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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Maurice Ravel: Trio en la mineur pour piano, violon et violoncelle
Lucette Descaves (Pf)
Jean Pasquier (Vn)
Étienne Pasquier (Vc)
(Rec. 1960s)
◈Albert Roussel: Trio en fa majeur pour flûte, alto et violoncelle, op.40
Jean-Pierre Rampal (Fl)
Pierre Pasquier (Vla)
Étienne Pasquier (Vc)
(Rec. 1960s)
◈Albert Roussel: Trio en la mineur pour violon, alto et violoncelle, op.58
Le Trio Pasquier
{Jean Pasquier (Vn), Pierre Pasquier (Vla), Étienne Pasquier (Vc)}
(Rec. 1960s)



フランスの往年の弦楽三重奏団、パスキエ・トリオをフィーチャーしたアルバムです。
パスキエ・トリオは、ジャン(Jean Pasquier, 1904-1992)、ピエール(Pierre Pasquier, 1902-1986)、エティエンヌ(Étienne Pasquier, 1905-1997)の3人兄弟姉妹で結成したトリオでした。特にエティエンヌは、オリヴィエ・メシアンの《世の終わりのための四重奏曲》の初演でチェロ・パートを受け持ったことで知られています。
本CDでは、3人揃っての演奏が、アルベール・ルーセル(Albert Roussel, 1869-1937)の弦楽三重奏曲で堪能できます。

モーリス・ラヴェル(Maurice Ravel, 1875-1937)のピアノ三重奏曲は、ピエール・パスキエが抜けて、ピアニストのリュセット・デカーヴ(Lucette Descaves, 1906-1993)が共演し、ルーセルのフルート三重奏曲では、ジャン・パスキエが抜けてジャン=ピエール・ランパル(Jean-Pierre Rampal, 1922-2000)が共演しています。
デカーヴは、マルグリット・ロンとイヴ・ナットに師事した人で、パリ音楽院の名教授として知られ、当時の前衛音楽にも理解を示した名ピアニストでした。
ランパルは、20世紀フランスのフルート業界の頭目みたいなフルーティストで、マルセイユ音楽院の教授だった父親からフルートの技術を叩きこまれ、大体の曲であればすぐに吹きこなしてしまうというテクニックの持ち主でした。

ラヴェルのピアノ三重奏曲は、1914年の作品です。1915年の1月末ににアルフレッド・カゼッラのピアノとガブリエル・ヴィヨームのヴァイオリン、ミシェル・フイヤールのチェロで初演されてから、フランスが誇る20世紀のピアノ三重奏曲の名曲として扱われています。曲は4つの楽章からなり、特に第2楽章には「パントゥム」(Pantoum)、第3楽章には「パッサカーユ」(Passacaille)というタイトルをつけています。
パントゥムというのは、インドネシアのあたりに住むマレー人の短詩のことで、同じフレーズを繰り返しながら文脈を変えていく、その独特の手法に興味を持ったラヴェルが、その手法を音楽に取り入れたものと思われます。
パッサカーユは、いわゆるパッサカリアで、ピアノとチェロとヴァイオリンが橋渡しをしながら提示する主題を使って一つのクライマックスをつくる緩徐楽章です。最終楽章は「フィナーレ」と題され、ピアノがソリスティックに活躍し、煌びやかな音楽を形作ります。
イニシアチヴはデカーヴが握り、デカーヴの骨格に弦楽器の二人が肉付けをしていくというスタンスのアンサンブルですが、しっかりとした骨格に施された肉付けは、過不足のない絶妙なプロポーションです。常設のピアノ・トリオも顔負けの精妙な駆け引きの妙が光る名演奏です。

ルーセルは、元々海軍士官でしたが、1894年に退役してから作曲家に転身したという経歴を持っています。
そのために、ヴァンサン・ダンディの主宰するスコラ・カントールムに入学し、ダンディから音楽理論を学んでいます。また、その成績の優秀さから、学生時代からスコラ・カントールムの教諭も兼任し、エリック・サティの和声法の先生を務めたこともあります。
堅牢な造形を好んだルーセルですが、1929年にたった2週間で完成させたといわれるフルート三重奏曲は、どこかユーモラスな味わいを持っています。
弦楽三重奏のヴァイオリンの代わりにフルートを置くという、ちょっと変則的な編成ですが、ヴィオラとチェロという渋好みの音色にふんわりとしたフルートの音色が乗り、何とも言えない風合いを醸しだしています。
急-緩-急の三章からなり、両端楽章はプロコフィエフからアイロニーを抜き取り、仄かな香気を加えたような音楽になっています。ひねりを加えたハーモニーで静謐な世界を築き上げる第2楽章も素晴らしく、20世紀前半のフランスの室内楽の魅力を濃縮した感があります。
ランパルのフルートは、ふくよかさと輝かしさを併せ持っていますが、弦楽パートの二人をないがしろにすることはありません。第3楽章のラスト・スパートなど、スリリングな面白さがありますが、三者に技術的な限界を感じさせることはありません。

弦楽三重奏曲は、作曲者が死の年に作り上げた作品で、これもまた急-緩-急の三章仕立てです。
死を前にした作曲者ならではの切迫感はなく、まだまだ十数年は生きられるのではないかと思われるような精悍さがあります。健康的に明るい第1楽章、濃密な表情を織り上げる表現意欲の旺盛な第2楽章、躍動的な第3楽章へと続き、まるでオーケストラなみの充実感を味わわせてくれます。
パスキエ・トリオの演奏は、荒っぽいようでいて、その実練り上げられた周到さを感じさせるもの。外面を整えるのではなく、作品の生命力を引き出すことに主眼を置いたアンサンブルです。「天網恢恢疎にして漏らさず」という言葉がぴったりくる演奏でした。精力的な音楽を生き生きと再現し、ルーセルの音楽の魅力を十分に引き出しています。

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