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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Arnold Schoenberg: Piano Concerto, op.42
Glenn Gould (Pf)
CBC Symphony Orchestra / Jean-Marie Beaudet
(Rec. 21 December 1953)
◈Arnold Schoenberg: Three Piano Pieces, op.11
◈Arnold Schoenberg: Suite, op.25
◈Alban Berg: Piano Sonata, op.1
Glenn Gould (Pf)
(Rec. 14 October 1952)
◈Anton Webern: Variation, op.27
Glenn Gould (Pf)
(Rec. 9 January 1954)



19世紀末から20世紀にかけてのヨーロッパの音楽シーンでは、和声的な調性音楽の段階的脱却が図られ、調性のない音楽の制作が一大潮流になりました。そうした無調音楽の理論として有名なものの一つが十二音技法(十二音音楽)です。
この技法は、ピアノ鍵盤の1オクターブに含まれる12の音を1つずつ重複しないように並べて音列を作り、その音列を様々に変形させながら音楽を展開していくという手法です。例えば、アルノルト・シェーンベルク(Arnold Schoenberg, 1874-1951)のピアノ協奏曲は、「変ホ-変ロ-ニ-ヘ-ホ-ハ-嬰ヘ-変イ-変ニ-イ-ロ-ト」の12音の並びを基本としますが、これらの音列を逆さから読んだり(逆行形)、一つの音を基準にして元の音列を線対称風に再配列したり(反行形)、音列全ての音の高さを平行移動させたり(移高)、音列の構成音で和音を作ったり、これまでに取り上げた変形の仕方を組み合わせて新しい音列を作ったりして音楽を作っています。数列よろしく音列を作り上げ、それを素材に作曲を進めていく十二音技法は、オリヴィエ・メシアンらによってさらなる発展を遂げ、「総音列技法」(トータル・セリー)として20世紀の音楽に強い影響を及ぼしました。
十二音技法の理論化に貢献したシェーンベルクの元に、ヨーロッパ内外の作曲家達が、この技法を学びにきましたが、その中でもアルバン・ベルク(Alban Berg, 1885-1935)とアントン・ウェーベルン(Anton Webern, 1883-1945)が、シェーンベルクの愛弟子としてよく知られ、この3人の師弟関係は「新ウィーン楽派」と呼ばれています。

このCDには、先に述べたシェーンベルクのピアノ協奏曲を筆頭に、同じくシェーンベルクの3つのピアノ小品(op.11)、ピアノ組曲(op.25)、ベルクのピアノ・ソナタ、ウェーベルンのピアノのための変奏曲が収録されています。
シェーンベルクのop.11は1909年に作曲され、1924年に改訂された作品。この頃のシェーンベルクはまだ十二音技法に到達しておらず、調性音楽の和声を避ける形で作曲活動を展開していました。いわば、ヨハネス・ブラームスのピアノ小品を無調化したような作風をとっています。
op.25は1921年から1923年までに作曲された、徹底して十二音技法にこだわった作品。わざわざ18世紀以前の組曲の様式を持ち出し、ガヴォットやミュゼット、メヌエットやジグといった古典舞曲を十二音技法で塗り替えています。
1930年代にナチスの台頭を警戒して渡米したシェーンベルクは、音楽教師として成功を収め、教育目的で調性音楽も手掛けていました。しかし、十二音技法を放棄してしまったわけではなく、1935年にはヴァイオリン協奏曲を完成させ、1942年にはより精妙な十二音技法を使ってピアノ協奏曲を書き上げています。ただ、シェーンベルクの十二音音楽は、アメリカでも聴衆の人気が高かったわけではなく、ヴァイオリン協奏曲の時は初演を依頼したヤッシャ・ハイフェッツに断られ、このピアノ協奏曲でも初演が遅れ、1944年2月6日にレオポルト・ストコフスキーの指揮するNBC交響楽団の伴奏で、弟子のエドゥアルト・シュトイアーマンを独奏に迎えてNBCの放送スタジオで初演されたのだとか。曲は単一楽章ながら、アンダンテの前半部、モルト・アレグロの部分とアダージョの部分、そして最後のジョコーソの部分に分けて考えられます。出版前のシェーンベルクに手稿には、アンダンテの部分を「穏やかな生活」、モルト・アレグロの部分を「突然沸き起こる憎しみ」、アダージョの部分を「不穏な状況」、ジョコーソの部分を「それもまた人生」という風にメモ書きしていたことが知られています。
ベルクのピアノ・ソナタは1907年から翌年にかけて、師のシェーンベルクの指導下で書かれた作品。三楽章構成の予定でしたが、師のシェーンベルクの助言で単一楽章のみの作品として1911年に出版しています。楽譜上はロ短調になっているものの、それほど調性的な書法にこだわっていません。初演は出版された年の4月24日にエッタ・ヴェルンドルフの手により、ウィーンのイーバー・ザールで、ベルク作の弦楽四重奏曲と一緒に行われ、この作品でベルクは新進気鋭の作曲家として名声を得るようになりました。なお、ベルクのピアノ作品は、この作品以外には公刊されませんでした。
ウェーベルンのピアノのための変奏曲は、彼が出版した唯一の作品。1936年に前出のシュトイアーマンのために作曲しましたが、シュトイアーマンはすでに渡米しており、1937年9月27日の初演は、ペーター・シュタットレンが受け持つことになったということです。ウェーベルンはシェーンベルクの十二音技法を堅守し、この曲も「ホ-ヘ-ロ-ト-嬰ヘ-嬰ハ-変ロ-イ-変ホ-ニ-ハ-嬰ト」の音列を基本にした十二音技法で緻密に作られています。

本CDでピアノを演奏しているのは、カナダ人ピアニストのグレン・グールド(Glenn Gould, 1932-1982)です。トロント音楽院でアルベルト・ゲレーロに師事した彼は、ゲレーロの開発したフィンガー・タッピング奏法を習得し、超絶技巧を誇るピアニストとして活動しました。1964年からは録音のみに音楽活動を絞って活動したことでも知られます。この録音が行われた頃、グールドは新進気鋭のピアニストとしてカナダで売り出し中で、カナダ放送に相当数の録音を行っています。
シェーンベルクのピアノ協奏曲でCBC交響楽団を指揮しているジャン=マリー・ボーデ(Jean-Marie Beaudet, 1908-1971)は、カナダ出身の音楽家。ピアニスト兼指揮者として同時代のヨーロッパの作曲家の作品をカナダ国内に紹介し、カナダの音楽をヨーロッパに紹介して回るという、カナダとヨーロッパの音楽的交流の懸け橋の役割を果たした人の一人です。この録音時、ボーデはカナダ放送(CBC)のディレクターとして辣腕をふるっていました。

シェーンベルクのピアノ協奏曲は、独奏をクローズ・アップする昔ながらの協奏曲の録音方法が取られています。グールドのピアノは、フレーズの一つ一つに細かくニュアンスをつけ、まるで19世紀のピアノ協奏曲のようなスタンスでこの曲と対峙しているようです。ボーデの指揮するオーケストラの響きも、音質を越えた雄弁さでグールドに肉薄しています。グールドのピアノは、最初から迷いなく明快なタッチで弾いており、モルト・アレグロの部分では歯切れの良い技巧が一つのクライマックスを作り上げています。続くアダージョの部分のねっとりとした感触は、オーケストラにもその濃厚さが受け継がれていて、ドイツ・ロマンティークの情念の世界の延長線上にこの曲が位置していることを示唆しているようですらあります。ジョコーソの部分での気持ちの切り替えもハッキリしていて、オーケストラがライヴさながらの熱気でグールドのピアノを煽りたてます。
op.11以下のピアノ曲でも、分析的なアプローチとは一線を画し、op.25ではグールドのピアノが乗りに乗っています。一部ラジオ音声の混線が見受けられるものの、そうした雑音を吹き飛ばすような緊張感と気迫が満ちています。ベルクのピアノ・ソナタもアレクサンドル・スクリャービンの中・後期の作品を思わせるような妖艶さを漂わせながら、ダイナミックにピアノを鳴らし、この曲の屈指の名演奏となっています。
ウェーベルンの変奏曲は、ライヴ録音という条件からか、音質が一番劣りますが、ともすると単なる音の羅列でしかなくなるこの曲に細やかな表情をつけています。

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