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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Anton Eberl: Piano Trio in E flat major, op.8-1
◈Anton Eberl: Piano Trio in B flat major, op.8-2
◈Anton Eberl: Piano Trio in C minor, op.8-3
Preyel-Trio St.Petersburg
{Yury Martynov (Pf), Sergej Filtchenko (Vn), Dmitri Sokolov (Pf)}
(Rec. 27-29 October 2000, Studio Cavalli-Records, Bamberg)



アントン・エーベルル(Anton Eberl, 1765-1807)は、ウィーンに生まれ、ウィーンに没した、生粋のウィーンっ子ともいえる作曲家です。生前はヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの門下生として音楽修業に励み、ピアノの名手として声望を集めました。生前から師であるモーツァルトとは良好な関係を保ち、モーツァルトの生前から、モーツァルト名義で作品を出版社から刊行していたことがあります。また、モーツァルトの没後も、モーツァルトの遺族と交流していたことが知られています。
しかし、ウィーンの出版社は、エーベルルの作品をモーツァルトの遺作として販売しようとしたため、怒ったエーベルルが新聞に抗議文を掲載するという一幕もありました。
こうしたいざこざに嫌気がさしたのか、1796年に所帯を持つと、家族でロシアの宮廷の楽長として就職し、しばらくロシアでの音楽活動に重心を置くようになりました。

本CDに収録されたピアノ三重奏曲集は、変ホ長調、変ロ長調、ハ短調の3曲セットの作品集で、1798年に発表されました。
作品の内実は、エーベルル自身が名ピアニストだったこともあって、ピアノが映えるように作られていますが、ヴァイオリンとチェロを単なる添え物にはせず、ヴァイオリンにメロディを先導させたり、チェロが単独で合いの手を入れたりと、それぞれのパートが独立して役割を持てるような工夫が見られます。
こうした三者の役割の分離とバランスは、師であるモーツァルトがピアノ三重奏曲を作った際に、段階的に試行した工夫でした。エーベルルの作品は、師匠の工夫をより大胆に推し進めた意欲作だといえるでしょう。作品のスケールも、ライヴァルだったルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンの作品と並べても、互角かそれ以上の感情の迸りが感じられ、師匠の音楽表現からさらに飛躍したものを作ろうという気概が伝わってきます。

ロシアに渡ったエーベルルは、ピアノ曲だけでなく、交響曲や歌劇など、あらゆるジャンルの作品を精力的に発表し、祖国オーストリアでも、モーツァルトの弟子という但し書きをつけなくても十分に認知されるようになりました。1806年にはウィーンに凱旋帰国し、ベートーヴェンを凌ぐ人気を得たエーベルルでしたが、帰国後ほどなくして急逝してしまったため、死後、ベートーヴェンの陰に隠れた存在になってしまったのは残念なことです。

本CDに収録されたピアノ三重奏曲集を演奏するのは、サンクトペテルブルグのプレイエル三重奏団です。この三重奏団は、モスクワ音楽院卒のユーリ・マルティノフ(Yury Martynov, 1969-)と、サンクトペテルブルグ音楽院卒のセルゲイ・フィルチェンコ(Sergej Filtchenko)とドミトリ・ソコロフ(Dmitri Sokolov)の三人で1999年から活動しています。
マルティノフは、ミハイル・ヴォスクレゼンスキーの門下だったピアニストで、パリに留学して古楽器の演奏法をマスターしています。1991年のマリア・カナルス国際音楽コンクールで優勝したのを皮切りに、1995年のエンニオ・ポリーノ国際ピアノ・コンクールとフランスのエピナール国際ピアノ・コンクールで二位に入賞し、1999年のザルツブルグで開かれたモーツァルト国際ピアノフォルテ・コンクールで優勝して古楽器も扱えるコンサート・ピアニストとしての地歩を固めました。
フィルチェンコも、マリー・レオンハルト(グスタフ・レオンハルト夫人)にバロック・ヴァイオリンを習ったヴァイオリニストで、ファン・ヴァッセナール国際コンクールやブルージュ国際コンクールなどのコンクールでの入賞歴があります。
チェロのソコロフも、1990年のマンチェスターで開かれた国際音楽コンクールや1993年のアムステルダムの国際音楽コンクール等で優勝した実績を持つ人で、フィルチェンコと一緒に、古楽器合奏団のムジカ・ペトロポリターナの創立メンバーになったり、モスクワのテレマン・コンソートに参加したりして、ロシアにおける古楽器演奏のエキスパートと見做されるようになっています。

このエーベルルの作品は、エーベルルのパトロンだったロシアのアレクサンドル・パヴロヴィチ大公への献辞があり、またエーベルル自身がロシアの宮廷楽長として足跡を残しているという点から鑑みて、ロシアにゆかりのある古の作品ということで、プレイエル三重奏団が取り上げています。この作品を紹介して、エーベルルの作品の魅力を伝えるという点では、本CDの演奏は化不足のない出来栄えです。
ロシアの演奏家らしく、出来映えに全くムラがなく、各奏者のスリリングな掛け合いも、偶然うまくいっているというよりは、必然的に上手く演奏しているという、盤石な印象を受けます。しかも、緩徐楽章では十分な表現の練り上げがなされていて、ただの技巧の羅列にとどまらない充足感も味わうことができるでしょう。
とりわけ、最後のハ短調の三重奏曲では、古楽器による演奏ながら、作品のほの暗さとダイナミズムがうまく溶け合い、迫真の演奏に仕上がっています。

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