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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Vincenzo Bellini: La Sonnambula
Nicola Zaccaria (Bs: Il conte Rodolfo)
Fiorenza Cossotto (Ms: Teresa)
Maria Callas (S: Amina)
Nicola Monti (T: Elvino)
Eugenia Ratti (S: Lisa)
Giuseppe Morresi (Bs: Alessio)
Franco Ricciardi (T: Un notaro)
Coro del Teatro alla Scala di Milano (Chorus master: Norbert Mora)
Orchestra del Teatro alla Scala di Milano / Antonino Votto
(Rec. 3-9 March 1957, Basilica di Santa Eufemia, Milan)



イタリアの作曲家、ヴィンツェンツォ・ベッリーニ(Vincenzo Bellini, 1801-1835)のオペラ《夢遊病の女》です。1830年にミラノのカルカーノ座から新作を依頼され、翌年の3月6日にカルカーノ座で上演されました。
このオペラを作るにあたっては、ベッリーニの片腕として知られた台本作家のフェリーチェ・ロマーニ(Felice Romani, 1788-1865)が台本を準備しました。ロマーニはフランスの流行に詳しい人で、当時フランスで流行している演劇を元ネタにして台本を制作するのが得意でした。この台本も、フランスの劇作家のウジェーヌ・スクリーブ(Eugène Scribe, 1771-1861)が作った『夢遊病者、または新領主の到着』が元になっています。このスクリーブの作品は、ルイ・ピエール・オメ(Jean-Pierre Aumer, 1774-1833)の振り付けでパントマイムとしてフランスで上演されて評判を呼んでいました。
ベッリーニとロマーノは、本当はヴィクトル・ユーゴーの『エルナーニ』でオペラを作りたかったようですが、ミラノでの検閲が厳しくなっていたために、当初の案を改め、この《夢遊病の女》が制作されました。
カルカーノ座での初演は、当時のプリマ・ドンナだったジュディッタ・パスタをはじめとする豪華共演陣で大成功を収め、7月ではロンドンでも演奏され、ヨーロッパ中に知られた名作オペラとして持て囃されました。

このオペラの大まかなあらすじは以下の通り。
ある時代のスイスの山村。

【第1幕】
水車小屋の養女アミーナが村の若者のエルヴィーノと婚約し、今日はそのお祝いの日。しかし、宿屋の女将リーザはそれが面白くない。エルヴィーノと結ばれるのは自分だったはずだと嘆くリーザは、村男のアレッシオの求婚を徹底的に無視している。
アミーナとエルヴィーノが公証人を呼んで婚約の調印をすませたところに、ロドルフォという余所者がやってくる。ロドルフォは村人たちに城への道を尋ね、アミーナが親切に道を教え、日も暮れてきたのでリーザの宿に泊まるようと助言。それを見たエルヴィーノはアミーナに嫉妬する。日が暮れたら幽霊が出ると村人たちは家に戻っていくのだった。
リーザの宿に泊まったロドルフォ。リーザはロドルフォが、このたび新しく赴任してくる領主だと知り、ロドルフォを誘惑するも、怪しい物音にびくついたリーザは、ハンカチを落として逃げた。そこに現れたのは、白いガウンを着たアミーナで、夢遊病状態だった。昼に村人たちが言っていた幽霊の正体は、アミーナだった。エルヴィーノへの愛を寝言としてつぶやき、ベッドに眠りこんでしまったアミーナを見て、ロドルフォは変に気を利かせて部屋を出ていくのだが、その一部始終を見たリーザは、エルヴィーノのところに行って告げ口をするのだった。
ロドルフォを新しい領主だと知った村人たちがロドルフォを表敬訪問するが、そこにいたのは眠るアミーナだった。リーザの告げ口を聞いたエルヴィーノは、ロドルフォの部屋に駆けつけ、物音に気付いて起きたアミーナに婚約破棄を言い渡すのだった。アミーナは泣き崩れ、リーザはほくそ笑む。

【第2幕】
アミーナに同情した村人たちは、新しく城主になったロドルフォからアミーナの身の潔白を証明してもらおうと、そろって城に向かう。アミーナも養母のテレサと一緒に城に向かおうとするが、アミーナに裏切られた悲しみをつぶやいているエルヴィーノに出くわす。アミーナが身の潔白を訴えるものの、エルヴィーノは全く耳を貸さない。村人たちがロドルフォからアミーナの身の潔白を証明してもらったと言っても、エルヴィーノはアミーナを許さず、アミーナのしている婚約指輪を取り上げて立ち去ってしまう。
やけっぱちになったエルヴィーノは、リーザに結婚を申し込み、早速婚礼をしようと教会へと急いだが、そこにロドルフォが現れる。ロドルフォは、アミーナが夢遊病者であることを説明し、彼女の身の潔白を証明するが、エルヴィーノは全く話を聞こうとしない。二人で激しい口論をしていると、テレサがやってきて、アミーナが疲れて寝ているから静かにするよう苦情をつける。エルヴィーナがリーザと結婚するというのを聞いたテレサは、ロドルフォの泊まった部屋に落ちていたリーザのハンカチを見せ、リーザは浮気女だと非難する。エルヴィーノはリーザにも裏切られたと嘆く。
そこに夢遊病状態になったアミーナが現れ、朽ちた橋を渡り始める。そこに居合わせた村人たちは固唾をのんで見守り、アミーナはなんとか渡り切った。そこで、アミーナが眠ったままエルヴィーノへの悲しみを切々と歌うのを聞き、エルヴィーノはロドルフォの証明が本当だということと、アミーナの想いが本物だということを知り、彼女の指にそっと婚約指輪を戻す。村人たちは思わず「アミーナ万歳!」と叫び、目を覚ましたアミーナを、エルヴィーノは思いきり抱きしめるのだった。
本CDのキャストは以下の通り。
ニコラ・ザッカリア (ロドルフォ)
フィオレンツァ・コッソット (テレサ)
マリア・カラス (アミーナ)
ニコラ・モンティ (エルヴィーノ)
エウジェニア・ラッティ (リーザ)
ジュゼッペ・モレッシ (アレッシオ)
フランコ・リッチャルディ (公証人)
ミラノ・スカラ座合唱団 (合唱指揮:ノルベルト・モーラ)
ミラノ・スカラ座管弦楽団/アントニーノ・ヴォットー

1957年のこの録音は、カラス(Maria Callas, 1923-1977)にとって、この曲唯一のセッション録音になりました。
カラスは、ニューヨークにソフィア・セシリア・カロス(Sophia Cecelia Kalos)として生まれたソプラノ歌手で、正式な洗礼名はアンナ・マリア・ソフィア・セシリア・カロゲロープロス(Anna Maria Sofia Cecilia Kalogeropoulos)と言うそうです。アテネ音楽院でエルヴィーラ・デ・ヒダルコに学び、師匠のコロラトゥーラの技術と持ち前のドラマティックな声を融合して、ミラノ・スカラ座の1950年代から1960年代のプリマ・ドンナとして世界的名声を獲得しました。今日でも、彼女の評伝は数多く書かれ、映画の題材にもされています。
ロドルフォ伯爵役のザッカリア(Maria Callas, 1923-2007)は、本名をニコラス・アンゲロス・ザカリウ(Nicholas Angelos Zachariou)といい、ギリシャ出身の歌手です。1950年代から1970年代前半までスカラ座で活躍し、カラスとも顔合わせの多い歌手でした。一時期、マリリン・ホーンと結婚していたこともあります。
エルヴィーノ役を歌ったモンティ(Nicola Monti, 1920-1993)は、1941年に歌手デビューをしたものの、第二次世界大戦で経歴の中断を余儀なくされ、1950年から歌手活動を再開した人です。スカラ座での下積みを経て、1951年にサン・カルロ劇場でこのオペラのこの役を演じて、イタリア・オペラの名テノール歌手として知られるようになりました。
コッソット(Fiorenza Cossotto, 1935-)は、トリノのジュゼッペ・ヴェルディ音楽院出身のメゾ・ソプラノ歌手。この録音には、セルゲイ・プロコフィエフの《炎の天使》やフランシス・プーランクの《カルメル派修道女の対話》のイタリア初演に参加し、スカラ座の期待の新星として、本録音のキャストに抜擢されました。この録音を足掛かりにして、イタリア随一のメゾ・ソプラノ歌手としての名声を得るようになっています。
リーザ役のラッティ(Eugenia Ratti, 1933-)も、コッソットと同じ《カルメル派修道女の対話》のイタリア初演に参加して頭角を現し始めた人。カラスとは1955年のこのオペラで同じ役で共演しており、その後はジョアキーノ・ロッシーニの時代のオペラのスペシャリストとして知られるようになりました。
このプロダクションを統括するヴォットー(Antonino Votto, 1896-1985)は、ミラノ・スカラ座でのアルトゥーロ・トスカニーニの補助指揮者からキャリアをスタートさせた、イタリア・オペラの大御所的な指揮者です。リッカルド・ムーティやピンカス・スタインバーグ等を教えた指揮法の名教師としても知られていました。
なお、本CDに収録の演奏は、当時のスカラ座の上演方法に則ってトラディショナル・カットを施しています。

閑話休題、本録音の演奏について、カラスの歌唱に関して言えば、カラス流に生娘を演じているものの、多少高音がきつく、コロラトゥーラの部分になると地金が出てしまうようです。
相手役のモンティも、少々古武士的であり、カラスの歌唱のある種の硬さには合うものの、作品の牧歌的な他愛なさを醸し出すには真面目すぎる印象。第二幕のテレサ役のコッソットとリーザ役のラッティのやり取りの場面などでは、モンティの歌唱にも力みが取れ、作品本来のローカルな味わいが出ていますが、カラスが絡みだすと、急にシリアスな方向に雰囲気が流れていきます。ザッカリアのロドルフォ役は、カラスに対等に渡り合い、熱情過多のブレーキ役として立派に役割を果たしています。
ヴォットーは、大雑把なオーケストラと合唱にメリハリをつけながら、歌手たちが歌いやすいような絶妙の間合いで伴奏をつけています。オーケストラのほうも、弾き馴染んだ曲なのか、溌剌としています。表現の彫りの深さは歌手任せにしているところがあります。

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