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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Feruccio Busoni: Sonata for Violin and Piano No.2 in E minor, op.36a
Joseph Szigeti (Vn)
Mieczysław Horszowski (Pf)
(Rec. 20, 21 & 24 February & 9 March 1956)
◈Ferruccio Busoni: Violin Concerto in D major, op.35a
Joseph Szigeti (Vn)
The Little Orchestra Society / Thomas Scherman
(Rec. 22 December 1954)



フェルッチョ・ブゾーニ(Feruccio Busoni, 1866-1924)のヴァイオリン・ソナタ第2番とヴァイオリン協奏曲を、ヨーゼフ・シゲティ(Joseph Szigeti, 1897-1973)のヴァイオリンで聴くうアルバムです。
共演者は、ソナタのほうが、ミエチスワフ・ホルショフスキ(Mieczysław Horszowski, 1892-1993)のピアノで、協奏曲の方がトーマス・シャーマン(Thomas Scherman, 1917-1979)の率いるリトル・オーケストラ・ソサエティです。

ブゾーニは、ある時はピアニスト、またある時は指揮者、そしてまたある時は音楽理論家であり、その正体は作曲家という、多面的な活躍をした人。父親はイタリアのクラリネット奏者兼画家、母親はドイツ人とイタリア人の混血で、ピアニストでした。幼少時はイタリアで過ごして両親から英才教育を受け、その後オーストリアに渡ってヴォルフガング・マイヤー(フェリックス・ヴァインガルトナーの師)やヴィルヘルム・キーンツル、カール・ライネッケといった人たちに師事しました。音楽家として独立してからはベルリンを本拠にして活動していました。
作曲家としては19世紀の様式に留まったブゾーニでしたが、理論家としては、無調音楽や微分音を使った音楽、はたまた電子楽器を使った音楽の登場を予見していたことでも知られています。

ハンガリー出身でイェネー・フバイ門下の天才少年ヴァイオリニストとして売り出し中だったシゲティは、このブゾーニと会うことで、古の作品から同時代に作曲された作品までを見渡すような広い視野と審美眼を手に入れ、いかなる時代の作品であっても、紹介するに足ると信じた作品を積極的にレパートリーに取り入れて演奏するようになりました。同時代の作品の伝道者として、また、19世紀以前の作品の名解釈者として名を馳せたシゲティでしたが、その礎となった恩人こそが、このブゾーニでした。

ブゾーニのヴァイオリン・ソナタ第2番(1901年出版)は、ブゾーニにとって、自分の作風を確立した記念すべき作品とされています。実際、1905年の奥さんへの手紙に、ブゾーニは、「私の作曲家としての実存は、この作品に始まる」と書き送っています。
この作品は、1898年の夏までに書き上げられ、9月30日にヘルシンキで初演されました。初演時にヴァイオリンを弾いたのは、チェコ出身のヴァイオリニストであるヴィクトル・ノヴァーチェクで、ピアノは作曲者本人が受け持ちました。作品は、初演者の兄であるオタカール・ノヴァーチェクの思い出に捧げられました。
兄の方のノヴァーチェクは、晩年こそ心臓病の発作に悩まされていましたが、ヴァイオリニスト兼作曲家としても成功した人で、ブゾーニとは共演を通じて親交を深めていました。
ヴァイオリンの名手だった兄ノヴァーチェクを意識して作っただけに、ヴァイオリンは縦横無尽の活躍をします。しかし、それ以上に、作曲者自身がピアニストだったこともあって、ピアノのパートも、半端なピアニストを寄せ付けない難易度の高さを誇ります。
曲は、3つの楽章からなり、第1楽章は、コラール風の主題とラプソディックな主題を使ったソナタ形式による作品です。全体的に、コラール風の主題が雰囲気を支配しているため、厳粛な緊張感が漂います。第2楽章は、交響曲のスケルツォに相当する楽章で、短いながらもヴァイオリンとピアノが火花を散らす格闘を演じます。
第3楽章は、ヨハン・ゼバスティアン・バッハのコラール《幸いなるかな、おお、友の魂よ》(BWV531)の主題を元にした変奏曲をとり、この変奏の前半部分で緩徐楽章の役割を担わせています。後半では華々しいクライマックスを形作り、祈るように静かに曲を閉じます。

ヴァイオリン協奏曲のほうは、1896年から翌年にかけて作曲された作品。オランダ出身のヴァイオリニストである、ヘンリ・ペトリに献呈されています。ペトリもまたブゾーニの親友で、息子のエゴン・ペトリはブゾーニの弟子となり、ピアニストとしてブゾーニの作品の普及に尽力しました。
この作品は、完成した年の10月8日にベルリンのシャウスピールハウスで、被献呈者の独奏と作曲者の指揮するベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の顔合わせで初演されました。
初演は、さほど話題にならず、作曲者自身も、この作品のことをあまり気にかけていませんでしたが、シゲティが積極的にレパートリーに入れて演奏したことで、忘却されることなく、折を見て演奏される演目になりました。
作品は、形式上は単一楽章の構成になりますが、実際は急-緩-急の3楽章を数珠つなぎにした構造になっています。
冒頭部分は、木管合奏を使って主題となる動機を提示し、おもむろに登場してきた独奏ヴァイオリンに主要主題を歌わせます。さらに、この主題を変形させて、他の主題も形成し、独奏ヴァイオリンに華麗な装飾をつけさせることで、独奏の名技性を確保しています。

本録音でヴァイオリンを弾いているシゲティは、前述のように、ブゾーニの謦咳に接していた人です。ブゾーニと縁の深い人物であり、ブゾーニのヴァイオリン協奏曲については、積極的に作品を喧伝したという点から、歴史的な貴重さが加味されます。
しかし、その演奏は、必ずしもこれらの曲のベスト・パフォーマンスを示しているわけではありません。
シゲティは、身体的に、ヴァイオリニストとして腕が長かったため、ボウイングではかなり苦労した人でした。
時にはヴァイオリンの隣の弦をこすってしまうこともあり、その音色は聴き手を夢心地へと誘うものではありません。
ソナタの方の録音では、第1楽章こそ作品の雰囲気にシゲティの素朴な音色がマッチしていますが、スケルツォ的な第2楽章では、技術的な不安定さがネックになり、今一つ盛り上がりに欠ける展開になってしまっています。第3楽章に於いても、その舌足らずな語り口がネックになり、クライマックスが十分に築けないままになってしまっています。
ホルショフスキは、複雑に入り組んだピアノのパートを何程のこともなくこなしながら、自己主張を押さえるという、伴奏者の鏡のような演奏でシゲティを引き立てています。これだけの難易度のピアノ・パートで自らの存在感を押し殺して奉仕するというのは、ある意味離れ業です。しかし、この曲は、ヴァイオリンとピアノの取っ組み合いの喧嘩を通して統合的発展を果たすという構図が企図されているようにも感じられます。
ヴァイオリンとピアノの弁証法としてのこの曲の形が、シゲティとホルショフスキの演奏で、上手く描き出されているかとなると、首をかしげざるを得ません。

ヴァイオリン協奏曲のほうは、シャーマンの指揮するオーケストラは、世界のトップ・クラスの演奏というわけにはいきませんが、全く取り乱したようなところがなく、安定した演奏を繰り広げています。
逆に、シゲティのヴァイオリンのほうが、呂律が回っておらず、苦戦を強いられているように聴こえます。
シゲティとしては、この作品をブゾーニとともに演奏したこともあり、深い洞察を持って作品に対峙しているのでしょうが、そのアウトプットがうまくいっていないようです。
結果として、深い含蓄のある作品としての予感を示しつつも、そうやすやすと攻略できる作品ではないということを伝えるにとどまっています。

シゲティのネーム・バリューでもって、ブゾーニのこれらの作品が、ダイヤモンドの原石ではないかという興味を我々に抱かせるのであれば、このアルバムは、一定の役割を果たしたことになります。しかし、この作品の魅力は、より技術的に卓越した演奏で明らかにされるのではないかと考えられます。

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