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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Alexander Zemlinsky: Eine Florentinische Tragödie, op.16
Albert Dohmen (Br: Guido Bardi)
Heinz Kruse (T: Simone)
Iris Vermillion (Ms: Bianca)
Royal Concertgebouw Orchestra / Riccardo Chailly
(Rec. 25-29 April 1996, Concertgebouw, Amsterdam)
◈Alma Mahler (Orch. Colin & David Matthews): Die Stille Stadt
◈Alma Mahler (Orch. Colin & David Matthews): Lane Sommernacht
◈Alma Mahler (Orch. Colin & David Matthews): Licht in der Nacht
◈Alma Mahler (Orch. Colin & David Matthews): Waldseligkeit
◈Alma Mahler (Orch. Colin & David Matthews): Bei dir ist es traut
◈Alma Mahler (Orch. Colin & David Matthews): Ernteslied
Iris Vermillion (Ms)
Royal Concertgebouw Orchestra / Riccardo Chailly
(Rec. 25-29 April 1996, Concertgebouw, Amsterdam)



1970年代から1990年代にかけては、オーストリアの作曲家であるアレクサンダー・ツェムリンスキー(Alexander Zemlinsky, 1872-1942)を再評価する時代でした。
1986年に、彼の交響詩《人魚姫》がウィーンで演奏されてから、叙情交響曲以外の彼の作品に光が当てられるようになり、この歌劇《フィレンツェの悲劇》も録音されるようになりました。彼の作品の名声が定着するかどうかは、今後次第です。

ツェムリンスキーは、父親がハンガリー出身のユダヤ人で、母親がボスニアのイスラム教徒の家に生まれた人ということで、かなり複雑な家庭で育ちました。オーストリア生まれでありながら、生粋のウィーンっ子ではないという彼の出自からして、彼の作風の複雑化を予感させるものがあります。
ウィーン音楽院卒の彼は、妹がアルノルト・シェーンベルクのお嫁さんになったこともあり、独学で作曲法を習得しようとしていたシェーンベルクに音楽理論の手ほどきをしたこともあります。
後に、シェーンベルクが無調音楽の理論を作ったときは、かつての弟子であるシェーンベルクに教えを乞うています。
ドイツ・ロマン主義の路線にドップリと嵌れないツェムリンスキーは、次第に和声を崩壊させて、無調音楽に接触するようになりましたが、理論家として一家言を成していたこともあって、結局無調音楽を書くことはありませんでした。

そんなツェムリンスキーが、拡張され崩壊していく和声を目の当たりにし、形式を打破して表現そのものに即して作品を作っていくという傾向を強めていた時期に作ったオペラが《フィレンツェの悲劇》でした。
また、このオペラは、ツェムリンスキーが作ったオペラの第五作目にあたり、次のオペラである《カンダレウス王》が未完に終わったことから、ツェムリンスキーが完成した最後のオペラだと位置づけることも出来ます。
オスカー・ワイルドの遺作『フィレンツェの悲劇』のオペラ化であるこの作品は、1915年から1916年にかけて作られ、1917年1月30日にマックス・フォン・シリングスの指揮でシュトゥットガルトにて初演されました。

作品のあらすじは以下のとおりです。

場所は16世紀のフィレンツェ。
仕事がうまく行かなかった商人シモーネが家に帰ってくると、奥さんのビアンカが見知らぬ人を家に上げています。
その男は、フィレンツェの大公のどら息子、グイド・バルディでした。身分が身分だけに、グイドの横暴には目を瞑らなければなりませんが、グイドの目的は、ビアンカをものにすることでした。
口説かれているビアンカもまんざらではなく、シモーネは気が気ではありません。
次第にシモーネは、とげのある皮肉を連発するようになり、家に居辛くなったグイドは暇乞いをします。
ムカムカしていたシモーネは、グイドに決闘を申し込み、ビアンカは遊び半分で「旦那を殺してみてよ」などとグイドをそそのかします。
しかし、グイドはあっさりシモーネに殺されてしまいました。
事の顛末を目の当たりにしたビアンカは、「あなたがこんなに頼もしい人だったなんて。」といい、シモーネに駆け寄ります。
シモーネは「お前がこんなに美人だったなんて・・・」と言い、ビアンカを抱き寄せるのでした。グイドの死体の上で・・・
ツェムリンスキーは、アルマ・シンドラー(Alma Sindler, 18729-1964)という才色兼備の女性を弟子にし、彼女に音楽理論を教えていましたが、いつのまにか恋人関係になっていました。
しかし、シンドラーからはブサイク呼ばわりされ、それからというもの、ツェムリンスキーは自分の容姿にコンプレックスを持っていたそうです。
そのうち、シンドラーは、作曲家のグスタフ・マーラーと関係を持つようになり、1902年に今で言う「できちゃった婚」をしてしまいました。
恋人をマーラーに寝取られたツェムリンスキーが、何故こんな粗筋の歌劇を書いたのでしょうか。
ちなみに、弟子のシェーンベルクは、ツェムリンスキーの妹をお嫁さんにしましたが、1908年頃に、この妹さんも浮気し、浮気相手の画家が自殺してしまうという事件を起こしています。
劇中、グイードがあっさり殺されるや、それまでグイードに「夫を殺して!ヤツを殺して!」などと言っていたビアンカが、「あなたがそんなに強かったなんて・・・」と、シモーネにウットリしてしまうあたり、一連のツェムリンスキーの女性経験の影響がにじみ出ているような気がします。

ツェムリンスキーの恋人だったシンドラーは、マーラーに嫁ぎ、アルマ・マーラー(以後「アルマ」と表記)となります。
アルマは、マーラーから作曲を禁じられてしまいますが、それは、その作風が師匠のツェムリンスキーと、その弟子のシェーンベルクに近いものだったからでしょう。
しかし、マーラーが家族を省みなかったため、アルマの心が次第に離れていき、晩年のマーラーはアルマの心を取り戻そうと、色々とあがき始めます。マーラーは、突如アルマの作品を評価し、作品の出版の手はずを整え、アルマが作曲をするのを許すようになりました。
ここに収録されている歌曲集は、マーラーが生前に出版したアルマの作品集と、マーラーの死後に出版した作品集から選曲され、イギリスの作曲家であるコリン・マシューズ(Colin Matthews, 1946-)とデヴィット・マシューズ(David Matthews, 1943-)が、ピアノの伴奏パートにオーケストレーションを施したバージョンです。
このオーケストレーションにより、アルマの作風が、ツェムリンスキー一派のそれの延長線上にあることが強調されています。
演目は、収録順に、

・ひそやかな町 (詩:リヒャルト・デーメル)
・生暖かい夏の夜 (詩:グスタフ・ファルケ)
・夜の光 (詩:オットー・ユリアス・ビーアバウム)
・森の至福 (詩:リヒャルト・デーメル)
・君のもとでは打ち解けて (詩:ライナー・マリア・リルケ)
・収穫の歌 (詩:グスタフ・ファルケ)
となっています。

本CDで指揮を務めるリッカルド・シャイー(Riccard Chailly, 1953-)は、作曲家であるルチアーノ・シャイーを父親に持つイタリア人で、父親からも作曲を教わっており、近現代の音楽への造詣の深い指揮者として知られています。
録音当時手兵だったロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団を起用した本録音は、シャイー念願のレコーディングでした。
アルベルト・ドーメン(Albert Dohmen, 1956-)、テノール歌手のハインツ・クルーゼ(Heinz Kruse, 1940-)、メゾ・ソプラノ歌手のイリス・フェルミリオン(Iris Vermillion, 1960-)と、ドイツの中堅クラスの名歌手達をそろえ、ネットリとしたロマンティシズムを煩雑にさせることなく、スマートに演奏しています。

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