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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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CD1:
◈Georges Enesco: Violin Sonata No.3, op.25
◈Georges Enesco: Impressions d'enfant, op.28
Patrick Bismuth (Vn)
Anne Gaels (Pf)
(Rec. 29 January - 8 February 2001, L'église de Bonsecours, Paris)
CD2:
◈Maurice Ravel: Tzigane
Patrick Bismuth (Vn)
Anne Gaels (Pf-luthéal)
(Rec. 21 & 22 January 2001, Musée des Instruments de musique de Bruxelles)
◈Fritz Kreisler: La Gitana
◈Fritz Kreisler: Zigauner-Cappricio
◈Fritz Kreisler: Caprice viennois
◈Fritz Kreisler: Schön Rosmarin
◈Fritz Kreisler: Liebeslied
◈Fritz Kreisler: Alter Refrain
◈Isaac Albeniz (arr. Fritz Kreisler): Tango
◈Enrique Granados (arr. Fritz Kreisler): Danse espagnore
◈Manuel de Falla (arr. Fritz Kreisler): Danse espagnole "la Vida breve"
◈Maurice Emmanuel: Suite sur des irs populaire grecs, op.10
Patrick Bismuth (Vn)
Anne Gaels (Pf)
(Rec. 29 January - 8 February 2001, L'église de Bonsecours, Paris)



パトリック・ビスムス(Patrick Bismuth)とアン・ゲイルズ(Anne Gaels)による、「民族風」と題する2枚組のCDアルバム。ビスムス(ビスミュート)は、ローラン・シャルミーとジャック・デュモンの門下生で、どうやらバロック音楽をレパートリーの中心にしているヴァイオリニストとのこと。
曲目の内訳は以下のとおり。

CD1
●ジョルジェ・エネスク:ヴァイオリン・ソナタ 第3番
●ジョルジェ・エネスク:子どもの印象

CD2
●モーリス・ラヴェル:ツィガーヌ
●フリッツ・クライスラー:ジプシー女
●フリッツ・クライスラー:ジプシー奇想曲
●フリッツ・クライスラー:ウィーン奇想曲
●フリッツ・クライスラー:美しいロスマリン
●フリッツ・クライスラー:愛の悲しみ
●フリッツ・クライスラー:オールド・リフレイン
●イサーク・アルベニス (フリッツ・クライスラー編):タンゴ
●エンリケ・グラナドス (フリッツ・クライスラー編):スペイン舞曲
●マヌエル・デ・ファリャ (フリッツ・クライスラー編):《はかなき人生》~スペイン舞曲
●モーリス・エマニュエル:ギリシャ民謡組曲
エネスク(George Enescu, 1881-1955)は、本CDでは Georges Enesco と表記され、フランス人扱い。まぁ、Zig Zagレーベルがフランスのレーベルなので、致し方ありません。
ルーマニアの民族音楽にスポット・ライトを当てての企画かと思いきや、クライスラー(Fritz Kreisler, 1875-1962)の小品の中にはアルベニス(Isaac Albeniz, 1860-1909)、エンリケ・グラナドス(Enrique Granados, 1867-1916)やファリャ(Manuel de Falla, 1876-1946 )といったスペインの作曲家の編曲作品もあり、エマニュエル(Maurice Emmanuel, 1862-1938)によるギリシャへのオマージュ的な作品も収録しています。

エネスクのヴァイオリン・ソナタ第3番(1926年作)は、ビスムスとゲイルズの芸風にピッタリとマッチし、粘りのあるイントネーションで「ルーマニアの民族風」を堪能させてくれます。第1楽章の泣き節のようなヴァイオリンの節回しには、ゾクッとさせられる凄みがあります。
同時収録の《子どもの印象》(1938-1940年作)は、エネスクが自らの感性を子どもがえりさせて書いた作品です。
作品は〈吟遊詩人〉(Ménétrier)、〈年老いた修道士〉(Vieux mendiant)、〈庭の奥を流れる小川〉(Ruisselet au fond du jardin)、〈籠の鳥と鳩時計〉(L'oiseau en cage et le coucou au mur)、〈子守歌〉(Berceuse)、〈こおろぎ〉(Grillon)、〈窓の月〉(Lune à travers les vitres)、〈煙突の風〉(Vent dans la Cheminée)、〈外は嵐の夜〉(Tempête au-dehors dans la nuit)、〈日の出〉(Lever du soleil)の10の場面からなり、それぞれのタイトルからの連想をヴァイオリンとピアノで奔放に描いていきます。籠の鳥のさえずりやこおろぎの音などをヴァイオリンで表現する小技や、〈煙突の風〉のような形式や従来的ナヴァイオリンの弾き方を度外視した表現など、演奏者にとって大変挑戦的な作品になっていますが、ビスムスとゲイルズはなかなかの熱演でしっかりと弾き切っています。

クライスラーの小品集は、やや深読みして演奏してしまった感があり、クライスラー本人のおおらかな演奏と比べると、神経質な感も無きにしも非ず。とはいえ、鋭敏な感性で深く彫琢しようとする気概は買えると思います。エネスクの作品で聞かせた粘りは、スペインの作曲家たちの作品の編曲で相性の良さを感じさせます。

エマニュエルの作品は1907年の作品。古代ギリシャの舞踊音楽に興味を抱いていたエマニュエルが、ギリシャへの思いのたけをぶつけた作品です。聴いた感じオリエンタルな気分を盛り込んだヴァイオリン小品集といったところでしょうが、このオリエンタルな気分にビスムスたちは焦点を合わせ、ロマ族のヴァイオリンのようなテイストを加えようとしています。ゲイルズのピアノも、非常に粒立ちが良く、2曲目のアレグレットでの可憐さが耳に残ります。

本CDで特に注目されるのが、ラヴェル(Maurice Ravel, 1875-1937)のツィガーヌで伴奏にリュテアルを使っている点です。
リュテアルというのは、ベルギーのジョルジュ・クルタンという楽器製作家が1919年に作った改造ピアノです。
グランド・ピアノの弦に金属片をあてがったり、フェルトを乗っけてハーモニックスの効果を出したりする装置をピアノに取り付けたもので、演奏者はこの装置を操作するオルガン・ストップみたいなレバーを出したり引っ込めたりして操作するんだそうです。この2つのレバーが、ピアノの全音域に半分ずつ取り付けられているため、低音で普通の音を出しながら、高音部でツィンバロンのような音を出したり、高音部で普通の音を出しながら低音部でハーモニックスを出したり、全音域をツィンバロン風にしたりハーモニックス効果を出したりと、色々遊ぶことができます。
luthéal Piano」というキーワードで画像検索をかければ、リュテアルの装置付のピアノを見ることが出来るかもしれません。
ラヴェルは、この改造ピアノを、自作の《子どもと魔法》とツィガーヌで使っており、この楽器はなかなかのお気に入りだった様子。しかし、ラヴェルの好みに反して、このピアノ改造は普及せず、楽器製作の徒花となってしまい、現在はリュテアルのオプションをつけない普通のピアノで演奏するのが一般的です。
ただ、ここのところ、作曲者の意図になるべく沿うような演奏をすることが望ましいという風潮が強くなり、リュテアルを復元して伴奏に据える録音も少しずつ出てきました。本CDは、ブリュッセルの楽器博物館の全面的なバックアップで復元されたリュテアルが使われ、ラヴェルが指示したとおりのリュテアル装置の用法で録音されたものです。
ニコロ・パガニーニ並の超絶技巧を駆使してハンガリーの土着の風味を出す曲ですが、ヴァイオリンの大見得の後に出てくるリュテアルの独特な響きは、ゾルターン・コダーイの《ハーリ・ヤーノシュ》を彷彿とさせるものがあります。
ゲイルズの粒立ちのいい、それでいてヴァイオリンの通り道をふさがない卓越した伴奏は、その伴奏がリュテアル使用であることを度外視しても賞賛されるべきでしょう。
また、ビスムスの細かい表情付けの効いたヴァイオリンのモノローグも、全体的な印象からすると煩わしいものの、大変手が込んでいて面白いものです。

全体的な印象として、ビスムスのヴァイオリンには、オーソドックスな名演奏を奏でるよりも、自分が目をつけた鉱脈をなんとしても掘り当てようとするひたむきさがあり、そのひたむきさが、このアルバムの強烈な個性を形作っています。ゲイルズは、ビスムスのヴァイオリンに新鮮な風を常に送り続け、音楽が微視的になるのを巧みに防いでいます。

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