1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
◈Antonio Vivaldi: Concerto No.1 in E major, RV269 "Spring"
◈Antonio Vivaldi: Concerto No.2 in G minor, RV315 "Summer"
◈Antonio Vivaldi: Concerto No.3 in F major, RV293 "Autumn"
◈Antonio Vivaldi: Concerto No.4 in F minor, RV297 "Winter"
Orchestra dell'Accademia di St.Cecilia / Bernardino Molinari
(Rec. 1942, Roma)
アントニオ・ヴィヴァルディ(Antonio Vivaldi, 1678-1741)は、イタリアはヴェネツィア生まれの作曲家です。
彼は、生前はオペラの作曲家としてヨーロッパ中で高名を馳せていましたが、500曲以上の協奏曲を世に送り出し、「急-緩-急」という協奏曲のスタンダードな三楽章形式の定着に一役買ったことでも広く知られています。
今日、ヴィヴァルディの作品でよく知られているのは、「四季」という4つのヴァイオリン協奏曲の連作です。
この作品は、《和声と創意の試み》(Il cimento dell'armonia e dell'inventione)というヴィヴァルディの作品集に収録されています。この作品集自体は、アムステルダムのル・セーヌ出版社から1725年に出版されましたが、こういった作品集は、往々にして作曲家が作り蓄えていたものをアンソロジーという形で出版することが多いため、「四季」の連作について、一概に1725年の作品だとは言い切れません。
この連作は、作品集として纏められる以前から筆写譜の形で出回っていたらしく、少なくとも1720年頃には既に作曲されていたのではないかと考えられています。
この「四季」の連作のユニークな点は、作者不詳(おそらくヴィヴァルディ自身が作った?)の詩片が楽譜に添えられており、この詩片のイメージに沿って曲が作られている点が挙げられます。
オペラの作曲家としても十分な経験を積んでいたヴィヴァルディは、風景や心象の描写などはお手の物でしたが、イタリアでは器楽の分野で風景や心象を描くような音楽はあまり開拓されていませんでした。
この連作で、春夏秋冬の風物詩とその気候に合わせた人々の心象を描き出し、イタリア器楽における新しい表現の実験を成功させることになりました。1725年の正式な出版の際に《和声と創意の試み》とタイトルをつけたのには、まさに新たな表現方法へのチャレンジという作曲者の気概が関係していると思われます。
なお、ヴィヴァルディが、こうした詩片のイメージと音楽の結合という策を考案したのは、おそらく当時の彼の勤務事情が関係しているのではないかと推測されます。
ヴィヴァルディは、1718年に、15年間勤続したピエタ慈善院の音楽教育と楽曲提供の仕事に区切りをつけ、マントヴァの宮廷の楽長という肩書で活動しています。ヴィヴァルディが楽長になったマントヴァは、ヘッセン=ダルムシュタット方伯フィリップが宮廷を構えていました。ヴィヴァルディは、1720年頃まで、このヘッセン=ダルムシュタット家のお抱え楽師として活動していたのです。
ヘッセン=ダルムシュタット家は、神聖ローマ帝国の名家です。そして、神聖ローマ帝国時代のドイツでは、ヨハン・クーナウやハインリヒ・イグナツ・フランツ・フォン・ビーバーという作曲家が活躍していて、聖書を題材にした器楽曲や、情景描写に特化したソナタ等を作曲していました。おそらくヴィヴァルディは、これらドイツの作曲家の作品に触発されたのではないかと考えられます。
本CDに収録されているのは、ベルナルディーノ・モリナーリ(Bernardino Molinari, 1880-1952)の指揮による演奏です。オーケストラは、ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団というクレジットになっていますが、録音当時の1942年は、まだアウグステオ管弦楽団(Augusteo Orchestra)という名称を使っていました。なお、ヴァイオリン独奏者の名前はクレジットされていません。
モリナーリは、ローマ聖チェチーリア音楽院(当時は「リセオ音楽院」)でスタニスラオ・ファルキとレミジオ・レンツィに学んだ指揮者です。1912年から、このアウグステオ管弦楽団の首席指揮者を務め、また母校の指揮科の教授も務めていました。同僚のオットリーノ・レスピーギの交響詩《ローマの松》を1924年に初演したのも、彼の業績として特筆されるでしょう。
ヴィヴァルディの「四季」の連作は、後年、イ・ムジチが演奏・録音して大ヒットしましたが、イ・ムジチは、ローマ聖チェチーリア音楽院の出身者で結成されており、この録音にも、ひょっとするとイ・ムジチのメンバーが参加しているのかもしれません。本録音は、この連作の世界初録音というだけにとどまらず、イ・ムジチのスタイルのルーツを知る録音とも言えそうです。
しかし、イ・ムジチの演奏と比べると、表情付けがかなり大仰で、ゴツゴツした感じの演奏に仕上がっています。
有名な〈春〉の出だしも、たっぷりと楽器を鳴らし、ゆったりとしたテンポで歌いこんでいます。
録音は、独奏ヴァイオリンをクローズ・アップした旧来的な協奏曲録音の方式ですが、肝心のヴァイオリン独奏は、幾分緊張した面持ちで、ソリスティックな遊び心や余裕といったものは一切ありません。
合奏の響き共々、古楽器演奏に慣れた耳には、いささか豊満というよりは肥満に近い響きで鈍重な感じがしますが、〈冬〉の第2楽章などのように、ねっとりとした歌いくちが功を奏し、深い趣を湛えているものもあります。
〈夏〉のように、フル・パワーの迫力で押し切る演奏もあり、今日のアッサリした演奏に物足りなさを感じる向きには、かえって新鮮な演奏かもしれません。
彼は、生前はオペラの作曲家としてヨーロッパ中で高名を馳せていましたが、500曲以上の協奏曲を世に送り出し、「急-緩-急」という協奏曲のスタンダードな三楽章形式の定着に一役買ったことでも広く知られています。
今日、ヴィヴァルディの作品でよく知られているのは、「四季」という4つのヴァイオリン協奏曲の連作です。
この作品は、《和声と創意の試み》(Il cimento dell'armonia e dell'inventione)というヴィヴァルディの作品集に収録されています。この作品集自体は、アムステルダムのル・セーヌ出版社から1725年に出版されましたが、こういった作品集は、往々にして作曲家が作り蓄えていたものをアンソロジーという形で出版することが多いため、「四季」の連作について、一概に1725年の作品だとは言い切れません。
この連作は、作品集として纏められる以前から筆写譜の形で出回っていたらしく、少なくとも1720年頃には既に作曲されていたのではないかと考えられています。
この「四季」の連作のユニークな点は、作者不詳(おそらくヴィヴァルディ自身が作った?)の詩片が楽譜に添えられており、この詩片のイメージに沿って曲が作られている点が挙げられます。
オペラの作曲家としても十分な経験を積んでいたヴィヴァルディは、風景や心象の描写などはお手の物でしたが、イタリアでは器楽の分野で風景や心象を描くような音楽はあまり開拓されていませんでした。
この連作で、春夏秋冬の風物詩とその気候に合わせた人々の心象を描き出し、イタリア器楽における新しい表現の実験を成功させることになりました。1725年の正式な出版の際に《和声と創意の試み》とタイトルをつけたのには、まさに新たな表現方法へのチャレンジという作曲者の気概が関係していると思われます。
なお、ヴィヴァルディが、こうした詩片のイメージと音楽の結合という策を考案したのは、おそらく当時の彼の勤務事情が関係しているのではないかと推測されます。
ヴィヴァルディは、1718年に、15年間勤続したピエタ慈善院の音楽教育と楽曲提供の仕事に区切りをつけ、マントヴァの宮廷の楽長という肩書で活動しています。ヴィヴァルディが楽長になったマントヴァは、ヘッセン=ダルムシュタット方伯フィリップが宮廷を構えていました。ヴィヴァルディは、1720年頃まで、このヘッセン=ダルムシュタット家のお抱え楽師として活動していたのです。
ヘッセン=ダルムシュタット家は、神聖ローマ帝国の名家です。そして、神聖ローマ帝国時代のドイツでは、ヨハン・クーナウやハインリヒ・イグナツ・フランツ・フォン・ビーバーという作曲家が活躍していて、聖書を題材にした器楽曲や、情景描写に特化したソナタ等を作曲していました。おそらくヴィヴァルディは、これらドイツの作曲家の作品に触発されたのではないかと考えられます。
本CDに収録されているのは、ベルナルディーノ・モリナーリ(Bernardino Molinari, 1880-1952)の指揮による演奏です。オーケストラは、ローマ聖チェチーリア音楽院管弦楽団というクレジットになっていますが、録音当時の1942年は、まだアウグステオ管弦楽団(Augusteo Orchestra)という名称を使っていました。なお、ヴァイオリン独奏者の名前はクレジットされていません。
モリナーリは、ローマ聖チェチーリア音楽院(当時は「リセオ音楽院」)でスタニスラオ・ファルキとレミジオ・レンツィに学んだ指揮者です。1912年から、このアウグステオ管弦楽団の首席指揮者を務め、また母校の指揮科の教授も務めていました。同僚のオットリーノ・レスピーギの交響詩《ローマの松》を1924年に初演したのも、彼の業績として特筆されるでしょう。
ヴィヴァルディの「四季」の連作は、後年、イ・ムジチが演奏・録音して大ヒットしましたが、イ・ムジチは、ローマ聖チェチーリア音楽院の出身者で結成されており、この録音にも、ひょっとするとイ・ムジチのメンバーが参加しているのかもしれません。本録音は、この連作の世界初録音というだけにとどまらず、イ・ムジチのスタイルのルーツを知る録音とも言えそうです。
しかし、イ・ムジチの演奏と比べると、表情付けがかなり大仰で、ゴツゴツした感じの演奏に仕上がっています。
有名な〈春〉の出だしも、たっぷりと楽器を鳴らし、ゆったりとしたテンポで歌いこんでいます。
録音は、独奏ヴァイオリンをクローズ・アップした旧来的な協奏曲録音の方式ですが、肝心のヴァイオリン独奏は、幾分緊張した面持ちで、ソリスティックな遊び心や余裕といったものは一切ありません。
合奏の響き共々、古楽器演奏に慣れた耳には、いささか豊満というよりは肥満に近い響きで鈍重な感じがしますが、〈冬〉の第2楽章などのように、ねっとりとした歌いくちが功を奏し、深い趣を湛えているものもあります。
〈夏〉のように、フル・パワーの迫力で押し切る演奏もあり、今日のアッサリした演奏に物足りなさを感じる向きには、かえって新鮮な演奏かもしれません。
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