1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
◈Franz Schubert: Schwanengesang
Hermann Prey (Br)
Philippe Bianconi (Pf)
Philippe Bianconi (Pf)
(Rec. 3 & 6 April 1984, Friedrich Ebert Halle, Hamburg
& 3 & 7 August 1985, Große Saal der Hans Seidl Stiftung Wildbad-Kreut)
& 3 & 7 August 1985, Große Saal der Hans Seidl Stiftung Wildbad-Kreut)
《白鳥の歌》(D957/965a)は、フランツ・シューベルト(Franz Schubert, 1797-1828)の遺作集です。
本CDは、ヘルマン・プライ(Hermann Prey, 1929-1998)の歌唱とフィリップ・ビアンコーニ(Philippe Bianconi, 1960-)の歌唱で収録されています。
シューベルトは、交響曲作家になりたいと言ってはいたものの、晩年に至るまで歌曲の作曲は行っていたようで、この歌曲集に収録されている作品は、シューベルトのなくなる年の10月までに書き上げていたとされています。
シューベルトは、ルートヴィヒ・レルシュタープ(Ludwig Rellstab, 1799-1860)の詩で7曲、フリードリヒ・ハイネ(Heinrich Heine, 1797-1856)の詩で6曲書き上げていましたが、さらにヨハン・ガブリエル・ザイドル(Johann Gabriel Seidl, 1804-1875)の詩で書いた1曲が、シューベルトの最後の完成作となってしまいました。
シューベルトは、おそらくレルシュタープの歌曲でひとつの歌曲集を作ろうとしていたのではないかと思われますが、歌曲集として出版する準備もしないまま亡くなってしまったようです。
シューベルトの死後、シューベルトの兄のフェルディナンドが、ハースリンガー出版社に遺作を持ち込み、《白鳥の歌》として出版しました。その後、ペータース出版社から刊行されたこの歌曲集の楽譜では、シューベルトが亡くなる年の夏ごろに作った《秋》(D945)という歌曲が追補として加えられています。
そんなわけで、本CDでは、
レルシュタープの詩による歌曲
・愛の使い
・戦士の予感
・春の憧れ
・セレナード
・すみか
・遠い地にて
・別れ
・秋 (追補: D945)
ハイネの詩による歌曲
・アトラス
・彼女の肖像
・漁師の娘
・都会
・海辺にて
・影法師
ザイドルの詩による歌曲
・鳩の便り (D965a)
という順番で収録されており、追補として収録された《秋》をこの歌曲集の〈別れ〉の後に収録した点に、プライの挑戦と配慮が感じられます。
プライは、ベルリン音楽大学でヤーロ・プロハスカ、ハリー・ゴットシャルク、ギュンター・バウムの三氏から薫陶を受けたドイツのバリトン歌手で、かのディートリヒ・フィッシャー=ディースカウのライバルとして知られた人です。
プライはドイツ歌曲だけでなく、ロッシーニやモーツァルトの歌劇などを得意とし、オファーがあればミュージカルも歌うという多彩な人でしたが、シューベルトの歌曲はプライにとって非常に重要なレパートリーだったようです。
《白鳥の歌》は、《美しき水車小屋の娘》や《冬の旅》と共に何度も録音しており、確かこのビアンコーニとの録音は4度目の録音でした。
幾分風貌は老けたものの、その声はいまだ若々しさがあり、ディースカウの立派な歌唱とは違った親しみやすさを感じさせるのが、プライの人柄と芸風です。
しかし、プライは親しみやすさだけの人ではなく、この歌集のハイネの詩による歌曲に示されるように、陰影にとんだドラマも堂々と表現しており、特に〈アトラス〉の雄渾さは、この歌曲のひとつの模範たり得る歌唱といえるでしょう。〈海辺にて〉から〈影法師〉に至るまでのほの暗さについても、プライの歌唱は、まるでオペラの一シーンのようであり、曲の醸し出す絶望感とよくシンクロしています。
ビアンコーニはニース音楽院でシモーヌ・デルヴェール=フェヴリエに学んだピアニストで、1985年のヴァン・クライバーン国際コンクールで第2位を受賞しています。
本録音は、クライバーン・コンクールに出場する頃に録音されたものということになりますが、プライの歌唱に素直に伴奏をつけており、プライを支えるというよりは、プライからピアノの伴奏の極意を教わるような演奏になっています。
レルシュタープやザイドルの詩による部分では溌剌としたピアノが若々しいプライの歌唱とよくかみ合っていますが、ハイネの詩による歌曲では、プライに追随する形になっています。さらにキャリアを積んだ今日のビアンコーニであれば、もっと積極的にロマンティックな音楽作りに関与できるのではないかと思います。
本CDは、ヘルマン・プライ(Hermann Prey, 1929-1998)の歌唱とフィリップ・ビアンコーニ(Philippe Bianconi, 1960-)の歌唱で収録されています。
シューベルトは、交響曲作家になりたいと言ってはいたものの、晩年に至るまで歌曲の作曲は行っていたようで、この歌曲集に収録されている作品は、シューベルトのなくなる年の10月までに書き上げていたとされています。
シューベルトは、ルートヴィヒ・レルシュタープ(Ludwig Rellstab, 1799-1860)の詩で7曲、フリードリヒ・ハイネ(Heinrich Heine, 1797-1856)の詩で6曲書き上げていましたが、さらにヨハン・ガブリエル・ザイドル(Johann Gabriel Seidl, 1804-1875)の詩で書いた1曲が、シューベルトの最後の完成作となってしまいました。
シューベルトは、おそらくレルシュタープの歌曲でひとつの歌曲集を作ろうとしていたのではないかと思われますが、歌曲集として出版する準備もしないまま亡くなってしまったようです。
シューベルトの死後、シューベルトの兄のフェルディナンドが、ハースリンガー出版社に遺作を持ち込み、《白鳥の歌》として出版しました。その後、ペータース出版社から刊行されたこの歌曲集の楽譜では、シューベルトが亡くなる年の夏ごろに作った《秋》(D945)という歌曲が追補として加えられています。
そんなわけで、本CDでは、
レルシュタープの詩による歌曲
・愛の使い
・戦士の予感
・春の憧れ
・セレナード
・すみか
・遠い地にて
・別れ
・秋 (追補: D945)
ハイネの詩による歌曲
・アトラス
・彼女の肖像
・漁師の娘
・都会
・海辺にて
・影法師
ザイドルの詩による歌曲
・鳩の便り (D965a)
という順番で収録されており、追補として収録された《秋》をこの歌曲集の〈別れ〉の後に収録した点に、プライの挑戦と配慮が感じられます。
プライは、ベルリン音楽大学でヤーロ・プロハスカ、ハリー・ゴットシャルク、ギュンター・バウムの三氏から薫陶を受けたドイツのバリトン歌手で、かのディートリヒ・フィッシャー=ディースカウのライバルとして知られた人です。
プライはドイツ歌曲だけでなく、ロッシーニやモーツァルトの歌劇などを得意とし、オファーがあればミュージカルも歌うという多彩な人でしたが、シューベルトの歌曲はプライにとって非常に重要なレパートリーだったようです。
《白鳥の歌》は、《美しき水車小屋の娘》や《冬の旅》と共に何度も録音しており、確かこのビアンコーニとの録音は4度目の録音でした。
幾分風貌は老けたものの、その声はいまだ若々しさがあり、ディースカウの立派な歌唱とは違った親しみやすさを感じさせるのが、プライの人柄と芸風です。
しかし、プライは親しみやすさだけの人ではなく、この歌集のハイネの詩による歌曲に示されるように、陰影にとんだドラマも堂々と表現しており、特に〈アトラス〉の雄渾さは、この歌曲のひとつの模範たり得る歌唱といえるでしょう。〈海辺にて〉から〈影法師〉に至るまでのほの暗さについても、プライの歌唱は、まるでオペラの一シーンのようであり、曲の醸し出す絶望感とよくシンクロしています。
ビアンコーニはニース音楽院でシモーヌ・デルヴェール=フェヴリエに学んだピアニストで、1985年のヴァン・クライバーン国際コンクールで第2位を受賞しています。
本録音は、クライバーン・コンクールに出場する頃に録音されたものということになりますが、プライの歌唱に素直に伴奏をつけており、プライを支えるというよりは、プライからピアノの伴奏の極意を教わるような演奏になっています。
レルシュタープやザイドルの詩による部分では溌剌としたピアノが若々しいプライの歌唱とよくかみ合っていますが、ハイネの詩による歌曲では、プライに追随する形になっています。さらにキャリアを積んだ今日のビアンコーニであれば、もっと積極的にロマンティックな音楽作りに関与できるのではないかと思います。
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