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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Wolfgang Amadeus Mozart: Symphony No.41 in C major, K551
Royal Philharmonic Orchestra / Thomas Beecham
(Rec. 26 & 28 March 1957, No.1 Studio, Abbey Road, London)
◈Wolfgang Amadeus Mozart: Clarinet Concerto in A major, K.622
Jack Brymer (Cl)
Royal Philharmonic Orchestra / Thomas Beecham
(Rec. 14-15 May 1958, Salle Wagram, Paris and 22 May 1958 & 8 May 1959, No.1 Studio, Abbey Road, London)
◈Wolfgang Amadeus Mozart: Bassoon Concerto in B flat major, K191
Gwydion Brooke (Fg)
Royal Philharmonic Orchestra / Thomas Beecham
(Rec. 18 December 1958 & 13 November, No.1 Studio, Abbey Road, London)



トーマス・ビーチャム(Thomas Beecham, 1879-1961)は、20世紀イギリスを代表する指揮者の一人。イギリスの大手製薬会社の御曹司として生まれ、父親にコンサートへ連れていってもらうことで音楽への興味を芽生えさせたとのこと。音楽学校には進まず、個人的にフレデリック・オースティンやチャールズ・ウッドといった作曲家たちに指導を仰ぎました。指揮法は自己流で、1899年にリヴァプールのアマチュア・オーケストラを指揮して、舞台に初お目見えし、同年にハレ管弦楽団にハンス・リヒターの代役としてプロフェッショナルとしてのデビューを飾りました。その後は自腹でオペラ巡業をしたり、オーケストラを作ったり、コヴェント・ガーデン王立歌劇場を貸し切って自分の気に入ったオペラを上演したりと放蕩の限りを尽くしましたが、彼のイギリス音楽界の功績として特筆されるのは、1932年にロンドン・フィルハーモニー管弦楽団を創設したことと、1946年にロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団を創設したことでしょうか。レパートリーも幅広く、気に入った作品であれば有名無名問わず何でも取り上げていましたが、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart, 1756-1791)はビーチャムのお気に入りの作曲家として作品を度々コンサートや録音で取り上げていました。

ここに収録されているモーツァルトの作品は、そんなビーチャムの晩年の録音。収録されている演目の内訳は交響曲第41番《ジュピター》(1788年作)、クラリネット協奏曲(1791年作)とファゴット協奏曲(1774年)の3曲です。
《ジュピター》のニックネームを持つこの交響曲は、そのニックネームについてモーツァルトは関与していません。イギリスで興行師をしていたヨハン・ペーター・ザロモンの命名ではないかと思われます。しかし、そのニックネームに相応しい堂々たる威容を誇り、壮麗なフィナーレが特に聴きもの。ビーチャムは、この曲のオーケストレーションに手を加え、フィナーレにはティンパニ・ロールも加えるなど、徹底した自己流を貫いています。手兵のロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団を自由自在に操って溌剌とした演奏に仕上げていますが、ジョージ・セルのような叱咤激励型の演奏とは異なり、湧き上がる感興を自然体で整えることで、聴き手も思わずわくわくしてしまうような魅力を放ちます。

クラリネット協奏曲はアントン・シュタードラーの為に書いた作品で、シュタードラーの使っていたバセット・クラリネットでの演奏を想定して作曲されました。近年ではシュタードラーの楽器性能を復元したクラリネットを復元して演奏するケースも増えていますが、本録音時はまだそこまで研究が進んでおらず、出版譜通りの普通のクラリネットによる従来的な演奏になっています。本CDで独奏を担当するのはジャック・ブライマー(Jack Brymer, 1915-2003)です。ブライマーは本名をジョン・アレクサンダー・ブライマー(John Alexander Brymer)といい、20世紀イギリスを代表するクラリネッティストと呼び声の高かった人です。フレデリック・サーストン、レジナルド・ケルやチャールズ&ハイドンのドレイパー兄弟などのクラリネット演奏を見聞して独学でクラリネットの演奏技術を磨いたブライマーは、第二次世界大戦の徴兵でデニス・ブレインと知り合い、ブレインの伝手で1947年からロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者に就任しています。1950年から1993年までロンドン王立音楽院のクラリネット科の教授を兼任し、自らロンドン管楽合奏団も組織しています。1963年からはBBC交響楽団、1972年からロンドン交響楽団の首席奏者を歴任する傍らでジャズ演奏にも長じ、1985年に公式の演奏の場から引退した後も、管楽器演奏の重鎮として広く尊敬を集めました。モーツァルトのクラリネット協奏曲は、ブライマーの得意とした演目で、ビーチャムのほかにネヴィル・マリナーやコリン・デイヴィスとも録音を残していますがブライマーが一番リラックスして吹いているように聴こえるのは、このビーチャムとの録音です。
本CDのブックレットの中でブライマーの言として紹介された話によると、ビーチャムとブライマーは、パリの二日間の録音日程で2テイクの録音をこなし、昼食の席でブライマーがビーチャムに、録ったテイクの中から出来のいいテイクを選ぼうという話を持ちかけられたのだとか。ロンドンのアビー・ロード・スタジオで慎重にテイクの選択が行われたことで、ビーチャムもブライマーも納得の録音が出来上がったのでしょう。
第1楽章からビーチャムが緩やかなテンポと柔らかな響きでリラックスした雰囲気を巧みに作り上げ、ブライマーも程良く力の抜けた独奏で陽だまりの中にいるように穏やかな音楽を作り上げています。第2楽章も朝もやを思わせる空気感が見事で、ほんのり温かいブライマーの音色が暖炉のぬくもりを感じさせます。第3楽章も力任せにならず、ひたすらゆったりと音楽の流れるままに身を委ねられる気持ち良さがあります。寛いだ雰囲気の中で、とびきり上等の贅沢を味わわせてもらっているような幸福感に聴き手を包み込む、絶品の演奏といえます。

ファゴット協奏曲は、ファゴット好きの貴族タダエウス・フォン・デュルニッツのための作品ではないかと考えられています。デュルニッツの記録の中には、この曲の他にモーツァルトに3曲のファゴット協奏曲を依頼したという記述があるとのことですが、その曲のいずれもが見つかっておらず、この曲のみがモーツァルトの真作として伝えられています。本CDで独奏を担当するのは、ギディオン・ブルック(Gwydion Brooke, 1912-2005)です。ブルックはイギリスの作曲家、ジョセフ・ホルブルックの息子で、本名を本名をフレデリック・ジェームス・ギディオン・ホルブルック(Frederick James Gwydion Holbrooke)といいます。王立音楽院で学び、父親の伝手でバジル・キャメロンの指揮するヘイスティングスのオーケストラに入団して腕を磨きました。1932年にはビーチャムの創設したロンドン・フィルハーモニー管弦楽団に第二奏者として参加し、1935年にはBBCスコットランド放送管弦楽団(現:BBCスコティッシュ交響楽団)の首席奏者に転出しています。1939年に従軍後はリヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者を経て、ビーチャムの呼びかけでロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者に就き、ブライマーのロンドン管楽合奏団にも参加していました。ビーチャムの死後はフィルハーモニア管弦楽団に移籍し、1979年まで演奏活動を続けました。
ビーチャムはブルックに全幅の信頼を置いていたのか、カデンツァはブルック自作のトリッキーなものを採用しています。ブルックの独奏自体は手堅く、中庸の美徳。ビーチャムの伴奏はクラリネット協奏曲の時と同様に、無駄にテンポを速めて独奏を煽るようなことをせず、ブルックがのびのびと演奏できるように配慮しています。特にギャラント趣味の第3楽章は典雅さの中にブルックの独奏のすっとぼけたような味わいが溶け込み、この曲を聴く至福を存分に玩味させてくれます。
これらのビーチャムの演奏を聴くと、音楽に道楽としての側面があることを考えさせられます。

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