1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
◈ | Ludwig van Beethoven: Violin Concerto in D major, op.61 |
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Arthur Grumiaux (Vn)
Amsterdam Concertgebouw Orchestra / Eduard van Beinum
Amsterdam Concertgebouw Orchestra / Eduard van Beinum
(Rec. 4 June 1957, Concertgebouw, Amsterdam)
◈ | Johann Sebastian Bach: Violin Concerto No.1 in A minor, BWV1041 |
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◈ | Johann Sebastian Bach: Violin Concerto No.2 in E major, BWV1042 |
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Arthur Grumiaux (Vn)
Guller Chamber Orchestra / Léon Guller
Guller Chamber Orchestra / Léon Guller
(Rec. June 1955)
本CDは、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven, 1770-1827)のニ長調のヴァイオリン協奏曲(1806年)と、ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach, 1685-1750)のヴァイオリン協奏曲2曲をカップリングしたアルバムです。
ヴァイオリン独奏は何れもアルテュール・グリュミオー(Arthur Grumiaux, 1921-1986)ですが、ベートーヴェンの曲はエドゥアルト・ファン・ベイヌム(Eduard van Beinum, 1901-1959)の指揮するアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(Amsterdam Concertgebouw Orchestra)、J.S.バッハの曲はレオン・グラー(Léon Guller, 1890?-1972)の率いるグラー室内管弦楽団(Guller Chamber Orchestra)がそれぞれ伴奏を務めています。
ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、アン・デア・ウィーン劇場のオーケストラでコンサートマスターをしていたフランツ・クレメントのために作曲したもの。ベートーヴェンは若かりし頃にハ長調のヴァイオリンを作曲して挫折した経験があるので、クレメントに独奏パートの助言をもらいながら慎重に作曲し、1806年12月23日にアン・デア・ウィーン劇場でクレメントを独奏に据えて初演しました。この初演時のエピソードとして、ベートーヴェンがあまりに遅筆で初演当日まで独奏パートの譜面が完成せず、クレメントの独奏が初見視奏の状態だったこと、また初演時の曲の評判が悪く、クレメントが自作の小品を弾いて、そっちのほうが当時の評価が高かったことなどが知られています。この曲が名作として見直されるようになったのは、アンリ・ヴュータンが研究し、ヨーゼフ・ヨアヒムがレパートリーに加えて頻繁に演奏するようになってからのことです。
作品は初演の功労者であったクレメントに献呈する手筈だったことが、残された草稿から明らかになっていますが、結局はベートーヴェンの友人でウィーンの宮廷顧問官だったシュテファン・フォン・ブロイニングに献呈されています。ブロイニングは、あまり評判の良くなかったこの曲の出版のために各方面に口利きをしていたらしく、この献呈にはその謝礼としての意味合いもあります。また出版の際には、ムツィオ・クレメンティに奨められてヴァイオリン独奏パートをピアノ用に編曲し、このピアノ協奏曲版はブロイニング夫人に献呈されています。
J.S.バッハのヴァイオリン協奏曲は、ヴァイオリン2挺用が1曲と、ヴァイオリン独奏のためのものが2曲残されており、本CDでは、後者のヴァイオリン独奏のための協奏曲2曲が収録されています。これら2曲は作曲者本人の手でチェンバロ協奏曲に編曲されており、他のチェンバロ協奏曲の中にもヴァイオリン協奏曲が原曲ではないかと思われるものが含まれるため、J.S.バッハが作曲したヴァイオリン協奏曲の実数はこれより多かったと考えられています。これらの作品は、遅くとも作曲者がケーテンの宮廷に仕えていた1717年から0723年頃までに作曲されたと推測されていますが、どういう用途で作られ、いつ初演され、だれに献呈されたのか、詳しいことはわかっていません。曲はいずれもアントニオ・ヴィヴァルディらの三楽章構成の様式を踏襲していますが、これはヴァイマルの宮廷で働いていた1713年の夏ごろに主君ヴィルヘルム・エルンスト公の甥であるヨハン・エルンスト公子がユトレヒトへの遊学を終えて帰って来た時に、当地で人気の楽譜を持参しており、その楽譜を見せてもらったことが影響していると考えられています。
しかし、J.S.バッハも単にヴィヴァルディらの様式を単純に輸入して作曲していたわけではなく、独奏ヴァイオリンの運動量を他のパートより多くしながらも、主要主題をなるべく独奏ヴァイオリン一挺だけでは弾かせないようにすることで、自らの対位法の技術を生かしたオリジナリティを堅持しています。
グリュミオーは、20世紀後半のフランコ=ベルギー奏派の家元のような立場にあった、ベルギーのヴァイオリン奏者です。1949年に師のアルフレッド・デュボワの後を継いでブリュッセル王立音楽院のヴァイオリン科の教授を務めており、その功績から1973年に男爵を受爵しています。
ベートーヴェンの協奏曲で共演するベイヌムは、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の三代目の首席指揮者を務めたオランダの指揮者です。生前は非常に売れっ子で、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者やロサンゼルス・フィルハーモニックの音楽監督などのポストを兼任していました。
バッハの協奏曲2曲でグリュミオーを支えるグラーは、マルセイユ生まれの音楽家。ブリュッセル音楽院でデュボワの前任だったセザール・トムソンに師事し、ヴァイオリン奏者として活動を始めましたが、1920年にはブリュッセルで自分の室内管弦楽団を創設して指揮者として活動しました。ベルギーのルクセンブルク州シャティヨンで亡くなっています。
グリュミオーとベイヌムの顔合わせによるベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲は、何ら特別なことをしていないように見えて、美音と楽想毎でのテンポの微調整で、まろやかで聴き疲れしない、「人間工学に基づいた」というキャッチフレーズを使いたくなるような、快適な演奏に仕上げられています。
モノラル録音ではありますが、どこぞの掘り出し物の音源のような派手なノイズはなく、人肌の温かみを感じる柔らかな音で再生できるのも、この演奏の快適さに一役買っています。アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の音色も温和で、第一楽章冒頭のティンパニによるリズムの刻みに導かれる木管セクションの薫り高い音色から幸福感が滲み出てくるようです。管弦楽による主題提示に於けるクライマックスの構築も、癇癪的にならず、微妙なテンポの揺れを伴う大らかな音楽の中で、大自然の空気をいっぱいに吸い込むような清浄さを、聴き手に感じさせてくれます。グリュミオーの独奏も、後年の端麗さ重視の美音とは少し異なり、ベイヌムのわずかな仕掛けに敏感に反応して、当意即妙の演奏を繰り広げる、会話的な楽しさがあります。カデンツァはフリッツ・クライスラーのものを用いていますが、甘美に流れない節度を保ちながら、少し前のめり気味に弾くグリュミオーの所作に若獅子の覇気が感じられます。第二次世界大戦前の名演奏家たちによる、自らの個性を前面に出した演奏からすると、ちょっと整理整頓され過ぎていると感じるかもしれませんが、その整理整頓の中に、戦前の演奏様式の残滓を隠し味にして微調整をしているところが、この演奏の心憎いところです。
グリュミオーが先輩格のグラーの率いる室内管弦楽団と共演したJ.S.バッハのヴァイオリン協奏曲2曲は、古楽器的なアプローチに慣れた耳には野暮ったく聴こえます。しかし、1950年代半ばの録音にしては、チェンバロを通奏低音に使い、伴奏の人数を刈り込んでコンパクトに演奏しているあたりに、当時なりの時代考証の反映を聴きとることが出来るでしょう。グリュミオーの独奏も、ヴァイオリンをたっぷり鳴らすよりもスマートに動くことを重視し、キリッと引き締まった演奏を展開しています。
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