1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
◈Federico Moreno Torróba: Castillos de España
Andrés Segovia (Gt)
(Rec. December 1969, Madrid)
◈Federico Moreno Torróba: Pièza característicasAndrés Segovia (Gt)
(Rec. April 1958, New York)
◈Federico Mompou: Suite CompostelanaAndrés Segovia (Gt)
(Rec. April 1964, New York)
◈Mario Castelnuovo-Tedesco: Sonata "Ommagio a Boccherini", op.77Andrés Segovia (Gt)
(Rec.December 1957, New York)
◈Manuel Ponce: Allegro in A majorAndrés Segovia (Gt)
(Rec. April 1958, New York)
◈Óskar Esplá (arr. José De Azpiazu): Antaño◈Joaquín Rodrigo: Fandango
Andrés Segovia (Gt)
(Rec. January 1958, New York)
アンドレス・セゴビア(Andrés Segovia, 1893-1987)は、スペインのギタリストです。
彼の名前について「セゴヴィア」と、英語風の読み方をする人もいますが、スペイン語では”v”も”b”も同じ日本語で言うところのバ行の発音で区別がないそうです。
セゴビアは、同時代の作曲家たちにギター曲を書かせ、クラシック音楽におけるギター音楽のレパートリーの拡充に力を入れていましたが、このCDは、そうしたセゴビアの業績の一端を知ることができます。
このCDに収録されているのは、フェデリコ・モレーノ・トローバ(Federico Moreno Torróba, 1891-1982)の《スペインの城》(抄録)と《特徴的小品集》、フェデリコ・モンポウ(Federico Mompou, 1891-1987)のコンポステラ組曲、マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ(Mario Castelnuovo-Tedesco, 1895-1968)の《ボッケリーニ讃》、マヌエル・ポンセ(Manuel Ponce, 1882-1948)のメキシコ風ソナタから終楽章、オスカル・エスプラ(Oscar Esplá, 1886-1976)の《音楽的印象》から〈アンターニョ〉、ホアキン・ロドリーゴ(Joaquín Rodrigo, 1901-1999)の《スペイン風の3つの小品》から〈ファンダンゴ〉です。
モレーノ・トローバは、スペインの伝統的音楽の守護者を自認していたため、モダニズムにはほとんど興味を示さず、ひたすらサルスエラとスペインを題材にし た器楽曲の作曲に邁進しました。モダニズムを嫌っていたセゴビアとはウマが合ったらしく、彼の書いたギター曲のほとんどは、セゴビアのために書かれてお り、《スペインの城》と《特徴的小品集》も、その例外ではありません。
《スペインの城》は、スペインに点在する古城の印象を書いたもの。ここで演奏されているのは〈トゥレガノ-山唄〉〈トリーハ-悲歌〉〈マンサナーレス・エ ル・レアル-美しき乙女に〉〈モンテマヨール-静思〉〈アルカニス-祝祭〉〈シグエンサ-王女は眠る〉〈アルバ・デ・トルメス-吟遊詩人の歌〉〈セゴビア の王城-召集〉の8曲です。
《特徴的小品集》のほうは、〈序〉〈オリーブ摘みの唄〉〈唄〉〈五月祭の唄〉〈夜明けの調べ〉〈パノラマ〉の6曲から成りますが、出版譜では、第3曲目は 〈メロディア〉という別の曲でした。つまり、セゴビアが自由にモレーノ・トローバの作品を差し替えて、独自の版を作って演奏しています。
モンポウもスペインの作曲家で、彼もモダニズムと距離を置いてピアノ曲を中心に作曲活動を展開した人です。
1958年にサンティアゴ・デ・コンポステラで開かれた公開音楽講座でセゴビアに出会い、その影響で1962年にセゴビアのためにこの作品を書きました。
曲は、三部形式による〈前奏曲〉、エオリア旋法を駆使した〈コラール〉、子守歌風の〈ゆりかご〉、自由な形式による〈レチタティーヴォ〉、シチリアーノを意識した〈歌〉と快活な舞曲としての〈ムニェイラ(ムイニェイラ)〉の6曲からなります。
カステルヌオーヴォ=テデスコは、イタリア出身の作曲家です。彼もまたセゴビアと交流の深かった作曲家で、彼との出会いでギター曲をたくさん書き、その量からギター音楽専門の作曲家と勘違いされるほどでした。
1934年にジュネーヴで初演されたこの作品ですが、ボッケリーニに捧げるソナタというアイデアは、カステルヌオーヴォ=テデスコ本人の着想ではなく、セゴビアからの提案だったのだとか。
ポンセもセゴビアにせびられてギター曲を書いた作曲家の一人。セゴビアは、このソナタ・メヒカーナも全曲演奏しているはずなのですが、ここでは終楽章を抜き出して演奏しています。メキシコの作曲家らしく、自分の土壌を音楽化しただけあって、才気の迸りが感じられるでしょう。
エスプラの〈アンターニョ〉は、元々ピアノ曲として1929年に作曲されましたが、スペイン出身のホセ・デ・アスピアス(José De Azpiazu, 1912-1986)がギター用に編曲して、ギターでも演奏されるようになりました。アスピアスは、スペインの作曲家の作品を数多くギター用に編曲しており、セゴビアも、アスピアスの仕事に一定の評価を与えていたことが、この録音からも窺えます。
ロドリーゴもエスプラ同様スペインの作曲家です。アランフェス協奏曲の作曲者として有名なロドリーゴでしたが、セゴビアはアランフェス協奏曲を演奏しようとはしなかったようです。
その代わり、セゴビアのために作曲した《貴紳のための幻想曲》は、セゴビアの愛奏曲になりました。
この〈ファンダンゴ〉は、〈サパテアード〉や〈パッサカリア〉と一緒に1963年に出版されましたが、この録音はその出版前に録音されたもののようです。
以上のように、セゴビアは、広く作曲家たちと親交を結び、ギター曲を書かせて、気に入った作品を自分のレパートリーに加えていたことが分かります。また、先述したように、必ずしも原典への忠実さには頓着していなかったということもわかると思います。彼にとって、作品はあくまで、ギターの魅力を知らしめる素材であって、まず作品ありきではなく、ギターの魅力ありきだったのです。
セゴビアの考えるギターの魅力は、歌手の歌声とのアナロジーで考えることが出来ます。
モレーノ・トローバの《スペインの城》の〈トゥレガノ〉からロドリーゴの〈ファンダンゴ〉に至るまで、作品のリズムを崩し、ヴィブラートをかけてまでメロディ・ラインを強調しています。セゴビアのスタイルは、音楽を立体的に構築するという点では不格好な音楽になりますが、歌うことを音楽の信条とする人にとって、陶酔的な魅力を湛えたスタイルだといえるでしょう。
こういった嗜好の持ち主だったセゴビアは、フランク・マルタンやダリウス・ミヨーといった、当時の新鋭作曲家たちからも作品を提供されていますが、メロディ・ラインの魅力を感じられない作品についてはオミットを決め込んでいました。
自分の趣味に合わない作品を省き、自分好みの作品をレパートリーに加えていくことで、自分の芸術世界を作り上げ、その芸術を生涯にわたって磨きあげることで、ギターの魅力を世界中の人々に知らしめたという功績は、セゴビアならではの偉業と言えるでしょう。
彼の名前について「セゴヴィア」と、英語風の読み方をする人もいますが、スペイン語では”v”も”b”も同じ日本語で言うところのバ行の発音で区別がないそうです。
セゴビアは、同時代の作曲家たちにギター曲を書かせ、クラシック音楽におけるギター音楽のレパートリーの拡充に力を入れていましたが、このCDは、そうしたセゴビアの業績の一端を知ることができます。
このCDに収録されているのは、フェデリコ・モレーノ・トローバ(Federico Moreno Torróba, 1891-1982)の《スペインの城》(抄録)と《特徴的小品集》、フェデリコ・モンポウ(Federico Mompou, 1891-1987)のコンポステラ組曲、マリオ・カステルヌオーヴォ=テデスコ(Mario Castelnuovo-Tedesco, 1895-1968)の《ボッケリーニ讃》、マヌエル・ポンセ(Manuel Ponce, 1882-1948)のメキシコ風ソナタから終楽章、オスカル・エスプラ(Oscar Esplá, 1886-1976)の《音楽的印象》から〈アンターニョ〉、ホアキン・ロドリーゴ(Joaquín Rodrigo, 1901-1999)の《スペイン風の3つの小品》から〈ファンダンゴ〉です。
モレーノ・トローバは、スペインの伝統的音楽の守護者を自認していたため、モダニズムにはほとんど興味を示さず、ひたすらサルスエラとスペインを題材にし た器楽曲の作曲に邁進しました。モダニズムを嫌っていたセゴビアとはウマが合ったらしく、彼の書いたギター曲のほとんどは、セゴビアのために書かれてお り、《スペインの城》と《特徴的小品集》も、その例外ではありません。
《スペインの城》は、スペインに点在する古城の印象を書いたもの。ここで演奏されているのは〈トゥレガノ-山唄〉〈トリーハ-悲歌〉〈マンサナーレス・エ ル・レアル-美しき乙女に〉〈モンテマヨール-静思〉〈アルカニス-祝祭〉〈シグエンサ-王女は眠る〉〈アルバ・デ・トルメス-吟遊詩人の歌〉〈セゴビア の王城-召集〉の8曲です。
《特徴的小品集》のほうは、〈序〉〈オリーブ摘みの唄〉〈唄〉〈五月祭の唄〉〈夜明けの調べ〉〈パノラマ〉の6曲から成りますが、出版譜では、第3曲目は 〈メロディア〉という別の曲でした。つまり、セゴビアが自由にモレーノ・トローバの作品を差し替えて、独自の版を作って演奏しています。
モンポウもスペインの作曲家で、彼もモダニズムと距離を置いてピアノ曲を中心に作曲活動を展開した人です。
1958年にサンティアゴ・デ・コンポステラで開かれた公開音楽講座でセゴビアに出会い、その影響で1962年にセゴビアのためにこの作品を書きました。
曲は、三部形式による〈前奏曲〉、エオリア旋法を駆使した〈コラール〉、子守歌風の〈ゆりかご〉、自由な形式による〈レチタティーヴォ〉、シチリアーノを意識した〈歌〉と快活な舞曲としての〈ムニェイラ(ムイニェイラ)〉の6曲からなります。
カステルヌオーヴォ=テデスコは、イタリア出身の作曲家です。彼もまたセゴビアと交流の深かった作曲家で、彼との出会いでギター曲をたくさん書き、その量からギター音楽専門の作曲家と勘違いされるほどでした。
1934年にジュネーヴで初演されたこの作品ですが、ボッケリーニに捧げるソナタというアイデアは、カステルヌオーヴォ=テデスコ本人の着想ではなく、セゴビアからの提案だったのだとか。
ポンセもセゴビアにせびられてギター曲を書いた作曲家の一人。セゴビアは、このソナタ・メヒカーナも全曲演奏しているはずなのですが、ここでは終楽章を抜き出して演奏しています。メキシコの作曲家らしく、自分の土壌を音楽化しただけあって、才気の迸りが感じられるでしょう。
エスプラの〈アンターニョ〉は、元々ピアノ曲として1929年に作曲されましたが、スペイン出身のホセ・デ・アスピアス(José De Azpiazu, 1912-1986)がギター用に編曲して、ギターでも演奏されるようになりました。アスピアスは、スペインの作曲家の作品を数多くギター用に編曲しており、セゴビアも、アスピアスの仕事に一定の評価を与えていたことが、この録音からも窺えます。
ロドリーゴもエスプラ同様スペインの作曲家です。アランフェス協奏曲の作曲者として有名なロドリーゴでしたが、セゴビアはアランフェス協奏曲を演奏しようとはしなかったようです。
その代わり、セゴビアのために作曲した《貴紳のための幻想曲》は、セゴビアの愛奏曲になりました。
この〈ファンダンゴ〉は、〈サパテアード〉や〈パッサカリア〉と一緒に1963年に出版されましたが、この録音はその出版前に録音されたもののようです。
以上のように、セゴビアは、広く作曲家たちと親交を結び、ギター曲を書かせて、気に入った作品を自分のレパートリーに加えていたことが分かります。また、先述したように、必ずしも原典への忠実さには頓着していなかったということもわかると思います。彼にとって、作品はあくまで、ギターの魅力を知らしめる素材であって、まず作品ありきではなく、ギターの魅力ありきだったのです。
セゴビアの考えるギターの魅力は、歌手の歌声とのアナロジーで考えることが出来ます。
モレーノ・トローバの《スペインの城》の〈トゥレガノ〉からロドリーゴの〈ファンダンゴ〉に至るまで、作品のリズムを崩し、ヴィブラートをかけてまでメロディ・ラインを強調しています。セゴビアのスタイルは、音楽を立体的に構築するという点では不格好な音楽になりますが、歌うことを音楽の信条とする人にとって、陶酔的な魅力を湛えたスタイルだといえるでしょう。
こういった嗜好の持ち主だったセゴビアは、フランク・マルタンやダリウス・ミヨーといった、当時の新鋭作曲家たちからも作品を提供されていますが、メロディ・ラインの魅力を感じられない作品についてはオミットを決め込んでいました。
自分の趣味に合わない作品を省き、自分好みの作品をレパートリーに加えていくことで、自分の芸術世界を作り上げ、その芸術を生涯にわたって磨きあげることで、ギターの魅力を世界中の人々に知らしめたという功績は、セゴビアならではの偉業と言えるでしょう。
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