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1928年の日本ハナゲ學会第3分科會において瓢箪屋蓑吉氏が発表した「傳説の白ハナゲと黑ハナゲの脱色化の判別に關する文化論的一考察 ―ルウブル美術館をくまなく回ろうとして挫折したフレデリツク勅使河原氏の手記を中心に―」を再読したり、検証したりするBLOGではないことは確かなことです。ええ!確かなことですとも!
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Maurice Ravel: Miroirs
Maurice Ravel: Gaspard de la nuit
Cor de Groot (Pf.)
(Rec. 1951)
Maurice Ravel: La Valse
Cor de Groot (Pf.)
Gérald van Blerk (Pf.)
(Rec. 1974)
Maurice Ravel: Piano Concerto in G minor
Cor de Groot (Pf)
Concertgebouw Orchestra of Amsterdam / Eduard van Beinum
(Rec. 1940) Live Recording with Applause







モーリス・ラヴェル(Maurice Ravel, 1875-1937)は、フランス領のバスク地方のシブールという町に生まれた作曲家です。度々挑戦したパリ音楽院主宰の作曲コンクールであるローマ大賞で大賞を最後まで逃し続けたラヴェルでしたが、それが却ってローマ大賞の選考の依怙贔屓問題にまで発展し、パリ音楽院院長の辞任にまで繋がりました。また、作曲家として国民音楽協会に所属していたものの、恩師のカブリエル・フォーレを担ぎあげて独立音楽協会を旗揚げしたり、レジオン・ドヌール勲章の受勲を断ったりと、反骨精神の持ち主としても知られ、19世紀から20世紀のフランス音楽界のオピニオン・リーダーとして強い影響力を持っていました。
ラヴェルの作風は、イーゴリ・ストラヴィンスキーから「スイスの時計職人」と渾名されるほどに精緻な書法を特徴とし、演奏家側の恣意的な作品解釈の歪曲を嫌う傾向があります。その精緻な書法に関連して用意周到なオーケストレーションにも定評があり、しばしば魔術師に喩えられます。ただ、亡くなるまでの10年間は記憶障害や失語症など原因不明の疾患に悩まされて次第に作曲が出来なくなり、脳手術の予後が悪く、パリで亡くなりました。

本CDに収録されているのは、《鏡》、《夜のガスパール》、《ラ・ヴァルス》、そしてピアノ協奏曲の4作です。
《鏡》は1904年から翌年にかけて制作されたピアノ組曲でリカルド・ビニェスにより、1906年1月6日の国民音楽協会のコンサートで初演されました。曲は〈蛾〉、〈悲しげな鳥たち〉、〈海原の小舟〉、〈道化師の朝の歌〉と〈鐘の谷〉の5曲から成り、それぞれ詩人のレオン=ポール・ファルグ、ピアノ奏者のリカルド・ビニェス、画家のポール・ソルド、評論家のミシェル・ディミトリー・カルヴォコレッシ、ラヴェルの作曲の弟子だったモーリス・ドラージュに献呈されています。これらの曲のうち、〈海原の小舟〉と〈道化師の朝の歌〉は独立してオーケストレーションが施され、世界中のオーケストラのコンサート・レパートリーに入れられています。
《夜のガスパール》は、アロイジウスことルイ・ベルトランの遺作詩集にインスピレーションを受けて作曲した組曲で、〈オンディーヌ〉、〈絞首台〉、〈スカルボ〉の3曲からなります。テンポ配分と楽曲の形式はピアノ・ソナタの体を成していますが、調性的な繋がりはありません。1909年1月9日にビニェスがパリで初演し、曲はそれぞれハロルド・バウアー、ジャン・マルノール、ルドルフ・ガンツに献呈されました。
《ラ・ヴァルス》は、セルゲイ・ディアギレフのバレエ・リュスのために1919年末から翌年にかけて書き上げた管弦楽曲ですが、作曲時にピアノ2台用のバージョンも作りました。この2台ピアノ用のバージョンをミシア・セールの邸宅でマルセル・メイエと作曲者のピアノでディアギレフに聴かせたところ、ディアギレフはバレエ音楽として踊れないことを憂慮して受け取りを拒否しました。このため、ディアギレフへの献呈を取りやめ、セールに改めて献呈しています。作品の初演は、完成した年の10月23日にウィーンで作曲者とアルフレード・カゼッラで2台ピアノ用のバージョンで行われ、オーケストラ曲としては同じ年の12月12日にカミーユ・シュヴィアールの指揮するコンセール・ラムルーで初演されました。本CDに収録されているのは2台ピアノ用のバージョンです。

これらのピアノ曲を演奏するのは、オランダはアムステルダム出身のピアノ奏者、コール・デ・フロート(Cor de Groot, 1914-1993)です。フロート(「グロート」と書く人もいる)は、地元の音楽院でエクベルト・フェーンとウルファーツ・シュルツに師事してピアノ奏者になった人でしたが、1959年に一時的に右手を故障してから、多くのピアノ曲を左手用に編曲したり、指揮に手を広げたりして幅広い音楽活動を展開するようになりました。アムステルダムで長逝しています。
《ラ・ヴァルス》でフロートの相手を務めるのは、ティルブルフ出身のヘラルド・ファン・ブレルク(Gérald van Blerk, 1924-1997)です。ブレルクはウィレム・アンドリーセンに師事した後、パリでイヴ・ナットの薫陶を受けたピアノ奏者です。デン・ハーグの王立音楽院のピアノ科教授を長く務め、アムステルダムで亡くなっています。

フロートの演奏は、手が故障する前のラヴェルの2曲では、重厚に響かせるピアノの音色に多少の違和感を感じますが、それを補って余りある運動性の高さで成功しています。特に《夜のガスパール》の〈スカルボ〉など、ラヴェルの音楽を聴いているというよりも、ヨハネス・ブラームスの作法でフランツ・リストのピアノ曲を演奏しているような不思議な感覚を覚えます。
両手ピアニストとして復帰してからの《ラ・ヴァルス》も肉厚のピアノで、ブレルクのピアノに対峙し、ブレルクもフロートに張り合ってがっぷり四つに組んだ演奏を聴かせます。これは両者の個性のつぶし合いではなく、弁証法的にスケールの大きな演奏に発展していくのが面白いところで、オーケストラの演奏を聴いているのと変わらない充足感が得られます。

最後に収録されているラヴェルのピアノ協奏曲は、1929年から左手の為のピアノ協奏曲と同時進行で作曲されたもので、1931年に完成し、その翌年の1月14日のコンセール・ラムルーでマルグリット・ロンの独奏とラヴェル自身の指揮で初演されました。この曲は初演者のロンに献呈され、ラヴェルとロンはヨーロッパの主要都市でこの曲を演奏して回っています。

この曲でフロートの伴奏を務めるのは、エドゥアルト・ファン・ベイヌム(Eduard van Beinum, 1901-1959)の指揮するアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(Concertgebouworkest in Amsterdam)です。
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団は、1888年にウィレム・ケスを初代指揮者として創設されたオランダの名門オーケストラで、1988年にオランダ王室から「王立」(Koninklijk)の名称を下賜され、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(Koninklijk Concertgebouworkest)として活動しています。
この録音は1940年のライヴ(別資料では11月28日の演奏会)録音で、ウィレム・メンゲルベルクがこのオーケストラの首席指揮者を務めていた頃の記録になります。
ベイヌムはアンヘルムの音楽一家に生まれた人。アムステルダム音楽院でジャン=バティスト・ド・パウにピアノ、セム・ドレスデンに指揮法、他にヴィオラや作曲を学び、1920年にピアノ奏者として活動を始めました。しかし1927年にハールレム交響楽団の音楽監督になったのを機に指揮者に転向し、1929年にアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団に客演した時にメンゲルベルクに才能を認められ、1931年にはピエール・モントゥーの推薦状を貰ってアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の副指揮者に迎えられることになりました。その後、何かと体調の不安定だったメンゲルベルクを補佐する形で1938年よりメンゲルベルクと同等の首席指揮者の権限を与えられ、第二次世界大戦終結でメンゲルベルクが失脚すると改めて首席指揮者の座に就きました。ただ、ベイヌム自身も心臓に持病を抱えており、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者やロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団の終身指揮者の兼任を引き受けたことで身体的負担を増やし、アムステルダムでオーケストラのリハーサル中に心臓発作を起こして帰らぬ人になりました。
ちなみに、ベイヌムの指揮法の先生だったドレスデンはフロートの指揮法の先生でもあり、二人はお互い良く知った仲だったようです。

その演奏は、オーケストラにまだメンゲルベルクの影響が強く、第1楽章では弦楽器と管楽器のブレンドが今一つ溶け合わないという弱点はあるものの、フロートが重戦車のような推進力で音楽の流れを引っ張り、気骨のある演奏を繰り広げています。第2楽章ではベイヌムがうまくオーケストラのアンサンブルを整え、ふんわりとした木管セクションとピアノの対話が上手くいっています。終楽章はスリリングなオーケストラとピアノの掛け合いですが、あまり華美な雰囲気を振り撒かずにガッシリとした的確さを基調にしています。

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