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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Ludwig van Beethoven: Piano Concerto No.3 in C minor, op.37
Solomon (Pf)
Amsterdam Concertgebouw Orchestra / Eduard van Beinum
(Rec. 18 December 1952) Live Recording with Applause
◈Peter Ilyich Tchaikovsky: Piano Concerto No.1 in B flat minor, op.23
Solomon (Pf)
Kansas City Philharmonic Orchestra / Hans Schweiger
(Rec. 29 or 30 January 1952) Live Recording without Applause



ソロモン(Solomon)ことソロモン・カットナー(Solomon Cutner,1902-1988)は、イギリスのピアニストです。5歳でマチルダ・ヴェルンに師事して、8歳で舞台デビューを果たし、9歳でバッキンガム宮殿で「神童ソロモン」として御前演奏をしてから姓の「ソロモン」のみを芸名にして活動しました。
ピアニストとしてのソロモンの活動は、必ずしも順風満帆だったわけではなく、年を経るごとに天才少年として扱われることに抵抗を感じるようになり、指揮者のヘンリー・ウッドのアドヴァイスを受けて14歳で一旦演奏活動から身を引きました。1923年にピアニストとして復帰していますが、それまでに、テオドール・レシェティツキ門下のシモン・ラムシンスキー、フランスのオルガニストで作曲家のマルセル・デュプレ、パリ音楽院のピアノ科の名教師として知られたラザール・レヴィの各氏に師事し、一からピアノの腕を磨き直しています。1926年にアメリカでの公演を成功させてから、イギリス出身の高名なピアニストとして広く名を知られるようになりましたが、1956年に脳梗塞に伴う両手麻痺を発症して引退し、三十余年の療養生活の末にロンドンの自宅で亡くなりました。

本CDに収録されているのは、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven, 1770-1827)のピアノ協奏曲第3番(1800年作)と、ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(Peter Ilyich Tchaikovsky, 1840-1893)のピアノ協奏曲第1番です。
チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番(1888年決定稿完成)は、天才少年としてオーケストラと初共演した時に弾いた演目であり、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番も、天才少年時代から得意として何度も演奏してきた演目です。ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番ではクララ・シューマンのカデンツァを用いていますが、ソロモンの最初の師だったヴェルンがクララの弟子だったことから、ソロモンとクララの縁を想起させます。
伴奏は、ベートーヴェンの方を、エドゥアルト・ファン・ベイヌム(Eduard van Beinum, 1901-1959)の指揮するアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(現:ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団)、チャイコフスキーのほうを、ハンス・シュヴァイガー(Hans Schweiger, 1907-2000)の指揮するカンザス・シティ・フィルハーモニー管弦楽団が担当しています。
ベートーヴェンの協奏曲でアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団を指揮するベイヌムは、当楽団の首席指揮者を1945年から亡くなる年まで務めたオランダの指揮者です。ベートーヴェンの作品は、ベイヌムにとっても十八番のレパートリーでしたが、レコーディングに関わった時期がさほど長くなかったこともあり、充分な録音を残せませんでした。
チャイコフスキーの作品でソロモンと共演するシュヴァイガーは、ドイツ出身の指揮者です。第二次世界大戦下にアメリカに亡命し、インディアナ州のフォートウェイン・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を経て、1948年から1971年まで、このミズーリ州のカンザス・シティ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を歴任しています。アルトゥーロ・トスカニーニに招かれてNBC交響楽団も振っているので、一廉以上の指揮者と目されていたことが窺えます。なお、このカンザス・シティ・フィルハーモニー管弦楽団は、1982年に経営難により解散しており、同年に結成されたカンザス・シティ交響楽団とは別の団体であることを申し添えておきます。

これらの録音は、正規発売を企図して録音されたものではないらしく、音質も1930年代並みといったところ。しかし、それでもソロモンの芸風やオーケストラとの渡り合いは充分に感得できます。
オーケストラ共々完成度が高いのはベートーヴェンの作品のほうです。第1楽章のオーケストラによる主題提示は、峻厳な第一主題と柔和な第二主題の描き分けがくっきりしていて、ピアノの登場に期待感を持たせるのに十分な出来栄えです。ソロモンのピアノも、オーケストラによる主題提示の隈取りから逸脱せず、良く整った演奏を披露しています。第2楽章でも、ソロモンのピアノとオーケストラが阿吽の呼吸でスムーズな演奏を展開しています。ピアノの音を際立たせるのではなく、オーケストラに同化していくようなスタンスを取っていればこそ、親密な室内楽のように落ち着いた雰囲気を保っているのでしょう。第3楽章においても、ソロモンのピアノは技巧的な冴えを示しながら、それがこれ見よがしにならず、常にオーケストラと歩調を合わせるような慎ましさを備えています。ソロモンが活躍していた頃は、ソリストが主人として尊大に振る舞い、指揮者はオーケストラを巧みに操りながらソリストに傅くというスタイルが一般的でしたが、ソロモンはそうした尊大な灰汁の強さを感じさせず、指揮者が気持ちよくオーケストラをコントロールできるように合わせるという職人的な芸風を持っていたので、指揮者たちはこぞってソロモンとの共演を切望したものでした。
シュヴァイガーと共演したチャイコフスキーの作品では、初っ端こそ勢い任せのオーケストラにソロモンのピアノがたじろぎ、タッチミスを起こしていますが、次第にオーケストラと足並みがそろうようになります。第2楽章ではオーケストラに繊細さの点で不満を残しますが、ソロモンのピアノは、そんなオーケストラにニュアンスの大事さを噛んで含めて伝えるような丁寧な演奏で応えています。第3楽章は荒っぽいオーケストラの響きがかえって曲の趣に合致し、賑々しくなっています。しかし、ソロモンのピアノは、そうした喧騒に巻き込まれて暴力的になるのではなく、凛とした美しさを引き出そうとしています。全体的に、この曲をガンガン弾いてナンボと考える人にとって食い足りない演奏であり、デリカシーを求める向きには、より良質のオーケストラとの共演で楽しみたいという感想が出されるでしょう。また、曲が終了するや否や、余韻のへったくれもなくぶつっと切るような編集にも違和感を覚えます。

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