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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Ruggero Leoncavallo: Pagliacci
Beniamino Gigli (T: Canio)
Iva Pacetti (T: Nedda)
Mario Basiola (Br: Tonio)
Giuseppe Nessi (T: Beppe)
Leone Paci (Bs: Silvio)
Members of chorus & Orchestra of La Scala / Franco Ghione
(Rec. July 1934, Milan)



ルッジェーロ・レオンカヴァッロ(Ruggero Leoncavallo, 1857-1919)は、ナポリ音楽院でミケーレ・ルータに和声学を、ラウロ・ロッシらから作曲法を学んだ、イタリアの作曲家です。レオンカヴァッロを教えたロッシは、当時ガエターノ・ドニゼッティの後継者と目されたイタリア・オペラの大家で、ナポリ音楽院の院長として権勢を誇っていた人でした。
そんなロッシの門下生として音楽のキャリアを出発させたレオンカヴァッロでしたが、音楽院卒業後はうだつが上がらず、一介の音楽教師の地位に甘んじていました。

1890年に、ソンツォーニョ社が主催したオペラの懸賞コンクールで、一音楽教師だったピエトロ・マスカーニの書いた《カヴァレリア・ルスティカーナ》が当選し、マスカーニが華々しい名声を手にしました。このマスカーニの成功に刺激されたレオンカヴァッロは、1892年にソンツォーニョ社が募集した懸賞コンクールのためにせっせと作品を書き上げています。ただ、レオンカヴァッロはコンクールの募集要項を熟読していなかったのか、一幕のオペラで応募しなければならないにも関わらず、二幕のオペラを書きあげて応募してしまったため、審査の対象外になってしまいました。
しかし、失格になったこの作品を、ソンツォーニョ社の社長が拾い上げ、1892年5月21日にミラノのダル・ヴェルメ劇場で、アルトゥーロ・トスカニーニの指揮で初演してみたところ、空前の大ヒットとなり、この作品が、レオンカヴァッロの代表作として、広く知られるようになりました。
この作品が、本CDに収録されている《道化師》です。

レオンカヴァッロは、音楽だけでなく、フランス文学に通暁するほどに文学への興味も深く、文才もあったので、自分の作品は自分で台本を書いています。
この作品について、レオンカヴァッロは、父親が判事だったことを挙げ、自分が8歳の時に父親が扱った裁判の事例をもとに作品を書き上げたと主張し、「実在の事件」を題材にしたことを強調していました。しかし、近年レオンカヴァッロの証言の裏付けをとったところ、レオンカヴァッロが8歳の時に父親が扱った事件について、レオンカヴァッロが証言したような事案が見当たらないことが分かっています。そのため、現在では、作品の題材になるような小説や戯曲の筋書きを自己流に翻案して台本を制作したのではないかと考えられています。

その台本の筋書きは以下の通りです。

時は1865年の8月15日、場所はモンタルソロ村。

【第1幕】
村にコメディ劇の一座がやってきて、興行をしている。この一座の座長のカニオは、若く美しい役者のネッダと結婚したばかり。せむし男のトニオは、ネッダに恋をしているが、全く相手にされない。トニオを追いやったネッダは、村の青年のシルヴィオと密会をし、カニオを捨てて駆け落ちをしようという相談をしていた。
ネッダに手ひどくやられたトニオは、仕返しとして、カニオにネッダがシルヴィオと逢瀬を重ねていることを密告し、密会の現場にカニオを連れてくる。
現場を見たカニオは、ネッダに詰問するのだが、ネッダはシルヴィオのことに関して口を割らない。すったもんだをしているうちに、開演時間が迫り、団員のベッペになだめられ、カニオは妻に裏切られた悲しみを口にしながら開演準備に取り掛かるのだった。

【第2幕】
コメディ劇が開演する。ネッダはコロンビーナに、カニオはパリアッチョに、トニオはタッデオに、ベッペはアルレッキーノに扮している。コロンビーナが、旦那のパリアッチョや下男のタッデオを出し抜きながら、色男のアルレッキーノと逢瀬を重ねるというお決まりのコメディなのだが、まさにこの劇と同じような展開を、カニオは開演前に現実で味わってしまった。コロンビーナがアルレッキーノに「今夜から私はあんたのものよ!」というセリフをしゃべった時、カニオの頭の中にネッダとシルヴィオの逢瀬がフラッシュ・バックしてしまい、錯乱状態に陥ってしまう。現実と劇の見境がなくなったカニオは、パリアッチョの仮面を外して「間男の名を言え!」とネッダに迫る。コロンビーナに徹しようとしていたネッダだったが、正気を失ったカニオに恐怖を感じて逃げようとする。怒り狂ったカニオは、ネッダを刺殺し、観客の中からネッダを助け出そうとステージに割り込んできたシルヴィオも刺し殺してしまう。観客が騒然としている中で、呆然と立ち尽くすカニオがぽつりとつぶやく。
「これで芝居は終わりです。」
最後の独白は、元々トニオのセリフでしたが、今日ではカニオのセリフとして扱われています。
カニオのアリア〈衣装をつけろ〉は、イタリア・オペラに通暁したテノール歌手であればレパートリーに入れている歌ですが、配偶者が浮気をしても、それで笑いをとるのが道化師なのだというプロ根性を歌い上げています。
しかし、そうしたプロ根性をも吹き飛ばしてしまって暴走をきたし、人を殺めてしまうという感情の激しさに、ヴェリズモ・オペラの神髄があります。男女問わず、嫉妬からくる狂気にさらされるという危険は、意外とありがちなことなのかもしれません。
こうした、「実在の事件」を題材にして、市井の人々の生活現実から激烈な感情表現を引き出す「ヴェリズモ・オペラ」というオペラのスタイルが広く認知されるようになりました。先行作である《カヴァレリア・ルスティカーナ》と共に、この作品はヴェリズモ・オペラの成功例として、しばしば引き合いに出されます。

本CDのキャストは以下の通りです。
ベニャミーノ・ジーリ (カニオ)
イヴァ・パチェッティ (ネッダ)
マリオ・バジオラ (トニオ)
ジュゼッペ・ネッシ (ベッペ)
レオーネ・パーチ(シルヴィオ)
ミラノ・スカラ座合唱団&ミラノ・スカラ座管弦楽団/フランコ・ギオーネ
イタリア出身の世界的なテノール歌手のジーリ(Beniamino Gigli, 1890-1957)を主役に据えたプロダクションですが、脇役も、ヴェネツィアのフェニーチェ座を中心にミラノ・スカラ座にも登場していたパチェッティ(Iva Pacetti, 1898-1981)や、メトロポリタン歌劇場で活躍していたバジオラ(Mario Basiola, 1892-1965)、トスカニーニに重用されたネッシ(Giuseppe Nessi, 1887-1961)や、イルデブラント・ピツェッティの《フェードラ》の初演などに加わったパーチ(Leone Paci, 1887-1981)など、錚々たるメンバーを集めており、当時のジーリの人気ぶりが窺えます。
指揮者のギオーネ(Franco Ghione, 1886-1964)は、パルマ音楽院を卒業し、パルマの歌劇場とローマのアウグステオ管弦楽団のヴァイオリニストとしてキャリアをスタートさせた人です。1913年に指揮者に転向し、スカラ座ではトスカニーニの助手として働いたこともあります。
本録音が行われた頃には、スカラ座を中心に、様々な歌劇場で指揮を執っており、イタリアでは一角以上の名声を持つ中堅のオペラ指揮者として活躍していました。1930年代半ばには、デトロイト交響楽団の首席指揮者に就任してアメリカ進出を目論んだこともありますが、英語での意思疎通が難しかったことがネックになり、1940年にイタリアに戻っています。

本録音の肝は、無論ジーリの歌唱にあります。狂気を孕んだキャラクターとしてのカニオ役を扱うならば、ジーリの歌唱は随分楽天的ですが、第1幕の〈衣装をつけろ〉などは、朗々たる歌いっぷりで聴き手を陶酔させるだけの魅力を放っています。無論、ギオーネのカッチリとしたサポートも効いていて、そのメリハリの利いた伴奏ゆえに、ジーリの歌唱に折り目正しい品格が際立ちます。脇役たちもなかなかの好演でジーリを守り立てており、パチェッティのネッダ役は、ジーリのカニオに張り合えるだけの存在感を示しています。

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