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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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Nicolò Paganni: 24 Caprices for Violin Solo
Ivry Gitlis (Vn.)
(Rec. January & March 1976)









ニコロ・パガニーニ(Nicolò Paganini, 1782-1840)は、イタリアはジェノヴァに生まれた作曲家ですが、生前は超絶技巧を得意とするヴァイオリン奏者として盛名を馳せていました。
ヴァイオリン奏者としてのパガニーニは、父のスパルタ教育的管理の下で地元の歌劇場のヴァイオリン奏者だったジョヴァンニ・セルヴェット、地元の教会所属で地元随一のヴァイオリン奏者として知られたジャコモ・コスタにそれぞれ弟子入りしてヴァイオリンの腕を磨いています。ジェノヴァでパガニーニに教えられるヴァイオリン教師がいないと分かった父親は、1795年にパルマ在住のアレッサンドロ・ロラにパガニーニを弟子入りさせましたが、自分で超絶技巧を編み出していたパガニーニに対して、ロラが教えられることはあまりなかったようです。

作曲家としてのパガニーニは、生地でコスタにヴァイオリンを学んでいた頃から、その地に住んでいた作曲家のフランチェスコ・ニェッコに和声法の基礎を学んでいました。パルマのロラの門下になった時には、作曲家でもあったロラによって作曲の才も認められ、フェルディナント・パエールとガスパロ・ギレッティのところで対位法を含んだ作曲法を教わっています。ちなみにパエールはオペラとオラトリオの作曲家として大成功していましたが、ロラとギレッティはヴァイオリン奏者と作曲家の兼業でした。

1796年に学業を切り上げてジェノヴァに戻ったパガニーニは、そのまま父親のマネージメントでヴァイオリン奏者として活動を始め、1800年にはナポレオンのイタリア侵攻を受けてスイスに避難し、そこからイタリアに演奏旅行に出るという形で活動を続けました。1805年にナポレオン家のヴァイオリン奏者として就職したパガニーニですが、1811年にはナポレオン家と決別し、フリーランスのヴァイオリン奏者としてイタリアを中心に名声を築きあげました。
当時としてはあまりに高度な演奏技術が評判を呼び、「悪魔と契約している」という噂が実しやかに囁かれるようになりましたが、パガニーニはそれを逆手にとって集客率を上げ、ヨーロッパ中から客演依頼の舞い込む売れっ子ヴァイオリン奏者として大変な成功を収めました。

パガニーニはヴァイオリンの演奏技術を独自に編み出して演奏技法に大きな進歩を齎したことが業績に挙げられます。例えば、素早いスタッカートとレガート奏法を巧みに組み合わせた「パガニーニ運弓」や、フラジョレット(弦に軽く弓を当てて倍音を作りだす奏法)と重音奏法の組み合わせなどは、パガニーニが編み出したといわれる演奏法です。また弓でヴァイオリンをこすりながら、弦を押さえる手を使ってピツィカート(弦を指で弾く奏法)を同時に行ったり、弓とピツィカートを織り交ぜたりといったアクロバティックな演奏法は、当時の同業者の羨望の的でした。
しかし、パガニーニは自分の技術を門外不出とし、盗まれるのを避けるために、楽譜の出版に非常に慎重な姿勢を示しました。作品を出版したいという出版社には、法外な報酬を吹っかけて追い返し、保管した楽譜にも細工をして易々と解読できないようにしていました。
紙くずに混ぜたり、バラバラにして保管したりと、盗難対策の講じられたパガニーニの楽譜は、本人が亡くなる前に処分したり、子孫が紙くず屋に売り払ったりしたことで、かなりの作品が散逸・廃棄されており、未だにどれだけの作品が書き遺されたのか、その全貌がつかめなくなっています。

無伴奏ヴァイオリンの為の24のカプリース集は、1820年にリコルディ社から出版した作品で、作曲自体は1810年ごろまでに行われたとみられています。パガニーニの生前に出版された数少ない作品の一つで、彼の得意とした早弾きや重音奏法のカタログのような様相を呈しています。当初の出版計画では6曲、6曲、12曲の三巻に分けて出版する予定でしたが、結局24曲の合冊で出版され、ヨーロッパの音楽業界にセンセーションを巻き起こしました。

19世紀中には、フェルディナント・ダヴィットやロベルト・シューマンなどがピアノ伴奏をつけ、ピアニストつきのリサイタルでも演奏できるように便宜が図られましたが、全曲を通して演奏する猛者はなかなか現れず、20世紀に入って、オシー・レナルディやルッジェーロ・リッチといった技巧家が挑戦するようになってから、腕に覚えのあるヴァイオリニスト達が全曲通して演奏したり録音したりするようになりました。
実演では、リコシェ(弓のバウンドを利用した早弾き)、スピッカートやソティエ(リコシェに手首による弓のコントロールを加える奏法で、「飛ばし」や「跳ね弓」などと呼ばれる)、サルタート(弓のバウンドと腕のコントロールで音を明確に区切る奏法で「投弓」とも言われる)等の華麗な運弓の技術が見ものの一つでもあり、アレクサンドル・マルコフみたいに、その見栄えと難易度を上げるために手を加えて演奏するケースも見られます。
ヴァイオリン学習者には、運弓とフィンガリングの難易度の高さから、学習の仕上げの練習曲として用いられ、コンクールの課題曲としてもよく使われます。
この24曲の内訳は、以下の通り。
第1番 ホ長調 Andante:アルペジオの練習。
第2番 ロ短調 Moderato:音程跳躍と重音の練習。
第3番 ホ短調 Sostenuto:オクターヴの重音でトリルつきのメロディを弾く練習。
第4番 ハ短調 Maestoso:2度~3度の重音と、三重音の練習。
第5番 イ短調 Agitato:ソティエ、スピッカート、サルタートの練習。
第6番 ト短調 Adagio:トレモロの練習。
第7番 イ短調 Posato:オクターブの重音とアルペジオの練習。
第8番 変ホ長調 Maestoso:オクターヴ重音と早弾きの練習。
第9番 ホ長調 Allegretto:3度と6度の重音の練習。
第10番 ト短調 Vivace:アクセントをつけながら早弾きをする練習。
第11番 ハ長調 Andante:荘重なアンダンテと中間部の急速なパッセージの対比。
第12番 変イ長調 Allegro:D線とG線だけで滑らかに音程跳躍をこなす練習。
第13番 変ロ長調 Allegro:3度の重音で半音階進行する練習。通称「悪魔の微笑」。
第14番 変ホ長調 Moderato:四重音まで使う重音の練習。
第15番 ホ短調 Posato:オクターヴ重音の練習。
第16番 ト短調 Presto:無窮動のテクニック練習。
第17番 変ホ長調 Andante:半音階スケールと各種重音の組み合わせ。
第18番 ハ長調 Corrente:冒頭と終結部はG線のみ使用。重音の練習。
第19番 変ホ長調 Allegro assai:スタッカートとレガート、重音の組み合わせ
第20番 ニ長調 Allegretto:重音、三重音でエレガントなテーマを奏でる。中間部ではトリラー付きの早弾き。
第21番 イ長調 Amoroso:重音で表情豊かにメロディを奏でる練習。後半ではスタッカート奏法も要求。
第22番 ヘ長調 Marcato:様々な重音と早弾きの練習。
第23番 変ホ長調 Posato:オクターヴ重音などを使って技巧的パッセージの練習
第24番 イ短調 Quasi presto:主題と11の変奏。
この曲集の中でもとりわけ有名なのは第24番のカプリースで、多くの作曲家がこの主題を用いた作品を発表しています。

本CDは、イスラエルはハイファに生まれたヴァイオリニスト、イヴリー・ギトリス(Ivry Gitlis, 1922-) による演奏が収録されています。
ギトリスは5歳でヴァイオリンを始め、アドルフ・ブッシュ門下のアリシア・ヴェリコフスキーとヨーゼフ・シゲティ門下のミラ・ベン=アミに師事しています。7歳でブロニスワフ・フーベルマンに才能を認められて奨学基金が作られ、9歳でパリ音楽院に入学してジュール・ブシューリとマルセル・シャイエの薫陶を受けています。その後、シャイエの伝手でジョルジェ・エネスクの薫陶を受け、ジャック・ティボーからも助言を受けています。また、カール・フレッシュにも師事してヴァイオリンの腕を磨き、第二次世界大戦中はイギリスの軍需工場で働きながら慰問演奏をこなしました。
戦後は一時期アメリカに渡り、テオドール&アリス・パシュカスの下でテクニックを磨き、1951年のロン=ティボー国際音楽コンクールで第5位に入賞しています。この時の順位の低さのために、コンクールの審査の公平さを巡って議論を呼び、そのせいもあって名ヴァイオリニストとしての名声を得るようになりました。
その表現は、まるで勝新太郎の演じる座頭市の剣戟のようなダイナミズムとスピード感を兼ね揃えたもので、作品の表現世界を忖度して情動を節約するような芸風とは一線を画しています。作曲家に従うよりも、時には意見し、挑戦するかのようなギトリスのヴァイオリン演奏は、作品の良し悪しを飛び越えたスリルがあります。

ギトリスの不屈の芸風は、この作品から描き出される、当時の同僚たちに挑戦状をたたきつけるようなパガニーニ像とシンクロし、荒木又衛門の鍵屋の辻の決闘のようなハラハラ感があります。本録音は、どうやら一部取り直しをする予定で発売を差し止めていた音源らしく、今回が一般向けの初発売に当たります。
初っ端から快速調なのはギトリスならではのペース。このペースが全く落ちないところが、本演奏の凄さです。第3番から第4番のカプリースなど、凡手であれば音楽の流れが滞りますが、ギトリスは体当たりの気迫で一気呵成に弾き切っています。
めくるめく技巧のデパートのような第24番のカプリースでも、パガニーニを蹴り倒さんばかりの気概が感じられます。
ただ、不思議なのは、全体的に半音ほどピッチが高いこと。ギトリスがリリースに際して若いヴァイオリニスト達に向けた熱いメッセージをサイン付きで寄せており、ギトリス自身が発売に同意した音源のはずですが、録音時からこのピッチで録音されたのでしょうか?

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