1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
◈Joseph Marx: Quartetto in modo antico
◈Joseph Marx: Quartetto in modo classico
◈Joseph Marx: Quartetto chromatico
Thomas Christian Ensemble
{Thomas Christian (1st.Vn), Melina Mandozzi (2nd.Vn),
Ferdinand Erblich (Vla), Bernard Naoki Hedenborg (Vc)}
Ferdinand Erblich (Vla), Bernard Naoki Hedenborg (Vc)}
(Rec. 6-11 December 2005, ORF-Funkhaus)
ヨーゼフ・マルクス(Joseph Marx, 1882-1964)は、オーストリアの作曲家です。
資本論を書いたドイツ人のカール・マルクスとは関係はないようです。
オーストリア人のマルクスもまた、19世紀と20世紀の狭間の中を生き抜いた作曲家で、新取の気質ではなかったことから、第二次世界大戦後は作曲界の最前線にいるとは見做されませんでした。
しかし、音楽教育の方面では、19世紀までの音楽理論の継承者でもあり、ウィーン音楽院の院長を務めたり、またトルコのアンカラに音楽院を作るときに、政府の相談役になったりと、重鎮として活躍もしていました。
マルクスは、生前歌曲の作曲で功を成しましたが、弦楽四重奏曲も3曲残しています。
一曲目は古風な旋法による四重奏曲で、1938年から1940年の間に書き上げられた作品です。
旋法というのは、旋律を作る作法のことで、ヨーロッパの教会旋法がよく知られています。
教会旋法とは、
★ドリア旋法(レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ)・・・終止音は第一音の「レ」
★ヒポドリア旋法(ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ)・・・終止音は第三音の「レ」
★フリギア旋法(ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ・ミ)・・・終止音は第一音の「ミ」
★ヒポフリギア旋法(シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ)・・・終止音は第三音の「ミ」
★リディア旋法(ファ・ソ・ラ・♭シ・ド・レ・ミ・ファ)・・・終止音は第一音の「ファ」
★ヒポリディア旋法(ド・レ・ミ・・ファ・ソ・ラ・♭シ・ド)・・・終止音は第三音の「ファ」
★ミクソリディア旋法(ソ・ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ)・・・終止音は第一音の「ソ」
★ヒポミクソリディア旋法(ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ・ミ)・・・終止音は第三音の「ソ」
という8つの旋法で、上から順番に第一~第八旋法という呼び方をすることもあります。
その後、16世紀になって、
★イオニア旋法(ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド)・・・終止音は第一音の「ド」
★エオリア旋法(ラ・ソ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ)・・・終止音は第一音の「ラ」
という旋法も加えられ、この2つの旋法は、長音階(長調)、自然短音階(短調)のルーツと見做されています。
後、理論上では、
★ロクリア旋法(シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ)・・・終止音は第一音の「シ」
というものがありますが、この旋法は使いづらいということで、あくまで理論上の旋法というにとどめられていました。
現在では、ジャズでこのロクリア旋法の使用が認められるようです。
マルクスは、古風な旋法による四重奏曲で、以上のような旋法のうち、第1楽章でミクソリディア旋法を、第二楽章でドリア旋法を、第三楽章をフリギア旋法を、第四楽章でまたミクソリディア旋法を使って作曲しています。
こうした旋法を使った作曲法と、19世紀のハーモニーを重ね合わせることで、従来のメロディの作り方と一味違った音楽を作ることに成功しています。
二曲目は、古典的旋法による四重奏曲です。この曲は、1940年から翌年にかけて書き上げられた作品で、ハイドンやモーツァルトの様式にロマンティックな服装を着せています。この2曲目の四重奏曲では古典的旋法という訳語をとりあえず当てていますが、原語のmodeには、様式という意味もあり、ここでは、「古典的様式」という訳語を当てたほうが、しっくりくるかもしれません。
形式論的にも、18世紀あたりの弦楽四重奏曲の形式をしっかりと踏襲し、第1楽章ではソナタ形式を、第2楽章は三部形式のアダージョ、第3楽章はヨーゼフ・ハイドンを髣髴とさせるメヌエット、第4楽章も型どおりのフィナーレにしています。
ロマンティックに色揚げをするというマルクスの趣味が幾分反映されているものの、この四重奏曲集の中では、おそらく一番しっくり来る曲なのではないでしょうか。
三曲目は、半音階的四重奏曲です。
この作品は、1936年から翌年にかけて作られましたが、1948年に改訂が施され、現在の形になりました。
前2曲の軛を断ち切って、マルクスの書きたいように書いた作品です。
リヒャルト・ヴァーグナー以後の和声を駆使して、複雑な作品に仕上げています。
ただし、先輩格のツェムリンスキーほどに和声崩壊へと攻め立てるような作品ではありません。
むしろ、「古き良きウィーン」という言葉に必死にしがみつくフランツ・レハールのオペレッタに渋みを加えた感じに仕上がっており、本CDのジャケットに用いられているクリムトの絵画を彷彿とさせます。
オーストリアのヴァイオリニストであるトーマス・クリスティアン(Thomas Christian, 1951-)の声掛けで集まったトーマス・クリスティアン・アンサンブルの演奏は、古風な旋法の四重奏曲では戸惑いのようなものが感じられるものの、半音階的四重奏曲ではクリスティアンがメンバーをグイグイと引っ張って、なかなかの力演を披露しています。
比較的安定した演奏なのは、古典的旋法の四重奏曲ですが、半音階的四重奏曲のような求心力がやや欠けているようにも感じられます。
資本論を書いたドイツ人のカール・マルクスとは関係はないようです。
オーストリア人のマルクスもまた、19世紀と20世紀の狭間の中を生き抜いた作曲家で、新取の気質ではなかったことから、第二次世界大戦後は作曲界の最前線にいるとは見做されませんでした。
しかし、音楽教育の方面では、19世紀までの音楽理論の継承者でもあり、ウィーン音楽院の院長を務めたり、またトルコのアンカラに音楽院を作るときに、政府の相談役になったりと、重鎮として活躍もしていました。
マルクスは、生前歌曲の作曲で功を成しましたが、弦楽四重奏曲も3曲残しています。
一曲目は古風な旋法による四重奏曲で、1938年から1940年の間に書き上げられた作品です。
旋法というのは、旋律を作る作法のことで、ヨーロッパの教会旋法がよく知られています。
教会旋法とは、
★ドリア旋法(レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ)・・・終止音は第一音の「レ」
★ヒポドリア旋法(ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ)・・・終止音は第三音の「レ」
★フリギア旋法(ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ・ミ)・・・終止音は第一音の「ミ」
★ヒポフリギア旋法(シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ)・・・終止音は第三音の「ミ」
★リディア旋法(ファ・ソ・ラ・♭シ・ド・レ・ミ・ファ)・・・終止音は第一音の「ファ」
★ヒポリディア旋法(ド・レ・ミ・・ファ・ソ・ラ・♭シ・ド)・・・終止音は第三音の「ファ」
★ミクソリディア旋法(ソ・ラ・シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ)・・・終止音は第一音の「ソ」
★ヒポミクソリディア旋法(ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド・レ・ミ)・・・終止音は第三音の「ソ」
という8つの旋法で、上から順番に第一~第八旋法という呼び方をすることもあります。
その後、16世紀になって、
★イオニア旋法(ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ・ド)・・・終止音は第一音の「ド」
★エオリア旋法(ラ・ソ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ)・・・終止音は第一音の「ラ」
という旋法も加えられ、この2つの旋法は、長音階(長調)、自然短音階(短調)のルーツと見做されています。
後、理論上では、
★ロクリア旋法(シ・ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ・シ)・・・終止音は第一音の「シ」
というものがありますが、この旋法は使いづらいということで、あくまで理論上の旋法というにとどめられていました。
現在では、ジャズでこのロクリア旋法の使用が認められるようです。
マルクスは、古風な旋法による四重奏曲で、以上のような旋法のうち、第1楽章でミクソリディア旋法を、第二楽章でドリア旋法を、第三楽章をフリギア旋法を、第四楽章でまたミクソリディア旋法を使って作曲しています。
こうした旋法を使った作曲法と、19世紀のハーモニーを重ね合わせることで、従来のメロディの作り方と一味違った音楽を作ることに成功しています。
二曲目は、古典的旋法による四重奏曲です。この曲は、1940年から翌年にかけて書き上げられた作品で、ハイドンやモーツァルトの様式にロマンティックな服装を着せています。この2曲目の四重奏曲では古典的旋法という訳語をとりあえず当てていますが、原語のmodeには、様式という意味もあり、ここでは、「古典的様式」という訳語を当てたほうが、しっくりくるかもしれません。
形式論的にも、18世紀あたりの弦楽四重奏曲の形式をしっかりと踏襲し、第1楽章ではソナタ形式を、第2楽章は三部形式のアダージョ、第3楽章はヨーゼフ・ハイドンを髣髴とさせるメヌエット、第4楽章も型どおりのフィナーレにしています。
ロマンティックに色揚げをするというマルクスの趣味が幾分反映されているものの、この四重奏曲集の中では、おそらく一番しっくり来る曲なのではないでしょうか。
三曲目は、半音階的四重奏曲です。
この作品は、1936年から翌年にかけて作られましたが、1948年に改訂が施され、現在の形になりました。
前2曲の軛を断ち切って、マルクスの書きたいように書いた作品です。
リヒャルト・ヴァーグナー以後の和声を駆使して、複雑な作品に仕上げています。
ただし、先輩格のツェムリンスキーほどに和声崩壊へと攻め立てるような作品ではありません。
むしろ、「古き良きウィーン」という言葉に必死にしがみつくフランツ・レハールのオペレッタに渋みを加えた感じに仕上がっており、本CDのジャケットに用いられているクリムトの絵画を彷彿とさせます。
オーストリアのヴァイオリニストであるトーマス・クリスティアン(Thomas Christian, 1951-)の声掛けで集まったトーマス・クリスティアン・アンサンブルの演奏は、古風な旋法の四重奏曲では戸惑いのようなものが感じられるものの、半音階的四重奏曲ではクリスティアンがメンバーをグイグイと引っ張って、なかなかの力演を披露しています。
比較的安定した演奏なのは、古典的旋法の四重奏曲ですが、半音階的四重奏曲のような求心力がやや欠けているようにも感じられます。
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