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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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◈Ludwig van Beethoven: Leonore Overture No.1, op.138
BBC Symphony Orchestra / John Pritchard
(Rec. 6 October 1985, Royal Festival Hall, London) Live Recording with Applause
◈Ludwig van Beethoven: Symphony No.7 in A major, op.92
BBC Symphony Orchestra / John Pritchard
(Rec. 4 October 1985, BBC Studio 1, Maida Vale)
◈Ludwig van Beethoven: Fantasia for Piano, Chorus and Orchestra in C minor, op.80
Edith Vogel (Pf)
BBC Singers
BBC Symphony Chorus
BBC Symphony Orchestra / John Pritchard
(Rec. 6 October 1985, Royal Festival Hall, London) Live Recording with Applause



本CDは、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven, 1770-1827)の《レオノーレ》序曲第1番と、交響曲第7番、合唱幻想曲の3曲を収録しています。

レオノーレ序曲とよばれるものは、第3番まであって、第2番はop.72a、第3番はop.72bという作品番号が与えられています。本CDに収録された第1番は、op.138という作品番号が与えられ、序曲の通し番号と矛盾が生じているところに奇妙さを感じる人がいるかもしれません。
これらレオノーレ序曲というのは、ベートーヴェンが1805年に書き上げた《フィデリオ》というオペラに由来します。
この《フィデリオ》は、政治犯として捕えられたフロレスタンを、妻のレオノーレが救出する物語で、レオノーレが夫の収監されている監獄に潜入した時、男装して「フィデリオ」と名乗っていたということから、この名前が採られています。このあらすじによるオペラとして、フランス人のピエール・ガヴォーが作った《レオノール》や、フェルディナント・パエールの作った《レオノーラ》が知られていましたが、ベートーヴェンの作品を上演する際に、これらの先行作品との混同を避けるため、劇場側の裁量で「フィデリオ」という名前に改められました。
当のベートーヴェンは、この劇場側の勝手な判断に憤り、「レオノーレ」という名前にこだわりました。
このとき、この歌劇のために誂えられた序曲が、レオノーレ序曲第2番ということになります。
この失敗を教訓に、ベートーヴェンはすぐさまオペラの改作に取り掛かり、1806年のウィーンでの再演の際に、序曲を最初から作り直しました。この時に作った序曲が、レオノーレ序曲第3番として知られています。
このときにも、ベートーヴェンは「レオノーレ」という名前での上演を提案していますが、劇場側から断られています。
その年のうちに、このオペラがプラハで上演される計画が立てられましたが、その計画はとん挫してしまい、1814年に再演されるまで、上演が封印されてしまいました。
ベートーヴェンの死後、整理された遺品の中から、公刊されていないレオノーレ序曲が発見され、1828年に初演されます。1838年に、改めてop.138という作品番号が付けられて出版されました。
当初は、レオノーレ序曲第2番の代替案として作曲されたのではないかということで、レオノーレ序曲第1番とされましたが、最近では、プラハでの上演計画が持ち上がった時に用意した序曲ではないかという説が有力視されています。

交響曲第7番は、ベートーヴェンが1811年に書き上げた交響曲です。
この交響曲の特徴は付点リズムを多用した躍動性にあり、全体的に、従来の交響曲よりもテンポが早めに設定されています。
「活発に」(vivace)とか「きわめて速く」(presto)とか、「生き生きと」(con brio)といった標語が第2楽章以外の楽章で用いられ、本来緩やかなはずの第2楽章でさえ、”Allegretto”と書かれており、緩徐楽章としては速めのテンポが要求されています。
全体的に躁気質を思わせる音楽であり、後輩格の作曲家であるカール・マリア・フォン・ウェーバーからキチガイ扱いされたこともあります。
1813年に、彼の《ウェリントンの勝利》と一緒に行われた初演は成功をおさめ、この交響曲の第2楽章がアンコールとしてリクエストされたのだとか。

合唱幻想曲は、1808年に作り上げられた特異な作品。
前半はピアノ独奏のみのモノローグで、中盤はピアノ協奏曲風の変奏曲になり、後半に声楽が入ってきて祝典的な雰囲気を醸し出します。楽曲の構成としては、かなり突飛な作品です。後年の交響曲第9番の第4楽章と似た主題が登場することから、第9番の交響曲の試作品としての位置付けもなされることがあります。
1808年の彼の交響曲第5番と第6番の初演の時に出しものとして一緒に演奏されましたが、オーケストラの練習不足でグダグダな演奏に終始し、結果として失敗してしまったそうです。
後半部分の詩は、(Christoph Kuffner, 1780-1846)の詩を用いたといわれていましたが、クフナーの作品に該当作がないことから、最近ではクフナーの作ではないのではないかと言われています。

本CDに収録されている演奏は、ジョン・プリッチャード(John Pritchard, 1921-1988)の指揮するBBC交響楽団のもの。合唱幻想曲では、エディト・フォーゲル(Edith Vogel, 1912-1992)とBBCシンガーズ、BBC交響合唱団が共演しています。

プリッチャードは、20世紀イギリスを代表する指揮者で、特にオペラの分野で功績のあった人です。
ロンドン交響楽団のヴァイオリン奏者だった父親から音楽の手ほどきを受け、地元のオーケストラなどで経験を積んだ後、イタリアに渡ってオペラの勉強をしています。
1947年からは、グラインドボーン音楽祭に、フリッツ・ブッシュの助手として運営にかかわり、1949年にはブッシュの代役としてヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの《ドン・ジョヴァンニ》を演奏してデビューを飾りました。このグラインドボーン音楽祭とのかかわりの中で、モーツァルトのオペラのスペシャリストとして名声を博すことになりました。
コンサート指揮者としても有能な人で、1950年代からは欧米の著名オーケストラに客演して名声を広げました。1957年からロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督に就任してオーケストラの質の向上に貢献したことは特筆されます。イギリス楽壇への貢献から、1962年には、イギリス王室からCBEの勲章を贈られ、さらに1982年にはナイトを叙勲されています。このため、本CDでは、プリッチャードは「サー」(Sir)をつけて表記されています。

本CDに収録されたベートーヴェンのレオノーレ序曲第1番は、まるでオペラでも始まるようなワクワク感を感じさせてくれる演奏です。特に木管セクションが自発的にニュアンスをつけていて、演奏するのが実に楽しそうです。弦のセクションも、プリッチャードの何気ないひと振りにも俊敏に反応しているかのように動きが軽く、随所でビシッとアンサンブルを決めてくれます。ベートーヴェン特有の押しつけがましさは感じられるものの、それを笑い飛ばすような軽快さがあり、ところどころジョアキーノ・ロッシーニのオペラの序曲のように聴こえます。
交響曲第7番も、第1楽章の序奏部分こそ仰々しく構えすぎて音楽の流れが淀んでいますが、主部に入ると各セクションに生気が漲りだします。おそらく、プリッチャードの指揮自体が、ある程度団員の自主性を重んじるスタイルなのか、スピーディーな割に表情豊かで、説明臭さすら感じられるはずのベートーヴェンの音楽から親密さすら感じさせてくれます。時折アンサンブルがいい加減になるところもありますが、そのような瑕疵は、音楽の耳当たりの良さの前には帳消しにされることでしょう。
やや陰鬱な第2楽章も、鼻歌を歌うかのように通り過ぎ、第3楽章も何の苦も感じさせず、リズミカルに演奏しています。ただ、第4楽章は、やや気楽に構えすぎたのか、思ったほどの推進力に恵まれず、空回りしてしまったように聴こえます。ホルンをはじめとする金管セクションが力み過ぎ、響きが硬直してしまいました。

本CDの最後に収録された合唱幻想曲でピアノを弾いているフォーゲルは、オーストリア=ハンガリー帝国領チェルノヴィッツ(現:ウクライナ領チェルニウツィ)に生まれたピアニストで、アルトゥル・シュナーベルの高弟として知られた人です。
主にイギリスで活躍し、ギルドホール音楽学校やダーティントンの夏期講習などのピアノ講師を長く務めながら、BBC放送のために数多くの録音を残したのだとか。
本録音は、フォーゲルが75歳ごろの録音ということで、若手のようにバリバリ弾くわけにはいきません。
前半部分のピアノ独奏の場面では、ミスタッチも散見され、その奮闘ぶりにベートーヴェンの人生の苦悩を重ね合わせることができるかもしれません。
中盤になって、オーケストラが登場しますが、その溌剌としたオーケストラのサポートは、満身創痍のピアニストの傷を癒し元気づけているかのようです。
終盤になって合唱が登場しますが、その盛り上げ方には、ごり押しの力技が感じられず、作品自体の劇性を自然に引き出したようなみずみずしさがあります。
ただ、全体的に優等生すぎ、もっと強引にクライマックスを盛り上げるべきだという意見は出るかもしれません。

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