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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Ludwig van Beethoven (arr. Richard Wagner): Symphony No.9 in D minor, op.125 "Choral"
緋田 芳江 (S)
穴澤 ゆう子 (A)
桜田 亮 (T)
浦野 智行 (Bs)
Choir of the Bach Collegium Japan (Chorus master: 鈴木雅明)
小川 典子 (Pf)
(Rec. 18 & 20 May 1998, 響の森・桶川市民ホール, 埼玉)



ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven, 1770-1827)の交響曲をピアノで演奏するというのは、ピアニストにとっては冒険的行為だったのかもしれません。
カール・ツェルニーやヴィルヘルム・メーヴェス、フランツ・リストといった人たちは、とても一人で演奏できる代物ではないと考え、二人のピアニストで演奏するバージョンをそれぞれ作りました。
その後、リストは1865年になって一人で弾けるバージョンを意地で作り、偉業と称えられるようになりました。

しかし、リストが一人で弾けるバージョンを作る前に、ベートーヴェンの交響曲の独奏ピアノ用編曲を作ろうとした人がいます。
その人とは、後年「楽劇」なるジャンルを作ったドイツ人、リヒャルト・ヴァーグナー(Richard Wagner, 1813-1883)です。
若かりし頃のヴァーグナーは、劇作家と作曲家になるのが夢で、自分の作った劇にベートーヴェンのような壮大な音楽を付けることを夢見ていました。
そのために、ロベルト・シューマンの義父になるフリードリヒ・ヴィークの経営する貸本屋に行って音楽理論書をあさり、独学で作曲技法を身につけようとしました。
独学の限界を感じたヴァーグナーは、当時ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の指揮者を務めていたクリスティアン・ゴットリーブ・ミュラーという人から理論を学ぶことになりましたが、早くベートーヴェンのような作曲家になりたかったヴァーグナーは、自学自習でベートーヴェンの交響曲を写譜し、研究を重ねていました。
そんなヴァーグナーが特に入れあげていたのが、ベートーヴェンの交響曲第9番で、写譜に飽き足らなくなったヴァーグナーは、この曲のオーケストラ・パートをピアノ独奏で弾けるようにアレンジしたのでした。
1830年に作られた、ヴァーグナーの編曲版は、ベートーヴェンの交響曲のオーケストラ・パートを、原曲になるべく忠実にピアノに置き換えることに専念したため、第四楽章の合唱や独唱のパートはそっくりそのまま筆写されています。
あくまでオーケストラのパートのピアノへの転写にこだわったヴァーグナーの編曲は、後年のリストのようにピアニストにとって弾きやすく演奏効果の上がるような工夫を排除しているため、ピアニストにとっては、殊の外弾きにくい音楽に仕上がっているようです。
このため、ヴァーグナーのこの編曲は、ピアニストの弾きやすさを考慮に入れていない点と、編曲当時のヴァーグナー自身の知名度の低さゆえに、出版社からはまともに取り合ってもらえず、長い間埋もれてしまっていました。

小川典子(Noriko Ogawa, 1962-)が鈴木雅明(Masaaki Suzuki, 1954-)率いるバッハ・コレギウム・ジャパンの合唱団と共演した本CDは、このヴァーグナーによるベートーヴェンの交響曲第9番の独奏ピアノ版の、世界初録音となります。
独唱者の緋田芳江(Yoshie Hida)、穴澤ゆう子(Yuko Anazawa)、桜田亮(Makoto Sakurada, 1968-)、浦野 智行(Chiyuki Urano)は、バッハ・コレギウム・ジャパンの団員です。
第1楽章から第3楽章までは、小川の独壇場で、多少弾きにくそうではあるものの、溌剌とした前進力で聴き手の興味をぐいぐい引っ張っていきます。第1楽章と第2楽章は、技術的な苦しさを全く表に出さない職人芸を堪能でき、対位法的な音の絡みもテキパキと処理していて清々しい演奏に仕上がっています。
第3楽章では、ゆったりとした音楽の流れが心地よく、原曲では気になる響きの濁りも、ここではかなりクリアになっており、大変聴きやすい音楽に仕上がっています。
バッハ・コレギウム・ジャパンの合唱は、少人数ながらメリハリが効いていて、響きのテクスチュアが透けて見えるような美しい演奏を聴かせてくれます。小川の演奏も、音数が多いながらも、しっかりと合唱をサポートしており、その芸風にゆとりすら感じられます。
作品のコンセプトからすれば、第四楽章は、ピアノ伴奏による合唱団の練習ですが、演奏の質は、そのような練習と比べるべくもない、しっかりとした手ごたえを感じます。

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