1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
◈Alexei Lvov: Concerto for Violin and Orchestra in A minor
◈Anton Arensky: Concerto for Violin and Orchestra in A minor
Sergei Stadler (Vn)
Leningrad Philharmonic Orchestra / Vladislav Tchernushenko
(Rec. 23 & 25 March 1986, Great Hall of Leningrad Philharmonia)
◈Yuly Conius: Concerto for Violin and Orchestra in E minorSergei Stadler (Vn)
Leningrad Philharmonic Orchestra / Vladimir Ponkin
(Rec. 6 June 1986, Great Hall of Leningrad Philharmonia)
本CDは、アレクセイ・リヴォフ(Alexei Livov, 1796-1870)、アントン・アレンスキー(Anton Arensky, 1861-1906)、ユーリ・コニュス(Yuly Conius, 1869-1942)という、3人のロシア人作曲家のヴァイオリン協奏曲を収録しています。
リヴォフは、作曲家としての顔のほかに、ヴァイオリニストとしての顔や、軍人としての顔も持っていた人です。作曲家としては、ロシア帝国の国歌の作曲者であり、ヨーロッパのオペラを紹介し、自作のオペラも上演するなど、精力的な活動をつづけた人でした。
1848年ごろにつくられた本作品は、「ドラマの情景の様式で」という但し書きが付けられており、ルイ・シュポアのヴァイオリン協奏曲第8番の影響が感じられます。
しかし、出来上がった作品は、単一楽章ながら、シュポアの作品以上に厚手に仕上がっており、まるでフランスのグランド・オペラのような豪華絢爛な伴奏が付けられ、イ短調ではじまりながら、最終的には英雄的なハ長調の音楽で締めくくられます。
また、重音奏法を駆使しながら、メロディ・ラインを奏でていく手法は、おそらく、ヨーロッパで評判をとっていたシャルル・オーギュスト・ド・ベリオの方法を参照しているようで、技術面でも十分華麗さを誇示できる内容になっています。
アレンスキーは、ニコライ・リムスキー=コルサコフ門下の作曲家です。師匠のリムスキー=コルサコフや、師匠のライバルだったピョートル・イリイチ・チャイコフスキーの影響を受け、さらにフレデリック・ショパンやロベルト・シューマンらの音楽にも心酔したため、力強さよりも繊細な抒情性を重んじる作風に傾いています。
1891年に作曲されたヴァイオリン協奏曲は、そんなアレンスキーの気質がよく出ています。この曲も単一楽章ながら、暗欝な第一主題と艶やかな第二主題を軸にしたソナタ形式をとっています。オーケストラは、終始弾き続けるヴァイオリンをカラフルに彩る作品で、その細やかな音色の移ろいだけでも十分に楽しめます。
コニュスについては、様々な名前の綴り方があります。ファースト・ネームを"Juli"、"Julius"、"Jules"、”Julien”と綴ることもあれば、ファミリー・ネームを"Conus"、”Konyus”、”Konjus”と綴ることもあります。
コニュスは、ヴァイオリニストとして、モスクワ音楽院でヤン・フジマリーに学び、1888年にパリ音楽院に留学してからは、ランベール・マサールに師事しています。パリでヴァイオリニストとしてデビューした後、母校の教授に就任しましたが、1891年にはニューヨーク交響楽団のコンサート・マスターに転出し、1919年からはパリを中心に活動していたようです。彼の名前の綴りの多彩さは、こうした世界中を飛び回る生活の中で、各々の文化圏に合わせて綴りを変えていたために発生したものかもしれません。ヴァイオリン教師としては、有名な弟子に、ジュリアード音楽院の教授として知られたイヴァン・ガラミアンがいます。
作曲家としてのコニュスは、今日では、本CDに収録されているヴァイオリン協奏曲のみで知られています。コニュスは、フジマリーの下でヴァイオリンを学んでいた時に、アレンスキーやセルゲイ・タネーエフらの薫陶を受けており、通り一遍の作曲法を身につけていました。
この協奏曲は、リヴォフやアレンスキーの作品同様に単一楽章の作品で、1898年に発表されたものです。元々はヴァイオリンとピアノのための作品として構想されましたが、結局伴奏をオーケストレーションして今日の形になりました。コニュス本人の独奏で初演された後、フリッツ・クライスラーがロンドンで演奏し、さらにヤッシャ・ハイフェッツがレパートリーに入れ、作品の知名度向上に貢献しました。
師のアレンスキーの作品に比べて、コニュスの作品は幾分武骨で、ダイナミックなオーケストラの活用が耳に残ります。
かのハイフェッツが愛奏しただけあって、独奏のパートも華やかで、哀愁と雄大さが入り混じった中間部が特に聴きごたえがあります。
本CDの演奏は、セルゲイ・スタドレル(Sergei Stadler, 1962-)のヴァイオリン独奏と、レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で収録されています。CDの表記ではサンクトペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団(St.Petersburg Philharmonic Orchestra)となっていますが、1991年までは「レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団」名義で活動していました。
伴奏指揮は、リヴォフとアレンスキーの作品をヴラディスラフ・チェルヌシェンコ(Vladislav Tchernushenko, 1936-)、コニュスの作品をヴラディミール・ポンキン(Vladimir Ponkin, 1951-)が担当しています。
スタドレルは、ロシアのヴァイオリニストで、1982年のチャイコフスキー国際音楽コンクールのヴァイオリン部門でヴィクトリア・ムローヴァと第1位を争った逸材です。2008年からは、ペテルブルグ音楽院の院長代理を務めており、ロシアの重鎮ヴァイオリニストとしての地歩を固めているようです。
指揮をしているチェルヌシェンコは、オペラと合唱指揮の専門家で、1979年から2002年までペテルブルク音楽院の院長を務めていました。
ポンキンは、ゲンナジー・ロジェストヴェンスキーの門下生で、1980年にBBC主催のルパート財団国際指揮者コンクールで優勝して指揮者としての名声を確立した人です。
スタドレルの演奏は、どんな難所であろうと泰然自若。弾き損じが全くなく、技術的に非の打ちどころがありません。ただ、それ以上のコメントに困る演奏であり、もう少しハッタリをかまして、難曲らしく弾いてもらいたいという気もします。リヴォフの作品にせよ、アレンスキーの作品にせよ、その表現は一本調子ではないものの、どれも計画通りに演奏していて、初々しさに欠けています。
チェルヌシェンコのサポートは、各作品の性格をしっかりとらえて、オーケストラから様々な感触の音を引き出しています。リヴォフの作品におけるメリハリの付いた表現も素晴らしいですが、アレンスキーの耽美的なロマンティシズムを、物腰の柔らかな伴奏で十二分に飾り付け、ともすると表情の乏しくなりがちなスタドレルの奏楽を底上げしています。
コニュスのヴァイオリン協奏曲は、スタドレルとの相性が良かったのか、前の2作品よりも勢いがあり、ポンキンの伴奏ともども元気いっぱいの演奏になっています。
リヴォフは、作曲家としての顔のほかに、ヴァイオリニストとしての顔や、軍人としての顔も持っていた人です。作曲家としては、ロシア帝国の国歌の作曲者であり、ヨーロッパのオペラを紹介し、自作のオペラも上演するなど、精力的な活動をつづけた人でした。
1848年ごろにつくられた本作品は、「ドラマの情景の様式で」という但し書きが付けられており、ルイ・シュポアのヴァイオリン協奏曲第8番の影響が感じられます。
しかし、出来上がった作品は、単一楽章ながら、シュポアの作品以上に厚手に仕上がっており、まるでフランスのグランド・オペラのような豪華絢爛な伴奏が付けられ、イ短調ではじまりながら、最終的には英雄的なハ長調の音楽で締めくくられます。
また、重音奏法を駆使しながら、メロディ・ラインを奏でていく手法は、おそらく、ヨーロッパで評判をとっていたシャルル・オーギュスト・ド・ベリオの方法を参照しているようで、技術面でも十分華麗さを誇示できる内容になっています。
アレンスキーは、ニコライ・リムスキー=コルサコフ門下の作曲家です。師匠のリムスキー=コルサコフや、師匠のライバルだったピョートル・イリイチ・チャイコフスキーの影響を受け、さらにフレデリック・ショパンやロベルト・シューマンらの音楽にも心酔したため、力強さよりも繊細な抒情性を重んじる作風に傾いています。
1891年に作曲されたヴァイオリン協奏曲は、そんなアレンスキーの気質がよく出ています。この曲も単一楽章ながら、暗欝な第一主題と艶やかな第二主題を軸にしたソナタ形式をとっています。オーケストラは、終始弾き続けるヴァイオリンをカラフルに彩る作品で、その細やかな音色の移ろいだけでも十分に楽しめます。
コニュスについては、様々な名前の綴り方があります。ファースト・ネームを"Juli"、"Julius"、"Jules"、”Julien”と綴ることもあれば、ファミリー・ネームを"Conus"、”Konyus”、”Konjus”と綴ることもあります。
コニュスは、ヴァイオリニストとして、モスクワ音楽院でヤン・フジマリーに学び、1888年にパリ音楽院に留学してからは、ランベール・マサールに師事しています。パリでヴァイオリニストとしてデビューした後、母校の教授に就任しましたが、1891年にはニューヨーク交響楽団のコンサート・マスターに転出し、1919年からはパリを中心に活動していたようです。彼の名前の綴りの多彩さは、こうした世界中を飛び回る生活の中で、各々の文化圏に合わせて綴りを変えていたために発生したものかもしれません。ヴァイオリン教師としては、有名な弟子に、ジュリアード音楽院の教授として知られたイヴァン・ガラミアンがいます。
作曲家としてのコニュスは、今日では、本CDに収録されているヴァイオリン協奏曲のみで知られています。コニュスは、フジマリーの下でヴァイオリンを学んでいた時に、アレンスキーやセルゲイ・タネーエフらの薫陶を受けており、通り一遍の作曲法を身につけていました。
この協奏曲は、リヴォフやアレンスキーの作品同様に単一楽章の作品で、1898年に発表されたものです。元々はヴァイオリンとピアノのための作品として構想されましたが、結局伴奏をオーケストレーションして今日の形になりました。コニュス本人の独奏で初演された後、フリッツ・クライスラーがロンドンで演奏し、さらにヤッシャ・ハイフェッツがレパートリーに入れ、作品の知名度向上に貢献しました。
師のアレンスキーの作品に比べて、コニュスの作品は幾分武骨で、ダイナミックなオーケストラの活用が耳に残ります。
かのハイフェッツが愛奏しただけあって、独奏のパートも華やかで、哀愁と雄大さが入り混じった中間部が特に聴きごたえがあります。
本CDの演奏は、セルゲイ・スタドレル(Sergei Stadler, 1962-)のヴァイオリン独奏と、レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で収録されています。CDの表記ではサンクトペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団(St.Petersburg Philharmonic Orchestra)となっていますが、1991年までは「レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団」名義で活動していました。
伴奏指揮は、リヴォフとアレンスキーの作品をヴラディスラフ・チェルヌシェンコ(Vladislav Tchernushenko, 1936-)、コニュスの作品をヴラディミール・ポンキン(Vladimir Ponkin, 1951-)が担当しています。
スタドレルは、ロシアのヴァイオリニストで、1982年のチャイコフスキー国際音楽コンクールのヴァイオリン部門でヴィクトリア・ムローヴァと第1位を争った逸材です。2008年からは、ペテルブルグ音楽院の院長代理を務めており、ロシアの重鎮ヴァイオリニストとしての地歩を固めているようです。
指揮をしているチェルヌシェンコは、オペラと合唱指揮の専門家で、1979年から2002年までペテルブルク音楽院の院長を務めていました。
ポンキンは、ゲンナジー・ロジェストヴェンスキーの門下生で、1980年にBBC主催のルパート財団国際指揮者コンクールで優勝して指揮者としての名声を確立した人です。
スタドレルの演奏は、どんな難所であろうと泰然自若。弾き損じが全くなく、技術的に非の打ちどころがありません。ただ、それ以上のコメントに困る演奏であり、もう少しハッタリをかまして、難曲らしく弾いてもらいたいという気もします。リヴォフの作品にせよ、アレンスキーの作品にせよ、その表現は一本調子ではないものの、どれも計画通りに演奏していて、初々しさに欠けています。
チェルヌシェンコのサポートは、各作品の性格をしっかりとらえて、オーケストラから様々な感触の音を引き出しています。リヴォフの作品におけるメリハリの付いた表現も素晴らしいですが、アレンスキーの耽美的なロマンティシズムを、物腰の柔らかな伴奏で十二分に飾り付け、ともすると表情の乏しくなりがちなスタドレルの奏楽を底上げしています。
コニュスのヴァイオリン協奏曲は、スタドレルとの相性が良かったのか、前の2作品よりも勢いがあり、ポンキンの伴奏ともども元気いっぱいの演奏になっています。
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