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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Erzherzog Rudolf von Österreich: Variation on a theme by Prince Louis Ferdinand of Prussia in F major
◈Erzherzog Rudolf von Österreich: Sonata for Violin and Piano in F minor
Josef Suk (Vn)
Susan Kagan (Pf)
(Rec. March 1992, Recital Hall, S.U.N.Y. Purchase, New York)



オーストリアの大公、ルドルフ・ヨハネス・ヨーゼフ・ライナー(Rudolf Johannes Joseph Rainer, 1788-1831)のヴァイオインとピアノのための作品集です。彼はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの弟子かつ庇護者として知られ、一般的にルドルフ大公と呼ばれています。ここに収められたルドルフ大公の作品は、《プロイセン王子ルイ・フェルディナントの主題による変奏曲》とヘ短調のヴァイオリン・ソナタの2曲です。
《プロイセン王子ルイ・フェルディナントの主題による変奏曲》は、1806年にザールフェルトの戦いで戦死したルイ・フェルディナントの追憶として1810年頃に作曲された作品。ルイ・フェルディナントはプロイセン王フリードリヒ2世の甥で、作曲とピアノを堪能にし、ルドルフ大公と同じくベートーヴェンの弟子でした。ルドルフ大公はルイ・フェルディナントの才能を高く評価し、彼の早世を悼んで、彼の主題による変奏曲を書き上げました。作品は7つの変奏と終曲からなり、終曲も主題の変奏の体を成していることから8つ目の変奏に数えられることもあります。
ヴァイオリン・ソナタは1812年ごろの作品。ルドルフ大公は、この年にピエール・ロードとベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第10番を演奏していて、おそらくその頃に、ルドルフ大公のサロンで発表するために作曲されたものと思われます。作品は堂々たる4楽章形式の力作で、第1楽章はガッチリとしたソナタ形式で作られています。この曲を作るにあたっては、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトのピアノ四重奏曲をあらかじめ分析がてらにピアノ二台用に編曲しており、この曲でもモーツァルトを思わせるパッセージが散りばめられています。第2楽章を緩徐楽章とし、第3楽章にメヌエットを配置していますが、メヌエットはベートーヴェンのスケルツォ楽章の流儀に近づけようとしてやや消化不良の感があります。
これらの2曲を聴く限りでは、ベートーヴェンに追従しつつも18世紀ドイツの均整のとれた音楽を範としており、作曲家としては後衛的だったと言えます。ただ、ヴァイオリン・ソナタに見られるように、彼らなりにダイナミックな表現を模索していた点から、貴族階級の中でも19世紀のロマンティークの土壌が出来上がってきていたことが推察されます。

演奏は、チェコのヴァイオリニストであるヨゼフ・スーク(Rudolf Johannes Joseph Rainer, 1929-)とアメリカ人ピアニストのスーザン・カガン(Susan Kagan)が担当しています。
スークは、同名の作曲家兼ヴァイオリニストの孫にあたり、ヤロスラフ・コチアン門下のヴァイオリニストとして活躍した人。2002年に現役を引退するまでに、幅広いレパートリーを積極的に録音していました。
カガンはベートーヴェンとその師弟関係の人たちの作品の発掘演奏をライフワークとするピアニストで、1988年にはルドルフ大公に関する研究で音楽史の博士号を取得しています。

《プロイセン王子ルイ・フェルディナントの主題による変奏曲》は、ピアノ優位の作品ですが、カガンのピアノの優美さが、主題の可憐さに適応しています。スークのヴァイオリンもカガンのピアノを受けて上品な甘さを備えた演奏を披露。世界初録音とは思えないほどにこなれた演奏です。
ヴァイオリン・ソナタも、ヴァイオリン、ピアノ共に意趣を凝らした作品。スークとカガンの絶妙な掛け合いで、飽きさせることなく見事な演奏を聴かせています。出色の出来栄えは第1楽章で、ヴァイオリンとピアノの競い合いがしっかりとかみ合い、作品の威容に不足のない演奏に仕上がっています。第2楽章は、出だしのピアノがフレージングに迷いを生じているものの、スークがそれを是正し、ゆったりとした音楽の流れを作り上げています。第3楽章は、ヴァイオリンがイニシアチブをとるものの、ピアノがしっかりと呼応しています。第4楽章は、ヴァイオリンがベートーヴェン的なゴツゴツした音楽を志向し、ピアノがモーツァルト的な滑らかさにヴァイオリンをつなぎとめようとする駆け引きがスリルを生んでいます。熱情の放出と、その放出を潔しとしない節度のせめぎ合いが、ロマンティークと18世紀的古典主義の過渡期としてのルドルフ大公のジレンマを感じさせます。

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