1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
◈Edward MacDowell: Piano Concerto No.2 in D minor, op.23
Claudette Sorel (Pf)
New York Philharmonic Orchestra / Franco Autori
(Rec. 1958)
◈Joseph Wood: Divertimento for Piano and Chamber OrchestraClaudette Sorel (Pf)
WNYC Festival Orchestra / Emerson Buckley
(Rec. 1961) Live Recording with Applause
◈Harold Morris: Piano ConcertoClaudette Sorel (Pf)
Orchestra of America / Richard Korn
(Rec. 1962) Live Recording with Applause
本CDは、アメリカの作曲家たちによるピアノとオーケストラのための協奏作品を集めています。
演目は、エドワード・マクダウェル(Edward MacDowell, 1860-1908)のピアノ協奏曲第2番(1890年作)、ジョセフ・ウッド(Joseph Wood, 1915-2000)のピアノと室内オーケストラのためのディヴェルティメント(1959年作)、ハロルド・モリス(Harold Morris, 1890-1964)のピアノ協奏曲(1929-1931年作)の3作品です。
マクダウェルは、ニューヨーク生まれの作曲家兼ピアニストでした。
幼少時から音楽に大きな興味を寄せていた彼は、1877年にパリ音楽院に留学してクロード・ドビュッシーらと机を並べたものの、フランスの風土になじめず、フランクフルトのホーホ音楽院に転学して、カール・ヘイマンにピアノを学び、ヨーゼフ・ヨアヒム・ラフから音楽理論と作曲を師事しました。
ドイツでしばし音楽教師として活動した後、1888年に帰国したマクダウェルは、コロンビア大学の音楽学部の主任教授としてアメリカ音楽界の指導的な役割を担うようになりました。
マクダウェルの音楽は、師匠のラフをはじめ、ドイツ時代に親交を結んだフランツ・リストやエドヴァルド・グリーグらの影響色濃く残しており、このピアノ協奏曲第2番も、ドイツにおける独奏協奏曲の模範的作例のような音楽に仕上がっています。おそらく、ドイツ人作曲家の手になる協奏曲だと偽っても、ほとんど違和感を感じないでしょう。
ウッドの作品は、調性音楽の枠組みから外れ、パウル・ヒンデミットをより先鋭させた作風を示しています。
無調音楽に近い音楽ではあるものの、音列操作のような無機質な音楽にはなっていません。
本CDでは、この作品についてはトラック分けがなされていませんが、急-緩-急の三楽章構成になっており、その様式も、独奏協奏曲の基本的なスタイルを意識した作りになっています。
ウッドは、ピッツバーグの生まれで、元々ジュリアード音楽院でピアノを専攻していた人です。音楽院が主催するオペラの作曲コンクールに応募して入賞したことから、コロンビア大学でオットー・ルーニングに師事して作曲法を習得し、アメリカ有数の作曲家の一人として活躍しました。
本CDの最後に収録されたモリスのピアノ協奏曲は、かつてジョージ・ガーシュウィンのピアノ協奏曲の好敵手と見做されていた作品です。
モリスは、地元のシンシナティ音楽院を卒業した作曲家で、マクダウェルやウッドと同様に、ピアニストとしても活動していました。この作品も、ボストン交響楽団の演奏会で、作曲者自身がピアノを弾いて初演しています。
ガーシュウィンの音楽は、当時のポピュラー・ソングの語法とクラシック音楽を結びつけようとした音楽ですが、モリスは、アメリカを席巻していたジャズのルーツを掘り下げ、黒人霊歌を引用したり、黒人音楽のルーツにあたるアフリカの音楽のリズムを研究して作品に盛り込んだりすることで、ガーシュウィンとは違う音楽を作り上げています。
本CDでピアノ独奏を担当するのは、クラウデット・ソレル(Claudette Sorel, 1932-1999)という、フランスはパリ出身のピアニストです。第二次世界大戦の影響を受けて、アメリカに移住してから、ハンガリー出身のピアニストであるサリ・ビーロの下で研鑽を積みました。さらにジュリアード音楽院でオルガ・サマロフの指導を受けて11歳でコンサート・デビューを飾っています。ジュリアード音楽院を卒業した後は、カーティス音楽院でルドルフ・ゼルキンやミエチスワフ・ホルショフスキといった名ピアニストたちの薫陶を受け、1950年代以降は、ルーカス・フォスやハワード・ハンソンといったアメリカの作曲家たちから作品を検定されるほどの名声を誇るようになりました。
1973年まで舞台に立ち続けた彼女ですが、1974年の冬に、凍った路上で足を滑らせて転倒し、その時に腕を痛めたため、演奏活動から引退してしまいました。その後は後進の育成に力を注ぎ、カンザス大学、オハイオ州立大学やニューヨーク市立大学等で教鞭をとっていました。
マクダウェルのピアノ協奏曲の録音は、フランコ・アウトリ(Franco Autori, 1903-1990)の指揮するニューヨーク・フィルハーモニックとの共演です。
アウトリは、リッカルド・ザンドナイやピエトロ・マスカーニらの薫陶を受けた、イタリア出身の指揮者です。1928年にアメリカに渡り、シカゴの市立劇場の指揮者を皮切りに、バッファロー・フィルハーモニー管弦楽団やシャトーカ交響楽団などの指揮者を務め、アルトゥーロ・トスカニーニのアシスタントとしても活動しました。
本録音時は、ディミトリ・ミトロプーロスのアシスタントとして、ニューヨーク・フィルハーモニックの指揮者陣に加わっていました。
この録音は、本番前のリハーサルで通して演奏したものを収録したもので、指揮者の唸り声や、オーケストラ奏者の立てる雑音なども生々しく録られています。
オーケストラは、最初のうちこそ散漫ですが、ソレールの独奏が入ってくると雰囲気がガラッと変わり、丁々発止のやり取りでエキサイティングな演奏を繰り広げます。第2楽章は、オーケストラが率先して優美で洗練された雰囲気を作り上げています。
録音を想定したセッションではないため、その録音状態は万全ではありませんが、演奏内容は大変充実しています。
ウッドの作品は、エマーソン・バックレイ(Emerson Buckley, 1914-1989)の指揮するWNYCフェスティヴァル管弦楽団との共演です。WNYCは、ニューヨークの放送局です。
バックレイはニューヨーク生まれの指揮者で、コロンビア大学を卒業後、コロンビア・グランド・オペラの指揮者を経て、マイアミ歌劇場の音楽監督(のちに芸術監督)として長年活躍しました。ルチアーノ・パヴァロッティのツアーにも指揮者として同行しています。
本録音は、1961年の録音ながら、音の不安定なモノラルの音質です。拍手も入っているので、おそらくは放送用のライヴ録音だったのかもしれません。
オーケストラの音は、管・打楽器の音が強調傾向にあり、勢いがある半面、かなり雑然としています。
しかし、ソレールの独奏は大変充実していて、好調とは言えないオーケストラを向こうに回して雄弁な演奏を繰り広げています。
モリスの作品ではリチャード・クーン(Richard Korn, 1908-1981)の指揮するアメリカ管弦楽団です。
アメリカ管弦楽団は、クラリネット奏者として活動していたクーンがマンハッタンで結成したオーケストラで、アメリカの作曲家の作品の演奏に主眼を置いて活動をしていました。
この録音も、アメリカ管弦楽団の演奏会の記録ではないかと思われ、曲が終わると拍手が入っています。
ソレールの独奏は、技術的にも全く破綻することなく、快刀乱麻を断つような痛快な演奏を聴かせてくれます。
第2楽章でのしっとりした音楽への切り替えも実に見事で、この作品を自家薬籠中のものにしているようです。
オーケストラも、ウッドの作品での伴奏同様に雑なアンサンブルですが、作品への共感度の点では、こちらの作品のほうが上のようです。ソレールの独奏に勇猛果敢に競り合い、多少の演奏上の瑕疵をものともしない推進力を持っています。
演目は、エドワード・マクダウェル(Edward MacDowell, 1860-1908)のピアノ協奏曲第2番(1890年作)、ジョセフ・ウッド(Joseph Wood, 1915-2000)のピアノと室内オーケストラのためのディヴェルティメント(1959年作)、ハロルド・モリス(Harold Morris, 1890-1964)のピアノ協奏曲(1929-1931年作)の3作品です。
マクダウェルは、ニューヨーク生まれの作曲家兼ピアニストでした。
幼少時から音楽に大きな興味を寄せていた彼は、1877年にパリ音楽院に留学してクロード・ドビュッシーらと机を並べたものの、フランスの風土になじめず、フランクフルトのホーホ音楽院に転学して、カール・ヘイマンにピアノを学び、ヨーゼフ・ヨアヒム・ラフから音楽理論と作曲を師事しました。
ドイツでしばし音楽教師として活動した後、1888年に帰国したマクダウェルは、コロンビア大学の音楽学部の主任教授としてアメリカ音楽界の指導的な役割を担うようになりました。
マクダウェルの音楽は、師匠のラフをはじめ、ドイツ時代に親交を結んだフランツ・リストやエドヴァルド・グリーグらの影響色濃く残しており、このピアノ協奏曲第2番も、ドイツにおける独奏協奏曲の模範的作例のような音楽に仕上がっています。おそらく、ドイツ人作曲家の手になる協奏曲だと偽っても、ほとんど違和感を感じないでしょう。
ウッドの作品は、調性音楽の枠組みから外れ、パウル・ヒンデミットをより先鋭させた作風を示しています。
無調音楽に近い音楽ではあるものの、音列操作のような無機質な音楽にはなっていません。
本CDでは、この作品についてはトラック分けがなされていませんが、急-緩-急の三楽章構成になっており、その様式も、独奏協奏曲の基本的なスタイルを意識した作りになっています。
ウッドは、ピッツバーグの生まれで、元々ジュリアード音楽院でピアノを専攻していた人です。音楽院が主催するオペラの作曲コンクールに応募して入賞したことから、コロンビア大学でオットー・ルーニングに師事して作曲法を習得し、アメリカ有数の作曲家の一人として活躍しました。
本CDの最後に収録されたモリスのピアノ協奏曲は、かつてジョージ・ガーシュウィンのピアノ協奏曲の好敵手と見做されていた作品です。
モリスは、地元のシンシナティ音楽院を卒業した作曲家で、マクダウェルやウッドと同様に、ピアニストとしても活動していました。この作品も、ボストン交響楽団の演奏会で、作曲者自身がピアノを弾いて初演しています。
ガーシュウィンの音楽は、当時のポピュラー・ソングの語法とクラシック音楽を結びつけようとした音楽ですが、モリスは、アメリカを席巻していたジャズのルーツを掘り下げ、黒人霊歌を引用したり、黒人音楽のルーツにあたるアフリカの音楽のリズムを研究して作品に盛り込んだりすることで、ガーシュウィンとは違う音楽を作り上げています。
本CDでピアノ独奏を担当するのは、クラウデット・ソレル(Claudette Sorel, 1932-1999)という、フランスはパリ出身のピアニストです。第二次世界大戦の影響を受けて、アメリカに移住してから、ハンガリー出身のピアニストであるサリ・ビーロの下で研鑽を積みました。さらにジュリアード音楽院でオルガ・サマロフの指導を受けて11歳でコンサート・デビューを飾っています。ジュリアード音楽院を卒業した後は、カーティス音楽院でルドルフ・ゼルキンやミエチスワフ・ホルショフスキといった名ピアニストたちの薫陶を受け、1950年代以降は、ルーカス・フォスやハワード・ハンソンといったアメリカの作曲家たちから作品を検定されるほどの名声を誇るようになりました。
1973年まで舞台に立ち続けた彼女ですが、1974年の冬に、凍った路上で足を滑らせて転倒し、その時に腕を痛めたため、演奏活動から引退してしまいました。その後は後進の育成に力を注ぎ、カンザス大学、オハイオ州立大学やニューヨーク市立大学等で教鞭をとっていました。
マクダウェルのピアノ協奏曲の録音は、フランコ・アウトリ(Franco Autori, 1903-1990)の指揮するニューヨーク・フィルハーモニックとの共演です。
アウトリは、リッカルド・ザンドナイやピエトロ・マスカーニらの薫陶を受けた、イタリア出身の指揮者です。1928年にアメリカに渡り、シカゴの市立劇場の指揮者を皮切りに、バッファロー・フィルハーモニー管弦楽団やシャトーカ交響楽団などの指揮者を務め、アルトゥーロ・トスカニーニのアシスタントとしても活動しました。
本録音時は、ディミトリ・ミトロプーロスのアシスタントとして、ニューヨーク・フィルハーモニックの指揮者陣に加わっていました。
この録音は、本番前のリハーサルで通して演奏したものを収録したもので、指揮者の唸り声や、オーケストラ奏者の立てる雑音なども生々しく録られています。
オーケストラは、最初のうちこそ散漫ですが、ソレールの独奏が入ってくると雰囲気がガラッと変わり、丁々発止のやり取りでエキサイティングな演奏を繰り広げます。第2楽章は、オーケストラが率先して優美で洗練された雰囲気を作り上げています。
録音を想定したセッションではないため、その録音状態は万全ではありませんが、演奏内容は大変充実しています。
ウッドの作品は、エマーソン・バックレイ(Emerson Buckley, 1914-1989)の指揮するWNYCフェスティヴァル管弦楽団との共演です。WNYCは、ニューヨークの放送局です。
バックレイはニューヨーク生まれの指揮者で、コロンビア大学を卒業後、コロンビア・グランド・オペラの指揮者を経て、マイアミ歌劇場の音楽監督(のちに芸術監督)として長年活躍しました。ルチアーノ・パヴァロッティのツアーにも指揮者として同行しています。
本録音は、1961年の録音ながら、音の不安定なモノラルの音質です。拍手も入っているので、おそらくは放送用のライヴ録音だったのかもしれません。
オーケストラの音は、管・打楽器の音が強調傾向にあり、勢いがある半面、かなり雑然としています。
しかし、ソレールの独奏は大変充実していて、好調とは言えないオーケストラを向こうに回して雄弁な演奏を繰り広げています。
モリスの作品ではリチャード・クーン(Richard Korn, 1908-1981)の指揮するアメリカ管弦楽団です。
アメリカ管弦楽団は、クラリネット奏者として活動していたクーンがマンハッタンで結成したオーケストラで、アメリカの作曲家の作品の演奏に主眼を置いて活動をしていました。
この録音も、アメリカ管弦楽団の演奏会の記録ではないかと思われ、曲が終わると拍手が入っています。
ソレールの独奏は、技術的にも全く破綻することなく、快刀乱麻を断つような痛快な演奏を聴かせてくれます。
第2楽章でのしっとりした音楽への切り替えも実に見事で、この作品を自家薬籠中のものにしているようです。
オーケストラも、ウッドの作品での伴奏同様に雑なアンサンブルですが、作品への共感度の点では、こちらの作品のほうが上のようです。ソレールの独奏に勇猛果敢に競り合い、多少の演奏上の瑕疵をものともしない推進力を持っています。
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