1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
◈Robert Schumann: Overture, Scherzo and Finale in E major, op.52
Sinfonieorchester Basel / Mario Venzago
(Rec. September 1999, Casino Basel Musiksaal)
◈Robert Schumann: Fantasy in A minor for Piano and OrchestraGianluca Cascioli (Pf)
Sinfonieorchester Basel / Mario Venzago
(Rec. May 2000, Casino Basel Musiksaal)
◈Robert Schumann: Symphony No.4 in D minor, op.120Sinfonieorchester Basel / Mario Venzago
(Rec. September 1999, Casino Basel Musiksaal)
バーゼル交響楽団は、1997年にバーゼル放送交響楽団を吸収合併して新体制をスタートさせましたが、その時に首席指揮者として白羽の矢を立てたのが、マリオ・ヴェンツァーゴ(Mario Venzago, 1948-)でした。
ヴェンツァーゴは、スイスのチューリヒに生まれ、ピアニストから指揮者に転身した人です。ウィーンでハンス・スヴァロフスキーに師事したヴェンツァーゴは、1978年からヴィンタートゥール市管弦楽団の首席指揮者を務め、1986年からハイデルベルク歌劇場の音楽監督に転出、ドイツ・カンマー・フィルハーモニー(1989-1992)やグラーツ・フィルハーモニー管弦楽団(1990-1995)の首席指揮者をを経て、バーゼル交響楽団の任に就きました。1998年からはスペインのエウスカディ交響楽団の首席指揮者を兼任し、ヨーロッパ中で引っ張りだこの売れっ子指揮者になりました。バーゼル交響楽団の任期は2003年で切れましたが、その後もインディアナポリス交響楽団やエーテボリ交響楽団などの首席指揮者として活躍しました。
ヴェンツァーゴが世界中のオーケストラからオファーが来るほどの売れっ子な理由は、その溌剌とした音楽作りにあります。
本CDに収録されているドイツ人作曲家、ロベルト・シューマン(Robert Schumann, 1810-1856)の作品集でも、まるで今音楽が生まれたかのような、躍動感のある魅力的な音楽を引き出しています。
このCDの凝りっぷりは、1841年に初稿が出来上がった作品にスポットライトを当てている点です。収録されているのは、《序曲、スケルツォとフィナーレ》、ピアノとオーケストラのための幻想曲と交響曲第4番です。
1841年の初めごろに交響曲第1番《春》を完成したシューマンは、3月のフェリックス・メンデルスゾーンの指揮するライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏会で取り上げてもらって大成功を収め、俄然オーケストラ作品への意欲を高めます。その時に仕上げた作品が《序曲、スケルツォとフィナーレ》でした。出来上がった時は、そんな長い名前ではなく、交響曲ではない多楽章の音楽ということで「組曲」と名付けられていました。さらに、前の年に結婚したばかりの妻クララへの贈り物として、本CDに収録されているピアノとオーケストラの幻想曲を手掛けています。いよいよ絶好調のシューマンは、二匹目のドジョウとして、6月にはさらなる新作の交響曲の制作に取り掛かりました。出来上がった交響曲は、まだ「組曲」と名付けられていた《序曲、スケルツォとフィナーレ》と抱き合わせで年末に初演することが決まり、合わせて出版する算段まで立てていたようです。
ピアノとオーケストラのための幻想曲のほうは、8月13日にクララの独奏とライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団でリハーサルが行われ、シューマン自身は曲の出来上がりに満足していましたが、クララが、この曲を元にピアノ協奏曲に仕上げることを進言し、作品の出版を保留することになりました。その後、この曲は1845年に第2楽章・第3楽章が付け加えられて加筆訂正を施され、シューマンの完成した唯一のピアン協奏曲として知られるようになりました。
《序曲、スケルツォとフィナーレ》と交響曲は、12月6日のライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏会で初演されました。この時、指揮を執るはずだったメンデルスゾーンが急病で欠席し、コンサート・マスターのフェルディナント・ダヴィットが指揮をとっています。さらに、クララとフランツ・リストが賛助出演し、演奏会自体は大成功を収めました。しかし、名ヴァイオリニストとして知られたダヴィットが指揮棒を握るという話題性や、ピアノの大スターだったクララとリストの共演というイベント性の高さにばかり論評が集中し、肝心のシューマンの曲は、全く評価の対象外にされてしまいました。自分の曲が全く注目を集めなかったことにショックを受けたシューマンは、予定していた初演曲の出版を撤回しています。《序曲、スケルツォとフィナーレ》のほうは、題名を「組曲」から「小交響曲」に取り換えて撤回したりしながら改訂が加えられ、1846年には現行の表題で出版されました。しかし、交響曲は、その後10年以上仕舞いこまれ、1853年になって、ようやく改訂されて「交響曲第4番」として出版されています。初稿が完成した段階では、交響曲第2番になるはずでしたが、この曲が出版された頃には、既に第3番までの交響曲が世に出されていました。
以上の経緯から、本CDに収録された3曲は、1841年に一応完成しながら、一度作曲者自身から出版を保留された作品という共通項で結ぶことが出来ます。ただ、本CDに収録されているバージョンは、ピアノとオーケストラのための幻想曲以外は、出版された決定稿に準拠して演奏されています。
ピアノとオーケストラのための幻想曲は、後に出版されたピアノ協奏曲の第2楽章以下を1845年の作品ということでそぎ落とし、ヴェンツァーゴとジャンルカ・カシオーリ(Gianluca Cascioli, 1979-)でシューマン自身の手稿に立ち返って、本来の幻想曲の形を復元して演奏しています。
カシオーリは、ヴェルディ音楽院で作曲とピアノを学んだイタリアのピアニストで、1994年に第1回ウンベルト・ミケーリ国際ピアノ・コンクールに優勝した実績を持っています。いわゆる前衛音楽の演奏技術も試されるコンクールでブッチギリの優勝を果たしたカシオーリは、天才ピアニストとして世界中で知られるようになりましたが、最近ではピアノだけに飽き足らず、作曲やオーケストラの指揮にまで活動の幅を広げています。本CDでは、ピアノとオーケストラのための幻想曲の初稿復元の責任者としてだけでなく、ピアニストとして独奏パートを受け持っていますが、独特の間合いでオーケストラを翻弄するかのような演奏を展開しています。
本CDの演奏の特徴として、先にヴェンツァーゴの躍動的な音楽作りにある点に触れましたが、その躍動感のカギは、絶妙なアゴーギクのかけ方にあります。ゴムの様に伸び縮みするテンポの取り方は、下手をすると曲全体のリズムをギクシャクさせ、わざとらしくも不格好な演奏になるリスクを伴いますが、ヴェンツァーゴがツボを心得ているのか、こうあらねばならないと思わせるような説得力を持っています。交響曲第4番の第2楽章〈ロマンツェ〉など、平凡な指揮者であれば何の変哲もない茫洋とした音楽になりますが、ヴェンツァーゴの場合は、一音一音に表情がつき、その雄弁さに齟齬が生じないので、シューマンの心情を垣間見るようなリアリティを持ちます。
カシオーリとの共演は、まるで異種格闘技のようなノリで、お互いに仕掛け合ったり化かし合ったりするようなスリルを持っています。曲自体、現行版のピアノ協奏曲の第1楽章ともオーケストレーションを中心にテイストが違うので、何が起こるか分からない面白さもあります。
ヴェンツァーゴは、スイスのチューリヒに生まれ、ピアニストから指揮者に転身した人です。ウィーンでハンス・スヴァロフスキーに師事したヴェンツァーゴは、1978年からヴィンタートゥール市管弦楽団の首席指揮者を務め、1986年からハイデルベルク歌劇場の音楽監督に転出、ドイツ・カンマー・フィルハーモニー(1989-1992)やグラーツ・フィルハーモニー管弦楽団(1990-1995)の首席指揮者をを経て、バーゼル交響楽団の任に就きました。1998年からはスペインのエウスカディ交響楽団の首席指揮者を兼任し、ヨーロッパ中で引っ張りだこの売れっ子指揮者になりました。バーゼル交響楽団の任期は2003年で切れましたが、その後もインディアナポリス交響楽団やエーテボリ交響楽団などの首席指揮者として活躍しました。
ヴェンツァーゴが世界中のオーケストラからオファーが来るほどの売れっ子な理由は、その溌剌とした音楽作りにあります。
本CDに収録されているドイツ人作曲家、ロベルト・シューマン(Robert Schumann, 1810-1856)の作品集でも、まるで今音楽が生まれたかのような、躍動感のある魅力的な音楽を引き出しています。
このCDの凝りっぷりは、1841年に初稿が出来上がった作品にスポットライトを当てている点です。収録されているのは、《序曲、スケルツォとフィナーレ》、ピアノとオーケストラのための幻想曲と交響曲第4番です。
1841年の初めごろに交響曲第1番《春》を完成したシューマンは、3月のフェリックス・メンデルスゾーンの指揮するライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏会で取り上げてもらって大成功を収め、俄然オーケストラ作品への意欲を高めます。その時に仕上げた作品が《序曲、スケルツォとフィナーレ》でした。出来上がった時は、そんな長い名前ではなく、交響曲ではない多楽章の音楽ということで「組曲」と名付けられていました。さらに、前の年に結婚したばかりの妻クララへの贈り物として、本CDに収録されているピアノとオーケストラの幻想曲を手掛けています。いよいよ絶好調のシューマンは、二匹目のドジョウとして、6月にはさらなる新作の交響曲の制作に取り掛かりました。出来上がった交響曲は、まだ「組曲」と名付けられていた《序曲、スケルツォとフィナーレ》と抱き合わせで年末に初演することが決まり、合わせて出版する算段まで立てていたようです。
ピアノとオーケストラのための幻想曲のほうは、8月13日にクララの独奏とライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団でリハーサルが行われ、シューマン自身は曲の出来上がりに満足していましたが、クララが、この曲を元にピアノ協奏曲に仕上げることを進言し、作品の出版を保留することになりました。その後、この曲は1845年に第2楽章・第3楽章が付け加えられて加筆訂正を施され、シューマンの完成した唯一のピアン協奏曲として知られるようになりました。
《序曲、スケルツォとフィナーレ》と交響曲は、12月6日のライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の演奏会で初演されました。この時、指揮を執るはずだったメンデルスゾーンが急病で欠席し、コンサート・マスターのフェルディナント・ダヴィットが指揮をとっています。さらに、クララとフランツ・リストが賛助出演し、演奏会自体は大成功を収めました。しかし、名ヴァイオリニストとして知られたダヴィットが指揮棒を握るという話題性や、ピアノの大スターだったクララとリストの共演というイベント性の高さにばかり論評が集中し、肝心のシューマンの曲は、全く評価の対象外にされてしまいました。自分の曲が全く注目を集めなかったことにショックを受けたシューマンは、予定していた初演曲の出版を撤回しています。《序曲、スケルツォとフィナーレ》のほうは、題名を「組曲」から「小交響曲」に取り換えて撤回したりしながら改訂が加えられ、1846年には現行の表題で出版されました。しかし、交響曲は、その後10年以上仕舞いこまれ、1853年になって、ようやく改訂されて「交響曲第4番」として出版されています。初稿が完成した段階では、交響曲第2番になるはずでしたが、この曲が出版された頃には、既に第3番までの交響曲が世に出されていました。
以上の経緯から、本CDに収録された3曲は、1841年に一応完成しながら、一度作曲者自身から出版を保留された作品という共通項で結ぶことが出来ます。ただ、本CDに収録されているバージョンは、ピアノとオーケストラのための幻想曲以外は、出版された決定稿に準拠して演奏されています。
ピアノとオーケストラのための幻想曲は、後に出版されたピアノ協奏曲の第2楽章以下を1845年の作品ということでそぎ落とし、ヴェンツァーゴとジャンルカ・カシオーリ(Gianluca Cascioli, 1979-)でシューマン自身の手稿に立ち返って、本来の幻想曲の形を復元して演奏しています。
カシオーリは、ヴェルディ音楽院で作曲とピアノを学んだイタリアのピアニストで、1994年に第1回ウンベルト・ミケーリ国際ピアノ・コンクールに優勝した実績を持っています。いわゆる前衛音楽の演奏技術も試されるコンクールでブッチギリの優勝を果たしたカシオーリは、天才ピアニストとして世界中で知られるようになりましたが、最近ではピアノだけに飽き足らず、作曲やオーケストラの指揮にまで活動の幅を広げています。本CDでは、ピアノとオーケストラのための幻想曲の初稿復元の責任者としてだけでなく、ピアニストとして独奏パートを受け持っていますが、独特の間合いでオーケストラを翻弄するかのような演奏を展開しています。
本CDの演奏の特徴として、先にヴェンツァーゴの躍動的な音楽作りにある点に触れましたが、その躍動感のカギは、絶妙なアゴーギクのかけ方にあります。ゴムの様に伸び縮みするテンポの取り方は、下手をすると曲全体のリズムをギクシャクさせ、わざとらしくも不格好な演奏になるリスクを伴いますが、ヴェンツァーゴがツボを心得ているのか、こうあらねばならないと思わせるような説得力を持っています。交響曲第4番の第2楽章〈ロマンツェ〉など、平凡な指揮者であれば何の変哲もない茫洋とした音楽になりますが、ヴェンツァーゴの場合は、一音一音に表情がつき、その雄弁さに齟齬が生じないので、シューマンの心情を垣間見るようなリアリティを持ちます。
カシオーリとの共演は、まるで異種格闘技のようなノリで、お互いに仕掛け合ったり化かし合ったりするようなスリルを持っています。曲自体、現行版のピアノ協奏曲の第1楽章ともオーケストレーションを中心にテイストが違うので、何が起こるか分からない面白さもあります。
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