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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Henri Vieuxtemps: Six Morceaux de salon, op.22
◈Henri Vieuxtemps: Voix du cœur, op.53
Philippe Koch (Vn)
Luc Devos (Pf)
(Rec. 30-31 March & 2 April 1999, Villa Louvigny, Luxembourg)



アンリ・ヴュータン(Henri Vieuxtemps, 1820-1881)は、ベルギーの作曲家で、生前は高名なヴァイオリニストでした。
若くしてシャルル・オーギュスト・ド・ベリオに才能を認められ、1829年にパリに出てベリオの弟子になったものの、師のベリオが駆け落ちのため姿をくらませてしまったため、後は独学でヴァイオリンの演奏技術を完成させています。
超絶技巧ヴァイオリニストとして成功した後、1935年からは、ウィーンでジーモン・ゼヒターに音楽理論と対位法を学び、パリ在住のアントニーン・レイハ(アントワーヌ・ライヒャ)に弟子入りして作曲法を会得しました。
ヴュータンは、合計7曲のヴァイオリン協奏曲を手掛けていますが、こうした作曲修行によって、充実したオーケストラ・パートを書き、エクトル・ベルリオーズから、その作品を「ヴァイオリンつきの高貴な交響曲」と称えられるほどの作品を残しています。

本CDでは、そんなヴュータンのヴァイオリン小品集に光を当てています。
収録されているのは、op.22の《6つの小品》と《心の声》(op.53)と題する小品集です。
《6つの小品》は、〈サロン用の華麗な小品〉(Morceau brillant de salon)、〈様々な歌〉(Air varié)、〈夢想〉(Rêverie)、〈ボスポラスの思い出〉(Souvenirs du Bosphore)、〈タランテラ〉(Tarentelle)、〈嵐〉(L'Orage)の6作品からなり、1847年ごろに発表されました。この時期のヴュータンは、ロシアに演奏旅行に出かけたところ、ロシア皇帝のニコライ一世に謁見したことが機縁となり、ペテルブルグ音楽院のヴァイオリン科教授として迎えられ、ロシアに長期逗留した時期に当たります。
ヴァイオリニストとして脂の乗っていた時期の作品だけに、どれも聴き映えのする超絶技巧と美しいメロディがふんだんに盛り込まれています。

op.53の《心の声》は、ヴュータンの最晩年にあたる1880年にまとめられた作品。
全部で9曲からなり、それぞれに〈優しさ〉(Tenderesse)、〈決断〉(Décision)、〈憂鬱〉(Mélancolie)、〈舟歌〉(Barcarolle)、〈夢〉(Rêve)、〈審問〉(Interrogation)、〈思い出〉(Souvenir)、〈どうして?〉(Pourquoi?)、〈主題と変奏〉(Thème et variations)という題名が付いています。
1871年からブリュッセル音楽院のヴァイオリン科教授として奉職し、バンジャマン・ゴダールやウジェーヌ・イザイ、イェネー・フバイといったヴァイオリンの名手を育成したヴュータンでしたが、1874年に脳卒中に倒れ、病気療養を余儀なくされています。その後、順調に回復し、1879年に復帰する予定でしたが、復帰前になって脳卒中の発作で半身不随になり、ヴァイオリニストとして引退せざるを得なくなりました。
これら一連の作品は、そんな闘病中に書かれた作品であり、全体的にop.22の華やかな超絶技巧は影を潜めています。それぞれの曲のタイトルほどに、ヴュータンは大げさな音楽を書いていませんが、簡素な曲調の中にそこはかとなく哀感が滲んでいます。例外的に豪華絢爛な超絶技巧を盛り込んだ終曲の〈主題と変奏〉も、超絶技巧で鳴らした自分の意地を張っており、ヴァイオリンを弾きたくても弾けない鬱屈した気持ちが交錯しています。
これらの曲集の中では、5曲目の〈夢〉がとりわけよく単独で演奏され、ヴァイオリン学習者にも愛用されています。

本CDで演奏しているのは、アルテュール・グリュミオー門下のベルギー人ヴァイオリニストであるフィリップ・コッホ(Philippe Koch)と、同じくベルギーのピアニストであるリュック・ドゥヴォ(Luc Devos)です。
ドゥヴォは、古楽器の演奏でも、それなりに名の通った人で、繊細な音の移ろいへの敏感さが功を奏し、《6つの小品》のようなヴァイオリン主導の作品でも、伴奏の単調さが気にならず、むしろヴァイオリンの多彩な表現を刺激しているようにすら聴こえます。
コッホのヴァイオリンも、ドゥヴォのピアノ同様に肌理が細かく、一音一音がしっとりとした美しさを保っています。《6つの小品》の〈タランテラ〉のような忙しい作品でも、技術的な脆さを一切感じさせず、なおかつ涼しげな音色であっさりと弾きこなしています。どんな局面でも気品を失わない弾きっぷりこそは、ヴュータンからグリュミオーにつながる流派ならではの味わいなのでしょう。
《心の声》は、ヴァイオリンのパートがシンプルに書かれている分、下手なヴァイオリニストでは至極退屈な演奏になるところですが、凛とした音色で弾ききっており、〈どうして?〉で聴かれるピアノとの可憐なやり取りは長く耳に残ります。
ヴァイオリンが主役の曲の演奏としては、コッホの演奏は、幾分控えめな味付けですが、その薄味の味付けが、かえって作品の魅力を十分に引き出しています。
これらの曲はこういう演奏でなければならないと思わせるだけの説得力のある、なるほど納得な名演奏です。

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