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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Wolfgang Amadeus Mozart: Piano Concerto No.25 in D major, K537
Arturo Benedetti Michelangeli (Pf)
Orchestra Filarmonica "Alessandro Scarlatti" della RAI di Napoli / Franco Caracciolo
(Rec. 19 November 1957, Sala del Conservatorio di San Pietro a Majella, Naples) Live Recording with Applause
◈Sergei Rachmaninoff: Piano Concerto No.4 in G minor, op.40
Arturo Benedetti Michelangeli (Pf)
Orchestra Filarmonica della RAI di Roma / Franco Caracciolo
(Rec. 12 May 1956, RAI-Auditorium del foro Italico, Roma) Live Recording with Applause
◈Frédéric Chopin: Waltz No.17 in E flat major, op.poth
Arturo Benedetti Michelangeli (Pf)
(Rec. 12 May 1956, RAI-Auditorium del foro Italico, Roma) Live Recording with Applause



アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(Arturo Benedetti Michelangeli,1920-1995)は、4歳でピアノを弾き始め、ミラノ音楽院でジョヴァンニ・アンフォッシに学んだイタリアのピアニスト。1938年のイザイ国際音楽コンクール(第二次世界大戦後に「エリザベート王妃国際国際音楽コンクール」に改称)で第7位入賞に終わりましたが、翌年にジュネーヴ国際音楽コンクールのピアノ部門で優勝しました。第二次世界大戦中は、反ファシズムのレジスタンスとして活動していましたが、戦後すぐに音楽活動に復帰し、ミスの殆どない磨き上げられたテクニックと美音で高い人気を誇りました。
「完璧さ」に強いこだわりを見せるあまり、自分が納得したレパートリーに限ってプログラムに載せ、なおかつピアノの状態から演奏会場の湿度に至るまでコンディションに難癖をつけて演奏会をキャンセルすることが多かったため、ベネデッティ・ミケランジェリはキャンセル魔としても有名でした。1980年の来日時には、殆どの演奏会をキャンセルしてしまったため、招聘元が彼の持参したピアノを差し押さえてしまうという騒動もありました。1988年には心臓発作で手術をし、その後も亡くなる2年前までマイ・ペースで演奏活動を続けていました。

本CDは、そんなベネデッティ・ミケランジェリの壮年期の協奏曲録音を収録しています。演目はヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart,1756-1791)のピアノ協奏曲第25番とセルゲイ・ラフマニノフ(Sergei Rachmaninoff,1873-1943)のピアノ協奏曲第4番です。最後のトラックに、ラフマニノフの演奏後のアンコールと思しきフレデリック・ショパン(Frédéric Chopin,1810-1849)のワルツ第17番が収録されています。
オーケストラの伴奏は、モーツァルトのほうはフランコ・カラッチオーロ(Franco Caracciolo,1920-1999)の指揮するナポリ・イタリア放送アレッサンドロ・スカルラッティ管弦楽団、ラフマニノフのほうはカラッチオーロの指揮するローマ・イタリア放送交響楽団です。AltaraのCDクレジットでは、両方のオーケストラにフィルハーモニー(Filarmonica)の表記が見られますが、ローマのイタリア放送(RAI)のオーケストラは交響楽団(Orchestra Sinfonica)を名乗っていました。ナポリのイタリア放送のオーケストラは、ミラノ、ローマやトリノのそれとは多少規模が小さく、18世紀イタリアの作曲家であるアレッサンドロ・スカルラッティの名前を冠して活動していました。今日では、これらのオーケストラは、1994年にトリノのイタリア放送のオーケストラに一本化されて消滅しています。
カラッチオーロは、ベルナルディーノ・モリナーリ門下の指揮者で、イタリア放送のオーケストラを中心に活躍していました。ナポリ・イタリア放送アレッサンドロ・スカルラッティ管弦楽団の首席指揮者を1949年から務め、1964年にミラノ・イタリア放送管弦楽団の首席指揮者に転出した後、1971年にナポリ・イタリア放送アレッサンドロ・スカルラッティ管弦楽団の首席指揮者に戻っています。

モーツァルトのピアノ協奏曲の録音は、カラッチオーロ未亡人の提供で初復刻された音源です。音は幾分くぐもっていますが、オーケストラの音が聴き分けられないほどではなく、ベネデッティ・ミケランジェリの至芸を味わうにも不足はありません。ベネデッティ・ミケランジェリの演奏は、折り目正しい造形を厳格に守り抜くような強い意志を感じさせるもので、ひたすら明晰なタッチを心がけて演奏しているのが分かります。カラッチオーロの指揮するオーケストラは、アンサンブルこそ大雑把ですが、要所要所でメリハリをつけて綻びをカバーし、ピアノの即興性を削がない絶妙なサポートを行っています。殊の外面白いのが第2楽章で、オーケストラの音色こそ粗いものの、木管セクションを中心にベネデッティ・ミケランジェリに表情豊かに語りかけており、ノン・ミスにこだわったようなベネデッティ・ミケランジェリのピアノが時折、そのニュアンスに乗せられてしまいます。両端楽章では、ピアノが独自のこだわりでガッチリ固めている分、厳格な造形へのこだわりが浮き上がり、名工の透かし彫りのような玄妙な味わいがあります。
ラフマニノフの演奏でも、ベネデッティ・ミケランジェリの演奏は基本的に変わらず、モーツァルト作品の演奏同様にオーケストラに積極的に絡もうとはしていません。ベネデッティ・ミケランジェリの意識は、抜群のテクニックを、事も無げに弾いているように聴こえるように魅せることにあるようで、第1楽章など、オーケストラにお構いなしでスイスイと勝手に進行しています。カラッチオーロは、そんなベネデッティ・ミケランジェリのピアノにぴったりと張り付き、ナポリのオーケストラ以上に表情豊かなオーケストラを駆使して、協調路線を探っています。第2楽章では、オーケストラが主導権を握って、ピアノにラプソディックな表情を促していますが、第3楽章ではイニシアチブを取り返したピアノが猛烈なスピード感でオーケストラを引き離そうとしています。オーブリー・ピアズリーのペン画のようなピアノと、それになんとか色をつけようとするオーケストラの格闘によって、ラフマニノフの作品の枯れたロマンティシズムに火が付き、スリリングな興味を聴き手に掻き立てる演奏に仕上がっています。
余白に収められたショパンのワルツは、ラジオ体操みたいですが、とことん無駄を切り詰めたような緊張感に絡め取られて、聴き手は最後まで聴いてしまうことでしょう。

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