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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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CD1:
◈Franz Schubert: Piano Sonata No.21 in B flat major, D960
◈Franz Schubert: Piano Sonata No.5 in A flat major, D557
◈Franz Schubert: Piano Sonata No.11 in F minor, D625
Walter Klien (Pf)
(Rec. Between November 1971 and September 1973)

CD2:
◈Franz Schubert: Piano Sonata No.7 in E flat major, D568
◈Franz Schubert: Piano Sonata No.4 in A minor, D537
◈Franz Schubert: Piano Sonata No.3 in E major, D459
Walter Klien (Pf)
(Rec. Between November 1971 and September 1973)



オーストリアのピアニスト、ヴァルター・クリーン(Walter Klien, 1928-1991)によるフランツ・シューベルト(Franz Schubert, 1797-1828)のピアノ・ソナタ全集の第3集です。
クリーンの演奏で最晩年の3つのソナタを全部聴くためには、第1集から第3集まで買わないといけません。
また、ピアノ・ソナタの全集とはいうものの、第8番(D571)と第10番(D613)、第12番(D655)は、断筆した断片しかのこされていないので、クリーンの録音では対象外となっています。

第21番のソナタは、シューベルトが1828年に作った、生涯最後のピアノ・ソナタです。
このソナタも4楽章で作られており、交響曲のようなピアノ・ソナタを目指したシューベルトの一つの到達点とみなすこともできます。
第1楽章は、悠揚としたテンポで、主題の一つ一つを噛んで含めるように進行していきます。当時としても奇想天外な転調の連続で、かなり凝った作りになっていますが、繰り出されるメロディに陶酔させられます。
第2楽章は、嬰ハ短調という、ちょっと特殊な調性で書かれていますが、中間部でイ長調に転調する際の美しさが特筆されます。
第3楽章は、前2楽章のコントラストとなるスケルツォで、軽快なメロディで雰囲気をガラッと変えてきます。
第4楽章は、ベートーヴェンのソナタを下敷きにしたような豪快なフィナーレで、第3楽章の雰囲気を踏襲しながら、強引にフィナーレのクライマックスを作り上げています。

第5番のソナタは、1817年の作。3楽章からなる作品ですが、この作品は完結した作品なのか、未完成の作品なのかという議論が決着していない作品です。
変イ長調を主調として書き始められた作品で、第1楽章は主調通りです。第2楽章も、大方の定石に従って、属調の変ホ長調をとっています。しかし、第3楽章において変イ長調に帰るべきところを、変ホ長調のまま書いており、3楽章によるソナタとしては型破りなことになっています。この調の問題から、主調に戻る楽章が未完成なのか、紛失したのかと考えられています。
一方で、第1楽章はソナタ形式、第2楽章は三部形式、第3楽章はロンド形式という構造になっており、楽式的には3楽章で完結する形で作品が書かれています。この点から、3楽章による完成品とする見方も成り立ちます。第1楽章の作りの粗さも指摘されることから、この3楽章のソナタは、19歳の作曲者のちょっとした反骨心の表れで、運よく作品として完成してしまった作品なのかもしれません。

第11番のソナタは、1818年に着手された作品ですが、第1楽章と第3楽章が途中放棄されてしまった作品。
しかし、クリーンは、例外的に全曲演奏しています。この作品も不思議な作品で、本来あるべき緩徐楽章がどこにも見当たりません。ひょっとして、緩徐楽章は紛失してしまったのでしょうか?

第7番のソナタは、複雑な経緯のあるソナタです。元々1817年に、変ニ長調の作品(D567)として3楽章構成で作られた作品ですが、すぐさま変ホ長調の作品(D568)として作り直され、このときにメヌエットの楽章を加えて4楽章構成になりました。
こうした異版の存在から、変ニ長調のほうを第7番とし、この変ホ長調の作品を第8番にしてはどうかという提案もなされていますが、ここでは、変ホ長調の版を決定稿と位置付け、第7番として演奏しています。

第4番のソナタは、1817年の作品。3楽章構成ですが、第2楽章は、最晩年の第20番のソナタでも素材として再利用されています。
この作品に於いて既に、様々な転調を頻繁に試みており、独自の作風の確立に向けた試行錯誤がはじまっています。

第4番と同じころに作られた第3番のソナタも、かなり実験的なことをやっています。
元々、2楽章で完結させるはずだったようですが、3つの楽章をくっつけて、異例の5楽章のソナタになりました。
5つの楽章ではソナタと呼べないのではないと考えた、シューベルトの兄のフェルディナントは、「5つの小品」として出版することにしましたが、様式的に5つの楽章で均衡をとったソナタと見做されています。
奇数番の楽章を本来のソナタの骨格とし、偶数番のスケルツォ的な楽章を、奇数番楽章のつなぎと考えることもできます。
この作品に於いても、シューベルトは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタを下敷きにしており、第1楽章の主題に、その影響が指摘されています。また、この楽章の再現部において、主調の下属調のイ長調を用いており、その点はヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの作品のアイデアを頂戴したのではないかと言われています。

クリーンの演奏は、もはや前の第1集や第2集でも語ってきたように、万全の技術と美しい音色で、気負うことなく、滔々とあふれ出るメロディを美しく歌わせたことで成功をおさめた演奏だといえます。
第21番のような大型のソナタでも、クリーンの演奏は、作品の美しさを掘り当てて楽しんでいる風です。シューベルトの作品の底に流れる歌心をうまく掬い取った演奏として、今後とも語り継いでいってほしい演奏です。

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