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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈アンブローズ・ビアス 著 筒井 康隆 訳『悪魔の辞典』 講談社、2002年。


アンブローズ・ビアス(Ambroise Bierce, 1842-?)の『悪魔の辞典』を、筒井康隆(Yasutaka Tsutsui, 1934-)が新たに翻訳しなおしたもの。
『悪魔の辞典』は、雑誌のコラムニストとして活躍したビアスが雑誌で取り上げ、こつこつと書き溜めた皮肉たっぷりの用語定義集で、「サンフランシスコの悪党」だとか「文筆界の解剖学者」だとかという悪名を轟かせた彼の辛辣振りを今日によく伝えています。
筒井さんの翻訳は、ちょっと「辞典」としての他人行儀っぷりさとビアスの悪辣振りが、ややコミック調に翻訳され、幾分毒性が弱められてしまっている感じがします。面白おかしく読ませるのか、はたまたあくまで辛辣な「辞典」としての体裁を通すのか、この本の翻訳の難しさを考えさせられます。

さて、翻訳の出来栄えはともかくとして、この書に込めた、当世の人たちへの辛辣な皮肉は、今日でもその鋭さを失ってはおらず、大変上質なブラック・ジョークとして読みつがれています。もしもビアスがひょっこり現代に現れたなら、「今も昔も、大して変わってないじゃないか。」と言うかも知れません、
世の中の偽善を暴き立てていくビアスの筆致の一例を挙げれば、

支持者:期待するだけのものをまだ得ていないので、ついてきている人。
教育:自分たちの理解力の不足を、賢いものには顕示し、愚か者には隠蔽するもの。
平和:国際事情で、ふたつの戦争の間にある、だましあいの時期。
政治:主義主張の仮面を被った利害のぶつかりあい。私利私欲のためになされる公の行為。
大統領職:アメリカ政治のフィールドで掴まえっこする、油を塗られたつるつるの豚。
戦争:平和のためのかけひきから生まれた副産物。

といった感じです。言葉の裏にある狡猾さを見事に言い当てており、こうしたズバッとした物言いが、読む人を痛快にさせるのでしょう。
しかし一方で、

接吻:「至福(bliss)」と韻を踏むために詩人が考案した単語。これは一般には、よく理解したということに関連して行われる一種の儀式というか、まあそんなものと考えられるが、その実演のしかたについては、この辞典編纂者の与り知らぬところである。
ポーカー:この辞典の編纂者にはよくわからないのだが、何かの目的のためにカードを使ってプレイされるゲームだそうである

というような、とぼけた定義も加えている点が、ちょっとウィットを感じさせるペーソスとなっているのでしょう。

そんな『悪魔の辞典』で、「辞典」という項目を調べて見ますと、こんなことが書いてあります。

辞典:ひとつの言語が成長していこうとするのを阻害し、硬直した弾力のないものにしようとする、悪意ある文学的装置。ただし本辞典は大変有益な著作である。

・・・おあとがよろしいようで。

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