1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
CD1:
◈Franz Schubert: Piano Sonata No.19 in C minor, D958
◈Franz Schubert: Piano Sonata No.18 in G major, D894
◈Franz Schubert: Piano Sonata No.6 in E minor, D566
Walter Klien (Pf)
(Rec. Between November 1971 and September 1973)
CD2:
◈Franz Schubert: Piano Sonata No.16 in A minor, D845
◈Franz Schubert: Piano Sonata No.9 in B major, D575
◈Franz Schubert: Piano Sonata No.15 in C major, D840
Walter Klien (Pf)
(Rec. Between November 1971 and September 1973)
ヴァルター・クリーン(Walter Klien, 1928-1991)は、オーストリアのピアニスト。奥さんが日本人だったことや、NHKの番組でモーツァルトのピアノ音楽の講座を開いていたことから、日本に馴染みが深く、本人も大の親日家として知られていました。
クリーンは、ウィーン音楽院でヨーゼフ・ディヒラーに学んだほか、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリの薫陶も受けています。また、作曲法をパウル・ヒンデミットに学んでいたとのこと。
コンクール歴としては、1951年にブゾーニ国際ピアノ・コンクールでカール・エンゲルと2位を分かち合い、1953年のロン=ティボー国際音楽コンクールのピアノ部門で第7位に入賞しています。
1969年にはアメリカに進出し、VOXレーベルなどに録音を残しています。若き日のアルフレッド・ブレンデルの相手役としての録音が広く知られていましたが、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトのピアノ音楽や、ヨハネス・ブラームスのピアノ作品全集などの録音も手掛けていたことが知られています。
フランツ・シューベルト(Franz Schubert, 1797-1828)のピアノ・ソナタ全集も、クリーンの代表的な録音の一つに数えられます。
本CDは、そのシューベルトのピアノ・ソナタ全集の第1巻です。ただ、注意しておかなければいけないのは、クリーンの全集が未完成の楽章をすべて省略しているという点です。
本CDの最初に収録された第19番のソナタは、第20番および第21番と同じく、シューベルトが亡くなる年に作られました。作曲者本人は、モーツァルト門下の高名なピアニストであるヨハン・ネポムク・フンメルに献呈するつもりでしたが、生前に作品を刊行することはできず、1839年に刊行した時には、既にフンメルはこの世にいませんでした。
シューベルトは、生涯、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンを敬愛しており、主題労作にはベートーヴェンの影響が少なからず見られます。
また、他の第20番や第21番同様に、4楽章構成の厚手の作品に仕上げており、あわよくばベートーヴェンの交響曲のスケールにまで、ソナタを拡張しようという意図が隠されていたのかもしれません。
こうした交響曲的なソナタの創意は、1826年に作られた第18番のソナタにも見られます。
このソナタは、シューベルトが当初「幻想曲」として取り扱おうとしたことから、「幻想」のニックネームがつけられています。しかし、シューベルトの幻想は、決して夢物語ではなく、第3楽章のメヌエットで和音をガンガン鳴らすように、狂気を孕んだ苦悩が刻印されています。
第6番のソナタは、1817年の作。伝統的な3楽章による作品ですが、転調を自由自在に行い、複雑な表情を生み出している点に独創性が見られます。ただ、第3楽章は未完成のまま放置されており、クリーンは第3楽章をオミットして、第2楽章まで演奏しています。
第16番のソナタは、交響曲として作曲しようとしたのではないかと考えられる作品。
第15番のソナタと同じ1825年ごろの作品ですが、ピアノの書法が、いつになく厚手です。
転調のさせ方もずいぶん凝っていて、第4楽章はまるで迷宮に迷い込んだかと思うほどにコロコロと調が変わります。
第15番のほうは、「レリーク」という愛称が付けられていますが、これは出版する側が、シューベルトの絶筆と考えていたための愛称です。第2楽章までが完成し、第4楽章までが未完成だったため、クリーンは、完成した前半の2楽章のみ取り上げています。
第9番のソナタは、第6番のソナタと同じ時期に作曲された作品です。この作品は、全部で4楽章からなりますが、後年の作品とは発想がかなり異なり、全ての楽章をソナタ形式で染め上げている点がユニークでした。
また、ロ長調という、ちょっと特殊な調性を使っている点にも、シューベルトの実験精神が見てとれます。
こうして聴いてみると、シューベルトのピアノ・ソナタは、シューベルトにとって、音楽上の様々な実験場だったのではないかと思えてきます。
初期でこそ、18世紀に培われてきたピアノ・ソナタの流儀を墨守していますが、敬愛するベートーヴェンがそうしたように、シューベルトなりに流儀を拡張し、ピアノで演奏する交響曲のように組み立てるようになってきています。一方で、歌曲に使えそうなメロディを惜しげもなく投入しているので、美しい楽想がいたるところで明滅する音楽になっています。
ところどころに難所があるため、高い技量が要求されますが、シューベルトのピアノ・ソナタは、テクニックにものを言わせてガンガン弾き進んでも、思ったほどの演奏効果が与えられません。
いかなる要求にもうろたえず、強い集中力を持続させながら美しい音色で音楽を紡ぎあげることが要求されるためシューベルトのソナタは、ピアニストにとって大変な重労働なのです。
クリーンは、盤石のテクニックと美しい音色を生涯かけて磨きぬいてきたピアニストの一人であり、世界中をかけ回すような派手さこそなかったものの、堅実な演奏で人々を魅了してきたピアニストでした。
ソナタに敷き詰められたメロディの数々を、一つ一つ慈しむように弾くこれらの演奏は、まるで音楽の楽園へと導くようです。
個性的な表現で気を引くような演奏ではありませんが、昂った気分を徐々にクール・ダウンさせ、平和的な気分にさせてくれる演奏でした。
クリーンは、ウィーン音楽院でヨーゼフ・ディヒラーに学んだほか、アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリの薫陶も受けています。また、作曲法をパウル・ヒンデミットに学んでいたとのこと。
コンクール歴としては、1951年にブゾーニ国際ピアノ・コンクールでカール・エンゲルと2位を分かち合い、1953年のロン=ティボー国際音楽コンクールのピアノ部門で第7位に入賞しています。
1969年にはアメリカに進出し、VOXレーベルなどに録音を残しています。若き日のアルフレッド・ブレンデルの相手役としての録音が広く知られていましたが、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトのピアノ音楽や、ヨハネス・ブラームスのピアノ作品全集などの録音も手掛けていたことが知られています。
フランツ・シューベルト(Franz Schubert, 1797-1828)のピアノ・ソナタ全集も、クリーンの代表的な録音の一つに数えられます。
本CDは、そのシューベルトのピアノ・ソナタ全集の第1巻です。ただ、注意しておかなければいけないのは、クリーンの全集が未完成の楽章をすべて省略しているという点です。
本CDの最初に収録された第19番のソナタは、第20番および第21番と同じく、シューベルトが亡くなる年に作られました。作曲者本人は、モーツァルト門下の高名なピアニストであるヨハン・ネポムク・フンメルに献呈するつもりでしたが、生前に作品を刊行することはできず、1839年に刊行した時には、既にフンメルはこの世にいませんでした。
シューベルトは、生涯、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンを敬愛しており、主題労作にはベートーヴェンの影響が少なからず見られます。
また、他の第20番や第21番同様に、4楽章構成の厚手の作品に仕上げており、あわよくばベートーヴェンの交響曲のスケールにまで、ソナタを拡張しようという意図が隠されていたのかもしれません。
こうした交響曲的なソナタの創意は、1826年に作られた第18番のソナタにも見られます。
このソナタは、シューベルトが当初「幻想曲」として取り扱おうとしたことから、「幻想」のニックネームがつけられています。しかし、シューベルトの幻想は、決して夢物語ではなく、第3楽章のメヌエットで和音をガンガン鳴らすように、狂気を孕んだ苦悩が刻印されています。
第6番のソナタは、1817年の作。伝統的な3楽章による作品ですが、転調を自由自在に行い、複雑な表情を生み出している点に独創性が見られます。ただ、第3楽章は未完成のまま放置されており、クリーンは第3楽章をオミットして、第2楽章まで演奏しています。
第16番のソナタは、交響曲として作曲しようとしたのではないかと考えられる作品。
第15番のソナタと同じ1825年ごろの作品ですが、ピアノの書法が、いつになく厚手です。
転調のさせ方もずいぶん凝っていて、第4楽章はまるで迷宮に迷い込んだかと思うほどにコロコロと調が変わります。
第15番のほうは、「レリーク」という愛称が付けられていますが、これは出版する側が、シューベルトの絶筆と考えていたための愛称です。第2楽章までが完成し、第4楽章までが未完成だったため、クリーンは、完成した前半の2楽章のみ取り上げています。
第9番のソナタは、第6番のソナタと同じ時期に作曲された作品です。この作品は、全部で4楽章からなりますが、後年の作品とは発想がかなり異なり、全ての楽章をソナタ形式で染め上げている点がユニークでした。
また、ロ長調という、ちょっと特殊な調性を使っている点にも、シューベルトの実験精神が見てとれます。
こうして聴いてみると、シューベルトのピアノ・ソナタは、シューベルトにとって、音楽上の様々な実験場だったのではないかと思えてきます。
初期でこそ、18世紀に培われてきたピアノ・ソナタの流儀を墨守していますが、敬愛するベートーヴェンがそうしたように、シューベルトなりに流儀を拡張し、ピアノで演奏する交響曲のように組み立てるようになってきています。一方で、歌曲に使えそうなメロディを惜しげもなく投入しているので、美しい楽想がいたるところで明滅する音楽になっています。
ところどころに難所があるため、高い技量が要求されますが、シューベルトのピアノ・ソナタは、テクニックにものを言わせてガンガン弾き進んでも、思ったほどの演奏効果が与えられません。
いかなる要求にもうろたえず、強い集中力を持続させながら美しい音色で音楽を紡ぎあげることが要求されるためシューベルトのソナタは、ピアニストにとって大変な重労働なのです。
クリーンは、盤石のテクニックと美しい音色を生涯かけて磨きぬいてきたピアニストの一人であり、世界中をかけ回すような派手さこそなかったものの、堅実な演奏で人々を魅了してきたピアニストでした。
ソナタに敷き詰められたメロディの数々を、一つ一つ慈しむように弾くこれらの演奏は、まるで音楽の楽園へと導くようです。
個性的な表現で気を引くような演奏ではありませんが、昂った気分を徐々にクール・ダウンさせ、平和的な気分にさせてくれる演奏でした。
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