1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
◈Jacques Offenbach: L'ile de Tulipatan
Yerry Mertz (T: Cacatois XXII)
Thierry Migliorini (Br: Romboîdal)
Claudine Granger (S: Alexis)
Marcelle Rieu (Ms: Théodorine)
Stéfano Memma (T: Hermosa)
Thierry Migliorini (Br: Romboîdal)
Claudine Granger (S: Alexis)
Marcelle Rieu (Ms: Théodorine)
Stéfano Memma (T: Hermosa)
Royal Cercle Choral Jupille Saint-Amand (Chorus master: Albert Lantin)
Les Solistes de Liege / Emmanuel Koch
Les Solistes de Liege / Emmanuel Koch
(Rec. 1-2 July 1984)
ジャック・オッフェンバック(Jacques Offenbach, 1819-1880)は、本名をヤコプ・レヴィ・エベルストといい、ユダヤ系のドイツ人です。チェロを堪能にし、パリ音楽院の初の留学生になった人でもあります。
しかし、さっさと音楽院を辞めてチェリストとして自活するようになり、オペラ・コミック座やサロンなどでの演奏活動を通して人脈が広がり、チェロの余技として小遣い稼ぎのために始めた作曲の仕事が、いつしか本業になってしまいました。
友達とはじめたブーフ・パリジャンという芝居小屋は、いつしかフランス人のみならず、ヨーロッパに轟く芝居小屋になってしまい、そこで数多くのオペレッタの傑作が生み出されていくことになります。
この《チュリパタン島》も、ブーフ・パリジャンのために書かれた作品で、1868年10月6日にブーフ・パリジャンの芝居小屋で初演され、好評を博した出し物です。
話の筋書きは以下のとおり。
痰壺が発明される473年前の、ナンテールより25000キロ離れたチュリパタン島でのお話。
チュリパタン島は、カカトワ公爵家の領土で、カカトワ22世が治めている。
カカトワ公爵家の家老には、ロンボイダールという家老がいるが、ロンボイダールの妻のテオドリーヌは悩みを抱えている。その秘密を説明しようという時に、ロンボイダールがやってくる。ロンボイダールの悩みは、娘のエルモーザがとんでもないお転婆だということ。お転婆に育ってしまった責任を、ロンボイダールはテオドリーヌに押し付けている。ロンボイダール曰く「公爵様の御子息は優しい息子を持っておられる。実にうらやましい。」
カカトワ公も実は悩みを抱えている。領土の見回りを終えた公爵は、ロンボイダールの家にやってきて、籠の小鳥に逃げられてメソメソしている息子のアレクシーの話をし、ロンボイダールの娘の元気っぷりを羨ましがる。そこにアレクシーがメソメソしながら現れ、公爵はアレクシーに嫁でも貰えばしっかりするだろうという。
公爵は、ロンボイダールのところで昼食をとることにし、ロンボイダールはテオドリーヌに小金を渡して買い物に行かせ、ロンボイダールは公爵と家の執務室に入る。
そこに残されたエルモーザとアレクシーだったが、お互いがお互いを気に入ってしまう。
エルモーザはアレクシーに積極的にアプローチするが、アレクシーは顔を赤くしてうつむいている。
「男なら、私を口説いてよ」「男なら私を引き寄せて」と、猛烈にアプローチしてくるエルモーザに、アレクシーはアコーディオンを弾いて聞かせ、エルモーザはそのアコーディオンに合わせて歌う。すっかり意気投合した2人だったが、アレクシーは勇気を出して「君が好きだ」といい、エルモーザの胸に飛び込む。
これを見止めたロンボイダール夫妻は、事の仔細を公爵に報告することにする。
テオドリーヌはエルモーザに「お前は本当は娘として育てたけど、実は男だから結婚はできない」と、秘密を打ち明け、「機会があれば、父に報告するから」と緘口令を敷いた。
一方、ロンボイダールは、エルモーザに「アレクシーは男ということになっているが、公爵家に娘しか生まれなかったので、アレクシーを男ということにしている。公爵様はその事実をご存じない」といい、結婚はできない旨を歌える。エルモーザは両者の話を聞いて、悲しいふりをするが、実はうれしくて仕方がない。
一方、アレクシーのほうも、ロンボイダールの話を聞いて、自分が女だと自覚するようになる。
アレクシーはドレスを着て、エルモーザは近衛兵の衣装を着るが、二人は鉢合せ、お互い似合っていると言い合い、ますます惚れあうのだった。
何も知らない公爵は、昼食時に、ロンボイダールに「お前の娘をオレの息子の嫁によこせ」という。ロンボイダールは、御子息が実は女だということから、テオドリーヌは、自分の娘が実は男だという理由から、その話を固辞する。夫妻はお互いに自分の握っている秘密を話し合ってはいない。何も知らない公爵は、ロンボイダールに自分に恥をかかせるつもりか!と怒りだす。考えあぐねたロンボイダール夫妻は、「自分の娘と御子息が了承すれば、婚約はよしとしましょう」という。そこに、公爵の家来が、2人の婚約証書を持ってきて、婚約が成立したことを喜ぶ。驚いたロンボイダール夫妻は、自分たちが握っている秘密を公爵に打ち明けるが、そこに近衛兵姿のエルモーザとドレス姿のアレクシーが現れる。
驚いた公爵は、「それなら再婚して、今度こそ男の子を産んでやる!」と息巻くのだった。
以上のように、女性だったはずのエルモーザが男性だったり、男性だったはずのアレクシーが女性だったりするわけですが、これらの役は、エルモーザが女装し、アレクシーが男装する形で歌われます。
成熟社会としてのパリにおける男性の女性化と女性の男性化を鮮やかに皮肉って見せた本作品は、今日においても十分通用する批判的視点を持っていると思います。
キャストは以下のとおり。
イェリー・メルツ (カカトワ22世)
ティエリー・ミリオリーニ (ロンボイダール)
クローディーヌ・グレンジャー (アレクシー)
マルセル・リュー (テオドリーヌ)
ステファノ・メンマ (エルモーザ)
ジュピーユ・サン・アマン・ロイヤル・サークル合唱団 (合唱指揮:アルベール・ランティン)
レ・ソリスト・ド・リエージュ/エマニュエル・コッホ
演奏陣に関しては、不思議なほど情報がありません。
オッフェンバックの音楽は、パリッとしたリズム感覚が必要なんですが、コッホ(Emmanuel Koch, 1930-2005)の統制がうまくきいていないのか、オーケストラの反応がやや重めです。
また、合唱も引っ込みがちなのが惜しまれます。
メルツ(Yerry Mertz)の歌う〈優しくとても温厚な君主〉は、やや高音が張り上げ気味ではあるものの、威厳のあるある歌いっぷり。ミリオリーニ(Thierry Migliorini)やメンマ(Stéfano Memma)歌唱には張りがあり、コッホの指揮するオーケストラを牽引するかのような勢いがあります。女性陣の歌唱については、リュー(Marcelle Rieu)の歌唱のヘタウマな性格付けに味わいがあります。グレンジャーの歌唱も、的確で美しい歌唱です。
全体的には、ややだらけた雰囲気になっていますが、録音されることの少ない、本オペレッタの貴重な録音です。
より引き締まった演奏が録音され、競合盤として出てくることを望みます。
しかし、さっさと音楽院を辞めてチェリストとして自活するようになり、オペラ・コミック座やサロンなどでの演奏活動を通して人脈が広がり、チェロの余技として小遣い稼ぎのために始めた作曲の仕事が、いつしか本業になってしまいました。
友達とはじめたブーフ・パリジャンという芝居小屋は、いつしかフランス人のみならず、ヨーロッパに轟く芝居小屋になってしまい、そこで数多くのオペレッタの傑作が生み出されていくことになります。
この《チュリパタン島》も、ブーフ・パリジャンのために書かれた作品で、1868年10月6日にブーフ・パリジャンの芝居小屋で初演され、好評を博した出し物です。
話の筋書きは以下のとおり。
痰壺が発明される473年前の、ナンテールより25000キロ離れたチュリパタン島でのお話。
チュリパタン島は、カカトワ公爵家の領土で、カカトワ22世が治めている。
カカトワ公爵家の家老には、ロンボイダールという家老がいるが、ロンボイダールの妻のテオドリーヌは悩みを抱えている。その秘密を説明しようという時に、ロンボイダールがやってくる。ロンボイダールの悩みは、娘のエルモーザがとんでもないお転婆だということ。お転婆に育ってしまった責任を、ロンボイダールはテオドリーヌに押し付けている。ロンボイダール曰く「公爵様の御子息は優しい息子を持っておられる。実にうらやましい。」
カカトワ公も実は悩みを抱えている。領土の見回りを終えた公爵は、ロンボイダールの家にやってきて、籠の小鳥に逃げられてメソメソしている息子のアレクシーの話をし、ロンボイダールの娘の元気っぷりを羨ましがる。そこにアレクシーがメソメソしながら現れ、公爵はアレクシーに嫁でも貰えばしっかりするだろうという。
公爵は、ロンボイダールのところで昼食をとることにし、ロンボイダールはテオドリーヌに小金を渡して買い物に行かせ、ロンボイダールは公爵と家の執務室に入る。
そこに残されたエルモーザとアレクシーだったが、お互いがお互いを気に入ってしまう。
エルモーザはアレクシーに積極的にアプローチするが、アレクシーは顔を赤くしてうつむいている。
「男なら、私を口説いてよ」「男なら私を引き寄せて」と、猛烈にアプローチしてくるエルモーザに、アレクシーはアコーディオンを弾いて聞かせ、エルモーザはそのアコーディオンに合わせて歌う。すっかり意気投合した2人だったが、アレクシーは勇気を出して「君が好きだ」といい、エルモーザの胸に飛び込む。
これを見止めたロンボイダール夫妻は、事の仔細を公爵に報告することにする。
テオドリーヌはエルモーザに「お前は本当は娘として育てたけど、実は男だから結婚はできない」と、秘密を打ち明け、「機会があれば、父に報告するから」と緘口令を敷いた。
一方、ロンボイダールは、エルモーザに「アレクシーは男ということになっているが、公爵家に娘しか生まれなかったので、アレクシーを男ということにしている。公爵様はその事実をご存じない」といい、結婚はできない旨を歌える。エルモーザは両者の話を聞いて、悲しいふりをするが、実はうれしくて仕方がない。
一方、アレクシーのほうも、ロンボイダールの話を聞いて、自分が女だと自覚するようになる。
アレクシーはドレスを着て、エルモーザは近衛兵の衣装を着るが、二人は鉢合せ、お互い似合っていると言い合い、ますます惚れあうのだった。
何も知らない公爵は、昼食時に、ロンボイダールに「お前の娘をオレの息子の嫁によこせ」という。ロンボイダールは、御子息が実は女だということから、テオドリーヌは、自分の娘が実は男だという理由から、その話を固辞する。夫妻はお互いに自分の握っている秘密を話し合ってはいない。何も知らない公爵は、ロンボイダールに自分に恥をかかせるつもりか!と怒りだす。考えあぐねたロンボイダール夫妻は、「自分の娘と御子息が了承すれば、婚約はよしとしましょう」という。そこに、公爵の家来が、2人の婚約証書を持ってきて、婚約が成立したことを喜ぶ。驚いたロンボイダール夫妻は、自分たちが握っている秘密を公爵に打ち明けるが、そこに近衛兵姿のエルモーザとドレス姿のアレクシーが現れる。
驚いた公爵は、「それなら再婚して、今度こそ男の子を産んでやる!」と息巻くのだった。
以上のように、女性だったはずのエルモーザが男性だったり、男性だったはずのアレクシーが女性だったりするわけですが、これらの役は、エルモーザが女装し、アレクシーが男装する形で歌われます。
成熟社会としてのパリにおける男性の女性化と女性の男性化を鮮やかに皮肉って見せた本作品は、今日においても十分通用する批判的視点を持っていると思います。
キャストは以下のとおり。
イェリー・メルツ (カカトワ22世)
ティエリー・ミリオリーニ (ロンボイダール)
クローディーヌ・グレンジャー (アレクシー)
マルセル・リュー (テオドリーヌ)
ステファノ・メンマ (エルモーザ)
ジュピーユ・サン・アマン・ロイヤル・サークル合唱団 (合唱指揮:アルベール・ランティン)
レ・ソリスト・ド・リエージュ/エマニュエル・コッホ
演奏陣に関しては、不思議なほど情報がありません。
オッフェンバックの音楽は、パリッとしたリズム感覚が必要なんですが、コッホ(Emmanuel Koch, 1930-2005)の統制がうまくきいていないのか、オーケストラの反応がやや重めです。
また、合唱も引っ込みがちなのが惜しまれます。
メルツ(Yerry Mertz)の歌う〈優しくとても温厚な君主〉は、やや高音が張り上げ気味ではあるものの、威厳のあるある歌いっぷり。ミリオリーニ(Thierry Migliorini)やメンマ(Stéfano Memma)歌唱には張りがあり、コッホの指揮するオーケストラを牽引するかのような勢いがあります。女性陣の歌唱については、リュー(Marcelle Rieu)の歌唱のヘタウマな性格付けに味わいがあります。グレンジャーの歌唱も、的確で美しい歌唱です。
全体的には、ややだらけた雰囲気になっていますが、録音されることの少ない、本オペレッタの貴重な録音です。
より引き締まった演奏が録音され、競合盤として出てくることを望みます。
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