1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
◈Carl Maria von Weber: Euryante - Overture
◈Carl Maria von Weber: Preciosa - Overture
◈Carl Maria von Weber: Overture "Jubel"
◈Carl Maria von Weber: Oberon - Overture
◈Carl Maria von Weber: Abu Hassan - Overture
◈Carl Maria von Weber: Peter Schmoll und seine Nachbarn - Overture
Orchestre du Théâtre National de l'Opéra de Paris / Hermann Scherchen
(Rec. 1959, Paris)
◈Felix Mendelssohn: Overture "Das Märchen von der schönen Melusine"Saar Chamber Orchestra / Karl Ristenpart
(Rec. January 1965, Saal)
ドイツの作曲家、カール・マリア・フォン・ウェーバー(Carl Maria von Weber, 1786-1826)の歌劇や劇の付随音楽の序曲や演奏会用の序曲を中心に集めたアルバムです。歌劇用の序曲としては《オイリアンテ》、《オベロン》、《アブ・ハッサン》、《ペーター・シュモルとその隣人たち》の4作品、劇付随の序曲としては《プレチオーザ》、演奏会用の序曲としては《歓呼》(「祝典序曲」とも呼ばれる)が選曲されています。
13世紀フランスのロマンスを基にした《オイリアンテ》(1822-1823年作)は、初演当初は、ヘルミーナ・フォン・シェジー(Helmina von Chézy, 1783-1856)の台本の稚拙さを指摘されて評判になりませんでしたが、序曲だけは、その出来栄えの良さからコンサート用のレパートリーとして有名になりました。
《オベロン》(1825-1826年作)は、ウェーバーの書き上げた最後の作品です。ロンドンのコヴェント・ガーデン王立歌劇場から依頼を受け、クリストフ・マルティン・ヴィーラントの『オベロン』を原作とする、ジェームズ・プランチェ(James Planché, 1796-1880)の台本で作曲されました。コヴェント・ガーデンでの初演は、作曲者自身の指揮で成功に終わりましたが、ウェーバーの結核の病状が進行してしまい、帰国する体力もなく、初演からおよそ二ヵ月後の6月5日にロンドンで客死しています。
《アブ・ハッサン》(1810年作)は、一幕物のジングシュピールとして作曲されたもので、原作は『アラビアン・ナイト(千夜一夜物語)』の中の作品でした。これもまた序曲の評判が高く、今日でもしばしばコンサートで取り上げられます。
《ペーター・シュモルとその隣人たち》(1801-1802年作)は、ミヒャエル・ハイドンの下で修業をしていた頃の作品です。オペラ自体は全く評判になりませんでしたが、序曲は好評だったことから、1807年に改訂を加えて単独で出版しています。
《プレチオーザ》の序曲は、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの弟子に当たるピウス・アレクサンダー・ヴォルフ(Pius Alexander Wolff, 1782-1828)の作った戯曲のためにつくった劇伴奏の音楽です。元々は、序曲と11のシーンの音楽からなりますが、今日では特に序曲が積極的に演奏されています。
序曲《歓呼》は、1818年に、ザクセン王の即位50周年を記念する式典のために作曲した作品。終結部にイギリス国歌が登場しますが、当時はザクセンの国歌として歌われていたのだとか。
演奏は、ヘルマン・シェルヘン(Hermann Scherchen, 1891-1966)の指揮するパリ国立歌劇場管弦楽団(パリ・オペラ座管弦楽団)。パリ国立歌劇場管弦楽団は、1672年にルイ14世治世下で作られた音楽アカデミーを端緒とする由緒正しいオーケストラです。1989年に、今までのパリのオペラ座ことガルニエ宮から新築のバスティーユ歌劇場に一時移転したことで、「パリ・バスティーユ管弦楽団」という名称を使うようになりました。本録音が行われたころは、ピエール・デルヴォーが常任指揮者としてオーケストラを取り仕切っていましたが、オーケストラの力量は、パリ音楽院管弦楽団を荒くしたような感じに留まっていました。管楽セクションに独特の表情付けがあり、特にトランペットの高らかな音色は、《オイリアンテ》序曲など勇壮な音楽で強みを発揮していますが、弦楽セクションが弱体なので、音色のブレンドはいまいち上手くいっていません。《アブ・ハッサン》序曲では、指揮者の要求するハイ・スピードにしどろもどろの状況です。シェルヘンの剛腕でオーケストラを引きずりまわすようなサディスティックな快感はありますが、必ずしも、ウェーバーの序曲に期待されるような効果を十分に出しつくした演奏とは言えません。
余白にフェリックス・メンデルスゾーン(Felix Mendelssohn, 1809-1847)の序曲《美しいメルジーネの物語》(1833年作)が収録されています。ベルリンに出かけていたメンデルスゾーンは、コンラーディン・クロイツァーの作曲したオペラに接し、フランツ・グリルパルツァーの書いた筋書きに感動したものの、クロイツァーの音楽が気に入らず、序曲だけでも自分好みのものを書こうとして、本作品が出来上がりました。完成した翌年にはロンドンで初演されて歓迎されたものの、姉のファニーや、初演を指揮したイグナーツ・モシェレスの意見を聞き入れて改訂を施し、1836年に決定稿として出版され、ライプツィヒで改めて演奏されました。
演奏はカール・リステンパルト(Karl Ristenpart, 1900-1967)の指揮するザール室内管弦楽団が担当しています。
リステンパルトは、13歳で音楽の道に進むことを決心していますが、その契機になったのは、ベルリンでシェルヘンの演奏するグスタフ・マーラーの交響曲第5番を聴いたことでした。ベルリンのシュテルン音楽院に進んだ後、ウィーン音楽院に行ってフーゴー・カウダーの門下生となりました。卒業後は、自前で合奏団を作ってみたり、ベルリンのRIAS放送局の室内管弦楽団の指揮を任されたりしていました。ザール室内管弦楽団は、1953年にザール放送のオーケストラとしてリステンパルトが設立したオーケストラで、ドイツのザール放送局がスポンサーだったことから、ザール放送室内管弦楽団(Kammerorchester des Saarländischen Rundfunks)等と呼ばれることがあります。1962年にザールブリュッケン放送にスポンサーが変わった後もしばらく存続し、1973年にザールブリュッケン放送交響楽団に吸収される形で消滅しました。
18世紀以前の作品から同時代の作品まで、幅広いレパートリーを誇ったリステンパルトとザール室内管弦楽団でしたが、今日では相当の音源が埋没しており、このメンデルスゾーンの録音も、彼の音源復刻としては貴重なものです。決して大編成とは言えないオーケストラを操りながら、盤石の安定感で淀みのない演奏を繰り広げており、作品の聴かせどころを心得た名演奏と言えそうです。シェルヘンのウェーバーの録音のようないつ崩壊するともしれないハラハラ感がなく、それぞれのパートが伸び伸びと奏でながら、全体がしっかりまとまっている点に、リステンパルトの至芸を偲ばせます。
13世紀フランスのロマンスを基にした《オイリアンテ》(1822-1823年作)は、初演当初は、ヘルミーナ・フォン・シェジー(Helmina von Chézy, 1783-1856)の台本の稚拙さを指摘されて評判になりませんでしたが、序曲だけは、その出来栄えの良さからコンサート用のレパートリーとして有名になりました。
《オベロン》(1825-1826年作)は、ウェーバーの書き上げた最後の作品です。ロンドンのコヴェント・ガーデン王立歌劇場から依頼を受け、クリストフ・マルティン・ヴィーラントの『オベロン』を原作とする、ジェームズ・プランチェ(James Planché, 1796-1880)の台本で作曲されました。コヴェント・ガーデンでの初演は、作曲者自身の指揮で成功に終わりましたが、ウェーバーの結核の病状が進行してしまい、帰国する体力もなく、初演からおよそ二ヵ月後の6月5日にロンドンで客死しています。
《アブ・ハッサン》(1810年作)は、一幕物のジングシュピールとして作曲されたもので、原作は『アラビアン・ナイト(千夜一夜物語)』の中の作品でした。これもまた序曲の評判が高く、今日でもしばしばコンサートで取り上げられます。
《ペーター・シュモルとその隣人たち》(1801-1802年作)は、ミヒャエル・ハイドンの下で修業をしていた頃の作品です。オペラ自体は全く評判になりませんでしたが、序曲は好評だったことから、1807年に改訂を加えて単独で出版しています。
《プレチオーザ》の序曲は、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの弟子に当たるピウス・アレクサンダー・ヴォルフ(Pius Alexander Wolff, 1782-1828)の作った戯曲のためにつくった劇伴奏の音楽です。元々は、序曲と11のシーンの音楽からなりますが、今日では特に序曲が積極的に演奏されています。
序曲《歓呼》は、1818年に、ザクセン王の即位50周年を記念する式典のために作曲した作品。終結部にイギリス国歌が登場しますが、当時はザクセンの国歌として歌われていたのだとか。
演奏は、ヘルマン・シェルヘン(Hermann Scherchen, 1891-1966)の指揮するパリ国立歌劇場管弦楽団(パリ・オペラ座管弦楽団)。パリ国立歌劇場管弦楽団は、1672年にルイ14世治世下で作られた音楽アカデミーを端緒とする由緒正しいオーケストラです。1989年に、今までのパリのオペラ座ことガルニエ宮から新築のバスティーユ歌劇場に一時移転したことで、「パリ・バスティーユ管弦楽団」という名称を使うようになりました。本録音が行われたころは、ピエール・デルヴォーが常任指揮者としてオーケストラを取り仕切っていましたが、オーケストラの力量は、パリ音楽院管弦楽団を荒くしたような感じに留まっていました。管楽セクションに独特の表情付けがあり、特にトランペットの高らかな音色は、《オイリアンテ》序曲など勇壮な音楽で強みを発揮していますが、弦楽セクションが弱体なので、音色のブレンドはいまいち上手くいっていません。《アブ・ハッサン》序曲では、指揮者の要求するハイ・スピードにしどろもどろの状況です。シェルヘンの剛腕でオーケストラを引きずりまわすようなサディスティックな快感はありますが、必ずしも、ウェーバーの序曲に期待されるような効果を十分に出しつくした演奏とは言えません。
余白にフェリックス・メンデルスゾーン(Felix Mendelssohn, 1809-1847)の序曲《美しいメルジーネの物語》(1833年作)が収録されています。ベルリンに出かけていたメンデルスゾーンは、コンラーディン・クロイツァーの作曲したオペラに接し、フランツ・グリルパルツァーの書いた筋書きに感動したものの、クロイツァーの音楽が気に入らず、序曲だけでも自分好みのものを書こうとして、本作品が出来上がりました。完成した翌年にはロンドンで初演されて歓迎されたものの、姉のファニーや、初演を指揮したイグナーツ・モシェレスの意見を聞き入れて改訂を施し、1836年に決定稿として出版され、ライプツィヒで改めて演奏されました。
演奏はカール・リステンパルト(Karl Ristenpart, 1900-1967)の指揮するザール室内管弦楽団が担当しています。
リステンパルトは、13歳で音楽の道に進むことを決心していますが、その契機になったのは、ベルリンでシェルヘンの演奏するグスタフ・マーラーの交響曲第5番を聴いたことでした。ベルリンのシュテルン音楽院に進んだ後、ウィーン音楽院に行ってフーゴー・カウダーの門下生となりました。卒業後は、自前で合奏団を作ってみたり、ベルリンのRIAS放送局の室内管弦楽団の指揮を任されたりしていました。ザール室内管弦楽団は、1953年にザール放送のオーケストラとしてリステンパルトが設立したオーケストラで、ドイツのザール放送局がスポンサーだったことから、ザール放送室内管弦楽団(Kammerorchester des Saarländischen Rundfunks)等と呼ばれることがあります。1962年にザールブリュッケン放送にスポンサーが変わった後もしばらく存続し、1973年にザールブリュッケン放送交響楽団に吸収される形で消滅しました。
18世紀以前の作品から同時代の作品まで、幅広いレパートリーを誇ったリステンパルトとザール室内管弦楽団でしたが、今日では相当の音源が埋没しており、このメンデルスゾーンの録音も、彼の音源復刻としては貴重なものです。決して大編成とは言えないオーケストラを操りながら、盤石の安定感で淀みのない演奏を繰り広げており、作品の聴かせどころを心得た名演奏と言えそうです。シェルヘンのウェーバーの録音のようないつ崩壊するともしれないハラハラ感がなく、それぞれのパートが伸び伸びと奏でながら、全体がしっかりまとまっている点に、リステンパルトの至芸を偲ばせます。
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