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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Maurice Ravel: Daphnis et Chloé, Suite No.2
Concerts Straram / Philippe Gaubert
(Rec. 24 March 1930, Théâtre des Champs-Elysées, Paris)
◈Claude Debussy: Prélude à l'après-midi d'un faune
Concerts Straram / Walther Straram
(Rec. 24 February 1930, Théâtre des Champs-Elysées, Paris)
◈Albert Roussel: Le festin de l'araignée
Concerts Straram / Walther Straram
(Rec. 18 & 19 March 1930, Théâtre des Champs-Elysées, Paris)
◈Jacques Ibert: Escales
Concerts Straram / Walther Straram
(Rec. 23 & 24 January 1930, Théâtre des Champs-Elysées, Paris)
◈Maurice Ravel: Alborada del gracioso
Concerts Straram / Walther Straram
(Rec. 30 March 1931, Théâtre des Champs-Elysées, Paris)



コンセール・ストララム(ストララム管弦楽団)は、イギリス生まれの指揮者のウォルター・マラスト(Walter Marrast, 1876-1933)がフランスのパリで立ち上げたオーケストラです。イギリス生まれといっても、生後一年で家族ごとフランスに引っ越しているので、イギリスの文化よりフランスの文化になじみが深かったのではないかと思われます。
そんなマラストが、自分の名前の綴りを並べ変えて「ヴァルター・ストララム」(Walther Straram)を名乗り出したのは、1892年にコンセール・ラムルー(ラムルー管弦楽団)の第二ヴァイオリニストとして就職してからのことです。オーケストラ団員として仕事をこなす傍らで、1893年からリヨン歌劇場のコレペティトゥーア(歌手や合唱団に稽古をつける練習指揮者)になり、1906年にはパリ・コミーク座の合唱指揮者になったのを機に、ラムルー管弦楽団を退職しています。
1909年にはアメリカの歌劇場を渡り歩き、ボストンでアンドレ・カプレのアシスタントを務めて名を上げました。
1923年にコンセール・ストララムを立ち上げた頃には、カプレやレイナルド・アーンといったフランスの音楽業界の大物と交友関係を持つ、ボス格の指揮者になっており、「ストララム」の名の下にフランス中の名手たちがこぞって彼のオーケストラに参加しました。
おかげで短期間のうちにコンセール・ストララムは、フランスの最高のオーケストラへと成長し、アルトゥーロ・トスカニーニが、フランス・デビューの相手にこのオーケストラを指名したことで、このオーケストラのコンサートは、フランスの名物にまでなりました。

マラストことストララムは、このコンセール・ストララムを使ってモーリス・ラヴェル(Maurice Ravel, 1875-1937)のボレロなどの初演も手掛け、押しも押されぬフランスの指揮者の代表格としての名声を確立しましたが、1933年に肺炎を起こして急逝してしまいます。その結果、コンセール・ストララムは幻のオーケストラとなってしまいました。

本CDでは、ラヴェルの《ダフニスとクロエ》の第二組曲や《道化師の朝の歌》のほか、クロード・ドビュッシーの《牧神の午後のための前奏曲》、アルベール・ルーセル(Albert Roussel, 1869-1937)の《蜘蛛の饗宴》、ジャック・イベール(Jacques Ibert, 1890-1962)の《寄港地》が復刻されています。
《ダフニスとクロエ》の第二組曲だけは、フィリップ・ゴーベール(Philippe Gaubert, 1879-1941)が指揮をとっており、他はストララム自身がタクトをとっています。

《ダフニスとクロエ》は、山羊に育てられた少年ダフニスと羊に育てられた少女クロエのドラマティック・ロマンスをバレエ化した作品で、バレエ全体は1912年に初演されました。この第二組曲は、バレエのクライマックスをそっくりそのまま組曲の枠に入れた作品で、1913年に出版されています。
コンセール・ストララムは、ゴーベールの豪放磊落な指揮にしっかり応え、今聴いてもスキのない演奏を聴かせます。コンセール・ストララムは、スーパー集団だけあって、ソリスティックな聴きどころがバシバシ決まっています。

ドビュッシーの《牧神の午後のための前奏曲》(1892-1894年作)は、いわゆる「印象派」の嚆矢となった作品です。
ドビュッシーは、ステファヌ・マラルメの『半獣神の午後』という詩を読み、この詩を基に交響詩を作ることを思い立ちます。マラルメの詩は、昼寝でまどろむ半獣神=牧神パンの見る幻を描いたもので、話の要約は大体以下のようになります。

この詩の中で、パンは、精霊たちと戯れた時のことを思い出して、夢現の中の精霊たちを抱擁しようとします。しかし、結局うまくいかず、さらに妄想を膨らませて、その妄想の中でヴィーナスを抱きしめます。その途端に目が覚めてしまい、辺りの静けさに呆然とします。しかし、パンはそのまままた二度寝をしてしまうのでした。

ドビュッシーは、この前奏曲でマラルメの詩の世界を描き切ってしまい、後に続く2曲を断念して、単品で発表し、これが代表作になってしまいました。

本録音は、当時団員だったマルセル・モイーズ(Marcel Moyse, 1889-1984)のフルート独奏が聴けるということで、モイーズ関連のCDではしばしば復刻されてきたものです。全体的におっとりした演奏ですが、モイーズのフルートを始めとする個々のプレイヤーのニュアンス豊かな音で、極彩色の世界を築き上げています。
音から富貴ワインの香りが漂ってくるような高雅な演奏で、古くから愛されている演奏だというのもうなづけます。

ルーセルの《蜘蛛の饗宴》(1912年作)は、アンリ・ファーブルの『昆虫記』から着想を得た作品。
カマキリや蟻や蝶々やカゲロウといった昆虫たちが女郎蜘蛛に食べられていく様をバレエに仕立てた作品で、バレエとしての演奏時間は30分くらいになります。無論、バレエ音楽の常として、コンサートでも演奏できるようにルーセルもダイジェスト版をつくっており、この演奏も、コンサート用のダイジェスト版による演奏です。
ルーセルの音楽は歯切れの良さが命ですが、コンセール・ストララムの演奏は、メンバーたちの持ち前の技量の高さで難所をしっかりとカバーし、メリハリのきいた演奏を聴かせています。

イベールの組曲《寄港地》(1922年作)は、近代フランス名曲集などを編む時、かなりの確率で選曲にノミネートされる作品です。イベールの代表作として知られているこの作品も、ストララムが録音した時には、ラムルー管弦楽団で初演してから6年しか経っていませんでした。曲は、〈ローマ~パレルモ〉、〈チュニス~ネフタ〉、〈バレンシア〉という3曲からなり、イタリア、チュニジア、スペインのそれぞれの雰囲気をリズミカルなオーケストレーションで表現した仕上がりになっています。
新作であるにもかかわらず、元々自分たちの十八番だったかのように演奏してしまうコンセール・ストララムの即応力の高さを感じさせる名演奏です。最近の演奏に比べると、ややノリがフラットな感じがしますが、これが1930年代のフランスの文化的な雰囲気だったのかもしれません。

本CDの最後に収録されているのは、ラヴェルの《道化師の朝の歌》です。元々《鏡》というピアノ用組曲の一曲でしたが、1918年にオーケストラ用の音楽として編曲して独立させ、1919年にコンセール・パドルー(パドルー管弦楽団)が初演しています。朝帰りの伊達男の鼻歌を変幻自在なオーケストレーションで彩った、管弦楽曲の傑作ですが、平凡な演奏では、その気分的なメロディを雲散霧消させてしまうことがままあります。
コンセール・ストララムは、ストララムの棒の下で自由自在に音色を操りながら、ガッチリと手応えの残る演奏を披露しています。

10年にも満たない活動期間しか持ち得なかったコンセール・ストララムでしたが、一方では、在りし日のフランスの芸術の雰囲気を聴き手に伝え、また他方では、今日でも古さを感じさせない立派な演奏で、その存在感を主張しています。
1930年代の録音技術と今日の録音技術を比べれば、確かに音質的には今日には及ばないでしょう。しかし、その演奏内容は、今日でも十分何かを学び取るに足る内容を備えていると思います。

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