1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
◈Adolf Busch (arr. Rudi Spring): Violin Concerto in A minor, op.20
Florian Geldsetzer (Vn)
Duisburger Philharmoniker / Rumon Gamba
(Rec. 9-10 May 2001, Mercatorhalle, Duisburg) Live Recording with Applause
◈Antonín Dvořák: Cello Concerto in B minor, op.104Friedemann Pardall (Vc)
Duisburger Philharmoniker / Bruno Weil
(Rec. 2-3 June 1999, Mercatorhalle, Duisburg) Live Recording with Applause
本CDはデュイスブルク・フィルハーモニー管弦楽団(2001年までデュイスブルク交響楽団)のライヴ録音から2曲の協奏曲をカップリングしています。演目は、アドルフ・ブッシュ(Adolf Busch, 1891-1952)のヴァイオリン協奏曲とアントニーン・ドヴォルジャーク(Antonín Dvořák, 1841-1904)のロ短調のチェロ協奏曲。ブッシュの曲のほうはラモン・ガンバ(Rumon Gamba, 1972-)の指揮とフローリアン・ゲルトセッツァー(Florian Geldsetzer, 1969-)のヴァイオリン独奏、ドヴォルジャークの曲のほうはブルーノ・ヴァイル(Bruno Weil, 1949-)の指揮とフリーデマン・パルダール(Friedemann Pardall)のチェロ独奏で収録されています。ちなみに、デュイスブルクはライン川とルール川の合流地点にある工業都市で、メルカトル図法で知られるゲラルドゥス・メルカトルが晩年を過ごしたことで知られています。デュイスブルク・フィルハーモニー管弦楽団の本拠地のホールの名称にも、メルカトルの名前があしらわれています。
本CDに収録されているブッシュのヴァイオリン協奏曲は、19世紀ドイツの香り漂う三楽章構成の作品。ただし、それぞれの楽章は切れ目なく演奏されるように作られています。作曲者は生前自前の弦楽四重奏団や室内管弦楽団を組織したドイツの往年のヴァイオリニストでした。作曲はフリッツ・シュタインバッハに学び、晩年のマックス・レーガーとも親交を結んだことで影響を受けています。1921年頃に手掛けられたとされるこの曲は、ブッシュの師匠に当たるブラム・エルデリングに献呈されましたが、初演されたかどうかは定かではなく、第二次世界大戦の時にオリジナル・スコアが焼失したのだとか。ただ、娘婿のルドルフ・ゼルキンが、オーケストラ・パートをピアノ用にリダクションしたスコアを保管しており、この楽譜を元にドイツ人作曲家であるルディ・シュプリング(Rudi Spring, 1962-)がオーケストラ・パートを再構成して復元しました。復元した年のうちに、ゴットフリート・シュナイダーの独奏とヴェルナー・アンドレアス・アルベルトの指揮するフィルハーモニア・フンガリカの伴奏でケルンの西ドイツ放送局に於いて演奏され、ブライトコップ&ヘルテル社から出版されました。
作品は第1楽章のオーケストラによる主題提示を省いている他は、レーガーのヴァイオリン協奏曲のフォロワーのような音楽に仕上げられています。シュプリングによるオーケストレーションの再構成は、レーガーのフォロワーとしてのブッシュの作品世界を壊さないような慎重なもの。作曲者の意図を完全に復元した保証はどこにもありませんが、その渋い仕上がりは、ヴァイオリニストとしてのブッシュの芸風を思い起こさせます。
独奏を務めるゲルトセッツァーは、ケルン音楽院でゲルハルト・ペータース、デュッセルドルフ音楽院でミヒャエル・ガイザーに学んだドイツのヴァイオリニスト。ヨーロッパのユース・オーケストラの団員を経てラインハルト・ゲーベルのムジカ・アンティクワ・ケルンに加わり、1996年からこのデュイスブルクのオーケストラのコンサート・マスターを務めています。
指揮を務めるラモン・ガンバはコリン・デイヴィスとジョージ・ハーストに学んだイギリス人指揮者。1998年にBBCのヤング・ミュージシャンズで優勝して BBCフィルハーモニックの補助指揮者としてキャリアを積み、2002年からアイスランド交響楽団の首席指揮者を務めています。
演奏は、作品を紹介するという役目は充分に果たし得る水準。ただし、徹頭徹尾素晴らしい仕上がりというわけではありません。第1楽章は作品の方向性をガンバとゲルトセッツァーの両者が手探りで探している感。第2楽章で指揮者と独奏者が共に歩み寄ろうとしていますが、作品が要求するであろう表現の練り上げに不満を残します。第3楽章で指揮者のメリハリと独奏の麗しさが相乗効果を生むようになり、終わりよければすべてよしという形で好印象の演奏に仕上がっています。音楽家同士が打ち解け合うまでのプロセスとして聴くと面白い演奏ですが、共演を重ねたコンビで演奏すれば、全体的にもっと違う表現で深められたかもしれません。
ドヴォルジャークのチェロ協奏曲は、アメリカにいた1894年から着手し、翌年完成した作品。作曲の動機として、当地で聴いたヴィクター・ハーバートのチェロ協奏曲を聴いて発奮した話が伝えられています。1895年に帰国してすぐにドヴォルジャークの初恋の人だったヨゼフィーナ・フォン・カウニッツ伯爵夫人が亡くなり、彼女を偲ぶために、彼女の好きだったドヴォルジャークの歌曲を盛り込んで決定稿を作っています。出来た作品を、依頼者であるハヌシュ・ヴィハンと試しに演奏してみたところ、ヴィハンがチェロのパートの難易度を下げるよう要求し、ドヴォルジャークが敢えて筆を加えたところにカデンツァを置いてはどうかと提案したため、ドヴォルジャークは激怒してしまい、結局1896年3月19日にロンドンで行われた初演にはレオ・スターンが独奏を担当することになりました。
本CDで演奏するパルダールは、ドイツはフランケンタール生まれのチェリスト。ウルリヒ・ヴォスとマリオ・ブラウメルに師事し、1986年にザールブリュッケン音楽院を卒業してフェニックス四重奏団のチェロ奏者を務めました。1992年からはバーゼル音楽院でラインハルト・ラチュコに学び、翌年南西ドイツ室内楽コンクールに入賞。1994年にはキールでソリストとして活動を始め、1996年からこのデュイスブルクのオーケストラの首席チェリストとして活動しています。
指揮をするヴァイルはドイツのベテラン指揮者で、当オーケストラに1994年から2002年まで首席指揮者として在籍していました。ハンス・スヴァロフスキーとフランコ・フェラーラに指揮法を学び、1979年のカラヤン国際指揮者コンクールで第二位に入賞しています。アウグスブルク歌劇場の音楽監督を1981年から1989年まで務め、その間にヘルベルト・フォン・カラヤンの代役としてザルツブルク音楽祭におけるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のオペラ公演を指揮して名を上げました。古楽器奏法にも精通した名指揮者で、世界各国のオーケストラに客演を繰り返しています。
演奏内容としては、全体的にイニシアチブをヴァイルが握っています。パルダールの独奏は、オーケストラと対決するのではなく、あくまで一番忙しいオーケストラの一パートとしての姿勢を崩しません。テクニック面ではパルダールのチェロに全く乱れがないものの、全てヴァイルの思惑通りに事が進むので、独奏とオーケストラの拮抗を楽しみにする聴き手には物足りない演奏でしょう。ただ、ヴァイルのスタイリッシュなオーケストラ・コントロールはツボを外していません。暑苦しい演奏が苦手な人には、よく整理整頓されたこの演奏は、さほど苦にならず聴くことができるでしょう。
本CDに収録されているブッシュのヴァイオリン協奏曲は、19世紀ドイツの香り漂う三楽章構成の作品。ただし、それぞれの楽章は切れ目なく演奏されるように作られています。作曲者は生前自前の弦楽四重奏団や室内管弦楽団を組織したドイツの往年のヴァイオリニストでした。作曲はフリッツ・シュタインバッハに学び、晩年のマックス・レーガーとも親交を結んだことで影響を受けています。1921年頃に手掛けられたとされるこの曲は、ブッシュの師匠に当たるブラム・エルデリングに献呈されましたが、初演されたかどうかは定かではなく、第二次世界大戦の時にオリジナル・スコアが焼失したのだとか。ただ、娘婿のルドルフ・ゼルキンが、オーケストラ・パートをピアノ用にリダクションしたスコアを保管しており、この楽譜を元にドイツ人作曲家であるルディ・シュプリング(Rudi Spring, 1962-)がオーケストラ・パートを再構成して復元しました。復元した年のうちに、ゴットフリート・シュナイダーの独奏とヴェルナー・アンドレアス・アルベルトの指揮するフィルハーモニア・フンガリカの伴奏でケルンの西ドイツ放送局に於いて演奏され、ブライトコップ&ヘルテル社から出版されました。
作品は第1楽章のオーケストラによる主題提示を省いている他は、レーガーのヴァイオリン協奏曲のフォロワーのような音楽に仕上げられています。シュプリングによるオーケストレーションの再構成は、レーガーのフォロワーとしてのブッシュの作品世界を壊さないような慎重なもの。作曲者の意図を完全に復元した保証はどこにもありませんが、その渋い仕上がりは、ヴァイオリニストとしてのブッシュの芸風を思い起こさせます。
独奏を務めるゲルトセッツァーは、ケルン音楽院でゲルハルト・ペータース、デュッセルドルフ音楽院でミヒャエル・ガイザーに学んだドイツのヴァイオリニスト。ヨーロッパのユース・オーケストラの団員を経てラインハルト・ゲーベルのムジカ・アンティクワ・ケルンに加わり、1996年からこのデュイスブルクのオーケストラのコンサート・マスターを務めています。
指揮を務めるラモン・ガンバはコリン・デイヴィスとジョージ・ハーストに学んだイギリス人指揮者。1998年にBBCのヤング・ミュージシャンズで優勝して BBCフィルハーモニックの補助指揮者としてキャリアを積み、2002年からアイスランド交響楽団の首席指揮者を務めています。
演奏は、作品を紹介するという役目は充分に果たし得る水準。ただし、徹頭徹尾素晴らしい仕上がりというわけではありません。第1楽章は作品の方向性をガンバとゲルトセッツァーの両者が手探りで探している感。第2楽章で指揮者と独奏者が共に歩み寄ろうとしていますが、作品が要求するであろう表現の練り上げに不満を残します。第3楽章で指揮者のメリハリと独奏の麗しさが相乗効果を生むようになり、終わりよければすべてよしという形で好印象の演奏に仕上がっています。音楽家同士が打ち解け合うまでのプロセスとして聴くと面白い演奏ですが、共演を重ねたコンビで演奏すれば、全体的にもっと違う表現で深められたかもしれません。
ドヴォルジャークのチェロ協奏曲は、アメリカにいた1894年から着手し、翌年完成した作品。作曲の動機として、当地で聴いたヴィクター・ハーバートのチェロ協奏曲を聴いて発奮した話が伝えられています。1895年に帰国してすぐにドヴォルジャークの初恋の人だったヨゼフィーナ・フォン・カウニッツ伯爵夫人が亡くなり、彼女を偲ぶために、彼女の好きだったドヴォルジャークの歌曲を盛り込んで決定稿を作っています。出来た作品を、依頼者であるハヌシュ・ヴィハンと試しに演奏してみたところ、ヴィハンがチェロのパートの難易度を下げるよう要求し、ドヴォルジャークが敢えて筆を加えたところにカデンツァを置いてはどうかと提案したため、ドヴォルジャークは激怒してしまい、結局1896年3月19日にロンドンで行われた初演にはレオ・スターンが独奏を担当することになりました。
本CDで演奏するパルダールは、ドイツはフランケンタール生まれのチェリスト。ウルリヒ・ヴォスとマリオ・ブラウメルに師事し、1986年にザールブリュッケン音楽院を卒業してフェニックス四重奏団のチェロ奏者を務めました。1992年からはバーゼル音楽院でラインハルト・ラチュコに学び、翌年南西ドイツ室内楽コンクールに入賞。1994年にはキールでソリストとして活動を始め、1996年からこのデュイスブルクのオーケストラの首席チェリストとして活動しています。
指揮をするヴァイルはドイツのベテラン指揮者で、当オーケストラに1994年から2002年まで首席指揮者として在籍していました。ハンス・スヴァロフスキーとフランコ・フェラーラに指揮法を学び、1979年のカラヤン国際指揮者コンクールで第二位に入賞しています。アウグスブルク歌劇場の音楽監督を1981年から1989年まで務め、その間にヘルベルト・フォン・カラヤンの代役としてザルツブルク音楽祭におけるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のオペラ公演を指揮して名を上げました。古楽器奏法にも精通した名指揮者で、世界各国のオーケストラに客演を繰り返しています。
演奏内容としては、全体的にイニシアチブをヴァイルが握っています。パルダールの独奏は、オーケストラと対決するのではなく、あくまで一番忙しいオーケストラの一パートとしての姿勢を崩しません。テクニック面ではパルダールのチェロに全く乱れがないものの、全てヴァイルの思惑通りに事が進むので、独奏とオーケストラの拮抗を楽しみにする聴き手には物足りない演奏でしょう。ただ、ヴァイルのスタイリッシュなオーケストラ・コントロールはツボを外していません。暑苦しい演奏が苦手な人には、よく整理整頓されたこの演奏は、さほど苦にならず聴くことができるでしょう。
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