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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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CD1:
◈Nicolò Paganini: 24 Caprices, op.1
Ruggiero Ricci (Vn)
(Rec. 1950)

CD2:
◈Nicolò Paganini: Violin Concerto No.1 in D major, op.6
◈Nicolò Paganini: Violin Concerto No.2 in B minor, op.7
Ruggiero Ricci (Vn)
London Symphony Orchestra / Anthony Collins
(Rec. February 1955, Kingsway Hall, London)
◈Maurice Ravel: Tzigane
Ruggiero Ricci (Vn)
L'Orchestre de la Suisse Romande / Ernest Ansermet
(Rec. March 1959, Victoria Hall, Geneva)

CD3:
◈Richard Strauss: Violin Sonata in E flat major, op.18
Ruggiero Ricci (Vn)
Carlo Bussotti (Pf)
(Rec. June 1953, Decca Studios, London)
◈Carl Maria von Weber: 6 Sonatas Progressives
Ruggiero Ricci (Vn)
Carlo Bussotti (Pf)
(Rec. February 1954, London)

CD4:
◈Pablo de Sarasate: "Carmen" Fantasie de concert, op.25
◈Pablo de Sarasate: Zigeunerweisen, op.20
◈Camille Saint-Saëns: Havanaise, op.83
◈Camille Saint-Saëns: Introduction and Rondo capriccioso, op.28
Ruggiero Ricci (Vn)
London Symphony Orchestra / Piero Gamba
(Rec. September 1959, Kingsway Hall, London)
◈Édouard Lalo: Symphonie Esoagnole in D minor, op.21
Ruggiero Ricci (Vn)
L'Orchestra de la Suisse Romande / Ernest Ansermet
(Rec. March 1959, Victoria Hall, Geneva)

CD5:
◈Paul Hindemith: Sonata for Solo Violin, op.31-1
◈Paul Hindemith: Sonata for Solo Violin, op.31-2
◈Sergei Prokofiev: Sonata for Solo Violin, op.115
Ruggiero Ricci (Vn)
(Rec. April 1960, Kingsway Hall, London)
◈Aram Khachaturian: Violin Concerto
Ruggiero Ricci (Vn)
London Symphony Orchestra / Anatole Fistoulari
(Rec. July 1956, Kingsway Hall, London)



ルッジェーロ・リッチ(Ruggiero Ricci, 1918-)が、1950年代から1960年にかけてDeccaレーベルに残した録音集です。といっても、全録音を網羅しているわけではなく、例えば、師匠のルイス・パーシンガーを伴奏ピアニストに据えた録音などは収録されていません。
ただし、リッチのレパートリーの広さとその芸風を大まかに知るには格好のCDセットです。

カリフォルニアでイタリア系移民の子として生まれたリッチは、幼少期に父親からヴァイオリンの手ほどきを受けた後、パーシンガー門下となり、10歳でコンサート・デビューを飾りました。
「天才少年」としてキャリアをスタートさせたリッチですが、第二次世界大戦が勃発する前には、ドイツでアドルフ・ブッシュやゲオルク・クーレンカンプの下で研鑽を積んでいます。
戦時中は慰問演奏で無伴奏ヴァイオリンの作品を数多く取り上げ、その成果は本CD集の5枚目のCDに収録されているパウル・ヒンデミット(Paul Hindemith, 1895-1963)やセルゲイ・プロコフィエフ(Sergei Prokofiev, 1891-1953)の作品演奏に聴くことができます。
しかし、リッチの名を一気に高めたのは、ニコロ・パガニーニ(Nicolò Paganini, 1782-1840)のカプリース集の全曲録音です。
この全集録音に先立って、オシー・レナルディが、このカプリース集をフェルディナント・ダヴィットがピアノ伴奏をつけたバージョンで全曲録音を果たしていましたが、リッチは、敢えて全曲を原曲の指定通りの無伴奏で録音し、超絶技巧のヴァイオリニストとしての声望を高めたのでした。

本CD集の1枚目のCDに収録されているのは、1950年のカプリース全曲録音で、特に日本では世界初録音として知られているものです。ただ、世界初録音と銘打って発売しているCDには、Istituto Discografico Italiano(IDIS)が1947年の録音として、【IDIS 309】という規格番号で発売しているものがあります。
本CD集に収録されている演奏とIDISで発売されている演奏を比べてみると、音質面での多少の差(本CD集のほうが復刻のコンディションは良好)はあるものの、演奏スタイルに差はみられず、実は同じ音源なのではないかと思わせられます。
Deccaの録音データが間違っているのか、はたまたIDISのCDパッケージに記載されているデータが間違っているのかは、よくわかりません。ひょっとすると、はたまたどっちのデータも正しくないのかもしれませんし、私の耳が、両者の違いを聴き分けられなかったのかもしれません。
DeccaとIDISが同じ音源だとして、どっちの録音年が正しいのかというのも、安直に答えを出せない問題です。
Deccaレーベルは、かつて日本でLondonレーベル名義で発売していたころ、1959年の録音を1950年の録音と取り違えてリリースしたことがある(詳しくは以前の記事を参照)ので、どこまでDeccaレーベルを信用できるかは分かりません。
ただ、この1950年の録音とされる本演奏を、Deccaサイドはカプリース全曲の無伴奏による世界初録音と見なしているようです。

パガニーニのカプリース集について、1959年の録音と比べると、本CD集収録の録音は、スピードと勢いをより重視した演奏になっています。
第1番のカプリースのアルペジオの弾き始めも、1959年の録音と比べると、最初からハイ・スピードで飛ばして、自分のヴィルトゥオージティを誇示しているように聴こえます。第2番の急速な音程跳躍も、とにかくスピードを上げて弾き飛ばしていますが、速く弾くことにこだわり過ぎて仕上がりが雑になってしまっています。気迫で一気に弾いた第14番や第17番のカプリースなどでは、その気迫の漲った演奏と曲想がしっかりとマッチしています。
全体的に粗削りで、超絶技巧で作品をねじ伏せたような印象を受けます。そのためか、じっくり聴きこむには表現の単調さが気になります。ただ、全曲録音に挑む気概はしっかり伝わってきます。今日では、本録音よりも練り上げられた演奏は存在すると思います。しかし、この曲の録音の選択肢がなかった時代では、リッチの演奏は、一つの快挙だったのです。

本CD集の2枚目のCDに収録されているのは、パガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番と第2番です。
パガニーニのカプリース集の録音で名を上げたリッチは、パガニーニ作品のスペシャリストと見做され、協奏曲の録音も手掛けることになったのでした。
本CDに収録されているのは、1955年に録音された、アンソニー・コリンズ(Anthony Collins, 1893-1963)が指揮するロンドン交響楽団との演奏です。
コリンズはイギリスの指揮者で、グスターヴ・ホルスト門下の作曲家でもあります。元々、オーケストラ・プレイヤーとしてヴァイオリンやヴィオラを弾いていたコリンズでしたが、1938年ごろには作曲家兼指揮者として転身し、アメリカとイギリスを往復しながら演奏活動を展開していたようです。
このパガニーニの協奏曲では、コリンズがオーケストラの譜面を校訂し、独自の版でリッチのヴァイオリン独奏をサポートしています。
リッチのヴァイオリン演奏は、カプリースの録音の時は緊張感が漲っていましたが、オーケストラとの録音では幾分リラックスしており、余裕の表情で超絶技巧を繰り出しています。
コリンズの伴奏は、少々粗めながら、要所要所でしっかりオーケストラを鳴らしており、簡にして要を得たサポートです。
ただ、カットが気になる人にとっては、ところどころ不自然なワープをしているようで、違和感を感じるかもしれません。
なお、この2枚目のCDには、モーリス・ラヴェル(Maurice Ravel, 1875-1937)のツィガーヌが収録されています。このツィガーヌでは、エルネスト・アンセルメ(Ernest Ansermet, 1883-1969)の率いるスイス・ロマンド管弦楽団が伴奏を務めていますが、無伴奏の前半部の大見得切り方が堂に入っていました。この作品で、ラヴェルはパガニーニ的な技巧でハンガリーの野性味と奔放さを表現しようとしましたが、リッチの演奏は、奔放さの点ではもっと出来るのではないかと思わせられます。後半部分は、スイス・ロマンド管弦楽団のカラフルな音色をしっかりと堪能できますが、リッチの存在感は今一つ残りません。

本CDの3枚目のCDは、イタリア人ピアニストのカルロ・ブソッティ(Carlo Bussotti, 1922-2002)を伴奏者に迎えた室内楽です。ブソッティは、4歳でピアノをはじめ、13歳でケルビーニ音楽院を卒業してピアニストとしてデビューした人で、イタリア本国では天才少年として注目を集めた人でした。
演目は、リヒャルト・シュトラウス(Richard Strauss, 1864-1949)のヴァイオリン・ソナタとカール・マリア・フォン・ウェーバー(Carl Maria von Weber, 1786-1826)の6つの段階的ソナタです。

R.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタは、16歳の頃の作品。小さいころから名うてのホルニストだった父親の人脈で英才教育を受けた彼は、ピアノやヴァイオリンをはじめとするオーケストラのあらゆる楽器に精通し、作曲家としても大変早熟でした。その早熟ぶりは、このヴァイオリン・ソナタを聴いても確認できるかと思います。
16歳になったR.シュトラウスは、父の好む絶対音楽(音の配列の妙で音楽そのものを表現する音楽)の方向性に物足りなくなり、父の嫌うリヒャルト・ヴァーグナーの音楽に傾倒していくようになりました。
この作品は、そうした父の好みから決別しようとする頃に書かれた音楽で、これでもかというくらいに音符が詰め込まれています。それはまるで、音楽それ自体で表現できることの全てを投入して、やれるだけのことを全てやったとでもいいたいかのようです。
形式面では、伝統的な3楽章構成をとり、父親好みの音楽になっていますが、そこには、R.シュトラウスの創意がギッチギチに詰まっています。

ウェーバーのヴァイオリン・ソナタ集(フルートの演奏でも可)は、元々アンドレ出版社のために作曲された作品です。
この曲は、1810年に作曲されていますが、この作品を作曲するまでに、ウェーバーは1806年に父親の口出しのおかげでブレスラウ(現:ヴロツワフ)の歌劇場の指揮者の座を追われ、カールスルーエでの就職活動も不首尾に終わっていました。干上がっていたウェーバーに救いの手を差し伸べたのがアンドレ出版社でした。ウェーバーの作った交響曲第1番を買い取ったアンドレ社のために、ヴァイオリンの教則本の作成を引き受け、その結果生まれたのが、このヴァイオリン・ソナタ集でした。ただ、アンドレ社は、作品の出来があまりに芸術的で教則本に適さないと考えて作品を受け取らず、ウェーバーはジムロック出版社からこの作品集を出版してもらうことになりました。
6つのソナタは、ヘ長調の第1番、ト長調の第2番、ニ短調の第3番、変ホ長調の第4番、イ長調の第5番、ハ長調の第6番からなり、第2番までが3楽章からなり、あとの4曲は2楽章構成になります。
最近では、マリア・テレジア・フォン・パラディスの作とされるシチリアーノが、このソナタ第1番の第2楽章を原曲としているのではないかと言われて、多少注目を浴びました。

リッチのヴァイオリンは、ブソッティ(あるいは”ブゾッティ”とも)のいかついピアノに少々押され気味です。
R.シュトラウスのヴァイオリン・ソナタ自体が、ピアノの活躍の比率が高いうえに、ヴァイオリンも技巧的に書かれているので、全体的にガチャガチャした印象になっています。ひたすらヴァイオリンとピアノが取っ組み合いの喧嘩をする作りなので、聴いているほうは、やや食傷してしまうかもしれません。
ウェーバーの作品では、リッチのヴァイオリンが、少々音楽をもてあまし気味で、特にこれといった聴きどころは見つかりませんでした。

本CD集の4枚目は、パブロ・デ・サラサーテ(Pablo de Sarasate, 1844-1908)のツィゴイネルワイゼンとカルメン幻想曲、(Camille Saint-Saëns, 1835-1921)の序奏とロンド・カプリチオーソとハバネラの4曲が選ばれています。
伴奏は、ピエロ・ガンバ(Piero Gamba, 1936-)の指揮するロンドン交響楽団が受け持っています。
ガンバは、元々天才少年指揮者のピエリーノ・ガンバ(Pierino Gamba)としてキャリアをスタートさせたイタリア人指揮者。芝居っ気なしのストレートさでオーケストラを鳴らし、そのテカテカした明るさがリッチのヴァイオリン独奏とうまくマッチしています。
ただ、この4曲ではかなりCDにブランクが出来てしまうため、アンセルメ率いるスイス・ロマンド管弦楽団の伴奏によるエドゥアール・ラロ(Édouard Lalo, 1823-1897)のスペイン交響曲がカップリングされています。
ラロのスペイン交響曲は、リッチのヴァイオリンの線が細く、アンセルメの立派な伴奏と比べると、やや貫録負けしています。

本CD集の最後のCDは、ヒンデミットの無伴奏ソナタ2曲とプロコフィエフの無伴奏ソナタに、アラム・ハチャトゥリアン(Aram Khachaturian, 1903-1978)のヴァイオリン協奏曲をカップリングしています。
ヒンデミットの作品は、1924年に作曲された作品。ヒンデミットは、作曲当時、アマール弦楽四重奏団のメンバーとしてヴィオラを弾いていて、第1番の方を、その弦楽四重奏団の主催者だったリッコ・アマールに献呈し、第2番のほうを、同団の第2ヴァイオリンを弾いていたヴァルター・カスパールに献呈しています。
この頃のヒンデミットは、既に自分の語法を確立していて、調性感覚のない作品を書き上げています。
第2番の最終楽章には、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの《春への憧れ》(K596)のメロディを拝借して変奏曲としていますが、変奏曲というよりは、変容といったほうがいいかもしれません。
プロコフィエフの作品は1947年に作曲されたものです。ボリショイ劇場のオーケストラのヴァイオリン奏者たちが、斉奏でバロック音楽のヴァイオリン曲を演奏に興じているのを聴いて書き下ろされました。
ただ、斉奏の編成では、演奏機会が多くないため、作曲者により独奏での演奏も許可されており、今日では独奏曲として扱われています。
演奏については、20世紀の音楽の禁欲的な響きとリッチのヴィヴラートをふんだんにかけた音の出し方の様式に、多少の齟齬が認められます。パガニーニのカプリース集を弾きこなした人だけに、ボウイングの確かさは折り紙つきですが、その演奏にスマートさが感じられないとすれば、リッチのヴィヴラートの性質に原因があるものと思われます。
なにはともあれ、第二次世界大戦中の慰問演奏で培ってきた舞台度胸あればこその堂々とした弾きっぷりに妙味があります。

A.ハチャトゥリアンの作品は1940年の作です。
1938年に彼の母国アルメニアの首都エレヴァンの音楽祭に出向いたときに収集した民謡に刺激されたハチャトゥリアンは、その民謡研究の成果の一つとして、この協奏曲の作曲をはじめ、ダヴィト・オイストラフの助言を受けながら筆をすすめたそうです。
この作品は、急-緩-急の三楽章構成をとり、両端楽章にはしっかりカデンツァも用意していますが、ハチャトゥリアンは、頑張って自分で協奏曲のカデンツァを書きました。
このカデンツァについては、オイストラフの書いたカデンツァのほうが広く知られていますが、リッチは敢えてハチャトゥリアン本人のカデンツァを使用しているとのこと。

本CDでは、アナトール・フィストゥラーリ(Anatole Fistoulari, 1907-1995)の指揮するロンドン・フィルハーモニー管弦楽団が伴奏を担当しています。
フィストゥラーリは、ロシア出身でイギリスに帰化した指揮者で、1942年から翌年にかけて、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を務めていました。バレエやオペラの指揮に長じた人らしく、協奏曲の伴奏にも職人的な巧さを発揮する指揮者です。
リッチの演奏は非常に慎重で、激情に流されることなく、結構冷静に構えています。
フィストゥラーリの伴奏も、リッチの独奏を煽るようなことをせず、手堅くアンサンブルをまとめています。
そのため、第3楽章は、馬車が盗賊の手から逃れようと必死で走るような臨場感が削がれ、鈍重な印象を受けますが、その分濃密にソロとヴァイオリンがやりとりをしています。スピード感よりも量感を重んじた演奏であり、リッチがただの技術屋ではなかったことを窺わせてくれます。

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