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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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CD1:
◈Ludwig van Beethoven: Symphony No.1 in C major, op.21
Rundfunk-Sinfonieorchester Saarbrücken / Hans Zender
(Rec. 11 March 1976, SR, Großer Sendersaal) Live Recording without Applause
◈Ludwig van Beethoven: Symphony No.6 in F major, op.68 "Pastorale"
Rundfunk-Sinfonieorchester Saarbrücken / Hans Zender
(Rec. 30 June - 2 July 1982, Kongreßhalle Saarbrücken)

CD2:
◈Ludwig van Beethoven: Violin Concerto in D major, op.61
Henryk Szeryng (Vn)
Rundfunk-Sinfonieorchester Saarbrücken / Hans Zender
(Rec. 16-17 October 1982, SR, Kongreßhalle Saarbrücken) Live Recording without Applause



ハンス・ツェンダー(Hans Zender, 1936-)は、ドイツの作曲家兼指揮者です。指揮者としては、18世紀の音楽から現代の音楽までと、レパートリーの広さが身上で、その演奏のどれもが一定以上の水準という、大変優れた指揮者でもあります。
ツェンダーは、あまりオーケストラのポストに拘らない指揮者でしたが、1972年からザールブリュッケン放送交響楽団の首席指揮者を務め、このオーケストラの演奏水準を飛躍的に引き上げた功績が知られています。
最近は、ミヒャエル・ギーレンと一緒にバーデンバーデン・フライブルクSWR交響楽団(元:南西ドイツ放送交響楽団)の指揮者を務めているそうです。
なお、ザールブリュッケン放送交響楽団は、2007年にカイザースラウテルンの放送オーケストラと合併し、ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団として生まれ変わりました。

閑話休題。
本CDはツェンダーがザールブリュッケン放送交響楽団の首席指揮者として、その手腕を大いにふるっていた時期の録音集のうちのひとつで、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven, 1770-1827)の交響曲2曲とヴァイオリン協奏曲が収録されています。ヴァイオリンの独奏は、ポーランド出身でメキシコに帰化した世界的ヴァイオリニストのヘンリク・シェリング(Henryk Szeryng, 1918-1988)で、シェリングは、ヨーゼフ・ヨアヒム(Joseph Joachim, 1831-1907)のカデンツァを用意しています。
シェリングは、1980年代に入ってから録音活動が不活発になったので、こうした晩年期のシェリングの録音は、それだけでシェリング・ファンの垂涎のアイテムなのかもしれません。
ツェンダーは、他の多くの現代音楽作曲家兼指揮者同様に、曲想の表情付けよりも、音楽の響きの構造を整えることを先行させます。
古典的なフォルムでしっかりと書かれた交響曲第1番(1800年作)など、その構造をしっかりと踏まえたうえで、オーケストラを豊かに鳴らし、若きベートーヴェンの才気を十二分に引き出してくれています。
第一楽章冒頭の属7の和音は、多少バラつきますが、このちょっとしたバラつきが、その後の演奏のアンサンブルの高さのコントラストとなって生きています。その高いアンサンブルのうえに推進力も加わりますが、曲想の気分に踊らされず、暴走の手前でしっかりと表情を抑制してくるところが、大変心憎いです。
交響曲第6番《田園》(1807-1808年作)では、オーケストラの弦の音に多少色艶が加わりますが、その色艶に全く頼らず、弦と管打楽器の対話の充実に力点を置いています。陶酔する美しさを敢えて避け、リズムを鋭敏にし、ニュアンス豊かな対話で音楽に生気を与えるアプローチは、綺麗事ではない凄みがあります。
第4楽章のテンペスタなど、音楽の荒ぶりを冷静に受け止め、精緻な演奏を実現しています。激烈ながら感情に押し流されていない、非常に興味深い演奏です。

ニ長調のヴァイオリン協奏曲(1806年作)は、《田園》交響曲とほぼ同じ時期の所産で、柔和な表情の作品ですが、その柔和な表情に浸りきると、平和ボケしたような演奏になるのも事実。ツェンダーは、細かなニュアンス付けと整然としたテンポで曲のフォルムを引き締め、彫りの深い伴奏をつけています。
シェリングは、感情におぼれず、知性で曲の型を守ろうとするタイプの演奏家です。こうしたタイプのソリストは、録り直しのきくスタジオ録音では常識的な演奏を突き詰めますが、ライヴ録音でもスタジオ録音と同様の完成度を求めるため、ピリピリした雰囲気を纏うことがよくあります。
1980年代のシェリングは、高潔なヴァイオリンの大先生としての自己イメージの維持に腐心したために気難しくなっていったようですが、そうしたプライドの高さもあってか、かなり緊張感のある演奏に仕上がっています。
第1楽章の独奏による主題提示では、木管のサポートのふくよかな響きにお株を取られそうになり、ヴァイオリンをかき鳴らすシェリングの力奏が記録されています。フィンガリングにしろ、ボウイングにしろ、余裕綽々に演奏しているというよりは、そうでなければならないと自分に言い聞かせているような演奏です。なめらかさの代わりに気迫が加わり、シェリングの演奏にしては、迫力のある面白い演奏になりました。
第2楽章は、おおらかに包み込むようなツェンダーの伴奏に聴きどころがあり、特にファゴットの好演が光ります。しかし、シェリングのヴァイオリンは、ツェンダーほどに脱力しておらず、ちょっと違和感を感じます。
第3楽章も、シェリングにしては気色ばんだ演奏です。シェリングが仕掛け、ツェンダーが返すという図式なのですが、ツェンダーの返しがシェリング以上の切れ味を伴っているので、曲が進むにつれてシェリングのヴァイオリンが荒々しくなってきます。
シェリングの円熟芸を聴くというより、ツェンダーとシェリングの主導権の取り合いを見ている感じで、シェリングのこの手の曲の録音にしては、随分エキサイティングな演奏だと思います。
作品の型を論理的に組み立てて模範演奏をするという点では、シェリングの演奏は、必ずしも成功しているとは言えませんが、面白さという点では、なかなか聴きごたえのある演奏に仕上がっていると思います。

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