1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
◈Wolfgang Amadeus Mozart: Piano Sonata No.8 in A minor, K310
Lazare Lévy (Pf)
(Rec. November 1955)
◈Wolfgang Amadeus Mozart: 12 Variation on "La belle Françoise", K353Jean Doyen (Pf)
(Rec. November 1955)
◈Wolfgang Amadeus Mozart: 9 Variation on "Lison dormait", K264◈Wolfgang Amadeus Mozart: Capriccio (Prelude) in C major, K395
Jeanne-Marie Darré (Pf)
(Rec. November 1955)
◈Wolfgang Amadeus Mozart: Sonata for Violin and Piano in E minor, K304Roland Charmy (Vn)
Vlado Perlemuter (Pf)
Vlado Perlemuter (Pf)
(Rec. November 1955)
本CDは、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart, 1756-1791)の生誕200年記念にフランスで企画された録音の一部です。フェルナン・ウーブラドゥが音頭をとって行われたこの企画は、モーツァルトがパリに滞在していた時につくった作品を総ナメにするというものでした。
この企画のレコードは、今日ではヴィンテージ物扱いされていますが、それは特に、当時フランスで盛名を馳せた名手たちを惜しげもなく起用して録音しているからにほかなりません。いわば、この録音は、1950年代フランスの一流演奏家の名鑑の役割も果たしていたのです。
このCDに収録されているのは、どれも1778年のパリ滞在時につくられた作品が選ばれています。
この年には、モーツァルトについていった母親が病死した年でもあり、作品のあちこちに、独特の陰りを見出すことが出来ます。
第8番のピアノ・ソナタは、ラザール・レヴィ(Lazare Lévy, 1882-1964)の録音です。レヴィは、ルイ・ディエメ門下のピアニストで、長らくパリ音楽院で教鞭をとった名教師として知られていました。主な門下には、モニク・アースやクララ・ハスキルといった人たちがおり、かのジョン・ケージも、レヴィにピアノを師事したことがあります。
その高い名声に比べて、世に出回っている録音はさほど多くなく、これらの録音は、在りし日のレヴィを偲ぶ便として貴重なものといえそうです。
録音時のレヴィは、70歳を超えていたはずですが、まるで完成度の高いパズルのようなガッチリとした演奏です。老いによって指の回りが悪くなるということを、自分自身に許さないような意志の強さを感じさせます。自分が奏でるすべての音を、自分のコントロール下に置くというのは、演奏家であれば当然というべきことですが、それを高度に徹底して実践することにより、まるでダイヤモンドのような演奏に仕上げています。
ソナタ第1楽章の和音によるリズムの刻みの緊迫感や、第3楽章の複雑な主題の応酬など、居住まいを正さなければならないような気にさせます。また、第2楽章においても、決して美しいメロディに依存することなく、しっかりとした緊張感で作品の造形を堅守しています。
《美しいフランソワーズ》による変奏曲はジャン・ドワイアン(Jean Doyen, 1907-1982)による演奏。変奏曲の主題は、モーツァルトがパリの滞在中に耳にしたシャンソンだそうです。演奏するドワイアンは、マルグリット・ロンに師事した後レヴィの薫陶を受けた名手で、ガブリエル・フォーレやモーリス・ラヴェルといった19世紀から20世紀にかけてのフランス音楽に評価の高かった人です。
ドワイアンの演奏は、前述の師匠ほどに間然するところのない演奏ではなく、それぞれの変奏のキャラクターを踏まえ、多彩な表現で様々な表情を楽しませる演奏を繰り広げています。しかし、決してはしゃがず、大人びた色合いを失わないのは、師匠の影響でしょうか?
〈眠れるリゾン〉による変奏曲とカプリッチョの演奏は、ジャンヌ=マリー・ダルレ(Jeanne-Marie Darré, 1905-1999)の演奏です。〈眠れるリゾン〉は、ニコラ・ドゥセード(Nicolas Dezède, 1740-1792)の喜歌劇《ジュリー》のアリエッタでした。この喜歌劇自体は、1772年に発表されましたが、モーツァルトがパリに来た時には、丁度再演していて、その上演を鑑賞したときに、このアリエッタを気に入って、変奏曲を書き上げたものと思われます。カプリチオに関しては、最近の研究では1777年頃の作品ではないかということになっていますが、この録音が行われたころは、1778年のパリ旅行中の作品として扱われていました。当時の楽器の性能テストを兼ねた作品らしく、形式に囚われない、自由奔放な音楽に仕上がっています。
ロン門下のダルレの演奏は、ドワイアンの演奏と比べて、チャーミングさが加わっていて、ころころと玉を転がすような、楽しい弾きっぷりが印象的です。
最後に収録されているのは、通し番号第28番のヴァイオリン・ソナタです。
モーツァルトのヴァイオリン・ソナタにしては、随分シリアスな作品で、二つの楽章しかありません。しかし憂いを十分に含んだ楽想のドラマ性と、ヴァイオリン・パートの充実ゆえに、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタの中では格別の人気があるようです。
演奏するのは、ローラン・シャルミー(Roland Charmy, 1908-1987)とヴラド・ペルルミュテール(Vlado Perlemuter, 1904-2002)です。シャルミーは、マルタン=ピエール・マルシックとカール・フレッシュの薫陶を受けたフランスのヴァイオリニストで、リリー・ラスキーヌの夫君として知られています。ペルルミュテールは、アルフレッド・コルトーの門下生ながら、作曲家のモーリス・ラヴェルの薫陶も受けたピアノの名手でした。
シャルミーのヴァイオリンの音色は、先輩格のジャック・ティボーを思い起こさせるような艶やかさを持っていますが、フレッシュの薫陶を受けたためか、ティボーほどの弾き崩しは見せず、節度を保った弾きっぷりを聴かせます。
ペルルミュテールのピアノも、しっとりとしたシャルミーの芸風を殺さず、ぴったりと寄り添っています。両者の共演の旨みは、特に後半の楽章にあり、ペルルミュテルの端正な佇まいとシャルミーの艶やかさが溶け合って、古雅な味わいを引き出しています。
この企画のレコードは、今日ではヴィンテージ物扱いされていますが、それは特に、当時フランスで盛名を馳せた名手たちを惜しげもなく起用して録音しているからにほかなりません。いわば、この録音は、1950年代フランスの一流演奏家の名鑑の役割も果たしていたのです。
このCDに収録されているのは、どれも1778年のパリ滞在時につくられた作品が選ばれています。
この年には、モーツァルトについていった母親が病死した年でもあり、作品のあちこちに、独特の陰りを見出すことが出来ます。
第8番のピアノ・ソナタは、ラザール・レヴィ(Lazare Lévy, 1882-1964)の録音です。レヴィは、ルイ・ディエメ門下のピアニストで、長らくパリ音楽院で教鞭をとった名教師として知られていました。主な門下には、モニク・アースやクララ・ハスキルといった人たちがおり、かのジョン・ケージも、レヴィにピアノを師事したことがあります。
その高い名声に比べて、世に出回っている録音はさほど多くなく、これらの録音は、在りし日のレヴィを偲ぶ便として貴重なものといえそうです。
録音時のレヴィは、70歳を超えていたはずですが、まるで完成度の高いパズルのようなガッチリとした演奏です。老いによって指の回りが悪くなるということを、自分自身に許さないような意志の強さを感じさせます。自分が奏でるすべての音を、自分のコントロール下に置くというのは、演奏家であれば当然というべきことですが、それを高度に徹底して実践することにより、まるでダイヤモンドのような演奏に仕上げています。
ソナタ第1楽章の和音によるリズムの刻みの緊迫感や、第3楽章の複雑な主題の応酬など、居住まいを正さなければならないような気にさせます。また、第2楽章においても、決して美しいメロディに依存することなく、しっかりとした緊張感で作品の造形を堅守しています。
《美しいフランソワーズ》による変奏曲はジャン・ドワイアン(Jean Doyen, 1907-1982)による演奏。変奏曲の主題は、モーツァルトがパリの滞在中に耳にしたシャンソンだそうです。演奏するドワイアンは、マルグリット・ロンに師事した後レヴィの薫陶を受けた名手で、ガブリエル・フォーレやモーリス・ラヴェルといった19世紀から20世紀にかけてのフランス音楽に評価の高かった人です。
ドワイアンの演奏は、前述の師匠ほどに間然するところのない演奏ではなく、それぞれの変奏のキャラクターを踏まえ、多彩な表現で様々な表情を楽しませる演奏を繰り広げています。しかし、決してはしゃがず、大人びた色合いを失わないのは、師匠の影響でしょうか?
〈眠れるリゾン〉による変奏曲とカプリッチョの演奏は、ジャンヌ=マリー・ダルレ(Jeanne-Marie Darré, 1905-1999)の演奏です。〈眠れるリゾン〉は、ニコラ・ドゥセード(Nicolas Dezède, 1740-1792)の喜歌劇《ジュリー》のアリエッタでした。この喜歌劇自体は、1772年に発表されましたが、モーツァルトがパリに来た時には、丁度再演していて、その上演を鑑賞したときに、このアリエッタを気に入って、変奏曲を書き上げたものと思われます。カプリチオに関しては、最近の研究では1777年頃の作品ではないかということになっていますが、この録音が行われたころは、1778年のパリ旅行中の作品として扱われていました。当時の楽器の性能テストを兼ねた作品らしく、形式に囚われない、自由奔放な音楽に仕上がっています。
ロン門下のダルレの演奏は、ドワイアンの演奏と比べて、チャーミングさが加わっていて、ころころと玉を転がすような、楽しい弾きっぷりが印象的です。
最後に収録されているのは、通し番号第28番のヴァイオリン・ソナタです。
モーツァルトのヴァイオリン・ソナタにしては、随分シリアスな作品で、二つの楽章しかありません。しかし憂いを十分に含んだ楽想のドラマ性と、ヴァイオリン・パートの充実ゆえに、モーツァルトのヴァイオリン・ソナタの中では格別の人気があるようです。
演奏するのは、ローラン・シャルミー(Roland Charmy, 1908-1987)とヴラド・ペルルミュテール(Vlado Perlemuter, 1904-2002)です。シャルミーは、マルタン=ピエール・マルシックとカール・フレッシュの薫陶を受けたフランスのヴァイオリニストで、リリー・ラスキーヌの夫君として知られています。ペルルミュテールは、アルフレッド・コルトーの門下生ながら、作曲家のモーリス・ラヴェルの薫陶も受けたピアノの名手でした。
シャルミーのヴァイオリンの音色は、先輩格のジャック・ティボーを思い起こさせるような艶やかさを持っていますが、フレッシュの薫陶を受けたためか、ティボーほどの弾き崩しは見せず、節度を保った弾きっぷりを聴かせます。
ペルルミュテールのピアノも、しっとりとしたシャルミーの芸風を殺さず、ぴったりと寄り添っています。両者の共演の旨みは、特に後半の楽章にあり、ペルルミュテルの端正な佇まいとシャルミーの艶やかさが溶け合って、古雅な味わいを引き出しています。
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