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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Aban Berg: Concerto for Violin, Piano and Winds
Robert Gerle (Vn)
Normann Schetler (Pf)
Herbert Weissberg (Picc)
Gottfried Hechtl (Fl)
Friedrich Wächter (Ob)
Karl Gruber (Ehr)
Alfred Rose (Cl)
Richard Schönhofer (Cl)
Erich Webner (Cl)
Walter Krenn (Fg)
Otto Fleischmann (Contra-Fg)
Ernst Mühlbacher (Hrn)
Herwig Nitsch (Hrn)
Richard Rudolf (Tp)
Hans Pöttler (Tb) / Hermann Scherchen
(Rec. June 1964, Mozartsaal, Vienna)
◈Arnold Schönberg: Chamber Symphony No.1 in E major
Kamillo Wanausek (Fl)
Friedrich Wächter (Ob)
Karl Gruber (Ehr)
Richard Schönhofer (Cl)
Alfred Rose (Cl)
Erich Webner (Cl)
Leo Cermak (Fg)
Otto Fleischmann (Contra-Fg)
Herwig Nitsch (Hrn)
Thomas Kakuska (Vn)
Siegfried Führlinger (Vn)
Fritz Handschke (Vla)
Richard Harand (Vc)
Firmin Pirker (Cb) / Hermann Scherchen
(Rec. June 1964, Mozartsaal, Vienna)


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本CDは、アルバン・ベルク(Alban Berg, 1885-1935)の室内協奏曲とアルノルト・シェーンベルク(Arnold Schönberg, 1874-1951)の室内交響曲第1番の組み合わせです。

ベルクは、シェーンベルクの弟子として知られるオーストリアの作曲家です。
ヴァイオリンとピアノと13の管楽アンサンブルで演奏される室内協奏曲は、元々、師匠のシェーンベルクの50歳の誕生にに完成させる目途で作曲されました。しかし、作品が完成したのは1925年であり、さらに2年経ってから、ようやくベルリンで初演されました。
室内協奏曲は、シェーンベルクの生誕50周年記念のために計画された作品というだけあって、様々な趣向が凝らされています。
たとえば第一楽章冒頭で、ピアノがシェーンベルクの名前の綴りから作ったA-D-E♭-C-B-B♭-E-Gの音列を弾き、さらに盟友のアントン・ウェーベルンの名前からA-E-B-Eの音列をヴァイオリンに弾かせ、最後に自分自身の名前からA-B-A-B-E-Gの音列を作ってホルンに吹かせています。
これら3つのモチーフを使って、第1楽章は変奏曲を作るのですが、それぞれの変奏曲にベルクの友人の名前も封じ込めてあるのだとか。
第2楽章はシェーンベルクの音列や、シェーンベルクの作品から引用を施しながら、回文構造のアダージョに仕上げています。
第3楽章は、これまでに使われてきた音列を総動員させたロンドです。
激烈な冒頭部分は、ベルク自身が「雷雨」と記し、「嵐のように」という表情記号を付けています。
これは、シェーンベルクの奥さんが亡くなった衝撃を書き表したものですが、その死の衝撃にとどまることなく、精力的なロンドを書くことで、シェーンベルクに前向きに生きるようエールを送っています。
ベルク自身は、この楽章のスケッチに「世界、人生、万華鏡」という言葉を書きつけていますが、これは、人生の変転は万華鏡のように様々であり、死のみにこだわるべきではないという、当時のベルクの世界観を示していると思われます。

シェーンベルクの室内交響曲第1番(1906年作)は、作曲者が無調音楽へと歩みを進める前の作品で、シェーンベルク自身は「私の創作活動の第一期の掉尾を飾る作品」と位置付けています。
シェーンベルクは、元々ヨハネス・ブラームスの音楽に傾倒していましたが、師匠のアレクサンダー・フォン・ツェムリンスキーを通じてリヒャルト・ヴァーグナーの音楽の影響を受け、その影響を《浄められた夜》に結実させました。しかし、ブラームスやヴァーグナーの路線の踏襲から離れて、より新しい表現の可能性を模索するようになり、次第に無調音楽へと、自らの作風を段階的に改造していきます。
この作品では、弦楽セクションを、弦楽四重奏とコントラバス1本のみに限り、ピッコロ、フルートやオーボエ、コーラングレやクラリネット、ファゴットやコントラ・ファゴット、ホルンといった管楽器をふんだんに用いて、従来の弦楽器主体のオーケストレーションに反旗を翻しています。
さらに、交響曲と銘打ちながら、本来の多楽章形式を単一楽章形式に圧縮し、形式上でも彼なりの工夫を凝らしています。
ハーモニーも、聴きやすさよりは独自性の探求に熱心であり、ホ長調という調号はとっているものの、その調性感覚は曖昧になっています。
1907年に、アルノルト・ロゼーをはじめとするウィーンの演奏家たちで初演されましたが、初演当時、この作品の響きが斬新なものと見做され、是非をめぐった論争に発展しました。

本CDは、ヘルマン・シェルヘン(Hermann Scherchen, 1891-1966)がウィーン内外の演奏家たちを集めて録音したものです。
参加している演奏家は、以下の通りです。
ベルク:ピアノ、ヴァイオリンと13の管楽器のための室内協奏曲
ロベルト・ゲルレ (Vn)
ノーマン・シェトラー (Pf)
ヘルベルト・ヴァイスベルク (picc)
ゴットフリート・ヘヒトゥル (Fl)
カール・グルーバー (Ehr)
アルフレッド・ローゼ (Cl)
リヒャルト・シェーンホーファー (Cl)
エーリッヒ・ウェブナー (Cl)
ワルター・クレン (Fg)
オットー・フレイシュマン (Contra-Fg)
エルンスト・ミュールバッハ (Hrn)
リヒャルト・ルドルフ (Tp)
ハンス・ペトラー (Tb)
シェーンベルク:室内交響曲 第1番, ホ長調
カミロ・ワナウゼク (Fl & picc持ち替え)
フリードリヒ・ヴェヒター (Ob)
リヒャルト・シェーンホーファー (Cl)
アルフレッド・ローゼ (Cl)
エーリッヒ・ウェブナー (Cl)
レオ・ツェルマーク (Fg)
オットー・フレイシュマン (Contra-Fg)
エルンスト・ミュールバッハ (Hrn)
ヘルヴィヒ・ニッチュ (Hrn)
トーマス・カクシュカ (Vn)
ジークフリート・フューリンガー (Vn)
フリッツ・ヘンチュケ (Vla)
リヒャルト・ハランド (Vc)
フィルミン・ビルカー (Cb)

ベルクの室内協奏曲でヴァイオリン独奏を担当しているゲルレ(Robert Gerle, 1924-2005)は、イタリア生まれのハンガリー系のヴァイオリニストです。ブダペストのフランツ・リスト音楽院とハンガリー国立音楽院で学び、在学中の1941年にブダペスト交響楽団のソリストとしてキャリアをスタートさせました。
その後、ジョルジェ・エネスクに私淑し、1950年にアメリカを本拠にして演奏&教授活動に力を注ぎました。
ピアノを弾いているノーマン・シェトラー(Norman Shetler, 1931-)は、アメリカ出身のピアニストで、人形師としても活動している人です。ピアニストとしての彼は、16歳で初舞台を踏んでいますが、その後ウィーン音楽院でエゴン・ペトリとヴィルヘルム・ケンプに学び、アメリカにおけるドイツ音楽のスペシャリストとして活躍しています。
室内楽や歌曲の伴奏に通暁していて、本録音でも、その確かな腕前を披露しています。
シェルヘンの率いるアンサンブルでは、アルバン・ベルク弦楽四重奏団のヴィオラ奏者として名声を博したトーマス・カクシュカ(Thomas Kakuska, 1940-2005)がヴァイオリンで参加しているのが目にとまります。

シェルヘンは、音楽雑誌を創刊して、積極的に同時代音楽を紹介したり、スイスのグラヴェザーノの自宅に電子音楽スタジオを作って当時の新進気鋭の作曲家たちと交流を持ったりと、20世紀の音楽を積極的に擁護してきた人でした。
そんなシェルヘンの指揮者としての原点になったのが、シェーンベルクの作品でした。1912年に行われたシェーンベルクの《月に憑かれたピエロ》の初演は、指揮者としてのシェルヘンのスタートでもあったのです。
シェルヘンはシェーンベルクら新ウィーン楽派の音楽の擁護者となり、ベルクの室内協奏曲の初演も指揮しています。

シェルヘンは、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンなど昔の作曲家の作品になると、ありきたりな解釈に安住せず、自らの解釈をごり押しして個性的な演奏を志向しますが、同時代の作品になると、余分な情緒を避け、カッチリとした明快な演奏をしようとします。
ベルクの室内協奏曲は、自らが初演をした作品でもあり、全く迷いのない堂々たる演奏です。ルネ・レイボヴィッツらによる録音と比較しても、レイボヴィッツが各楽器の絡み合いを丁寧に解体するような明晰さでアプローチをしているのに対し、シェルヘンは大局的に作品を見つめて、筋の通ったストーリーとして描き出そうとしているようです。それゆえに、音楽に勢いがあり、終わりのはっきりしているしっかりとした物語のような聴きごたえを感じさせます。
ゲルレのヴァイオリンが果たしている役割も非常に大きく、硬い意志の宿ったような弾きっぷりで、アンサンブルをぐいぐい引っ張っているかのような印象を受けます。第2楽章でもしっとりと楽器を歌わせながらも、そのしっとりとした味わいにおぼれることなく、凛とした表情を保っています。
また、シェルヘンによってコントロールされた管楽アンサンブルの音色がつややかで、特にクラリネットの音色に色気を感じさせます。
キビキビしていながら、そこはかとなく官能的な香りすら感じさせるところに、この演奏の面白さがあると思います。

シェーンベルクの室内交響曲第1番でも、管楽アンサンブル主体のアンサンブルですが、不思議とサバサバしたところがなく、5人の弦楽セクションとうまく混ざり合っています。シェルヘンの指揮は、ことさら作品に残るロマンティークの香りを引き出すものではなく、筋道立てて音楽を構築していく理知的なスタンスに立脚していますが、各奏者の持ち味が隠し味として効いているため、どこか長閑な演奏に仕上がっています。
シェーンベルクがウィーンの作曲家であったことをふと思い出させてくれる、美しい演奏といえるでしょう。

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