1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
◈Johann Sebastian Bach: Violin Concerto No.2 in E major, BWV1042
◈Ludwig van Beethoven: Violin Concerto in D major, op.61
Georges Enesco (Vn)
University of Illinois Orchestra / John Kuypers
(Rec. 16 February 1949, University of Illinois) Live Recording with Applause
◈Johann Sebastian Bach: Fugue from Violin Solo Sonata No.1 in G minor, BWV1001Georges Enesco (Vn)
(Rec. 16 February 1949, University of Illinois) Live Recording with Applause
ジョルジェ・エネスク(George Enescu, 1881-1955)がアメリカのイリノイ大学で行ったコンサートの記録です。
本CDでは、フランス風の綴りのジョルジュ・エネスコ(Georges Enesco)になっております。
演目はヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685-1750)のヴァイオリン協奏曲第2番とルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven, 1770-1827)によるニ長調のヴァイオリン協奏曲の2曲で、J.S.バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番のフーガをアンコールとして弾いています。
エネスクは、ロベルト・フックスやジュール・マスネ、ガブリエル・フォーレらから作曲を学び、ヨーゼフ・ヘルメスベルガーJr.やマルタン・ピエール・マルシックにヴァイオリンを師事したルーマニアの音楽家です。
オーストリアやフランスの音楽文化を貪欲に取り込みながら、決してその文化に染まりきらず、ルーマニア独自の音楽のあり方を模索し続けた人であり、そのために母国ルーマニアでは英雄視されています。
指揮者、指導者、ピアニストとしても活躍し、本人は作曲家としての評価にこだわっていましたが、生前のエネスクは、20世紀有数の名ヴァイオリニストとして知られていました。
エネスクは、1950年に演奏家としてリタイアを表明していたということなので、この1949年のイリノイ大学でのコンサートは、演奏家としてのエネスコの最晩年の記録ということになります。
一連の協奏曲で伴奏を務めるのは、ジョン・マリヌス・カイパース(John Marinus Kuypers, 1900-1993)の指揮するイリノイ大学管弦楽団です。カイパースは、コーネル大学やイリノイ大学で合唱や管弦楽の指導をしていた教授で、イリノイ大学でのコンサートでは、マイラ・ヘスやイーゴリ・ストラヴィンスキーなど、音楽界の名士たちをゲストに呼び、質の高いコンサートを行っていたようです。
当時、エネスクは、アメリカでもハーヴァード大学やイリノイ大学でも講座を持っており、そうしたつながりから、イリノイ大学でのコンサートに客演することになったようです。
J.S.バッハの音楽について、かつてルーマニアの王妃から全集の楽譜を下賜され、その研究に没頭したこともあり、エネスクは一家言を持っています。
エネスクは、J.S.バッハの音楽を、当時の様式や時代考証の忠実さという点とは別の地点から俯瞰しており、彼の音楽から人間の業を引きずり出そうとしているかのようです。
ヴァイオリン協奏曲第2番(BWV1042)の演奏は、ヴァイオリンを弾くというよりも、ヴァイオリンでJ.S.バッハとは何かをレクチャーするかのような気概に満ちており、オーケストラの伴奏などお構いなしに、自由奔放なフレージングで、J.S.バッハを語っています。
カイパースの伴奏は、エネスクの捉え所のない語り口に、ところどころ振りまわされていますが、随所で伴奏のズレをうまく調整し、手慣れた職人芸を垣間見せています。
エネスクの闊達な語り口は、アンコールで披露している無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番のフーガで、より一層自由になり、自分の信念を語るかのような気迫で、作品の様式的把握を吹き飛ばしています。
ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、第1楽章冒頭でオーケストラががっちりとした構えを作っていますが、委細構わぬエネスクの暴れっぷりが面白い演奏です。
技術的にはガタガタで、楽譜とは違う音もひっかいていますが、勝手知ったる我が家とばかりに、大胆に弾き崩しています。第2楽章のネットリとした歌い口など、何をしでかすつもりなのか気が抜けず、全く退屈しません。ベートーヴェンと一緒に飲み歩いているかのような錯覚にとらわれる演奏ですが、勘所をしっかり心得て自由に弾いているので、音楽が破綻することはありません。
カイパースの指揮も、エネスコに振り回されることなく、随所で音楽を引き締め、流れが停滞するのを巧みに防いでいます。
美しいか否かを通り越した、やりたい放題の演奏ですが、実演で聴いたら、さぞや面白かったことでしょう。
本CDでは、フランス風の綴りのジョルジュ・エネスコ(Georges Enesco)になっております。
演目はヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685-1750)のヴァイオリン協奏曲第2番とルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven, 1770-1827)によるニ長調のヴァイオリン協奏曲の2曲で、J.S.バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番のフーガをアンコールとして弾いています。
エネスクは、ロベルト・フックスやジュール・マスネ、ガブリエル・フォーレらから作曲を学び、ヨーゼフ・ヘルメスベルガーJr.やマルタン・ピエール・マルシックにヴァイオリンを師事したルーマニアの音楽家です。
オーストリアやフランスの音楽文化を貪欲に取り込みながら、決してその文化に染まりきらず、ルーマニア独自の音楽のあり方を模索し続けた人であり、そのために母国ルーマニアでは英雄視されています。
指揮者、指導者、ピアニストとしても活躍し、本人は作曲家としての評価にこだわっていましたが、生前のエネスクは、20世紀有数の名ヴァイオリニストとして知られていました。
エネスクは、1950年に演奏家としてリタイアを表明していたということなので、この1949年のイリノイ大学でのコンサートは、演奏家としてのエネスコの最晩年の記録ということになります。
一連の協奏曲で伴奏を務めるのは、ジョン・マリヌス・カイパース(John Marinus Kuypers, 1900-1993)の指揮するイリノイ大学管弦楽団です。カイパースは、コーネル大学やイリノイ大学で合唱や管弦楽の指導をしていた教授で、イリノイ大学でのコンサートでは、マイラ・ヘスやイーゴリ・ストラヴィンスキーなど、音楽界の名士たちをゲストに呼び、質の高いコンサートを行っていたようです。
当時、エネスクは、アメリカでもハーヴァード大学やイリノイ大学でも講座を持っており、そうしたつながりから、イリノイ大学でのコンサートに客演することになったようです。
J.S.バッハの音楽について、かつてルーマニアの王妃から全集の楽譜を下賜され、その研究に没頭したこともあり、エネスクは一家言を持っています。
エネスクは、J.S.バッハの音楽を、当時の様式や時代考証の忠実さという点とは別の地点から俯瞰しており、彼の音楽から人間の業を引きずり出そうとしているかのようです。
ヴァイオリン協奏曲第2番(BWV1042)の演奏は、ヴァイオリンを弾くというよりも、ヴァイオリンでJ.S.バッハとは何かをレクチャーするかのような気概に満ちており、オーケストラの伴奏などお構いなしに、自由奔放なフレージングで、J.S.バッハを語っています。
カイパースの伴奏は、エネスクの捉え所のない語り口に、ところどころ振りまわされていますが、随所で伴奏のズレをうまく調整し、手慣れた職人芸を垣間見せています。
エネスクの闊達な語り口は、アンコールで披露している無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番のフーガで、より一層自由になり、自分の信念を語るかのような気迫で、作品の様式的把握を吹き飛ばしています。
ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、第1楽章冒頭でオーケストラががっちりとした構えを作っていますが、委細構わぬエネスクの暴れっぷりが面白い演奏です。
技術的にはガタガタで、楽譜とは違う音もひっかいていますが、勝手知ったる我が家とばかりに、大胆に弾き崩しています。第2楽章のネットリとした歌い口など、何をしでかすつもりなのか気が抜けず、全く退屈しません。ベートーヴェンと一緒に飲み歩いているかのような錯覚にとらわれる演奏ですが、勘所をしっかり心得て自由に弾いているので、音楽が破綻することはありません。
カイパースの指揮も、エネスコに振り回されることなく、随所で音楽を引き締め、流れが停滞するのを巧みに防いでいます。
美しいか否かを通り越した、やりたい放題の演奏ですが、実演で聴いたら、さぞや面白かったことでしょう。
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