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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Aram Khachaturian: Gayaneh
National Philharmonic Orchestra / Loris Tjeknavorian
(Rec. 25 & 27 October 1976, West Ham Central Mission, London)



イラン出身の指揮者、ロリス・チェクナヴォリアン(Loris Tjeknavorian, 1937-)によるアラム・ハチャトゥリアン(Aram Khachaturian, 1903-1978)の《ガヤネー》(フランス語で「ガイーヌ」とも表記)の全曲盤。
チェクナヴォリアンはイランの生まれですが、両親はアルメニア人で、ウィーン音楽院でハンス・スヴァロフスキーの薫陶を受けています。1961年にはテヘランの音楽資料館の館長となり、中東の民族音楽の研究に従事し、1963年には、ザルツブルグのモーツァルテウムでカール・オルフに学んでいます。その後、アメリカに渡ってムーアヘッド州立大学(現:ミシガン大学ムーアヘッド校)の准教授を務め、1972年にテヘランに戻り、地元の歌劇場の首席指揮者兼作曲家として活動しました。1978年にイラン革命のためにイギリスに亡命し、ロンドンを中心に活動していましたが、1989年にアルメニア・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者に就任して、このオーケストラを世界有数のオーケストラに育て上げました。

ハチャトゥリアンの《ガヤネー》は、1939年に作った《幸福》というバレエ音楽を改作する形で1942年に発表されたバレエ音楽です。
この《ガヤネー》は、1957年にボリショイ劇場で上演するに当たって、大幅に改訂が施されたため、それが「ボリショイ版」として広く演奏されるようになりましたが、チェクナヴォリアンが演奏しているのは、1942年の原典版です。

1942年の原典版は、話の筋書きがボリショイ版に比べてロマンス色が薄く、労働省令のプロパガンダ色が強いものになっております。登場人物もボリショイ版に比べて少なく、それぞれの設定もかなり違っています。
原典版の筋書きは、大まかに以下の通りです。
アルメニアの国境近いコルホーズで、若い主婦のガイーヌ、父のオヴァネス、兄のアルメン、近所のヌネーとその恋人のカレンが住んでいる。彼らは国家から賞を受けるほどの模範的な労働者である。しかし、ガイーヌの旦那のギコだけは、飲んだくれの甲斐性なしで、コルホーズの人々から疎まれていた。
そこに国境警備隊の新任の隊長のカルサコフが赴任してくる。コルホーズの人たちはカルサコフを歓迎し、花束を贈呈しようとするが、ギコはその花束をひったくり、どこかへ行ってしまった。

自分の家に戻ったガイーヌは、ギコの行いを悲しみ、カーペット織りをしていた友人たちはガイーヌを慰めようとするが、そこにギコが帰ってきた。ガイーヌは別室に行き、幼い息子のリプシックを寝かしつける。しかし、その時、ギコは、家に入ってきた密輸入者たちと密会をし、横領した金を持って高跳びをする算段を練っていた。計画によれば、このコルホーズの綿花の倉庫に火をつけて、そのどさくさにまぎれて逃げようという算段である。
一連の話を聞いてしまったガイーヌは、ギコに改心するよう説得するが、逆にギコによって部屋に監禁されてしまう。

クルド族の娘のアイシェはアルメンの恋人だが、クルドの若者のイズルメイもアイシェのことを思っている。
そこにギコと密輸入者たちが現れ、アルメンに道を尋ねるが、挙動不審なギコたちを見て、イズルメイらを通じてカルサコフに通報する。そのことに気付いたギコたちは、アルメンを殺しにかかったが、現れたカルサコフ立ちに捕縛される。しかし、ギコはその場を逃れて綿花倉庫に火を放ち、消火活動に躍起になるコルホーズの人たちを尻目に逃亡を図った。そこに、部屋から抜け出してきたガイーヌが現れ、ギコを捕まえようとするが、ギコはリプシックを崖に突き落とすと言って脅しをかけ、ガイーヌに斬りかかって重傷を負わせた。ガイーヌの悲鳴を聴きつけてやってきたカルサコフは、ギコを逮捕し、ガイーヌを介抱するのだった。ギコに愛想を尽かしたガイーヌは、カルサコフに愛情を抱くようになった。

一年後、コルホーズは元に戻り、ガイーヌはカルサコフと再婚し、アルメンはアイシェと結婚し、隣人のヌネーもカレンと結婚することになった。
ボリショイ版では、ガイーヌは未婚になり、ギコの存在は消滅します。アルメンもガイーヌの兄ではなく恋人として登場し、新しく登場したライバルのゲオルギーといざこざを起こします。クルド族の娘だったアイシャはゲオルギーに助けられてゲオルギーの恋人になる役を割り当てられます。カレンやヌーネ、カルサコフは、単なる脇役になります。物語のイベントは、原典版がギコの背信行為だったのに対し、ボリショイ版では、ゲオルギーがアイシャを助けて恋人になるものの、アルメンとアイシャの仲を疑いだしてアルメンを抹殺しようとする話に書き換えられています。その後、ゲオルギーは、アルメンをひどい目に遭わせた罪を悔い改め、収穫祭で罪を赦されるという筋書きになったため、それぞれの場面の音楽が必要になり、ハチャトゥリアンは新たに音楽を書きくわえています。
さらに、ハチャトゥリアンは、ボリショイ劇場の要請で、オーケストレーションと幕の割り振りもやり直し、全4幕のバレエだった原典版を、ボリショイ版は、3幕のバレエにプロローグとエピローグを付け加える形に作り直しました。
今日では、原典版は、あまり見直されることはなく、ボリショイ版が決定稿のように見做されていますが、原典版の粗削りなオーケストレーションを好む人も少なくありません。
チェクナヴォリアンも、そうした原典版の支持者らしく、原典版による全曲録音をこのCDで達成していますが、収録した曲順は、必ずしもバレエの曲順を順守しているわけではなく、演奏効果を考えて、チェクナヴォリアンの方で自由に組み替えているようです。

チェクナヴォリアンのCDに収録されている《ガイーヌ》の曲順を列挙してみると、以下のようになります。

01.序奏とロシア人の踊り
02.クルドの若者たちの踊り
03.綿花の採集
04.山岳民族の踊り
05.歓迎の踊り
06.ガイーヌのアダージョ
07.ヌネーのヴァリアシオン
08.老人とカーペット織りの踊り
09.子守歌
10.アイシェの目覚めと踊り
11.カーペットの刺繍
12.火焔
13.レズギンカ
14.抒情的な二重奏
15.ガイーヌとギコ
16.アルメンのヴァリアシオン
17.情景
18.ガイーヌのヴァリアシオンと終曲の踊り
19.第4幕への序奏
20.バラの少女たちの踊り
21.剣の舞
22.序奏と長老の踊り
23.ゴパック
24.終幕の情景
本録音では、1964年設立のナショナル・フィルハーモニー管弦楽団が起用されています。
このオーケストラは、ヴァイオリニストのシドニー・サックスと音楽プロデューサーのチャールズ・ゲルハルトが設立した録音専門のイギリスのオーケストラで、腕っこきのスタジオ・ミュージシャンが集められていました。
まるでプロムスのラスト・ナイトでもやるようなノリで、チェクナヴォリアンの濃厚な弦楽セクションの泣き節や金管セクションの大仰な咆哮等を楽しんでいます。〈歓迎の踊り〉など、思わずお捻りを投げたくなるような痛快な演奏です。ハチャトゥリアンの名刺代わりにもなっている〈剣の舞〉など、ボリショイ版の演奏よりも、チェクナヴォリアンの原典版の演奏のほうが断然血走っています。
ただ、全編猛烈な演奏なので、聴いたあとの疲労感も凄いものがあります。常用は避けたいですね。

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