1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
◈Paul Hindemith: Ludus Tonalis
Anatoly Vedernikov (Pf)
(Rec. 1961, Moscow)
《ルードゥス・トナリス》は、ドイツの作曲家、パウル・ヒンデミット(Paul Hindemith, 1895-1963)の代表的なピアノ曲です。
ヒンデミットは、ナチス・ドイツの掲げる、分かりやすく感動的な音楽を書こうとしなかったために頽廃音楽のレッテルを貼られ、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーの擁護もむなしく、アメリカに亡命を余儀なくされています。
この《ルードゥス・トナリス》は、アメリカに亡命した後の1942年に作曲されたもので、「対位法、調性機能、ピアノ演奏の研究」という副題がつけられています。「ルードゥス・トナリス」(Ludus Tonaris)という言葉自体は、「音遊び」という意味のラテン語ですが、その音楽は知的な遊びを思わせます。
曲は前奏曲と12のフーガと後奏曲からなり、さらにそれぞれのフーガの間に間奏曲を挟むという形をとっています。
そのフーガと前奏曲や間奏曲の配置は、ヨハン・ゼバスティアン・バッハの《平均律クラヴィーア曲集》を思わせるものがありますが、ヒンデミットは、長調・短調の境界の曖昧な書法で書いており、その調の並べ方も、
・ハ調 (ハ音[ドの音]を主音にする)
・ト調 (ハ音から完全5度上のト音[ソの音]を主音にする)
・ヘ調 (ハ音から完全4度上のヘ音[ファの音]を主音にする)
・イ調 (ハ音から長6度上のイ音[ラの音]を主音にする)
・ホ調 (ハ音から長3度上のホ音[ミの音]を主音にする)
・変ホ調 (ハ音から短3度上の変ホ音[♭ミの音]を主音にする)
・変イ調 (ハ音から短6度上の変イ音[♭ラの音]を主音にする)
・ニ調 (ハ音から長2度上のニ音[レの音]を主音にする)
・変ロ調 (ハ音から短7度上の変ロ音[♭シの音]を主音にする)
・変ニ調 (ハ音から短2度上の変ニ音[♭レ音]を主音にする)
・ロ調 (ハ音から長7度上のロ音[シの音]を主音にする)
・嬰ヘ調 (ハ音から増4度上の嬰ヘ音[♯ファの音]を主音にする)
という並べ方になっています。
こうした並べ方は、ヒンデミットの「協和度」という音程理論に基づいた並べ方です。
ヒンデミットは、一つの音と、他方の音の距離に応じて、響きに性格があるとし、それらの性格に応じたフーガ主題を書き、自分の理論を対位法で実践してみようとしたわけです。
本CDで演奏するアナトリー・ヴェデルニコフ(Anatoly Vedernikov, 1920-1995)は、ゲンリヒ・ネイガウス門下のピアニストです。
明晰な対位法の描き分けに長けた名手で、どのような複雑な作品でも明瞭闊達な演奏の出来た超人的ピアニストとして知られています。
13歳で生まれ故郷のハルビンの音楽院を首席で卒業し、1935年には来日して演奏会を開いています。
その翌年ロシアに帰国し、モスクワ音楽院に入学するものの、直後に両親がスパイ容疑で逮捕され、ヴェデルニコフ自身も逮捕は免れたものの、政府の監視下に置かれ、晩年まで国外の演奏を禁止される羽目になりました。その後、ソ連が崩壊し、国外での演奏が出来るようになった矢先に、ヴェデルニコフは病死しています。
今となっては、遺されたレコードの復刻によって、在りし日のヴェデルニコフの卓越したピアニズムを堪能するしかありませんが、このヒンデミットの《ルードゥス・トナリス》を、何ほどのこともなく明快に弾ききるところに、彼の技量の高さを感得することができると思います。
ヒンデミットは、ナチス・ドイツの掲げる、分かりやすく感動的な音楽を書こうとしなかったために頽廃音楽のレッテルを貼られ、ヴィルヘルム・フルトヴェングラーの擁護もむなしく、アメリカに亡命を余儀なくされています。
この《ルードゥス・トナリス》は、アメリカに亡命した後の1942年に作曲されたもので、「対位法、調性機能、ピアノ演奏の研究」という副題がつけられています。「ルードゥス・トナリス」(Ludus Tonaris)という言葉自体は、「音遊び」という意味のラテン語ですが、その音楽は知的な遊びを思わせます。
曲は前奏曲と12のフーガと後奏曲からなり、さらにそれぞれのフーガの間に間奏曲を挟むという形をとっています。
そのフーガと前奏曲や間奏曲の配置は、ヨハン・ゼバスティアン・バッハの《平均律クラヴィーア曲集》を思わせるものがありますが、ヒンデミットは、長調・短調の境界の曖昧な書法で書いており、その調の並べ方も、
・ハ調 (ハ音[ドの音]を主音にする)
・ト調 (ハ音から完全5度上のト音[ソの音]を主音にする)
・ヘ調 (ハ音から完全4度上のヘ音[ファの音]を主音にする)
・イ調 (ハ音から長6度上のイ音[ラの音]を主音にする)
・ホ調 (ハ音から長3度上のホ音[ミの音]を主音にする)
・変ホ調 (ハ音から短3度上の変ホ音[♭ミの音]を主音にする)
・変イ調 (ハ音から短6度上の変イ音[♭ラの音]を主音にする)
・ニ調 (ハ音から長2度上のニ音[レの音]を主音にする)
・変ロ調 (ハ音から短7度上の変ロ音[♭シの音]を主音にする)
・変ニ調 (ハ音から短2度上の変ニ音[♭レ音]を主音にする)
・ロ調 (ハ音から長7度上のロ音[シの音]を主音にする)
・嬰ヘ調 (ハ音から増4度上の嬰ヘ音[♯ファの音]を主音にする)
という並べ方になっています。
こうした並べ方は、ヒンデミットの「協和度」という音程理論に基づいた並べ方です。
ヒンデミットは、一つの音と、他方の音の距離に応じて、響きに性格があるとし、それらの性格に応じたフーガ主題を書き、自分の理論を対位法で実践してみようとしたわけです。
本CDで演奏するアナトリー・ヴェデルニコフ(Anatoly Vedernikov, 1920-1995)は、ゲンリヒ・ネイガウス門下のピアニストです。
明晰な対位法の描き分けに長けた名手で、どのような複雑な作品でも明瞭闊達な演奏の出来た超人的ピアニストとして知られています。
13歳で生まれ故郷のハルビンの音楽院を首席で卒業し、1935年には来日して演奏会を開いています。
その翌年ロシアに帰国し、モスクワ音楽院に入学するものの、直後に両親がスパイ容疑で逮捕され、ヴェデルニコフ自身も逮捕は免れたものの、政府の監視下に置かれ、晩年まで国外の演奏を禁止される羽目になりました。その後、ソ連が崩壊し、国外での演奏が出来るようになった矢先に、ヴェデルニコフは病死しています。
今となっては、遺されたレコードの復刻によって、在りし日のヴェデルニコフの卓越したピアニズムを堪能するしかありませんが、このヒンデミットの《ルードゥス・トナリス》を、何ほどのこともなく明快に弾ききるところに、彼の技量の高さを感得することができると思います。
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