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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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Johann Sebastian Bach: Cantate "Weicht nur, betrübte Schatten", BWV202
Johann Sebastian Bach: Cantate "Ich habe genug", BWV82a
Johann Sebastian Bach: Cantate "Mein herze schwimmt im Blut", BWV199
Teresa Żylis-Gara (S)
Ensemble Instrumental de Basse-Normandie / Dominique Debart
(Rec. 3-5 October 1989, Théâtre de la Colonne, Miramas)







ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685-1750)のカンタータ《いまぞ去れ、悲しみの影よ》(BWV202)、《我は満ち足れり》(BWV82a)、《我が心は血にまみれ》(BWV199)の3曲を収録したCDです。

BWV202は「結婚カンタータ」と言われていますが、誰の結婚式用に作ったものか、作曲年から初演場所に至るまで全く知られていない作品です。かろうじてJ.S.バッハの弟子筋の筆写譜で伝えられており、その筆写譜に1730年という書き込みがあることから、1730年より前の作品であることが分かっています。ソプラノ独唱とオーボエ1本とヴァイオリン2挺とヴィオラ1挺と通奏低音という簡素な編成から、盛大な式ではなく内輪での婚礼を想定した作品と考えられます。アリア〈いまぞ去れ、悲しみの影よ〉(Weicht nur, betrübte Schatten)、レチタティーヴォ〈世は新しく生まれ〉(Der Welt wieder neu)、アリア〈フェーブスは駿馬を駆り〉(Phoebus eilt mit schnellen Pferden)、レチタティーヴォ〈愛の神も満足を探し〉(Drum sucht auch Amor sein Vergnügen)、アリア〈春風が吹き渡るとき〉 (Wenn die Frühingslufte streichen)、レチタティーヴォ〈それは幸いなり〉(Und dieses ist das Glücke)、アリア〈愛を育むために〉(Sich üben im Lieben)、レチタティーヴォ〈純愛の結びつきは〉(So sei das Band der keuschen Liebe)、アリア〈満足のうちに思い見よ〉(Sehet in Zufriedenheit)の9つの部分からなりますが、このCDでは他の曲同様に全ての部分を1トラックに収録しているので、各部分を頭出し再生するには向きません。

BWV82aは同名のカンタータBWV82の異稿です。BWV82はバス独唱によるハ短調の作品でBWV202と同じ編成を取りますが、この異稿ではホ短調に移調され、バス独唱はソプラノ独唱に、オーボエのパートはフラウト・トラヴェルソに変えられています。BWV82は1727年2月2日(聖母の御潔めの祝日)にライプツィヒで初演されていますが、バッハ研究家のアルフレート・デュルによれば、このソプラノ独唱用の異稿は1731年に作成されたことになっています。曲はアリア〈我は満ち足れり〉(Ich habe genug)、レチタティーヴォ〈我は満ち足れり〉(Ich habe genug)、アリア〈眠れ、疲れた目よ〉(Schlummert ein, ihr matten Augen)、レチタティーヴォ〈神よ、うるわしき死の時はいつ来るや〉(Mein Gott! wenn kommt das schöne Nun)、アリア〈我は死を待ち望む〉(Ich freue mich auf meinen Tod)の5つの部分からなります。

BWV199は1714年8月12日にヴァイマルで初演された作品。三位一体の祝日後の第11日曜日用の作品です。BWV202の編成にオーボエを一本追加しています。バッハはライプツィヒで1723年に再演する際にニ短調のバージョンも作っていますが、本CDでは元々のハ短調の版を用いています。曲はレチタティーヴォ〈我が心は血にまみれ〉(Mein herze schwimmt im Blut)、アリア〈沈黙のうめきよ、秘められた嘆きよ〉(Stumme Seufzer, stille Klagen)、レチタティーヴォ〈されど神は我を憐れみ〉(Doch Gott muss mir genadig sein)、アリア〈深くうなだれ、悔いに満ちて〉(Tief gebuckt und voller Reue)、レチタティーヴォ〈かくの如き悩みと悔いに〉(Auf diese Schmerzensreu)、コラール〈我、汝の嘆きの子〉(Ich, dein betrubtes Kind)、レチタティーヴォ〈この御傷の中に我は横たわり〉(Ich lege mich in diese Wunden)、アリア〈喜びに満ちた我が心〉(Wie freudig ist mein Herz)の8つの部分からなります。

演奏は、テレサ・ツィリス=ガラ(Teresa Żylis-Gara, 1935-)のソプラノ独奏とドミニク・デバール(Dominique Debart, 1950-)の指揮するバス=ノルマンディー器楽アンサンブル(Ensemble Instrumental de Basse-Normandie)が担当しており、通奏低音のレアリゼーションはフィリップ・ペリシエ(Philippe Pélissier)の名前がクレジットされています。
ツィリス=ガラは、ポーランド領ランドヴァロフ(現:リトアニア領レンドヴァリス)に生まれたソプラノ歌手です。ウッチ音楽学校でオルガ・オルギナに声楽を学んだ彼女は、1954年のワルシャワで開かれた若い声楽家のためのコンクールで優勝、1960年のミュンヘン国際音楽コンクールの声楽部門第3位というコンクール歴を持ち、ザルツブルク音楽祭やコヴェント・ガーデン王立劇場、メトロポリタン歌劇場やミラノ・スカラ座などにも客演を繰り返しています。名前の頭文字の”Ż”にはクロプカという黒い点がZの上につきますが、このCDでは省略されて”Zylis-Gara”と表示されています。
バス=ノルマンディー器楽アンサンブルは、1982年にデバールがバス=ノルマンディー地方のカーンに設立した室内オーケストラです。本CDでは、バス=ノルマンディーを”Basse Normandie”と表記し、ハイフンを省略しています。
デバールはパリ音楽院でマニュエル・ロザンタールとジャン・マルティノンの薫陶を受けた指揮者で、リヨン歌劇場の合唱指揮者を経てこの室内オーケストラの指揮者及び地元カーンの合唱団の指揮者として活動しています。レパートリーは大変広く、ここに演奏されるJ.S.バッハの時代から20世紀以降の作品まで対応します。

その演奏内容は、ツィリス=ガラの歌唱がたっぷりと響き、オペラの名場面を聴いているような気分になります。バス=ノルマンディー器楽アンサンブルは編成をとことん切り詰めていますが、アーティキュレーションを強調せずにまろやかな響きで慎ましくツィリス=ガラの歌唱をサポートしています。ツィリス=ガラのちょっとした見得切りにも何程の事もなく対応しており、緩やかで作為を感じさせない美しさがあります。
BWV82aでは、少々歌唱のほうが勝ち過ぎてフルートが掻き消されそうになりますが、そのギリギリのところでたおやかさを保つバランスの絶妙さが聴きものでしょう。
BWV202やBWV199でもオーボエと少人数の弦楽合奏が、まるでカメオのレリーフのような典雅さを醸し出しており、ツィリス=ガラの豊かな声に品格を纏わせるのに成功しています。

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