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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Josef Matthias Hauer: Nomos, op.2
◈Josef Matthias Hauer: Seven little pieces, op.3
◈Josef Matthias Hauer: Dance op.10
◈Josef Matthias Hauer: Five little pieces, op.15
◈Josef Matthias Hauer: Phantasie, op.17
◈Josef Matthias Hauer: Piano pieces after lines by Fr. Hölderlin, op.25
◈Josef Matthias Hauer: Zwölftonspiel (New Year 1947)
◈Josef Matthias Hauer: Zwölftonspiel (19th February 1953)
Anna Petrova (Pf)
(Rec. 1995, Bulgaria Concert Hall)



アンナ・ペトロヴァ(Anna Petrova)というロシア生まれのピアニストが、スタンウェイのピアノを使ってヨーゼフ・マティアス・ハウアー(Josef Matthias Hauer, 1883-1959)のピアノ作品を取り上げています。
一般的には、十二音音楽の開祖は、アルノルト・シェーンベルクということになっていますが、そのシェーンベルクより先に十二音音楽を構想したのがハウアーでした。
ハウアーは「トローペ」と自らが名付けた音列作法を駆使して作曲を行い、シェーンベルクに注目されます。
シェーンベルクは、自らが主催する演奏会でハウアーの作品を紹介し、ハウアーと無調音楽の共同研究を行おうとしますが、ハウアーの関心は作曲家の意思を排除し、どれだけシステマティックに作曲行為が行えるかということにありました。結果として作曲姿勢をめぐってハウアーはシェーンベルクと対立し、袂を分かちます。
その後も独自の方法で作品を発表し、オーストリア作曲界の名士になりましたが、ナチス・ドイツが台頭してからは頽廃音楽のレッテルを貼られて沈黙を強いられ、第二次世界大戦後は忘れられた作曲家になりました。
しかし、沈黙を強いられたあとも、作品こそ発表しなかったもののこつこつと創作活動は続けており、今日では、その作曲活動の全貌を明らかにすべく、作品の発掘が進められているところです。

ペトロヴァが取り上げているピアノ作品は、1913年に作られた《ノモス》と《7つの小品》、1915年に作られた《踊り》、1919年に作られた《5つの小品》と《ファンタジア》、1923年に作曲された《ヘルダーリンの言葉を表題に持つピアノ曲集》と、沈黙後に書き溜めていた《十二音の戯れ》集から2曲です。
本CDは、画期的十二音音楽の作品として喧伝された1919年作の《ノモス》が入っていないのは残念ですが、トローペ理論を体系化する前のピアノ作品から、トローペ理論確立後の作品をつまみ聴きできるということで、発売当初はそれなりに重宝されました。
ハウアーのトローペ理論は、シェーンベルクのように12の音を満遍なく敷き詰めて、さかさまにしたり平行移動したりといった意図的操作を推奨するものではなく、一定のカテゴライズに基づいて、次に出す音の高さを決めて音を置いていくような方法をとります。
1913年に発表された《ノモス》は、まだ音の並べ方にドラマトゥルギーを孕んでいますが、無調音楽を書こうという意図が伝わってきます。こうしたドラマティックな音楽は、《ファンタジー》でも展開されるので、ある時代からシンプルな無調音楽を書くようになったとは結論付けられないものがあります。
同じ時期の《7つの小品》では、なるべくメロディ的志向を考えさせないような慎重な音の置き方がなされ、ミステリアスな雰囲気を纏っています。
1915年の作品である《踊り》では、やや調性音楽に回帰し、エリック・サティの作品を思わせる洒脱さを感じさせます。
《5つの小品》では、右手と左手で別のテンポの音楽を同時に奏でるような複雑な作業を要求する一方で、無調的な旋律線を用いて対位法的な音楽を挟み、ハウアーなりにポリリズムの実験を試みています。
ヘルダーリンの詩句をタイトルにしたピアノ曲集では、ハウアーはロマンティストとなり、ミステリアスな雰囲気を織り交ぜながら、官能的な音楽を連作しており、どこかアレクサンドル・スクリャービンの音楽を思わせます。
最後に収められた《12音の戯れ》からの2曲は、無調音楽ながらゆとりを感じさせ、その音の並べ方は軽妙で洒落ています。
ここに収録されたハウアーの作品には、どれもネットリとしたロマンティシズムが根底に流れていますが、特定の語法にとらわれない柔軟性をも持ち合わせています。
ペトロヴァは、絶妙な間合いとよくコントロールされた音色で、その底流のロマンティシズムを掘り起こし、ハウアーの魅力をしっかりと伝えてくれます。
こうした地道ないい仕事が、忘れられた作曲家を復権させるのに大きな影響力を持つのだろう・・・と私は思います。

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