胆させました。
自信喪失に陥ったブルックナーは、自分の過去の作品を次々と手直しをし、1889年には、この曲にも改訂を施します。一連の改訂で、自信を回復したブルックナーは、この曲をオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ一世に献呈することにしましたが、初演をめぐっていざこざがあり、1892になってハンス・リヒターがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会で取り上げるまで、この曲の初演は棚上げ状態になっていたということです。
以上のように、ブルックナーは批判を受けると自信を喪失して改訂を加える癖があり、こうした改訂の癖ゆえに、様々な版の譜面が存在することになります。
この交響曲第8番では、ブルックナーが1887年に脱稿した「第一稿」と、レヴィの批判を受けて改訂を施した「第二稿」、そして弟子のフランツ・シャルクが改訂を施した「改訂稿」が存在します。
ブルックナー研究者は、特にブルックナー自身の原稿を重んじて校訂作業を行いますが、音楽学者のロベルト・ハースは、「第二稿」を基本としながら、「第一稿」の楽譜も参照し、「第二稿」でボツになったアイデアも反映する「ハース版」を作り上げました。
一方、ブルックナー研究者のレオポルト・ノヴァークは、ハースの校訂を「第一稿」と「第二稿」をごちゃ混ぜにしているとして批判し、「第一稿」は「第一稿」として校訂し、「第二稿」は「第二稿」として厳密に分けて校訂しました。
これが、「ノヴァーク版」と呼ばれるエディションです。
したがって、録音で見受けられるエディションは、シャルクの「改訂版」と、「ハース版」、そして「ノヴァーク版第一稿」と「ノヴァーク版第二稿」の4つです。実際の演奏では、これらのエディションを用いながら、適宜指揮者の裁量で手を加えて演奏しています。なお、ケンペは、「ハース版」の支持者であり、「ハース版」を使って演奏しているとのこと。
チューリヒ・トーンハレ管弦楽団は、ケンペが首席指揮者の就任してからアンサンブルの精度が飛躍的に上がり、世界有数のオーケストラとして広く名前が知れ渡るようになりましたが、ケンペの前々任者のフォルクマール・アンドレーエが長年にわたって首席指揮者の座を暖めていました。アンドレーエはブルックナーの演奏の大家として知られ、アンドレーエの下でみっちりとブルックナーの音楽を叩き込まれていたがゆえに、ブルックナーの音楽の雄渾さを表現し得たのだと思われます。
ケンペの指揮も、勿体ぶったところがなく、起伏の大きな表現で細部まで生き生きと表現しています。それでいて、曲の流れが滞ることがないので、長丁場な音楽であるにもかかわらず、大変聴きやすい音楽に仕上がっています。第2楽章のスケルツォとトリオの描きわけもメリハリが利いており、第3楽章では磨きぬかれた弦の音と風格ある管楽器の音のブレンドに思わず息を呑んでしまいます。
宇宙の大鳴動のようなスケールで描き出される第4楽章など、ブルックナーの音楽を味わう喜びをかみ締めさせてくれ、演奏自体は申し分のない出来栄えだとおもいます。
わずかな傷を指摘するとすれば、第一楽章の冒頭あたりで、弦の音に潤いがなくなってしまうところを挙げることができますが、これはおそらくは演奏の責任というより、原盤の経年劣化によるものでしょう。音楽が進むにつれ、経年劣化の影響も気にならなくなり、総じて鑑賞に問題はありません。
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